転生者が見る人理修復(更新停止)   作:完詰岩志

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ちょびちょび書いてたので遅れました(言い訳)。


幕間の物語2
報告と掃除はしっかりと


 目を覚まして、まずは肩を回す。ゴキゴキという音が聞こえた。

 よく考えたらまともにベッドで寝たの一日だけだったなー。それも街の使い古された宿だったし。

 今から少し億劫になるが、まぁ嫌でも慣れると思う。寝れるだけでもありがたいと妥協するか。

 

「マスター、起きたのね」

「ん……」

 

 目の前に両儀式が現れた。その向こうにはロマニとダヴィンチちゃんたちの姿。

 見るに、じきにぐだおたちも来るだろう。ならさっさと起きるか。頭部のオルガマリーも起こして、俺はロマニたちのもとに向かう。

 

「特異点の振り返りでもするのか?」

「うん。その前に、回収した聖杯を預かるよ」

「へーい」

 

 ポケットから聖杯を取り出し、ロマニに渡した。

 これで聖杯は2つ。ただしカルデアの聖杯は魔力源くらいにしか使えないので、多分燃料にでもするんだろうな。

 2つ分の足音が聞こえてきた。ぐだおとマシュだ。

 

「よし、2人も着いたことだし、始めようか」

「こっちも新たな観測記録を用意できたぜ」

「うん。……おぉ! まだ1つだけど、確かにフランスの特異点は修復に向かっている!」

 

 ロマニが喜びの声をあげて、俺とぐだおに報告してきた。

 ぐだおとマシュがホッとしている傍ら、俺はふと思った。これ、この後の特異点で現地調達可能なんじゃね? 具体的にはシュールストレミングとか。なんなら今からでもレイシフトできるし。

 まぁそれは後で。俺はロマニに言った。

 

「よし、んじゃこっちの報告な」

「ジャンヌオルタのことだね?」

「ああ」

 

 ジャンヌオルタについては、原作と違いぐだおたちは知らない。ひょっとしたらぐだおが召喚するかもしれないし、聞いたことだけ言っておこう。聞いたことだけ。

 

「結論から言うと、ジャンヌオルタはジルにより作り出された英霊だった」

「何だって!?」

「正確には聖杯の力で、だな。ジルはジャンヌを蘇らせようとして失敗したのか、代わりに偽物を生み出したようだ」

 

 確か原作では、ジルのフランスへの憎しみとか怨念とかが色々混ざって、本来ありえない別側面が生まれたんだっか。

 そんな邪ンヌをもし召喚したら……いや、俺は召喚することはないだろうな。というか向こうが応じないな。

 

「分かりやすく言うと、ジャンヌオルタとは、ジルが作り出したネットアイドルみたいなもんだ」

「なるほど……」

『報告書にもそう書いておきましょう』

 

 ジャンヌオルタの話はもう終わりだ。あとは本人を召喚して聞くしかない。興味があるなら、ぐだお、よろしく。

 あー、疲れた。

 そうして離れようとした俺に、ダヴィンチちゃんが言ってきた。

 

「あ、半場くん。ちょっと明日工房に来てくれ」

「え? なんで」

「シュールストレミングの加工に、工房が一つ潰れかけてるんだよ。だから消臭を手伝ってほしいな」

「……ファ○リーズは?」

「壁と床の清掃をファ○リーズでやれるわけないだろ。だから、ね?」

 

 待て、マジでやるのか清掃。加工頼んだのは俺だし責任あるかもしれないが、やるの? 清掃?

 自分でも嫌な顔をしているのが分かる。生きるためにシュールストレミングを使うのと、別にやらなくてもいいことにシュールストレミングを処理するのは話が別だ。

 だから勘弁してください、お願いします。

 

 そんな考えが読めていたのだろうか。ダヴィンチちゃんはやれやれと首をすくめながら言った。

 

「聖晶石を生み出せるか否かの瀬戸際なんだけども」

「やります」

 

 ふざけんなそういうことは早く言え!

 

「さぁー寝るぞー!」

『そうよ早く言いなさいよ。サーヴァントを召喚できないなんてとんでもな』

「ガチャができないなんてとんでもない!」

『おいこら』

 

 よし今日はとっとと寝るぞ、そして明日早く起きて清掃するぞ!

 そう誓って、俺は自室に戻った。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 翌朝、たっぷり寝て元気いっぱいの半場は、さっさと消臭に取り掛かっていた。といっても、シュールストレミングの臭いが簡単に取れるはずもなく。結局一日かけてきっちり臭いを取っていく。

 ダヴィンチの工房一つの消臭。それを一人でやるにしてはえらく早いが、それは当然。頼もしい助っ人がいたのである。

 

「こっち終わった」

「そうか。私も終えたよ」

 

 アーチャー・エミヤ。カルデアが誇るオカン的存在である。

 彼は立香の頼みで、半場の手伝いをしていたのだ。

 

「悪いな。手伝ってもらって」

「何、下手に素人にやらせれば取り返しのつかないことになりかねないからな。これは対応を知る者がやるべきだ」

「そういえばやけに対応が早いな。前に開けたことあるの?」

「まさか、私が開けたことはない。ただ以前、知り合いの調理師と処理しただけさ」

「何を料理するつもりだったんだよ……」

 

 冷めた目で見る半場。しかしエミヤにとってはどうでもいいのか、話すつもりはなさそうだった。

 むしろ、エミヤには他に聞きたいことがあった。

 

「ところで一ついいかね」

「ん?」

「まさかとは思うが、シュールストレミングは品切れていないということは?」

「特異点で全部使っちまったよ。やれやれ、たった3ダース程度じゃ保たないか」

「そうか。それなら良……ん? 3ダース?」

 

 凄まじい違和感を感じたエミヤだが、半場はそうではないらしい。「はぁー、ダヴィンチちゃんに臭い玉作ってもらわなくちゃ」とボヤきながら、雑巾を絞っている。

 首を傾げながらも、エミヤはまぁそんな人間もいるかと思った。

 

「そんな量を一人で食すつもりだったのかね」

「本当は振る舞うつもりだったけど、みんな拒否したんだよ。ヒナコに至っちゃ気絶して以降逃げやがるしよー」

 

 半場はシュールストレミングは食べられる派である。というか極限状況なら人間は何だって食べる。例はグルメ界。

 ただ大半の人間は、言うまでなく苦手とする。ならば仕方ないということで、半場はシュールストレミングの製作を諦めた。カルデアで作るつもりであった。

 

「あまりそういうことをするものではない。シュールストレミングで人を殺すことは十分に可能なのだからな」

「分かってるよ。……ところで、この雑巾どうすんの?」

「私が洗濯しておこう」

「大丈夫か? 牛乳拭いて放置した後の雑巾みたいにならない?」

「そんなことはさせるか」

 

 茶化しに割と本気の返答をして、エミヤは雑巾を受け取る。そして工房を見渡した。

 壁も床、天井の隅々までピカピカに磨かれていた。主にエミヤの家事テクによって。果たして凄いのはエミヤか、それともここまでやらないと消臭にならないシュールストレミングか。

 

「ダヴィンチちゃんは?」

「ダヴィンチちゃんならあっちの工房。俺とノッブの頼みでちょっと設計図を引いてもらってる」

「織田信長、か」

 

 少し神妙そうな表情なエミヤ。しかし別に浅からぬ因縁とか深いワケがあるのではない。ただいつもつまみ食いされるのに辟易しているだけである。それを知っていて止めないどころか信長に加担している半場も全くもって大人気ないが、それは彼にはどうでもよいことだ。

 

 とにかく、自然な調子で半場は会話を続ける。

 

「そういえばエミヤの投影っていうのは、自分一人で設計図引いて作り出すようなもんだよな」

「いや、そこまで優れたものではない。私ができるのはあくまで偽物(コピー)。ダヴィンチちゃんのように優れた設計者ではないさ」

「それでも、見たものを作り出せるわけだろ? なぁ、それって剣以外も作れるのか?」

 

 聞く意味のない質問だ。半場はエミヤの投影可能範囲についてある程度知っている。

 しかし聞く必要はある。半場は知識として知っていても、実際にそれを見たわけではないのだから。

 

「もちろん限界はあるがね。だが中身さえ分かれば大抵の物は投影できる。魔力と時間をもらえればだが」

「そっか。んじゃちょいと作ってもらいたいものがあるんだけどさ。……その前に」

 

 工房の隅に置かれたバッグ。それは半場が自室から持ってきた物であり、半場がカルデアに来る前に用意しておいた物である。

 バックから二つ、何かを取り出し、半場はエミヤに聞いた。

 

 

「この爆竹作れる?」

「何をするつもりかね?」

 

 

 半場が取り出したのは、平均より少し大きいサイズの爆竹であった。どこの国製かは、黒塗りで潰されている。

 引きつった顔でそう言うエミヤ。しかし半場はあくまでも「作れる?」という態度を崩さない。

 

「……」

「……」

 

 少しの間、見つめ合う両者。ただしその間にロマンとかはない。あるのは早く言えという応酬だけである。

 最初に折れたのは、エミヤであった。

 

「……作れる。その程度なら造作もない」

「そっか作れるのかそうかー」

「……というか、それなら私の壊れた幻想の方がいいのではないか? サーヴァント相手にその爆竹は通じないだろう」

「えー、一体何の話ー?」

 

 白々しい笑顔だった。いっそ清々しい笑顔だった。

 はぁ、とため息を吐くエミヤ。その顔はどう見てもオカンである。まるでダメ息子を見るような。

 そしてエミヤが問い詰めと説教を始めようとしたタイミングで、ちょうど彼女らが出てくる。

 

「半場くーん、設計図書いたぜー」

「おっ、サンキューダヴィンチちゃん。ノッブ、どうよ」

「バッチリじゃ。あとはわしが作るだけじゃな!」

 

 つい先程まで、何かの設計図を引いていたダヴィンチと信長であった。その手には設計図らしき大きな紙が。

 なんだなんだ、とエミヤが見ようとしている間、半場はダヴィンチ顧問と話をする。

 

「聖杯ドライブの案は、効率を無視すればいい案だと思うよ。要するにゴーレムを作るようなものだからね。ただやはり可動部や重量といったものには問題が残るね。今ある凶骨じゃ強度が足りない」

「やっぱそうだよなー。特異点攻略を進めるっきゃないかー」

「というより、これなら普通のゴーレムを作った方がいいと思うよ? 索敵でもこっちのプランの方がいいかなー」

 

 さくさく進められる何か。わけが分からないエミヤ。

 思わず信長を見ても、彼女はふふんと自信ありに胸を張るだけである。

 

 なので、聞く。

 

 

 

「一体何の話をしているのかね?」

 

「「「機動戦士N(ノブナ)ガン○ム」」」

 

「えっ」

 

 

 信長が見せた設計図。そこには、某RX-75のようなキャタピラの上に、ディフォルメ化された信長が乗っていた。

 

 そう、すなわちノブタンクである。




燃え上がれ、ノッブ!

ガンタンク的なサムシングを見たので書かずにはいられなかった。と私は供述します。

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