鎮守府怪事件ファイル   作:ビーグル

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仮名とする情報提供者から 一通の封書が届いた

中には今時珍しく フロッピーディスクが入っていた
使わなくなって久しい外付けFDドライブを 用具箱から引っ張り出す

まず依頼内容の確認のため 先に添えられた手紙に目を通すことにする
左手で人形を弄りながら 折りたたまれた便箋を広げた




─後日追記─
 この人形が いつ手元に有ったのか  今でも思い出せない



『人形』

 

 

(前略)

 

私の友人が営む鎮守府が、深海棲艦の大隊に強襲され壊滅しました。

 

(中略)

 

■■提督は上陸した深海棲艦に虐殺され、肉片を多少残すのみとなったのに対し

所属していたはずの艦娘は一切発見されませんでした。

 

当日の出撃記録は確認できていません。

つまり100を超す艦娘が鎮守府に待機していたのにもかかわらず提督が殺害されたのです。

戦闘や撤退の痕跡は無く、救難信号も他の鎮守府に逃れた者も居ないという状況です。

 

(中略)

 

全壊を免れた執務室にフロッピーディスクが残されていました。

中身はテキストファイルで、所属していた艦娘が記録した日誌です。

日付の表記が途切れているため詳細は不明ですが、襲撃前に書かれたものと思われます。

 

(後略)

 

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手紙を封筒に戻し フロッピーの中身を確認する

日誌と名付けられたテキストファイルと 無名の圧縮ファイルが格納されていた

 

ノートパソコンのタッチパネルを操作し 日誌のテキストファイルを開いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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【日誌.txt】

 

10月 15日

 

鎮守府の敷地内で人形を拾った。

正確には人形のような何かだ。

植え込みの中に 行き倒れるように転がっている所を

その辺りを掃除していて偶然見つけた。

 

 

頭部と思われる部分には何も描かれていない。

そもそも凹凸がない。

服のようなものは一切付けられておらず頭髪すらなかった。

 

作り手が不得手だったのか もしくはズボラだったのか。

手足の造形は決して賞賛を得るものではない。

人間と等しい感性により この形を辛うじて人体と見なしたに過ぎない。

 

つまり不細工な人形を拾った という事だ。

 

 

雨風に晒されて長いのか 表面の布地は黄ばんでおり

長期遠征で半月ぶりに帰港した時の僕らの肌より くすんで見えた。

意外なほど可愛い物好きの夕立でさえ 持ち帰るのを拒んだくらいだ。

 

どうして部屋に持ち帰ったのか。

日誌を書く時間に至っても尚 理由が思いつかなかった。

同居人が嫌がるから 明日は綺麗に洗ってあげることにしよう。

 

 

 

 

 

 

10月 16日

 

朝練、朝食を終え 午後の演習任務まで時間が空いた。

昨晩に机の引き出しに仕舞った人形の事を思い出し 外の水場で洗うことにした。

 

何人かの駆逐艦に尋ねられる度に「人形を洗ってるんだ」と説明する。

返答の内容もだが 僕が洗っているモノがとても人形に見えなかったのか

微妙な顔をして去っていくのを 四度くらい見送った。

雷は最後まで首をかしげたままだった。

 

 

半刻かけてようやく水が濁らなくなった。

改めてみても人形に見えない。

形の悪い山芋と言われても 反論できる自信がない。

 

 

部屋に戻ってから どうしたら見栄えが良くなるか考えてみた。

「顔でも描いてみたらいいんじゃない」 と白露が言ったので

油性マジックで目と口を描きこんだ。

 

こういう時にいつも思う事だけど 何で顔を描こうとすると

口が笑っているものになるんだろう。

 

 

 

 

 

10月 17日

 

特にない。

夜戦明けでキツイ。

運が良いのも 正直考え物だと思う。

 

 

 

 

 

10月 20日

 

昨日は一日中寝てしまっていた。

休む予定はなかったのに 起きることができなかった。

 

夜戦が続く海域の攻略

それだったら仕方ない と同じく夜戦で出番が多い夕立が笑っていた。

慰めてくれているらしいので 落ち込むのは止めにした。

 

 

だけど 珍しい。

熟睡していたくせに 夢を見ていた。

内容まで覚えていないのは本当に悔やまれる。

 

結局 ついさっきまで工廠で検査を受ける羽目になってしまった。

今日は早く寝よう。

 

 

 

 

10月 21日

 

朝食後 哨戒任務までの間に雷電姉妹がやってきた。

5日前に人形を洗っている所を見て 何か着られる物がないか探していたらしい。

発案者は暁だったらしいが 自分は遠慮して二人に託したと言う。

 

2人が持ってきたのは人形サイズに拵えられた白露型の制服だった。

(しかも改二!)

 

本当に良くできていた。

布地こそ有り合わせの物と判るものの 襟やリボン等がきちんと色分けされている

まさに珠玉の一品だ。

 

山芋の妖精も これでようやく艦娘と成ることができる。

演習から帰ってきた春雨に見せてみたが もの凄い微妙な顔をされた。

この人形を春雨と名付けよう。

 

 

 

 

 

10月 23日

 

(※この文を書いているのは10/24)

10/22に何があったのか思い出せない。

何か原因があって日記を書いていないと思うけど その何かが判らない。

夕立や白露に聞いても 良く判らない反応をする。

 

10/23は事故が有った。

工廠で装備換装中に砲弾が暴発して 春雨の右足が吹き飛ばされた。

すぐに入渠した事で後遺症も無かったらしい。

不具合の有った装備はすぐに廃棄された。

 

2日間は部屋で安静にするよう指令を受けた。

気晴らしになるかと思って人形を持っていったら めちゃくちゃ嫌がられた。

雷が新たに持ってきた人形用のベレー帽も しばらく外しておいた方が良いかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10月 29日

 

わからない 何でこうなったのか。

死因は焼死と判っているのに その原因は何なのか。

 

やっぱり村雨の言っていた事が本当なのか。

春雨があの人形を燃やしてしまったのが いけなかったと。

そんな事あるのか。

 

白露の言う通り この事は4人だけで秘密にした方が良さそうだ。

 

 

 

(追)

 人形が焼け残っていた

 人目に触れると厄介  回収した

 

 

 

 

 

10月 30日

 

ちょうど長距離遠征に出る白露に 人形を捨ててくるようお願いした。

夕立も村雨も 春雨の事があってから人形を触ろうともしない。

白露も嫌だったはずだけど 笑って引き受けてくれた。

こういう所は一番艦なんだって 改めて思う。

 

帰ってくるのは3日後になるだろうから

何か間宮さんでお菓子でも買っておこう。

 

 

 

 

(追)

 人形が 机の中に入ってた

 

 

 

 

 

 

 

 

11月 3日

 

何でこんなことになった。

何であの人形は 捨てられない。

 

 

11/2に白露が帰ってきてから あの人形を見せた。

白露は珍しく怒った。「悪ふざけはやめて」と。

 

白露は間違いなく 遠征の際中に人形を捨てたという。

わざわざ持ち込んだロープで 頑丈な岩に縛り付けて沈め

浮いてこない事を確認までしたらしい。

 

 

焼け焦げて 元の芋のような外見に戻った人形は

まるで煤が洗い流されたかのように 黒い部分が減っていた。

 

自分で戻ってきた?

白露が捨ててから数時間も経たず 艦娘よりも速く?

 

 

 

もう見るのも嫌になった。

明日 砲撃訓練でバラバラにしてしまおう。

 

 

 

 

 

 

11月 4日

 

人形の呪いは本物だった。

これの使い道を考えた村雨は天才だ。

 

 

「せっかく壊すんだったら 深海棲艦のつもりでやった方が良い」と

夕立が言ったので 油性ペンで顔を描き足した。

 

人型と言えば色々いるけど 黒で描きやすいのはル級だ。

中分けの黒髪 短めの袖 黒いパンツスタイル。

出来上がりが上々だったらしく 白露は大笑いしていた。

 

要らないドラム缶に括り付けて 演習場に流し

夕立と僕の砲撃訓練を開始した。

結局3発目には直撃弾を受け ドラム缶は粉々になった。

 

人形は左半分が弾け飛んだだけで残った

「こういう所(しぶとい意味?)まで似なくても良いっぽい」

夕立が珍しく悪態をついていた。

 

 

 

 

 

それからだった。

左半身が欠如したル級が出現し始めたのは。

 

 

海上に浮上した時点で既に半身だったからなのか

まるで片足が故障した カエルのおもちゃのようにグルグルと旋回していた。

 

会敵した艦隊は 最初は敵の罠だと思い あえて攻撃も接近もせずに放置していた

その内 雷撃も砲撃も回避する素振りを見せない(むしろ回避できない)と判ると

まるで演習場の的当てのように ただ砲弾と魚雷を撃ち込まれるだけの”人形”と化した。

 

 

(追)

 エリート・フラグシップの区別も関係なく 欠損が確認された

 

 

 

 

 

ル級の形状異常については調査が行われている。

白露以下 4人はその理由を何となく判っていたが 確証を得るまで話さないと決めた。

これが上手くいけば春雨の犠牲も報われる。

 

 

 

 

(※人形の効果を記すため 今後は日誌ではなく経過報告を書き込む↓)

 

 

 

半分になった人形を 次はレ級に似せてみた。

さらに残っていた腕と脚を切り落とした。

予想通りなら 頭と胴体だけのレ級が出てくるはず。

 

 

予想通りと予想外のことがあった。

レ級は右半分の頭部・胴体だけで出現するようになったが

尻尾の艤装が無傷だったのは予想外だった。

 

加えて ル級が元に戻った。これも予想外だった。

この人形の状態は 似せた相手だけに影響するようだ。

 

 

 

ここまでの経過報告を以て 提督に知らせよう。

 

 

(追)

 村雨が最高の思い付きをした

 人形を元に戻して ”深海棲艦”と書き込んだらどうか

 

 上手くいけばスゴイ! 一網打尽も夢じゃない!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 (以下 空白のみ)

 

 

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圧縮ファイルにウィルスチェックをかけて フォルダを開く

中にはテキストファイルが入っていた

特に名前は付けられていない

 

 

何も考えず タッチパネルをタップする

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─後日追記─

 

 見なければよかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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【新しいテキスト ドキュメント.txt】

 

 

 

 

 

 

 

 

人形をさわるな 人形をさわるな 人形をさわるな 人形をさわるな 人形をさわるな

人形をさわるな 人形をさわるな 人形をさわるな 人形をさわるな 人形をさわるな

人形をみるな 人形をもつな 人形をかざるな 人形をやくな 人形をすてるな

人形をさくな 人形をきるな 人形をつぶすな 人形をこわすな 人形をころすな

人形を 人形を 人形を 人形を 人形を 人形を 人形を 人形を 人形を 人形を

人形を 人形を 人形を 人形人形人形人刑人刑人刑人刑タヒ刑タヒ刑死刑死刑死刑死刑死刑

死■■■

 

 

 (以下 1000行分の死刑が続く)

 

 

 

 

 

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左手にあった人形は 消えていた

 

 

 

 

 






【鎮守府近海で回収されたボイスデータ】


わかん■い どうし■ な■■!
みんなが■■■いせいかんに なっちゃ■■よ!

■やよ! あ■■のになるのは ぜっ■■にいや!
ねえ ■■う いっ■■に■のう ぎょらいな■■■■ら

■■! きづかれた! は■く はやく■ろして! はやく!はやく! ころ■■──


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