主人公のスキルの厨二描写があるけど気にしないで。いやむしろ触れないで。
「『な、何をするのですリン。シロウ、貴方も見ていないで彼女を止めてください』」
「エクスカリバーモルガン!」
「『シロウ……あまり、見ないでほしい……。私の身体は、魅力的ではありませんから』」
「エクスカリバーモルガンー!!」
「『シロウ……貴方を、愛しています』」
「エクスカリバァァァモルガァァァン!!!!」
青白い、死体のようなと評された顔を真っ赤にして、セイバーはエクスカリバーを振るう。
しかし当たらない。羞恥心にまみれた剣が、冷静に回避する両儀式に当たるわけがない。
「おのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれ……!!!!」
「はーっはっはっはー!!」
「何がおかしいキャスター!!」
戦いながらも大爆笑しているキャスター。それがかんに触ったのか、セイバーは矛先をキャスターに向ける。
「これがおかしくなくて何だ!? まさかお前があの坊主と、んなことヤってたとはなァ!」
「忘れろキャスター!!」
「やーだーねー! このまま座に持って帰らせてもらう!!」
「貴様ァ!!」
思わずモルガンを放とうとするセイバー。
それを、半場と両儀式が止める。
「おっと、まだだぞセイバー! 確かプールでビキニと泳ぎの練習の話もあったな!!」
「黙れ貴様! おのれマーリン! なぜそんなものをこいつに渡したァ!!」
『酷いな⁉︎ 私はそんなことやってないよ! え? 誰かに話はしたか? ……そんなことより王の話を聞かないかい?』
そんな幻聴が響いた気がした。無論気のせいである。
一方の半場たちは、あくまで冷静に行動する。
「両儀式、ここじゃマシュたちに近い。崖を登って回り込め」
「分かったわ」
そう言ってひとっ飛び。セイバーがモルガンの魔力を装填する僅かな間に、両儀式はマシュたちから離れる。
しかしそこは崖の上。そこには
「I am the born of my sword…!!」
「うわ危ねっ」
キャスターのルーンを避けている、アーチャー。その片手間……というには過剰に、アーチャーは投影剣を射出する。
しかし当たらない。何故か。
「……大丈夫か? なんかZeroランサーみたいな感じになってるけど」
「喧しい! いいからその口を閉じろ‼︎」
目から血涙を、口から吐血を。まるで自害でも命じられたような体のアーチャー。
その姿、半場が思わず心配してしまう程であった。
「大体、なぜそれを本人の前で暴露する!?」
「いや、お前には関係ないじゃん……あっ、そうかそうか。お前当事者か!」
「しまった!!」
アーチャーは自爆した。黙っていればよかったものを。
だって、半場が畳みかけたのだから。
「ふーん、あっそ。じゃあさあれやらないの?」
「あれ?」
アーチャーには直感はないが、ものすごく嫌な予感がしていた。
具体的には、戦闘途中で取ったポーズを後で笑われるような。
半場はあくまでも、紙を見ながら言う。
「『体は剣でできている』って言いながら『かっこいいポーズ』取らないの?」
「我が骨子は捻れ狂う!!」
瞬間、三十を超える剣が半場たちに向けられた。そしてそれが到来する間にも、アーチャー自身が二刀を持って近づく。
しかし。
「おおっと! お前の相手はこの俺だ!」
「邪魔だキャスター!」
それを、追いついたキャスターが妨害する。
剣と杖で打ち合う2騎。
再び戦いが始まる。
「ちょっと待っとけ! すぐ片付ける!」
「頼むぞキャスター!」
「任せとけ。こいつの『かっこいいポーズ』を観たらすぐ向かう!」
「忘れろキャスター! いや頼むから忘れてくれ!」
どんだけ嫌なのか、とうとう仇敵にさえ頼み始めたアーチャー。全て半場に本を渡した魔術師が悪い。
「両儀式、セイバーは?」
「あそこよ。何か力を溜めているみたい」
「来るか!」
崖の下、ほんの三メートル程の距離。それはサーヴァントにとって大した高さではない。
ましてや、魔力放出で筋力上乗せができるセイバーにとっては。
「――――――はァッ!!」
「やっべ。受けずに避けろ!」
「もちろん」
接近はまばたき程の間に。魔力放出で実質『飛んできた』セイバーに、両儀式は受けずに回避した。
そしてセイバーが剣を振ったところに、扇状のクレーターができる。
「うーんありゃ筋力勝負は無理だな!」
「そうねぇ、私はか弱い女だもの」
「…………」
「そこで黙るのはよくないわ、マスター」
両儀式の目は少しも笑っていなかった。半場は思わず目を逸らした。
しかしセイバーが2撃目を放とうとしているのを見て、やっとふざけるのをやめる。
その決意を確認して、両儀式は微笑んだ。
「ふふ……。
「
「えぇ、早速始めましょう――――――」
一瞬、両儀式は目をつぶる。
発動するスキルは、『根源接続』。
このスキルを両儀式は「そんなに便利なものではない」と言うが、それはあくまで自称に過ぎない。それが通常サーヴァントの力を上回るものには違いない。
それを以て使うのは―――ただの魔術。
「―――
◇◇◇
同調、完了。
両儀式は、眼を開く。
その眼は、鮮やかな虹色であった。
「……驚いたわ。マスターはこんな風に俯瞰していたのね」
「はいはい感想は後な。来るぞ」
直後、魔力を纏ったセイバーが突っ込んできた。それを両儀式は受けずに回避。
しかしそれでセイバーが諦めるわけなく、続いて斬り払い、斬り上げ、振り下ろし。さらなる打ち込み。
合計6撃。その内2撃を、両儀式は受け流した。
その結果を受けて、半場は問う。
「どうだ、両儀式。
「2つ。私では、それが限界ね。ひょっとして合わないのかしら」
「合わない、か。(無理ないか。両儀式では『制限』に引っかかる。)……それじゃ、俺が補おう」
「念話を使うの?」
「ああ。
マスターとサーヴァント間のパスを繋ぐ。基本中の基本ではある。
しかし、実戦において、念話で細かい指示を出す暇はない。先の先を予測するなら、まだしも。
「はあああぁぁぁッ」
「来るわ」
「それじゃあ……」
数度まばたきし、半場は眼を開く。
その眼は鮮やかな虹色であった。
文字通り、
『右へ打ち込み、突き、薙ぎ払い、……蹴り、……魔力放出』
セイバーは
それらを回避して、両儀式は言う。
「……便利な眼ね。マスターはどこまで視えるの?」
「大体5つ前後。剣のみで来るなら8ぐらいだな」
「十分なくらい。やっと聖杯戦争らしくなってきたのかしら」
「俺が抱えられたままってのがなんとも締まらんけどな」
苦笑しながらも、半場は視ることを止めない。
その眼は、変わらず5死を視ている。
「はあ!」
『突いてから斬りはらい、……殴打、柄突きに……足踏み』
5手先を視て、伝える。
だから間に合う。ギリギリではあるが、半場の指示はセイバーの剣より早い。
「ふっ!」
『……目眩し、連続突き、振り下ろし。加速して突き、……回し蹴り、そのまま振り回し、振り下ろし』
マスターである半場の死、それに直結する攻撃を全て。その悉くを、見切る。
セイバーからすれば、不気味極まりない。なにせ相手がろくに反撃もせずに避けて避けて避け続けるのだから。
「ッ!」
『刀身伸ばして振り回し、その風を放ち、ついでに石を蹴り上げ。突進、屈んで斬り上げ、飛んで頭に突き、蹴り。斬り上げて突き薙ぎ払い回転斬り魔力放出……』
即死クラスの攻撃、合わせて106。
その全てを、避けて、流した。
セイバーは言った。息を切らした状態で。
「……未来予測、か?」
「んにゃ、違う。それじゃ不十分だ」
何が足りないというのか。それが分かるのは半場のみである。
何にせよ言えるのは、このままではケリがつかないということ。そして千日手であれば、勝機はセイバーにある。
「あの小娘が心配か。わざわざ宝具の的になりにくる程だからな。しかし聖杯は私が守っているのだ。その行動に意味はない」
「今までならそうだろうな。けどたった今意味ができた」
何? と言ったその時には、既に決着は付いている。
そもそも半場たちの狙いは、セイバーの気を逸らすことなのだから。
我が魔術は炎の檻、茨の如き緑の巨人。因果応報、人事の厄を清める社
それはキャスターの宝具の詠唱。
「ッ。倒されたか……!」
「おうよ。あとはお前さんだけだ!」
直後、巨人の腕が地面から現れた。
腕は這い出てきた勢いで、セイバーを掴む。
「くっ……⁉︎」
エクスカリバーを振り上げようにも、体を掴まれていては抵抗できない。魔力放出は掴まれていては無意味。
巨人の体が現れる。その腹には供物を入れる場所が。
「倒壊するは……ウィッカーマン‼︎」
当然、そこに入るのはセイバーである。そして一旦捕らえられれば、もう逃げることは叶わない。
「善悪問わず土に還りな!」
直後、セイバーを入れた巨人が爆発した。
それを見た半場は思わず言った。
「……これって爆発させりゃあなんでもオーケーなケルト宝具なのか?」
◇◇◇
サーヴァントは倒されても若干の猶予期間がある。だから、セイバーもまだ少しの間残っていた。
その猶予期間に、俺はセイバーに話かけた。
「ちーす」
「……貴様か」
うわ凄い殺気。無理ないかあんなこと言っちまったしな。でも謝罪はしない。だってマシュたちを殺そうとしたから。『だから俺は悪くない』。
「この間に貴様を殺したいが、もう力が出ない」
「そりゃそうだろ。今動けるとかお前どこの光の戦士って話じゃん。『まだだ』とか言うの?」
「何の話だ」
通じないかぁ。まぁいいけど。
それじゃ、これを聞いておこう。
「お前をストーキン……監視してたのは誰だ」
「知らん」
やっぱり知らないのね。まぁ知ってても教えてくれないと思うけど。
……あ。姿が消え始めている。
「今度召喚された時に、真っ先に殺してやろう」
「あっそう。……あ、最後だし言っとくわ」
「?」
ついさっきこれ言い忘れたんだよなー。いやー危うく言い忘れるところだった。
「『シロウの味がします』」
「おい貴様いい加減に」
いい加減にしろ、と言うことは残念ながらできず。
目の前で、セイバーは粒子となって消え去った。
スキルに関しては触れないでほしい。修正前だから。