アカツキ地方。カントー地方の遥か西に位置するその地方はポケモントレーナーを養成に力を入れている。
その養成システムの最たるものがアカツキ最大の都市、カンヨウシティに存在する「アカツキトレーナーズスクール」。小中高一貫教育の大規模な学校である。
学校の方針は「来るもの拒まず」。試験と面接で学ぶ意欲が有る者と認められれば簡単に入学できる。自由な校風から高等部から入学を希望する者も多い。
時は4月7日。高等部の入学式を終え、エスカレーター組は余裕を持ち、新入組は期待と不安に包まれている中、広大な敷地の一角は大きな盛り上がりをみせていた。
「しゃあー! これで10連勝だぜルカリオ!」
「ぐるあ!」
行われていたのは高等部1年生によるポケモンバトル。100人近いギャラリーも集まり、ちょっとした催し物のようになっていた。
丁度バトルが終わったところであり、勝者には惜しみない歓声が贈られる。その中心には、今年度入学したある男子生徒がいた。
名をクジョウ・コウヤ。シンオウ地方からやってきたポケモントレーナーである。ポケモンリーグへの出場経験もあり、実力はそれなりに高い。現に中等部からのエスカレーター組の中でも実力が高い相手を難なく撃破している。
「クジョウくんスゴーイ!!」
「カッコイー!」
「キャー! ルカリオつよーい!」
といった男としてはこの上なく嬉しい女子からの歓声も聞こえる。正直コウヤは調子に乗ってきていた。
「よーし! 誰でも相手になるぜ! 次の相手は誰だー!」
次の相手を募っていると、急に観客がシーンと静かになり、エスカレーター組の慌てたような声が聞こえてくる。
「ヤベぇ、ラウンズ!」
「第4位だぞ!どうする!?」
後方よりやってくる1人のために、観客が道を開ける。コウヤの前に現れたのは、白い髪と肌、赤い瞳を持つ小柄な少女だった。
首元が隠れるパーカーを着ているものの、制服のデザインからして、所属は中等部。コウヤには何故周囲がざわついているのか理解できなかった。
「次の相手はキミか、お嬢さん? いいぜ、相手してやるよ」
中等部の年下と思って軽い挑発。コウヤは楽しそうにしているが、周りは凍りつく。
「お、おいクジョウ。中等部は中等部でも…」
「油断すんなって? 当たり前だ、全力でいくぜ」
「いや、そうじゃなくて…」
エスカレーター組の同級生が目の前の白い少女の様子を窺いながらコウヤに何かを伝えようとしているが、ハッキリとしない。何が言いたいのか、訊こうとしたそのとき、目の前の少女が口を開く。
「騒ぎになっているから止めてこいって言われて来たけれど…。ボクじゃなくても良かっただろうに」
気だるそうに少女は頭を掻く。騒動の鎮圧に来たようだが、本意ではないらしい。
「乗り気じゃないなら放っておいてくれてもいいんだぜ?」
「そうしたいですけど、仕事は仕事なので」
「じゃあ、力づくで止めてみるんだな! 行けッ! ルカリオ!」
「仕方ないな。まったく…!」
「オレが、負けた…?」
圧倒的な実力。少女が繰り出したガブリアスはルカリオをあっという間に戦闘不能にした。一撃も食らうことなく、まるで面倒な作業を淡々とこなすかのように。
「さて、これで終わりです。みなさん、早急に下校してください。ほらほら」
静まり返ったギャラリーは下校を促され去っていく。白い少女は、生徒たちの下校を確認すると、コウヤを一瞥することも無く立ち去っていく。
「くそッ…」
あまりのショックに、コウヤは項垂れることしか出来なかった。