中央歴1634年 四月三日 スイウン王国 首都 ミナト市内
「何処か見た事ある様な街並みですね...」
「まさかロンドンに似た都市だったなんてね。走っている車はT 型フォードそっくりだけど。」
スイウン王国側が用意したという車を断って、艦上輸送機にて空輸された高級車で王宮に向かう最中であるフラーシアと外交官アミルは、車窓に映る光景に驚きを顕にしていた。過去に何度かロンドンに訪れていたフラーシアは、その光景を過去の記憶と照らし合わせ、少なくとも地球と同系統の科学技術よってこの国は成り立っているのだと考えていた。小脇には急遽作成された国王の親書の入った革張りのアタッシュケースが抱えられている。
「怯えの目が強くないですか?」
「まあ、有るでしょうね。百五十年以上前の前弩級戦艦は二百メートルに達しないし、ましてや『デュケーヌ』は三百メートル以上の大きさになるもの。砲艦外交もいい所よ。と...着いたようね。」
停車した車から降りた二人を、記者達が遠巻きに囲む。気にせずに衛兵について行くと、バッキンガム宮殿によく似た宮殿の前に着いた。二人は襟筋を正し、祖国の行く末を決める大事な交渉に臨むのだった。
_________
同日 スイウン王国 海軍省 会議室内
会議室に集まった海軍省高官達の前で、海軍大臣であるデルカッセが切り出す。
「皆も知っての通り、今回の会議の議題は現在ミナト沖に停泊中の不明国海軍艦隊についてだ。情報共有と、意見の交換を兼ねてな。」
すると、参謀の一人が立ち上がる。
「情報参謀のラザール中佐であります。ここで一つ、情報参謀としてよろしいでしょうか。」
デルカッセが促すと、中佐は資料を取り出す。
「口頭での説明になってしまいますが、何分準備をする時間が限られていたもので、ご了承頂きたい...先程第十一戦隊より入った情報ですが、彼の艦隊はフランスカ王国海軍の所属で、外交使節を送り届ける任務に着いていたとのことです。」
「フランスカ王国?聞いたことないな。」
海軍副大臣が問い掛ける。
「外交使節を運ぶのだけに戦艦を使うなんて、相当な覇権国家だな。野蛮な新興国だろう。」
第一艦隊長官がそれに続く。
「しかし閣下らもご覧になられたでしょう、あの巨大な戦艦を。目測ですが、全長は凡そ三百メートル、全金属製で、主砲は恐らく大口径四十センチ回転砲塔。おまけに航空機を多数搭載しているかと...。」
会議室が沈黙で静まり返る。
「...情報参謀。うちの主力をぶつけて勝つことは可能なのかね。」
「ハッキリと言います。無理です。第一艦隊の最新鋭艦レプュブリク級ですら、三十センチ砲を八門です。大してあちらは四十センチ六門。門数はこちらの方が多いですが、砲戦となったら遠距離から一方的に撃破されます。」
「纏まった数があればどうかね、それこそ、一個艦隊とか。」
海軍省次官の言葉に、中佐は反論する。
「お言葉ですが、あれを建造するのに幾ら掛かったお思いです?あれを二隻建造するのに前級のシュフラン級戦艦を三隻は建造できますよ。一個艦隊なんて、余りに非現実的です。ましてやそれを使い潰す前提など...」
「そうは言ってもだな、もし彼の国が覇権国家だった場合、我々はその相手をする必要がある。そうなってきた場合、選択肢の一つとしてはあるだろう?」
すると、白熱し始めた議論に大臣が釘を刺す。
「まて、まて。まだ敵対するとは決まった訳ではないだろう。国王陛下が現在、自ら外交使節の対応に当たっているのだ。その結果を見てから決めようではないかね。うん?」
「は、お見苦しいところをお見せしました。」
そんな中、会議室に一報が入る。
「会議中失礼します!外交使節との交渉が終了したとの連絡が...」
「おお...」
「結果は?どうだったんだ?」
「はい、フランスカ王国外交使節団全権大使、フラーシア・フランスカ大使と国王陛下の名の下で、友好的な関係を築き、官民の交流を深めて行く...と。」
_________
同日 スイウン王国 ミナト沖上空 輸送ヘリ機内
「あー終わったぁ......」
「これでひとまずと言ったところですかね。」
『デュケーヌ』へと向う汎用輸送ヘリの機内で、ヘッドセットを着けたフラーシアは安堵の声を上げた。交渉が無事終わったからである。
「何とか経済を維持する為とはいえこんな急な話よく、承諾してくれましたね。」
今回の交渉内容は、転移の説明や、王国を維持するために必要な物資の調達協力、海外との貿易が消滅したことによる経済の崩壊を防ぐ為の通商交易の実施の提案など、多岐に渡る。しかし、スイウン王国の国王はこれを快く承諾し、更に外交使節の派遣も検討してくれるとの事で、交渉は一応成功を収めたのである。
「そもそも言葉が通じるかどうかも分からなかったのに、なんでこんなプランが用意されているのよ。」
「御父上...国王陛下の命で、ありとあらゆる事態に対応出来るようにと...ここだけの話、武力の行使もオプションとしてあったみたいですね。」
「我々を侵略者にさせるつもりなのかしら...」
外務省から派遣されたアミルの語る父が考案した幅広い事態に対応している外交計画を聞かされると、自然と父に対しての尊敬の念が生じるものの、フラーシアはそれを押さえ込んだ。それは王室に自分を閉じ込めようとした父に対しての反抗であったが、彼女の為を思っての事だと分かっていたので余計に心が複雑になって行くのである。
「まあでも、あー、うん。さすが国王陛下。」
「え、そんな他人みたいに...」
「うるさいわね、いいでしょ、全く。」
「えぇ ......」
新進気鋭の若手外交官アミルは機嫌を曲げた王女陛下に対して、ただ困り果てることしか出来ないのであった。
途中すっ飛ばしたけど、多少はね?
こ、交渉なんてかけるわけないんだよなぁ。期間が空いたのも、全く描写が出来なくて、何度も書き直したとかじゃないから(震え声)