梔永久は所謂転生者と呼ばれる存在だった。別に転生トラックやらなんやらをしたわけじゃなく、ただの不摂生……オタサーの姫とか言われてチヤホヤされていたらいつの間にかアル中になって死んだただの一般人だ。
別段その事に後悔もなにもないし、転生されてもただただラッキーとしか思わなかった。小学校入る直前に見たそのニュースを見るまでは。
ノイズという存在を知り、永久は狂気を感じた。なぜ自分なのか、なぜモブに優しくないとまで言われるほどの死亡リスクの高いシンフォギアという世界に産まれたのか。
しかもご丁寧に生まれたときから持っていたペンダント……シンフォギアのペンダントという存在を持たされた私はふざけるなと嘆いた。なぜ自分があんなバケモノと戦うことになるのだと。
確かに死ぬ前は歌手を目指して頑張った、だからってこんな戦場の最前線で歌って戦う度胸なんて私にはない。
悩み悩み悩み抜いて、私はとある結論に至った。そうだ、
そこからは早かった。なんとなくで選んだ少女……御影加古と友人になった私は親友と呼べるくらいに遊んで、歌って、仲を深めた。ただ自分の代わりにシンフォギアを纏って戦って欲しいがために。
けど、どうしてか時々自分の心が痛くなる感じがした。これは自分の利己的な為の行動だというのに、なぜ感傷的になる必要があるのか、と。
そんなとき、加古とパルクールの練習(仮に目論見が果たせなかったとしてもの護身目的)の時、何の気なしに作詞してと頼んだその日、加古がリディアンに入ると知ったその時、私は大声で叫びたかった。
行くな、死ぬつもりか、別のところがあるだろ、と。そこで私は気付いたんだ。私のなかで、加古がどれだけ大事な存在になっていたのかを。
心のそこから大切な親友で、私が失いたくない大事なものだと、今さらになって気付いた。
だから私は残したかった。私が側に居たという証を残すために、動画投稿サイトに自分達の曲をあげることで、自分という存在を忘れ去られないように、加古という存在が忘れ去られないように。
けど、それでも無理だった。あのライブの日、私は自分のギアを纏って動けるくらいには努力した、だから加古を守るぐらいどうとでもなるって。
そう油断して、実際に逃げて、けど加古を下敷く天井の崩落を私は庇うことしかできなかった。
ギアを纏う聖詠すら歌えず、体の下半分を押し潰され、けど、それでも、大切な親友を守れた。それだけで充分だった。あぁ、こんなにも心が満たされたのはいつ以来だろう、と。
だから、私は生き延びた加古に私の全て足り得るペンダントを渡した。少しでも加古がこの先生き延びれるように、そう思って渡したそのギアを持つ親友の顔を覚えれずに私の意識は儚く消えた。
筈だった。
なぜ、どうして、そんな疑問は長く続かず、ワタシは加古が受けた地獄を共に見た。
いじめなんて生ぬるい、そう呼べるほどの惨状を加古は一人で耐えた。幸い中三の時だからそこまで長く続かなかったけど、それでも、加古がリディアン進学を諦めるほどの地獄と呼べるには間違いなく凄惨だった。
加古のお父さんたちも自殺して、本当に一人ぼっちで生活してる永久を見て、それでもワタシは安堵していた。これならシンフォギア装者や突起物の連中と関わることはない、そう安堵してた。
時は経って、加古がいつもの場所、ワタシたちの思いでの展望台で何時ものように作詞をしていたときだった。
鳴ったのだ、あの恐怖のサイレンが、ノイズ襲撃のその知らせが。
いや、知らせだけじゃない、加古の目の前に群れをなして現れたその存在に、加古は逃げた。逃げて逃げて、けど、追い詰められて諦めた。
だからワタシは、聞こえないと思いながらも叫んだのだ
「生きるのを諦めちゃダメだよ、加古ちゃん!!」
次の瞬間、弾かれるようにワタシの視界が真っ白になると同時に、ワタシが忘れていた重みのようなものを感じた。
まさかと思い見たのはノイズと、自分の意思で動かせる腕。間違えるわけがない、今の私は加古の体を操っているのだ、と。
「……キヒヒ」
嗤うしかなかった。無意味に、無価値に、本来なら存在すらしなかった
「さぁ、殺戮の時間だ、雑音風情が!!」
取り出したアームドギアたる大剣を振るい、目の前の雑魚ノイズを吹き飛ばす。
後悔はある、けど、その全てがこの一瞬のためならば、ワタシはその全てを受け止める。
「無価値と決めた 誰かのため
ワタシの全てを 賭けて守ろう」
自然と漏れ出る魂の歌に、沸き上がる力はまるで二人分、ワタシと加古の二人の二重奏はまさしく一人で歌った時よりも強くフォニックゲインを高める。
「君が怒るというなら ワタシはそれを包もう
そのために ワタシは今再び ここに立つと決めたのだから」
腕に持った大剣をぶん投げ、ブーメランのように斬り飛ばす。
―ƎᗡU⅃ЯƎTИI・oƚ・ИЯUTƎЯ―
戻ってきた大剣を掴むと、私は背中に意識を集中させ、刃によって翼を作り、軽く飛び上がる。
「幾らの詞を生み出でようとも
君の歌を 聞けぬのなら
全て 意味がないのだ」
そして大剣を握り直し、産み出したバーニアを吹かして真下へ急降下――
「だからここに誓おう」
勢い諸とも地面に刃を突き立て、産み出された衝撃波を残るノイズの全てへ叩き込む。
「貴女を守る刃となると 永久に」
―ƎᗡU⅃ЯƎTИI・oƚ・TƆAꟼMI―
「キヒヒ、これで加古は大丈夫だよね」
戦い終わって、アームドギアを解除した私は揺れる木々にそう呟く。
「大丈夫だよ、加古。ワタシが加古を守るから、もう加古を誰にも傷つけさせないから」
だから
「加古の歌を、安心して歌って聞ける世界にワタシがするんだ。まぁ、ワタシが楽しみながらだから、もしかしたら時間は掛かるけど」
一度死んだ
「これからもよろしくね、加古ちゃん」
神剣・フラガラック
作詞 ドロイデン
歌 梔永久、御影加古
無価値と決めた 誰かのため
ワタシの全てを 賭けて守ろう
もういない ワタシだからこそ
君の過去を 照らす光でありたい
君が怒るというなら ワタシはそれを包もう
そのために ワタシは今再び
ここに立つと決めたのだから
幾らの詞を生み出でようとも
君の歌を 聞けぬのなら
全て 意味がないのだ
過去に縛られ 未来を閉ざした
復讐だとしても
君が望むなら それでいい
だからここに誓おう
貴女を守る刃となると 永久に
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正直二番までは思い付きませんでした。
なおフラガラックの本来の特性……つまり永久が生身で使う場合は『超高速演算』(本編二話のジャミングはこれの副産物)ですが、本編以降ではこれに『