――なぜあの日、私はあの場に居たのだろう。
――なぜあの日、私は親友を見捨てたのだろう。
――なぜあの日、私は全てを失ったんだろう。
――なぜ、なぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜ
――なんで私は死ねないの?
とある街の住宅街、閑静な街という言葉が相応しい住み心地が良く、明るい雰囲気だった。とある一つの家を除けば。
「…………」
そのとある一軒家に住む少女、御影加古は何時ものようにベッドから出ず、愛用してるヘッドホンから流れる音楽だけを聞いていた。
聞いているのはかの有名な風鳴翼の曲であるものの、その目には光がなく、ただただ惰性で聞いてるようなものだった。
が、しかして燃費が悪い体はエネルギーを求めてしまい、キューというお腹の音が静かに鳴った。
「…………ご飯、食べなきゃ」
聞き飽きた音源にため息を漏らしつつベッドから体を起こした彼女は、ノロノロとした足取りで机に向かうと、長く鬱陶しい黒髪を後ろにゴムで束ねる。
オニキスのような黒い瞳は鏡に映る、首もとにできた♯型の古傷を忌々しく見つめると、親友の形見だった紅い水晶がついたペンダントを首にかける。
「……行ってきます、
そしてもう何年も前に撮ったかけがえのない親友の写真に挨拶をして、彼女は部屋から出ていくのだった。
朝食を食べ終え、私服のパーカーにジーンズという、同年代の女子からしたら、ファッションに喧嘩を売ってるのではと問われかねない格好で外に出た私は、何時ものように鞄を自転車の籠に突っ込むとゆっくりと漕ぎ始める。
「…………」
人気のない道を通り、たどり着いた目的地は山の中の自然公園だった。
慣れた手つきで自転車を駐輪スペースに停め、鞄を持つと公園内のテーブルがあるスペースへと向かい、そこに座る。
取り出したのはノートとボールペン、そして目を瞑ると……
「――高い蒼穹から 堕ちた闇に光を視た
眩しすぎて 私の闇を照らしたの」
胸の中に浮かび上がったそれを口ずさみに、忘れないうちにノートへ書き綴る。
作詞……とは呼べないお粗末なものだけど、これをしてる間だけが私の大切な安らぎだ。
「――
「――何時からだろう 優しさの奥に闇を視たのは
――疑い尽くして 光を求め続けて
――何度求めても 解は出ずさ迷って
――鎮魂の
何時になく気持ち良く、そして調子良く歌っていたその時だった。
「っ!?」
聞き覚えのありすぎるけたたましいサイレンに驚くが、すぐに私はノートとボールペンを鞄にしまって自転車のもとへ駆け抜け、瞬く間にそれに股がった。
「(聞こえた方向からして此方には向かってきてないから大丈夫だとは思うけど)」
万が一何て言葉は聞きあきるほどに聞き飽きた。けどその危機感は私には忘れてはいけない大切なもの。だが、
「ッ!?」
得てしてそれは裏切られ、私の事を追うようにそれは……特異指定災害ノイズは現れたのだった。
私は必死に逃げた。あの日と同じように、助かるために、生きるために必死で、しかしそれを嘲笑うかのように奴は目の前からも現れる。
「!?」
慌てて自転車から飛び降り斜面の方へ走ろうとするが、それよりも早く囲まれてしまった。
「……ハハハ」
渇いた笑みしか出てこない。それぐらいに追い詰められ、同時に自分の最後を悟ってしまった。
「……今からそっちに行けるかな、永久」
そんなことを思って、彼女から貰った形見を右手で握りしめたその時。
――生きるのを諦めちゃダメだよ、加古ちゃん
「――
胸に溢れた旋律を口ずさんだその瞬間、私の永遠はもしかしたら変わったのかもしれない。
黒と白の鎧に短い黒い光を放つ剣を振るいながら、そんな事を思い浮かべるのだった。
オリジナル楽曲
『解剣・フラガラッハ』
作詞 ドロイデン
高い蒼穹から 堕ちた闇に光を視た
眩しすぎて 私の闇を照らしたの
相克する大地の先に 光は影を膿む
飲み込まれそうで 藻掻き溺れ酔う
失って喪って もう何も無いなら
自らを喪っても何も怖くない
何時からだろう 優しさの奥に闇を視たのは
疑い尽くして 光を求め続けて
何度求めても 解は出ずさ迷って
鎮魂の
完成度が低いのは突っ込まないで下さいお願いします。