昼前。オルガマリーは俺たちを集めてこう言った。
『特異点の調査にはサーヴァントが必要不可欠です。それはいいですね? 今日集まってもらったのは、新たにサーヴァント召喚する目処が立ったからです』
「つまりガチャの時間ですね!」
『そのガチャ呼びをやめなさい』
いいや。俺が転生者である限り、サーヴァント召喚とはガチャのことだ。ただし前世とは違いレア度の概念は俺にしかないが。
今からドキドキしていると、ダヴィンチちゃんが見慣れたものを持ってきた。聖晶石である。
「まだカルデアの施設は完全回復したとは言えない。でも特異点には見つけ次第突入するからね。とりあえず今用意できる分だけ用意したよ」
「ひーふーみー……合わせて3回分か?」
奇数か。分けることができないし、ここはぐだおに譲るか?
「奇数だけども、今ここで無理に召喚する必要はないよ。キミたちの魔力とかカルデアの電力の問題もあるしね」
『何言ってるの。次がどんな特異点か分からない以上、可能な限り手は打ってもらうわよ』
「うん、所長の言う通りだ。魔力とか電力に関しては、ここで英霊を待機させててもなんとかなる」
それじゃ、まずお互い一回召喚するか。
そういうことになり、俺たちは英霊召喚を開始する。マシュの盾を置いて詠唱。まずはぐだおからだ。
「抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ───!!」
光が晴れる。そこに現れたのは
「サーヴァント・アーチャー。召喚に応じ参上した」
……エミヤ、と来たか。
自分でも少し表情が硬くなっているのが分かる。もっとも、緊張しているのは俺だけのようだが。
「これからよろしくね、アーチャー」
「よろしくお願いします」
「ふむ、新米マスターか。こちらこそよろしく」
「……まぁいいか」
『? 何よ、どうしたの』
「こっちの話」
これはぐだおの縁か、それとも抑止力の使いか……。確証はないがおそらく前者だろう。後者ならもっと別の方法を使うだろうし。
とりあえず俺も、今後の仲間に挨拶しておく。上手く使えよぐだお。そいつ強いし器用だし。
「それじゃ、今度は半場くんの番だよ」
「ふっ、胸が熱くなるな。ここまで燃えるギャンブルはカイジ以来か」
『アンタは一々ギャンブルと絡めないと動かないの?』
ダヴィンチちゃんから聖晶石を受け取り、盾に向かう。今回も触媒はなし。
となれば、誰が出てくるかは予想はつかない。ギャグ補正的に考えれば……(サーヴァントの方の)ノッブか、沖田、ヒロインXとかか。いやでも両儀式出たしな、案外関係はないのかも。
2回目の詠唱ってことでさくっと言って、聖昌石を投げ込む。膨大な魔力が嵐のように吹き荒れる。これで霊装とか来た暁には目も当てられないが、どうやら霊装システムはないらしい。
『来た……!?』
「さてさてどんな英霊だ?」
「イェ───イ! ノってるかのう! わしこそが、そう! 渚の第六天魔王こと、ノブナガ・THE・ロックンローラーじゃ! クラスはバーサーカーでよろしくゥ!」
おっ、ノッブか。いやぁ神性持ち相手に随分世話になったなぁ。
欲を言えば遠距離戦をこなせるアーチャーの方が良かったけど、この際贅沢は言ってられない。というかこいつならサラッとクラス変更くらいできると思う。
「……?」
そう思っていたら、ノッブが妙に神妙そうな表情をしている。視線の先は俺……じゃなくて、後ろ?
けど後ろには何もないはずだが。そう思って振り向いた。そして、俺はその理由に気づいた。
俺の背後では、ロマンたちが口を開けて突っ立っていた。こういうのを『開いた口が塞がらない』と言うのだろう。
そうだ、すっかり忘れてた。俺は前世でFGOをやっていたから驚きは少ないが、こいつらはぐだぐた本能寺を飛ばしたせいでノッブとは初対面なんだ。
そう、今のロマンたちの頭の中は。
日本英霊として知名度トップクラスの織田信長が実は女性であり
そして英霊として召喚されたら水着姿で
しかもロックンローラーである。
そういう事実を突きつけられているんだ。
たっぷり30秒、脳内で事実を思考したロマンたち。
長すぎてノッブが『おーい、なんじゃ。なんじゃこの空気。あれか? 新学年早々痛い挨拶したやつを見るみたいな感じか?』みたいなことを言っている。自覚あんのかよオイ。
そしてやっと、ロマンたちが口を開いた。
「パチモン英霊『ソシャゲ版織田信長』が召喚された!?」
「叩っ斬るぞ貴様ら!!」
10分後、ロマンたちとノッブの暴走は終了した。
◇◇◇
「お? 今回はキャスターでの現界ときたか───……なんだ、やけに騒がしいな」
「冬木のキャスター!」
「あんたらか、前に会ったな」
3回目の召喚をした立香は、後ろに視線を向ける。
そこでは、落ち着いたロマニたちが信長から話を聞いていた。
「……つまり。織田家の事情で祭り上げられて、女性であることを隠していたと」
「うむ。まぁ信勝があれじゃから是非もないがの」
「そして本来はアーチャーとして現界するはずだけど、人理焼却で暑いから水着に着替えて……」
「ついでにこのよく分からんウェポンを持ってきたということじゃ! いやそれにしても便利じゃのうこれ! 弾けるし叩けるし投げれるし。名前はさっぱり分からんがな! はっはっはっ」
信長が高笑いしているのに対し、ロマニたちカルデアのメンバー(特に歴史研究専門)は頭を抱えた。これ、実は女性でしたなパターンが乱発されるんじゃないかと。半場が聞けば同情したであろう。
そして当の半場は
「ふっ。これはあれだな。ロックバンド『カルデア』をやれっていうあれだな。いいぜ、付き合ってやるよ」
『何でそんなに早く順応できてるのよ……!?』
「これはまっこと幸先が良いな! 早速打ち合わせじゃ!」
『やる気満々じゃない、どうすればいいのこいつら!』
「……賑やかだなここ」
「いやぁ、そんなことは(半目)」
「ありませんよ(曖昧な表情)」
立香は諦めた。マシュも諦めた。仕方のないことである。だって女性の信長だし。すごいカリスマ持ってるし。ちなみにエミヤは早々に逃げた。
カオスになっていくカルデア。なお原因の大半は半場と信長である。賑やかなのはいいことなのかもしれないが、そろそろスタッフの胃が保ちそうにない。
そんな時、ロマニがまとめる。
「と、とりあえず今日はここまでね」
強引な打ち切り宣言であった。どう見ても臭い物に蓋している。しかしスタッフは助かった。
「半場くん、立香くん。特異点はいつ見つかるか分からない。そして見つけ次第すぐにでも向かってもらうことになる。だから気は抜きすぎないようにね」
「はい」
「あと、サーヴァントとの交流はしっかりしておくように」
正論だが、立香たちには「しっかり手綱握ってねいやホント」としか聞こえなかった。無論その通りである。
ブリーフィングを終えて、各々が解散していく。
そんな中、半場と信長は変わらないテンションで話していた。
「わしがボーカル兼ギター、そなたが太鼓かベースとして……。そこなセイバーはどうする?」
「リコーダー」
「えっ」
ノッブに全て持ってかれたエミヤにキャスニキ。エミヤに関しては抑止力関連で半場と絡めるのになぜこうなった。
ノッブの件ですが、アーチャーでも良かったけど水着の方がギャグ補正働くかなーって。というかコハエース出身キャラって余裕でクラス変更できるんじゃね?