麻帆良の臨時職員 作:うぇるかむ
嬉しい
「(あぁどうしてあの空はあんなに青いのだろうか)」
現実逃避中の悠ではあったがその間にも時は流れていくのだった。
いやむしろこいつは痛い目にあって反省してるくらいの方がちょうどいいのかもしれない。
まぁ結局、調子に乗る→反省するを繰り返しているのだから目も当てられないマッチポンプである。
「紹介しよう悠くん、僕の友人で今日から先生になるネギ君だよ。」
「ど、どうも。ネギ・スプリングフィールドです!よ、よろしくお願いしますぅ!」
頼りなさげな挨拶をする10歳の少年を見て悠は確信にも似た予感を感じていた。
「(こ、こいつは絶対に俺にトラブルを運んできやがる!!!)」
こ、こやつ、できる!!のように言っているが、ただのしょうもない憶測だ。
だが今回ばかりは正解である笑
悠の予感は悪い時は当たるのだ笑
「(なんか笑われてる気がするぞ!)」
おっと。まぁとりあえず自己紹介を続けようか。年下が挨拶しているだ。ここで返さないのは外聞がよくない。
「どうも、ネギ君。臨時職員の落葉悠です。僕は君よりは先輩でもあるし、何か困ったら遠慮なく頼ってね。(トラブルを持ち込まなければ仲良くしてやってもいいぜ!)」
相も変わらずニコニコと人好きのする笑みを浮かべながら完璧な自己紹介をするのだった。
考えていることはゲスだが。
「(うわぁ!優しそうな人だなぁ。怖い人がいるか心配だったけど、これなら少し安心できるかも!)」
そしてそんな外面に見事に騙されるネギくん。
だが仕方ない。だって外面は完璧なんだもの。
そして一方で何やら剣呑な雰囲気を醸し出している少女がいるようだ。
「落葉先生!なんなんですか、このガキンチョは!!」
「まぁまぁアスナ。落ち着いてや〜」
プンプンと怒っている少女の名前は、神楽坂明日奈。
反対におっとりと明日奈を宥めているのは、近衛木乃香。
「だって、木乃香!このガキンチョあたしに向かってひ、悲恋の相が出てるとかしつれいなことをぉぉ!」
oh......それは宿命なんだよなぁ…
「やぁアスナ君。今日も元気があっていいね。」
「た、高畑先生!!お、お、おはようございます!!!」
慌てて髪を整えだしたりソワソワしている。
傍目から見て、どう考えても気があるようにしか見えないのだが、当人達は気づかない。
「ところで、ネギくんと何かあったのかい??何か言いかけていた気がするんだが…」
「いえいえいえいえ!ただ…そう!迷っているみたいだったので校舎まで連れてきました!!」
「あぁ。そうだったのかい。ご苦労さんアスナ君。君が優しい子に育って僕も嬉しいよ。」
「そ、そんなぁ///」
褒められた明日奈はクネクネと動いていてなかなかに気持ちが悪い
「アスナ?落葉先生に挨拶しとかんとアカンやろ?」
そう催促されハッと正気に戻るのだった。
「す、すいません落葉先生!おはようございます!」
「はい、気づいてくれてよかったよ。おはようアスナちゃん(真っ先に俺に挨拶しろよな!てか普通に気づけよ!無礼だろ!)」
「落葉先生、おはようございますぅ」
「木乃香ちゃんもおはよう。(ふん!まぁまぁの挨拶ね!)」
困った顔で挨拶する悠。
というか挨拶にケチをつけるな。
「二人とも登校時間には間に合ってはいるけど、ギリギリだから今度からは気をつけようね(俺の心の平穏ためにな!)」
「すいません…ちょっとバイトが…」
「あぁ、そうだったね。アスナ君は確か新聞配達を朝しているんだったかな。ご苦労さま」
そうニコニコとしゃべり続ける。
「そういうことであれば、しょうがないね。目を瞑っておくことにするよ。僕にはそれくらいしか頑張っている子の手助けになってあげられないからね(苦学生とか笑 飯がうまいなぁ!!)」
本当にこいつは新聞でひっぱたいてやりたいくらいどうしようもないやつだった。
「さて、そろそろ学園長のところまで案内するよ。よかったらアスナくん達も着いてきてくれるかな?関係のある話だしね。」
そうタカミチが促した。
「??よくわかりませんが、わかりました!」
「うちも着いていきますぅ」
「じゃあみんなで行こうか!…………!?」
その瞬間くるりと校舎の方に方向転換して歩こうとした悠は何かに地面に足をひっかけた。
「(ま、まずい!このままじゃ何も無いところでコケたダサい教師認定されるかも!!)」
一瞬で判断した。だが後ろに倒れているためどうにもならない。
「(ええい、ままよ!)」
目を瞑り体に衝撃が来るのを待った。
が、一向に衝撃はやってこない。
恐る恐る目を開けてみると、なぜか腕にアスナを抱いていた。
「(うん?うーん?うん!?!?なぜに!?)」
困惑する悠なのであった。
sideタカミチ
「じゃあみんなで行こうか!」
そう彼が言った瞬間、僕は一瞬で魔力が溜まるのを感じ取った。
これは、ネギくんの魔力暴走か!?
「(まずい!)」
ネギくんの魔力がアスナくんに向かって放たれる。
魔法の扱えない僕にはどうすることも出来ない。
しかも、今の状態では無音拳は使えないし…
暴走した魔力は無害ではあるようだがどんな効果があるかは予測不可能。
万が一アスナくんに何かあったら…
そう思った時だった。
悠くんが後ろに倒れた、かのように見えたが倒れる瞬間手をついてそのままアスナ君の方に移動したように見えた。
いや、実際には目でほとんど追えないほど一瞬だった。
そうして、アスナくんを抱え込みネギくん魔力暴走から守ってくれたのだった。
アスナくんが元いた場所には魔力を持った突風が吹き抜けていた。
「ごめん。大丈夫だった?」
「え///あぁ、大丈夫です!!」
そうかい。そう言って彼はアスナ君をゆっくり下ろした。
「流石先生!なんや知らんけどあの風からアスナを守ってくれはったんですか!」
「あぁ、いや。たまたまさ。」
そう言って苦笑する悠くん
「またまたぁ!そう言ってこの間も他の生徒さん助けてはりましたでしょ?もう、シャイなんやから!」
いやいや参ったなぁと笑う彼だが、今の芸当は一般人やましてや"悠久の風"にいるメンバーにも出来るかどうか怪しい。
そのレベルの体術だった。
「(まったく前から変わらないな。悠くんは。)」
彼は何かにつけて偶然かのように装って生徒達や先生を助けることに定評があるのだ。
そのうえ感謝しても、たまたまだとか、偶然の一言で片付けてしまうほど謙虚な性格の持ち主である。
その上裏の世界でも名の通った実力者と来た。
「(まったく…底が知れないね。)」
はぁと思わずため息をつく。
いつか、悠くんの実力を見れる日が来るのだろうか。そんな日を楽しみにしながら…
「さて、改めて学園長のところにみんなで行こうか」
「そうですね。さぁ行きますよ!」
彼の声を聞きながら、僕は期待に胸をふくらませ再び歩くのだった。
続くかわかりませんが、暖かく見守ってくださると幸いです。