最近寒すぎじゃありませんかね…
体の芯まで冷えて死にそうです。でも、SS投稿は辞めません。ということで、第5話の投稿です!
どうぞ最後まで読んでいってください!
僕はこれまでに体験したことのない恐怖に怯えていた。
全てはあの人が来てから始まった。
「球磨型軽巡洋艦4番艦 大井よ。」
「よろしくお願いします!!大井さん!」
「よろしく。あなたは吹雪さんね。」
「はい!」
「あっ…あの、よ、よろしく…お願いします…。」
「ん?あぁ、あなたがこの鎮守府の提督ね。よろしく。」
僕はその大井という艦娘と握手を交わした。なんでも、大井さんは凄く強いらしく、握手できて光栄だった。
次の日、僕は早速艦隊に大井さんを編成し、出撃させることにした。
作戦はこうだ。
まず、駆逐艦の皆さんの攻撃で相手を牽制、出てきた敵を交代した軽巡、重巡のグループで叩くという作戦だった。
「それでは作戦開始してください!」
僕は無線で旗艦の神通さんに告げる。
「了解しました!行きますよ!?皆さん!!」
「「「はいっ!」」」
みんなの気合いは十分、そして作戦は開始された。
「それでは駆逐艦のみんな、砲撃開始ッ!!」
神通さんの声に合わせて駆逐艦の牽制砲撃が始まる。
それを受けた敵艦隊は戦闘陣形を組んでこちらに向かってきた。
「艦隊、陣を組んで!!巡洋艦は砲撃用意!!」
砲塔の照準が敵に近づくにつれ、緊張が高まる。
「撃てぇぇぇぇっ!!」
神通さんの掛け声の語尾を潰して大きな轟音とともに砲弾が発射された。
放たれた砲弾は、見事敵に命中、敵は大爆発を起こして水底に消えた。
「ふぅ、良かったぁ〜。それじゃあ皆さん、帰投してください。」
僕は安堵し、艦隊に帰投命令を出す。
「了解しました。皆さん、戻りますよ。」
神通さんがそう言った、その時だった。
「まだ終わってなんかないわよ!?」
大井さんが叫んだ。さっきの砲撃戦で生き残った敵がいることを僕は確認せずに帰投命令を出したがために、敵に体制を立て直す時間を与えてしまった。
直後に皆は大井さんの方を向き直るが、もちろん敵はその方向にはいない。敵は反応の遅れが顕著に現れた駆逐艦 五月雨を狙う。
「艦隊、戦闘態s…」
神通さんが言い終わる前に轟音がそれを遮る。それは味方のものではなく、紛れもない敵のものだった。
その砲弾は五月雨さんめがけて一直線に進んでいく。
「…ッ!!冗談じゃないわ!!」
大きな爆発、耳を劈く轟音、光を遮る黒い爆煙、そこから現れたのは五月雨さんではなく、ボロボロになった大井さんだった。
「海の藻屑となりなさいッ!!」
大井さんはお返しと言わんばかりに敵に砲撃する。
その砲弾はまるで吸い込まれるかのように敵に向かって行き、回避運動をしていた敵に命中し、大爆発を起こした。
この一瞬の出来事を目の当たりにしたその場にいた艦娘や、鎮守府からモニターでチェックしていた僕は言葉が出ずに立ち尽くした。
「何ぼーっとしてんのよ。早く帰るわよ。」
「あ…は、はい!」
神通さんは大井さんの言葉で正気に戻る。
艦隊が鎮守府に向けて進み出す中、五月雨さんは大井さんに感謝の言葉を贈った。
「あ、あの!先程は助けていただき、ありがとうございます!!」
「いえ、私にできることをしたまでよ。それと、次からは気をつけなさいね。自分の命は自分で守りなさい。」
「はいっ!!」
「よ、良かった…」
僕は情けないが、心からほっとした。元を辿れば僕のミスだから、尚更ヒヤヒヤしたのだ。
「後で大井さんにはお礼を言わないと…。」
およそ10分後、艦隊が帰投した。
報告書は神通さんが持ってくるはずなので、僕は今日の状況を詳しく聞こうと考えていた。
軽快なドアのノック音とともに現れたのは神通さん
ではなく、大井さんだった。
「なっ、なんで…大井…さんが?」
「単なる気分です。あとこれ、今日の報告書です。」
ボロボロの大井さんは淡々と僕に報告書を出した。
僕は少し呆気に取られていたが、お礼を言うことを思い出し、軽く息を整える。
「あっ…あの。」
「なんですか?」
「きょ、今日は、仲間をま、守ってくれて、その…ありがとうございます!!」
僕は深々と頭を下げ、大井さんに礼を言った。
「あれは私があの時できることをやったまでです。」
「ほ、本当にありg」
「しかしまぁ困ったものね。」
僕が2度目のお礼を遮って、大井さんは口を開く。
「え…?」
「だってそうでしょう?敵の有無の確認すらせずに帰投命令を提督自ら出すんだもの。」
大井さんは僕のミスを指摘した。もちろん僕はそれに反論も批判もしない。
「そ、それについては…僕の、ミスです…。すみません…でした。」
「ミス?あんた、『提督』を舐めてるの?」
突如、大井さんの口調が変わった。
「あんた、ここに来て一体どのくらい時間が経ったの?」
「ま、まもなく3週間…です。」
「3週間も経ってまだこんな基本じみたことも覚えられないのね。」
まさに正論だった。だけど、僕は悔しくて、心の中で大井さん言い返した。
提督を始めてまだ3週間しか経ってないんだぞ!?しょうがないじゃないか!そんなにすぐに覚えられるほど人間は便利に作られてないんだよ!?僕達を艦娘と一緒にするな!!
だか、この叫びは無残にも打ち砕かれることになる。
「まさか、あんた『まだ3週間しか経ってないからしょうがない』なんて考えてないでしょうね?」
「うっ!?」
完全に図星だった。まるで大井さんに僕の手の内が全てバレているような、そんな感覚だった。
「そんな甘ったれてる考え持ってると、すぐ殺されるわよ。」
悔しい。悔しいッ!!死ぬほど悔しかった。何故かって?今目の前にいるボロボロの女の人に正論でねじ伏せられているからだ。物言いが気に入らないけど、言ってることは正論だからだ。だから悔しいんだ。
「いい?ここは戦場よ。戦場に出て敵に「まだ3週間しか経ってないから許してくれ」なんて言って敵が見逃すとでも思っているの?」
「くっ…!!!!」
「あんたは艦娘という、『命』を預かっている立場なのよ?その立場の人間がこんなんじゃ下もついてくるはずがないわ。」
「す…すみ…ません。」
「あとあなた、コミュニケーション障害らしいわね。」
僕はハッとして大井さんを見る。「見る」とは言ったものの、今の僕の表情ならば、「睨む」の方が適しているのかもしれない。
「それもどうかした方がいいんじゃないの?まともに戦闘の指揮も取れない、ましてや部下ともろくにコミュニケーションも取れない人間にハッキリ言って提督というこの仕事は向かないわ。」
「…ッ!!」
「私から見て、いえ、客観的に見てあなた…提督に向いていないわよ?」
僕はその一言で目の前が真っ白になった。
「辞めるのなら今ここで……
あの後の記憶はよく覚えていない。
僕は気づくと、暗い執務室に独り、窓際の壁にもたれていた。
電気をつけると執務室はぐちゃぐちゃになっていた。
机やソファ、書類の整理された棚等、部屋中の何から何までひっくり返り、ひっくり返り、壁は凹み、壁にかけていた掛け軸は紐がちぎれてかけられなくなり、絨毯は所々が破れていた。
でも即座に分かった。これをやったのが、全て自分であると。
僕は気分を抑えるために、紅茶を飲むことにした。
お湯を沸かし、ティーバッグを入れたマグカップにお湯を注ぎ、茶葉が開いて、ティーバッグを捨て、湯気のたつ紅茶を口に近づけた刹那、あの言葉が頭をよぎる
『提督に向いていないわよ?』
「…ッ!!!!!!」
僕は気がつくと、紅茶を投げ捨てていた。マグカップは割れ、中身の紅茶が飛び散っていた。
僕は悔しかった。簡単に夢を否定されたことが。
僕は悔しかった。短所を治すための努力が報われなかったことが。
僕は悔しかった。大井さんの言っていることが正論だったから。
僕は悔しかった。
何より自分が欠点だらけの人間だということが。
静寂を破るドアのノック音。
入ってきたのは吹雪さんだった。
「失礼します!司令か…ってどうされたんですか!?こんなに散らかって!?司令官!?」
「……さい。」
「え…し、司令官?」
「今は独りにさせてください…。」
「で、でも執務室が…」
「今は独りにさせてくれッッッ!!!!!!!」
「は…はいッ!!」
吹雪さんは困惑と驚きが混じった表情で執務室を後にした。
あぁ。やってしまった。皆は何も悪くないのに…八つ当たりしてしまった。嫌な人間になってしまったなぁ…
僕は静かに扉の鍵を閉めると、電気を消した。
僕の表情が、窓に鏡のように反射して映った。
窓から差す月明かりに照らし出されたその表情は、
憎悪そのものだった。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます!
今回は大井さんが主人公に厳しくするお話でしたが、これを機に主人公には強くなってもらいたいと思っています!
ご意見・ご感想あれば送っていただけると嬉しいです!
本日もありがとうございました!