そんなこんなで本編をどうぞ
色々あった数日前、ノイズをぶっとばしたり翼さんとデュエットを組むことになった私だが、正直言ってしまえば
「やっぱり歌詞がなぁ……」
当然というように難航していた。正直な話、和をイメージする翼さんと、ダークロック系の私だとどうしても悪い方に引っ張られるというか、簡単に言えば喧嘩するわけで。
「うーん、せめて方向性さえ決まればなー」
「方向性か?」
と、後ろから聞こえてきた声に振り返ってみれば、かの歌姫様ご本人がペットボトルのお茶を片手に部屋に入ってきたのだ。
さて、ここで何故翼さんが私の部屋に居るのかということなのだが、これは単純な話、あの敏腕マネージャーに翼さんの部屋の片隅を貸す代わりに、衣食住を世話してくれと頼まれたからである。
当初はなんでそんな面倒なことをと思ったが、その強盗でも押し入ったのかと思うくらいに散らかり放題荒れ放題のそれを見たことで納得した。せざるを得なかった。
なんでもそれまではマネージャーの緒川さんが、生活能力皆無の翼さんの代わりに掃除洗濯等をやって来たのだが、流石に女性の……それも幼い頃から知ってるとはいえ少女の下着を洗うのには若干の抵抗があったらしい。
「いきなり話しかけてこないでくださいよ……って言っても通じませんよね」
「む、流石に隙はうかがったぞ。どうにも煮詰まり噴煙をあげてるのでな」
「それはどうも……そっちは例の新人さんでしたっけ?その人と揉めてるのかなんとか」
「……干渉しないのでは無いのか?」
「しませんよ。しませんけどね、部屋の中まで抜き身の刀みたいにギラギラしてたら流石に気づきますよ」
それはもう妖刀の類いか何かと言うくらいに不機嫌さのオーラを出してたから、知らないわけがない。
「……御影とはまるで真逆の存在が、しかも奏が守った者が、奏の代わりをするなど、堪えられるものか」
「……つまり、その新人さんは奏さんが間際に助けた子で、その子がシンフォギア動かして、奏さんの代わりに~とかなんとか言って翼さんの逆さ鱗に触れるどころかひっぺがしたわけですね」
はっきり言ってなぜその新人がそこまで他人のことを思えるのか、私には不思議でしかならない。奏さんが救ったということは少なくともあのライブ会場に居たはずだ。
てことは当然、その新人も私と同じぐらいの凄惨な苛めを受けたはず、それでも他人を信じられるなんて、理解することすらできない。
「まぁそれは良いですけど、そろそろ着替えないとリディアンに遅れますよ」
「案ずるな、私は普段はバイク通学だ」
「リディアンってバイク有りなんですね。どうでも良いですけど、駐輪場の一角丸々バイクで埋め尽くすバイク好きも女子高生では珍しいですよ」
「そ、そんなに買い集めてなんて居ないわ!!たったの5台だけよ」
慌てて返してるが、普通の一般人からしたら一人でバイクを5台も所有してたら、それも女子高生となれば十分に珍しい。
「そんなことはどうでもいいんで、さっさと当て付けのようにリディアンに行ってください。私はたった半日で地獄と化した部屋の整理をしなきゃいけないので」
「地獄ではない……まだ煉獄と言って」
「大差ないです」
そのバッサリと切り捨てた一言に、歌姫にして防人の剣はパッキリと中折れして崩れ落ちたのは言うまでもない。
「果てに尽きた音は天に消え……違う、こんな歌いだしは翼さんぽくない、ボツ」
静かになった一室で、私は書いて紡いでみたそれを口ずさむが、どうにも何かが私の心音からずれる。
「片翼だけでもと飛ぼうと嘆き、失ったものをともがく……これは歌いだしよりBメロ向きかな、ボツ」
歌は掴みとサビが肝心だという私なりの……というか大体の事だ。特に翼さんが歌い始めなら尚更。
「あー、だめだ。空回りしすぎて鳶に軽々持ってかれる」
こうなったらもう何も良いものが出てこない。経験則から間違いなく出てこない。
さてどうしたものかと思い部屋の中を歩いてみる。今日も翼さんは向こうの活動があるから遅くなると聞いてる。となれば、
「……少し早いけど昼御飯にしますか」
冷蔵庫に立って開けてみると、なんというかそれなりに食材は揃っていて、寧ろ珍しい野菜とか切り身も入っててびっくりした。
「確か緒川さんは自由に使っていいとは言ってたし……何を作るべきか」
少しだけ悩んだが、普段の自分なら買えない高級魚を使ってアクアパッツァ擬きを作ることに決めて、せっせと圧力鍋(自宅から持ってきた愛用)を取り出す。
「やっぱり圧力鍋は万能、煮込み料理が簡単時短で作れるし」
ついでにとばかりに翼さんの夜食用も作っておくことにした私は材料をそれはもう適当に入れて蓋をし、圧力鍋を火にかける。
「30分も似れば大丈夫かな」
できたアクアパッツァは、夜に戻ってきた翼さんがキャラ崩壊になるほど、とても美味だったとここに明記しておく。
「さて、作詞の続き……」
片付けを終えてテーブルに戻った私はノートを再び開き目を閉じる。
「いつか聞いた 誓いの空へ
キーワードは『翼』、そして『影』。この二つを主軸に歌詞を書いていく。
「虚空の闇へ もがれ尽きた
互いの心を 奏ることもうない」
Bメロは闇への抗い、Aメロの追想を引き立てるようにして――
「喪うことに慣れて磨り減った 私と君は何を目指す
それでもと噛みしめ 抗うのなら
この
ここからはサビ、一気に駆け抜けるように――
「
あと少し もう少し その一瞬の輝きを
もう喪わないと 胸に抱く誇りを いま
黄昏へと穿ち貫け」
一先ず歌詞の1番になる部分を歌いながら書き出してみるが、これがどうして中々の出来映えだった。あくまで自分一人で歌うならの話だが。
「二人で歌うとなると微妙……」
特に相手は風鳴翼その人、歌姫に歌わせるとなると少し厳しい気がする。全然しまくる。
「うーん、けどボツにするのもそれはそれで勿体無い……」
かといってこれを作曲、編曲して動画サイトに上げるのも惜しい。
そう思って私は携帯を取り出し、登録されている彼女のマネージャーのアドレスに歌詞を添付し送信、さらに番号に電話をかけ、確認だけしてもらう。
『こちらで確認させてもらいましたが、これで微妙なんですか?』
「少なくとも、私個人としてはこのレベルじゃ翼さんに歌わせるレベルの歌詞じゃないって感じてまして」
『なるほど……一応これを一旦お預かりしてもよろしいですか』
その一言に私は嫌な予感がした。
「どうするつもりですか?」
『自分はマネージャーですが、流石に作詞については門外漢なので、翼さんの曲をいつも頼んでる作詞家と作曲家の人達に見てもらって、さらにサンプル音源をつけようかと思いまして』
「いやそれかなりお金かかりますよね!!大丈夫なんですかそんなことして!?」
プロへ依頼となればそれなりに高額な金額が行き来する、正直こんなことで使わせるのもどうかと思ったが
『依頼して数日でこのレベルなら十分に良い出来だと思いますよ。これなら音を付けても充分に満足できる域に出来るかという判断をするため、一度音をつけてやってみるのが一番だと考えました』
「……わかりました、プロの判断なんだったらそこはお任せします」
ただ、と私は呟き
「このレベルで満足するような出来にはしたくないんで、他の詞も書いてみます」
『……そうですか、ではそちらも出来ましたらメールをお願いします』
それだけ言ってマネージャーは電話を切った。
「……クオリティ上げないと」
今のままで満足できない、私は良くても翼さんの今までの歌を越えるような歌じゃないと、その気持ちで私はノートを開く。
まさしく狂ったように書き連ねる詞の文は止まることを知らず、結果深夜近くに帰ってきた翼さんに無理矢理止められるまで書き続けたのだった。
『黄昏の翼』
作詞 ドロイデン
歌 御影加古、風鳴翼
いつか聞いた 誓いの空へ
虚空の闇へ もがれ尽きた
互いの心を 奏ることもうない
喪うことに慣れて磨り減った
私と君は何を目指す
それでもと噛みしめ 抗うのなら
この
あと少し もう少し その一瞬の輝きを
もう喪わないと 胸に抱く誇りを
いま 黄昏へと穿ち貫け
追いかけ綴った 彼方の空虚
零れ潰えた 蜃気楼
握れぬ手と手を恨むなかで
置いてきた闇に呑まれ
だとしてもと食い縛る
この
荒野を走りぬいて 蒼隼は彼方へと
あと一つ もう一つ 積み重ねてく
もう手放さない 胸の夢の欠片ごと
いま 黄昏を斬り拓く
あと少し もう少し その一瞬の輝きを
荒野を走りぬいて 蒼隼は彼方へと
あと一つ もう一つ 積み重ねてく
もう覚悟は決めた 胸に火照る魂ごと
いま 黄昏をここに示すんだ
私はここにいたのだと
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完全オリジナルの歌詞を作るのめっちゃ疲れた……これで批判殺到なら心折れる自信あります、はい。