初めて荒廃した世界を見たときの光景を、今でも鮮明に覚えている。
初めて、そこに日の光が差し込んだ時の光景を、今でも鮮明に覚えている。
・・・そこで『彼女』を見たときの光景を、今でも忘れたことはない。
私が目を覚ます前、頭に植え付けられていたのはとある方の言葉だった。
「戦術人形を殺せ。人類を滅ぼせ。お前たちはそのために生まれてきた」
あらゆるデータが入ってきた。戦術、記録、歴史・・・ありとあらゆるものすべてを、敵との戦闘に生かすために。
夜明けとともに、私は戦場へと降り立った。
私たちは戦った。接近する彼女たちを足止めし、空きをみてその体を串刺しにした。
朝日が差し込んだ。
貫かれた彼女が私を睨んだ。もう動けない筈なのに、目だけは闘志に溢れていた。助からないはずなのに、希望は失われてはいなかった。
・・・眩しい、と感じた。
思わず、空いている手を差し伸べた。
だが、その時には彼女は事切れていた。
初出撃は、私たち鉄血陣営の勝利で終わった。
たが、私のこの感じたことへの思いが晴れることは無かった。
その日から、私は戦術人形を殺すことが出来なくなった。
武器を振りかざす度に、あの日の出来事が頭を過ぎった。
いつしか。彼女たちを壊すのが、無意味な行動に思うようになった。
このままでいいのだろうかと、疑問を持つようになった。
・・・周りに。私の知らない世界に。興味を浮かべるようになった。
戦闘で彼女たちに何度も壊された。何度も再開発されたのち、不具合だと言われAIを何度も調整された。だが、それでも、この思いが消えることは無かった。
そして、私の廃棄処分が決定されたとき、私は生まれた場所を去った。
重い巨体をやああ、と動かし、どこか遠くへと歩きだした。
不具合で生まれたのだとしても、この思いを、消したくはなかった。
もっと、この世界を見てみたいと思った。
歴史やデータではない。自分のこの目で、もっと、世界を知りたいと思った。
あわよくば。
私では持ちえない、眩しいモノを持った彼女たちを、もっと見てみたい。そう思った。
その思いを懐きながら、私の、宛のない旅は始まった。
○月×日 天気、昨日に引き続き快晴。
鉄血の下を離れてから、今日で3ヶ月が経つ。
周辺熱源レーダーに反応なし。各部位の動作が良好なことを確認。発電用のソーラーパネルを格納し、ゆっくりと目を覚ます。
今いるのは廃棄された油田施設。
動力源の燃料が少なくなってきたため、ここに何かないかと探しに来たのだった。
ここら一帯はグリフィンと鉄血の緩衝地帯には入っていない。だから手つかずの燃料が残っている可能性がある。
もっとも、その記録自体3ヶ月前の代物だから今がどうなってるかは分からないが。
万一に備えて、背部ユニットから飛行偵察ドローンを射出し、映像をリンクしながら歩く。
これは以前放棄された基地を散策したときに見つけた代物だ。映像はかなり粗いが、ダミーなど無い私にとってはこれでも有り難い代物だ。
しばらくは順調に散策していたが、ふとそこで足が止まる。
・・・熱源レーダーに反応あり。
私は姿勢を低くする。・・・敵性固体。グリフィンの人形が居るようだ。
今まで私は人形達との戦闘は避けて来ている。
殺めたくないというのもあるが、今の私は武器と呼ばれるものが搭載されていない。槍も盾も逃げるときに全部置いてきてしまった。あるのは背部ユニットに格納してあるスモークグレネードやフラッシュパンぐらいである。
どれもこんな開けた場所で使うに適したものじゃない。
この状態で彼女たちに囲まれたら一溜りもなかった。
なんとかして避けていけないかを考察していると、ふと、あることに気がついた。
まず、レーダーにある反応だが、その数は一つ。そして、どういう訳かその場から全く動く気配がない。
・・・こちらには気がついていないのか?
だとしたら、彼女は何をしている?
彼女がいるのはちょうど道のど真ん中といったところだ。隠れているにしてももっと良い場所があると思うのだが。
飛ばしていたドローンを使って、その場を覗ける場所があるかを確認する。
少し離れた先に倒壊したビルがあり、そこから覗けそうだということがわかると、ドローンに周囲警戒をさせながらそこへ向かった。
移動したあとも、彼女はその場から動かないままだった。
ビルの部屋の一角に入り、その場を覗く。と。
・・・動けない理由が分かった。
彼女は倒れていた。ボロボロの状態で。
遠目で拡大し、観察する。右足がひざから下が完全になくなっており、配線がむき出し。
肌に張り付いている黒いジャケットは所々破れ、局所も見えてしまっている。
その上から体全体に撒かれている、おびただしいまでの赤い人工血液。
もう一度熱源レーダーを介してみる。反応がある。間違いなく、彼女から。
・・・あんな状態で、生きている。
警戒しながら、彼女へ近づく。
一歩、一歩。少しずつ。・・・そして彼女が足元についた。
彼女はピクリとも動かない。目には光がともっていない。が。
スキャンを試みる。
ほとんどのパーツは機能していない。ただ一つだけを除いて。
・・・コアが生きている。
私は、眩しいものが観たいと思った。事切れた彼女が見せたような、希望に満ちて、闘志にあふれ。
私では持ちえない、あの眩しいまでの・・・いろんなモノを観たいと。
そのために私は旅に出た。
足元の彼女は、こんな状態になりながらも、生きている。
いや、生きようとしているように見えた。
あの時の彼女は事切れたために、私では持ちえないその先を見ることはできなかった。
もしこの人形が生き延びた先に、私では持ちえないその先を見ることができるのなら?
・・・私は、それを見てみたい。
・・・私は、それを見ていたい。
私は彼女を抱きかかえた。
Q,処女作、しかも初めが大事な1話だというのに会話文が一度も出てこない件について
A,作者失踪する可能性高いし、多少はね?
勢いで書いてみましたがいやはや、作品を作るのって大変なんですね・・・。身をもって知りました(震