麻帆良の臨時職員 作:うぇるかむ
桜の花びらがひらひらと風に乗って空へと舞い散る。それはまるで新しい出会いと別れを象徴するように、春という季節を感じさせてくれるようだ。
学生にとって春という季節はまさに出会いと別れの青春真っ只中なイベントだ。
卒業式で親しくしていた友人や世話になった先生に涙を流し、別れを惜しみながら新たな場所に旅立つ。
あるいは、不安と期待に胸を弾ませながらこれからの生活を共にする友人との出会いや、もしかしたら学生らしく恋人との出会いなんてものを想像するのだろう。
何が言いたいかといえば、春とはなんと希望や暖かさに満ち溢れた季節なのだろうか。
そして、物語の最初の舞台となるのはここ、私立麻帆良学園女子中等部の校舎裏にひっそりと佇んでいるボロ小屋からはじまるのだーーーー
ギィーと木が軋むような音を奏で、ゆっくりと扉が開いていく。扉から出てきたのは20代前半だろうか?若い男だった。顔は特段整っている訳では無いが不細工でもない。サラサラとした黒髪で髪の長さも普通。
身長は180cm程だろうか?普通の男性よりは高めに見える。服装は黒のパンツにネクタイをゆるーく締めた白のワイシャツにベージュのカーディガンを羽織った、もしかしたら高校生に見えなくもない?格好をしていた。
どこにでもいそうな普通の男と呼べる。
ーーーーただ1点特筆すべきところがあるとすれば、ニコニコとした人好きのする笑顔を浮かべていることだろうか。
男はゆっくりと伸びをし、校門の方に向かって歩いていく。清々しい程に晴れた空、暖かい陽気。それに加えて、今日から新年度がスタートするのだ。まだ学校が始まるには早い時間ではあるが、時折登校してくる学生は元気いっぱいに新しい生活に期待を膨らませた様子だ。
そんな学生を見ながら男はニコニコとした笑顔を浮かべーーー
「(ああー学生ってなんであんなキラキラしてんだろうなぁ……見てるこっちが疲れるてくるんだけど、もしや生気吸われてるんじゃね?
)」
こんな残念なことを考えていた。
この残念な男の名前は落葉悠、この物語の主人公となるのだが…
「(あーー帰ってお布団で休みたいんだけど。もう帰っていいよね?てかなんで俺が校門に立って挨拶せにゃならんのだ……臨時職員の仕事じゃねーだろ?普通にタカミチとかがやれっての。)」
そう考えている間も表情はニコニコと笑顔を浮かべている。が、内側と外側が見事に一致していないことに違和感しか覚えないだろう。これがこの男の平常運転というのだから驚きだ。
登校してくる学生達におはようと爽やかに挨拶をしながらも思考はなお続いていた。もっともさっきから思っていることは一つだ。
「(お布団が恋しぃよぉ……)」
お前はもう永眠してろよ。
さて、しばらく時間がたち登校してくる生徒が増えてきた。暖かい陽気にあてられ襲ってくる睡魔と戦いながら挨拶を続けていると、よく知った気配がこちらに近づいて来るのがわかった。
「やぁ、ゆうくん。今日も早くからご苦労さん。」
そう言いながら話しかけてきたのは眼鏡をかけたダンディーな雰囲気のおじさん、生徒達からはデスメガネとよばれ、2-A担任兼広域指導担当員。通称タカミチである。
「おはようございます、タカミチ。いえ、僕の仕事ですし(お前がやらねぇからな!)」
「なに、そう謙遜することはないよ。毎朝続けているのをみると頭が下がる思いさ。」
そう苦笑する。
実際にタカミチは毎朝かかさず、しかも必ず笑顔で挨拶している悠に感心しているのだった。
それに加えて教師の雑用なども任されているのだから余計に忙しいだろうに。
しかも今日からは特に忙しくなるはずなのだ。なぜなら…
「ゆうくんは今日から僕の受け持っていたクラスの副担任になるんだから、何か困ったことがあればいつでも言うんだよ。」
そう口にするタカミチ。
「副担任ですか…… 臨時職員の僕が副担任なんて大丈夫なんでしょうか?(何かあったらタカミチのせいにしよう!そうしよう!)」
そういって困った顔している悠。
だが、タカミチはそれほど心配していなかった。
「(ゆうくんは生徒達から評判はとてもいいからね。教えるのも上手だと生徒から聞いたことがあるし、心配することはないだろう。)」
そう。内面はともかく外面だけみれば好青年で学園では通っているのだ。
なぜなら小心者で周りの評価を気にしているから。これでスペックが並なら普通の人間らしい人間だったのだが、とある事情によりスペックは非常に高い。そのため内面に気づかれたことは1度もないのだった。
「そういえばタカミチ。僕のクラスの担任は結局のところ誰が任されるんです?理事長はお楽しみだと言うので僕は知らされていないのですが…(俺がサボれそうな有能な人間を希望!)」
「あぁ、それならもうすぐ来る予定なんだけどね。」
おかしいなと時計を確認するが待ち合わせの時間は過ぎている。
何かあったのだろうか?
「どんな方なんですか?(はよ教えてくれ)」
「(もう会うことになるだろうし軽く説明しておくのもいいか。)そうだね。真面目ですごくいい子なんだよ。僕は昔から交流があってね。」
「へぇ。それはなんだか期待ができそうですね(真面目系無能とかじゃなきゃOKよ?)」
「はは。でも彼はまだ10歳だからフォローしてあげて欲しいな」
「は?(は?)」
珍しく呆気に取られた顔をしている悠に笑いながらタカミチは続ける。
「ははは!君のそんな顔は久しぶりに見るね。サプライズは成功かな?」
「いやいや。待ってください。10歳?聞き間違いとかではなく?」
「もちろんだとも。10歳さ。」
「えぇー!!いや、労働基準法とかは!?」
「そこら辺は事情があってね…ほら修行だよ。魔法使いのね。」
あぁ…と少しだけ納得した。前に聞いたことがあったようななかったようなそんな朧気ではあるが、裏の話関連なら納得だ。
「(まてまて!10歳に仕事とか任せられないじゃん!と、ということは…俺またもや忙しくなるんじゃ)」
はい。そうですね。いそがしくなりますね。笑
「(のぉぉぉぉぉぉぉ!!!)」
そうしていると校門の方から少女2人に何やら小さな影が1人。
「(ま、まさか…)」
「タ、タカミチーー!!」
と、少年の声が。
「(ま、まじでガキだったぁぁぁぁ!?)」
現実から目を背けるのにも忙しくなる悠であった。
連載するかは考え中。