もしかしてあれですか? もうハーメルン内では所長が武器として扱われるのが普通なんですか? ひょっとして私が遅れてるんですか? だとしたら悲しいです。みなさんリヨぐだ子の所長への態度を見習ってください!
というわけでどうぞ。
半場がオルガマリーに殴り飛ばされた後。
半場は、ファミリーマートに買い物に行ってきた。
「おーうあったぞファミマ。全員分の飲み物買ってきた」
「本当にあったんだ……」
「もう何も突っ込まないわ……」
要するにパシリである。しかし半場もファミチキを食いたかったためあっさり了承した。
「フォウは魚肉ソーセージでいいよな」
「フォウフォウ」
「うんよしよしアホ可愛いな」
「フォウ!?」
あれ、半場さんってフォウさんと仲良かったっけ。そう思ったマシュだが今仲良くなったのかと納得した。
「キャスニキは……ドッグフードで良かったよね?」
「喧嘩売ってんのかお前」
「冗談……ほい、キャットフード」
「犬じゃなけりゃあいいってことじゃねぇんだよッ!」
払い落されたキャットフード。あぁもったいないと言いながらしぶしぶスピリタスをキャスターに渡し、半場はコーラを飲む。もちろんキャスターは吹き出した。
そしてやっと、会議が始まる。
『まず立香くんたちがやったことをまとめよう。
1.マシュがデミ・サーヴァント化。
2.キャスターが仲間に。
3.アサシンとライダーを撃破。
4.マシュが宝具を疑似展開。
5.ランサーに襲われてる二人を見つけ救出及びランサー撃破。こんな感じかな』
「うわマジかすげぇな。んじゃ俺たちの報告な。
1.所長と合流、逃げる。
2.逃げる。
3.逃げる。
4.ランサーと遭遇。
5.逃げてたらお前ら来た。こんなところだ。どうよすごくね?」
「どこに自慢できる要素があるのよ」
歴然の差であった。特に大きいのはマシュの宝具疑似展開だろう。
敵がアーサー王であることを踏まえると、それは大きな強みとなる。
とすれば、あとやるべきことは。
「不知火のサーヴァント召喚ね」
「えっマジで⁉︎ 俺英霊召喚できんの⁉︎」
「当たり前よ。貴方にはマスター適性あるじゃない」
「ひゃっほう! これでガチャが、ガチャが回せるゥ‼︎ あの脳髄が溶けるようなあの感覚をまた味わえるのかッ‼︎」
「何このギャンブラー」
最低な反応はまぁ置いておく。だいたい間違っていないし。
とにかく、不知火がサーヴァント召喚することが決定し、全員霊脈に移動した。
「ここに盾を置いて召喚するんですよね」
「そうよ。詠唱は間違えないように」
「魔力は?」
「聖晶石を使いなさい」
渡された石は3個。思わず「しけてやがんな」とつぶやいた半場は悪くない。だがこれで間違いなくサーヴァントが来る分、現実よりはマシだろう。
「汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に」
◇◇◇
さて……一体誰が召喚される?
これだけはいくら俺でもランダムだ。触媒になりそうなものは集めてはみたが、ここで出して怪しまれたらマズイしな。
叶うことなら俺の奇行を容認してくれるサーヴァントが良い。とすると……謎のヒロインXとか。
まぁ出てきてから考えよう。でもせめて話が通じるやつをよこしてね。スパとか出てきたらどうしようもないし。
「抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ‼︎」
うわ眩しっ!
光が俺たちを包み込む。この光景をアチャーが見てなくて良かった。危うく狙撃されるところだった。
やがて光が晴れる。俺は真っ先に目を開ける。
明暗の変化に慣れぬ目が捉えたのは、刀の鞘のような物。……日本の剣士? とすると武蔵とかコジローとか沖田か? 確か全員話が通じたような。
良かった。世界は俺を見放さなかったらしい。
そして、ここからが逆転劇だ!
「セイバーのサーヴァント、両儀式。召喚に応じ参上致しました。……ふふ、これでいいのかしら? 異色にも程があるでしょうけれど、よろしくねマスター?」
見捨てられた! 最悪だ!
◇◇◇
「ふふ、どうしたのマスター。嫌に緊張しているわ」
「んにゃ、なんでも」
俺ただいま絶賛絶不調。駄目でござる、力が出ないでござる、今日は帰るでござる、働きたくないでござる……いや最後のは違うな。
最悪だ、よりにもよってこいつが出てくるとは。
完全に、世界に見捨てられた。
こいつが出てきた、それはいい。それはいいのだ。通常のマスターならな。
だが、俺は違う。
俺はギャグ補正を使っている。それがマズイのだ。
FGOコラボイベ『空の境界』編。そこで両儀式は現れた。誰の前に? 謎のヒロインXの前にだ。
Xが宇宙人だから、なんて理由で勝手に飛び出してきた両儀式は、Xに「そのくせっ毛切り落とすわ」と言った。それに対しXは言った。「やだこの人
そう、効かないのだ。
全宇宙最強のご都合主義であるはずの、ギャグ補正が。
正確には「実は生きてましたー!」系の補正か。
効かない理由を俺なりに考えた結果、こいつには「私が斬った。だから死ね」系のギャグ補正が働いているのだろうと思う。どこの波旬?
まぁこういうタイプの対処はあるので、あまり気にしすぎない方がいい。しかし問題は他にもある。
「ねぇ、マスター」
「何だ?」
わざと屈みあざとらしく、両儀式は言った。
「そのくせっ毛斬ってもいいかしら?」
「いいわきゃねーだろ!!」
そう、なんとこいつ、ことあるごとに俺のアイデンティティをぶった斬ろうとしてくるのだ!
この時俺はやっと理解した。「アホ毛こそFateヒロインの証である」と。Xが死ぬ理由も理解したよ。まじ怖いよ両儀式。
「そう、残念」
「笑ってる。ものすごい笑ってる。お前絶対付け狙うつもりだろ」
「嫌だわマスター。私がそんなことをする女に見えるの?
やるなら白昼堂々やるわ」
「最悪だッ」
くそう、やっぱこいつクーリングオフできないかな。無理? ですよねー。
召喚して早々後悔する俺。
それに気を取られて進んでるのも忘れていた。
「よし、あともうちょいだ」
そう、ここからアチャー戦。はっきり言って前座である。
だからといって油断はできない。シャドウサーヴァント化しているとはいえ、エミヤの投影は厄介極まる。マスターである俺たちが死なないよう気をつけなくては。
そして、とうとうあと一歩。上がれば、洞窟の入り口だ。
この特異点がファーストオーダー基準なら、ここでエミヤは待ち構えているはず。
キャスニキと別れるか、一緒に倒すか。俺としては確実性を求めて倒したい。
何にせよ、まずは出会ってから。
木々の枝を退けて、俺たちは開けた場所に出た。
誰もいない。
サーヴァントの姿など、影も形もない。
「……何だ?」
「誰もいない……?」
そんなはず、ない。倒されている、それもない。
ならば
「……しまった」
やられた。完全に、警戒されてしまっている。
「ロマニ、ここから洞窟内部の様子を探れるか?」
『ちょっと待ってね』
考えるべきだった。
ここには、マスターが二人いるのだから。
『検索出たよ。……これは、洞窟内部に、サーヴァントの反応が二つ!』
「ヤロウ……そうきやがったか!!」
合理的であるエミヤが、俺たちを相手にするならどうするか。予測は付いていたのに。
潰す気だ。
確実に。
「……そうかい」
「フォウ?」
予定変更。いいぜ、アチャー。お前が騎士王と一緒にくたばりたいなら、その願い叶えてやる。
補正を使える俺が、とびっきりの作戦で行ってやるよ。
「なぁみんな」
「何だ?」
「突入作戦は、俺に考えさせてくれないか?」
「何かあるのか」
注目が集まる。
よし、折角だし言っておくか。戦闘前の肩慣らしだ。
「私にいい考えがある!!」
私にいい考えがある!!(CV.玄○哲章)