あっ、俺だった。
体育館を出ても尚轟く雷鳴と爆発。
その激しさは戦闘の激しさを物語っている。
だからこそ願った。絶対に勝って合流してと。
「待ってください部長」
「どうしたの・・・あれは」
「ようやく来たのか。待ちわびたぞ」
校舎の出入口の前で立っているのは銀に輝くフルプレートの鎧を着ているカーラマインだ。
右手には両刃の西洋剣。こちらを認識したとしてもその剣先は地面に向いたままで、構えようとしない。それが余裕から来るものなのかと思ったがそうでも無い。
「あぁ、すまないね。私の剣には構えがないんだ。いや正確には私の自然体が全て構えと言ったところかな・・・君も薄々勘づいているのだろ?騎士くん」
「はい。その佇まい、僕の師匠からも感じた事があります。一流の剣客特有のオーラ」
「一流の剣客・・・ハッハハハ!私は一流などではないよ、二流や三流でもない出来損ないの剣士だよ私はね」
会話をして隙を伺うも彼女自身が語ったようにその自然体こそが構えであり、隙が一切見えない。
喉を伝う緊張が音をあげる。
軽く息を吐き自身の最も高速で初速の早い構えをする。
創造するのは日本特有の刀、刃には特徴的な能力は付けない。側の強度のみに重きを置いたためだ。そして、剣と地面を完全に水平に構え剣先はターゲットの胸に狙いを固定する。
木場祐斗の師匠──沖田総司が教えた最速の暗殺術。刀のみで使用できる技であり、沖田総司が最強の剣士として恐れられる所以でもある技。
”三段突き”
放てば最後、相手の目には一度の”突き”であっても現実には三度の”突き”を放っているため防御不可の一刀。
さすがにまだ裕斗はその領域に達していないがそれでも”二段突き”までは使える。
さらに、大きなためを必要とするのでまだ実践には程遠い。今回は運がよく大きく溜めても問題ない。相手はこちらが構えるのを待ってくれているからだ。
「部長ここは僕に任せてください」
「けど相手は」
「お願いします。僕の力を試したいんです」
「・・・勝ちなさい、こんな所で負けたら許さないわよ」
「ありがとうございます部長」
沖田総司程ではないが圧倒的な剣客とやれる機会など滅多にない。だからこそ、どれだけ力が通用するのか試したかったのだ。
その思いをヒシヒシと感じたリアスは大人しく身を引いてこの場を最強の騎士へと託した。
背中を押してくれた王に惨めな姿を見せられないとやる気が刀に籠る。
「それじゃあ行きます」
「優しいね教えてくれるなんて」
「ふぅ・・・・・・・・・」
空気が凍りつく。
二人の殺気と殺気がぶつかり合い空気を張らしている。
二人の剣士はそれぞれの得物を握る手に更に力を込めて──地を蹴り抜いたのは裕斗一人だ。
指先から膝、腰の付け根、腰、背骨。全てに加速のための力が伝わる。
地を蹴った瞬間からこれは自身最速だと察した程に完璧に完全に初速は成功。
構えた刀に震えはなく完全に狙いを定め二度穿つ。
キン!!!
金属と金属の大きな接触音が甲高く鳴り響く。
僅かな時であり異様なまでに火花が鎧から散り一瞬裕斗の勝利を見ていたリアスは確信した。
「まさか通らないとは」
「確かに早く速い。惜しい点としてはその技西洋との相性が悪い。鎧と戦うことを想定したものではないね」
刀は鎧に確かに窪みを付ける。だがそれは窪みまで、胴体に届いておらずダメージになっていない。
いまの一撃、動け
「次は私の番だ」
「くッッゥ!」
”突き”に全体重をかけたせいで回避への動きが遅れる。
伸び切った筋肉を急速に戻した事で不自然に身体が捻れそのおかげで独特な回避になり、回避読みを予想していた斬撃をかすり傷ですました。
それでも下から上の振り上げを刀で受け流そうと触れるたが、直ぐに砕け散ってしまい高めた強度が意味の無い事を理解した。
身体はそのまま少し吹き飛び校舎の窓ガラスを破って一階のクラスへと飛び込む。
コンクリート壁は簡単に砕け散り剣の破片と瓦礫に板挟みにされながら、廊下側の壁に背中を打ち付け停止する。
痛む背中に目がカッ開くと追撃を狙っている騎士の姿が目にはいる。
「
手を床につけ、伝うように剣が地面を進み騎士の下で急速に魔剣を天に向け創造する。
数多の魔剣を想像のままに創造する神器”
魔術が苦手な裕斗に残された道は剣一つだった。神器を上手く扱えるようにと、特訓に特訓を重ね自身の最も合っている戦場を作り出すことに成功する。
魔剣の創造範囲をさらに拡大。クラス一つ分全ての足場を魔剣まみれにし、まともに地面が踏めないようにした。
「小癪な」
「ここはもう僕のステージだ。残念だけど決めさせてもらう」
使い慣れた黒色の西洋剣を掴む。
地面から抜かれた魔剣は火を纏いクラスの温度、特に鎧の中の温度を急激にあげる。
「鎧の特性を利用したか」
「初撃を防がれた時点でもう僕には手が殆どありません。力より速さが僕の剣・・・なので勝つためにはこれしかありませんでした」
「気にするなそれが戦闘と言うものだ・・・・・・だが、勝負はまだ分からんぞ?」
綺麗ないくつもの銀閃が舞う。
数撃で身動きを塞いでいた魔剣を破壊。
そこから剣を横なぎして裕斗に回避を選択させ、わずかに距離を開けそのタイミングで自身の鎧のつなぎ目を破壊した。
「これで鎧も何もあるまい」
密閉度が高い鎧の中に居ることで上げた温度に耐えられず倒す算段だったのだろうが、それならば鎧を脱いでしまえば元も子もない。
普通に脱ぐのでは時間がかかってしまう。惜しいとは思うが鎧を破壊して脱ぎ去った。
中からは胸に包帯のサラシを巻き、膝まで伸びている白のロングコートを羽織っている女が出てきた。
鎧の残骸を足場にして空中で姿勢を直して突貫する。
地面には容易に着地できないのならば空中戦をすればいいのだと。羽を生やして空へ舞う。
「予想通りです!!」
「!!」
裕斗の狙いは鎧の中で蒸し焼きにするのではなく鎧を脱いで突貫するタイミングを狙っていたのだ。
炎の魔剣の後ろ、にて最初に使っていた刀が防御力を失った獲物を待ち構えている。
炎は鎧を脱がすと同時に刀を見えないように隠すための物でもあった。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!二段突き!!!」
炎の魔剣を捨て、刀を両方の手で持った事で技を打った。
煌めく鋼が狙うは急所の喉仏と胸部。
裕斗の姿は幻影を掴むように消え再び姿を現したのは刀を突き出して攻撃をし終え、カーラマインの後ろで佇んだ状態。
──刹那、消えた銀光が喉仏と胸部を強襲し逆方向、今の裕斗がいる方向へと飛ぶ。
既に意識は消えかけ回避はできない。
待ち構える三段目。
使えない師匠の”三段突き”を今使えるように改良したさしずめ”偽・三段突き”がライザーの騎士の腹部に刺さり、勝者を決定づける一打になった。
▽▽▽▽▽▽▽▽▽
ライザーの騎士撃破。
それにより残るライザーの部下は女王とあともう一人の眷属だけ。
女王は朱乃が抑えるとして問題はもう一人の眷属だが、データを見た限り問題になるうる眷属はいなかった。リアスの消滅の魔力で普通に倒せるはず。
勝利の可能性は見えてきた。
薄かった希望の糸は徐々に太くなる。
あと一歩、あと一歩で決まる。
階段を上る足が早くなる。四階分階段を上がればライザーのいる屋上へとたどり着いた。
「待ちわびたぞリアス」
「私は待ってなんて言ってないけどね」
「そう邪険にするな、これでも褒めているのだぞ?俺の予想ではお前はここまで来ることは出来ないはずだった。これは俺の眷属が弱いのではない、お前の意思の力が強かったからここまでこれた」
拍手を送ろうと両手を叩いて歓迎した。
「このレーティングゲーム事前の調査では俺の圧勝で終わるとなっていてね、だからこそここまで持ちこたえた礼だ。三度攻撃を受けてやろう」
「舐めているの?」
「舐めていないさ。これは観客を楽しめさせるエンターテインメントだ。それにそうでもしないと君ら二人では勝ち目がないだろ?」
「随分と余裕ね・・・けど願ってもない言葉だわ、やるわよ裕斗」
「了解しました部長!」
武器を構える。今回は未完成な技を使わないいや、使っても決定打にならないが正しい。
一度や二度殺せるだろう。だが、一度や二度殺したところで不死身のライザーを倒す事ができるわけが無い。なので刀ではなく超巨大な剣を作る。
五、六、七・・・・・・二〇Mの大剣。
それを振るのではなく天に聳え立たせるように持ち自然落下で相手に超ダメージを与える算段だ。
「ちなみに貴方の方は戦わないのかしら?」
「はい戦意はありません。数合わせ及び傍観者としてここにいますので」
なら良かったと思う。もし、ライザーに加えもう一人のフェニックス家の次女たるレイヴェルが出ばれば勝つ確率は無かっただろう。
もしその言葉が騙った物だった考えるが、フェニックスの家名が地に落ちることになるので大々的に宣言したという事は絶対的に揺るがない事実である。
裕斗と目配りを送り合い息を合わせて突貫する。
「消滅の魔力よォォ!」
「
二人が別々に攻撃するのではなく、最大最強の技を同時にぶつける。
裕斗は速度を捨て一度きりの超大技を放つ。
対ライザーように開発してきた魔剣。相手が炎から蘇ると言うのならばその炎を食らってしまうまえば復活できまいと考えたからだ。
例え、その能力を除いたとしても二〇Mも長さがあればそれなりの威力が出る。ライザーを殺すには十分であろう。
さらにリアスの放った魔力球も同じだ。
フェニックス家が不死身の固有能力があるのだから同じく純血悪魔のグレモリー家にも固有能力がある。
それこそが消滅の魔力。
その魔力の前にはどんなに防御力を上げようとも貫通するダメージ及び、当たった場所を完全に消滅させる特殊能力がある。
それを裕斗と同じ思考の元、炎事消滅させる目的で放つ。
直径一〇Mの巨大球体が二つ。それを力に任せて押し出す。
ライザーは宣言した通り動かない。
両腕を組んでただ攻撃が届くのを待つ。
そして、二人の攻撃はライザーを直撃する。
大爆発。焔食いの魔剣は一撃でその生涯を終え、二つの魔力球は辺りの空間事消し去る。
ライザーのいた場所を中心に校舎全体に亀裂が入り、大量の粉塵を巻き上げた。
屋上には大きなクレーターと衝撃波により豪華な椅子や屋上を囲うフェンスが吹き飛んでいく。
全ての爆心地。
ライザーがいた場所は粉塵が消えた後人影が一切無い。
「やったの?」
「はぁ・・・部長!!」
勝利したのかと思ってしまった直後背後から強襲を受ける。
咄嗟に気づいた裕斗がリアスを押し飛ばして攻撃から庇った。
火山の噴火の如く焔が背後に突如でして現れたライザーの右腕から放たれ、焔に服が焦げ落ち肉の焼ける匂いが備考を刺激する。
手加減していたのか表面と僅かな肉だけをいているが、赤い蒸気を焔と裕斗との接触地点から上げている。
「がぐがぁぁぁだがぁ」
「ほほう耐えるか騎士!余興の礼だ、貴様には技を使ってやろう」
ライザーは死神のような言葉を告げた。
この火力、この威力でありながら技ではないと。ただの力に任せた暴力だと言うのだ。
意識が飛びそうになるのを必死に堪える裕斗だが、
「死なん程度には加減をしてやる。まぁこの俺にこれを使わせたのだから泣いて喜ぶがいい──
左人差し指と親指をピンと張り、銃のような形を作って先を裕斗に向けた。
その指先、第一関節の指から先が炎の塊となって打ち出された。
一瞬空気が膨張したかのように破裂し、炎の塊は消える。それと同タイミングで裕斗のおでこの中心が焦げ意識を完全に刈り取った。
本来は質量のない炎を極限まで圧縮して放つ
現にレーティングゲームではこの一個上、
逆に言えば使わせた時点でそれなりに奮闘していたと言える結果だった。その事実を知らないリアスに取っては絶望的な結果だったのだが。
「この程度か・・・余興にしては盛り上がったか?結婚式の披露宴ではこれを流すとしよう」
「それでは編集は私が行いましょう」
「ん、ユーベルーナか。その様子ならしっかり倒してきたようだな」
虚しい余韻に浸っていたライザーに言葉をかけたのは腹心の部下たるユーベルーナだ。
服は多少ボロ付き片膝をついての帰還になっているがその顔から倒したのかは確定的だ。
「そんな朱乃が負けたの・・・」
「そうですよリアス様。もし、彼女が秘めた力を使っていればどうなったかは分かりませんが、力を隠し通して勝てるわけがありませんから」
「そんな・・・・・・私は・・・」
勝てる可能性は完全に潰えた。
女王も騎士も戦車も倒された。
それなのにこちらの戦果は戦車一人と騎士一人の二名だけ。さらに言えば数合わせで戦闘にすら参加しない眷属もいる事を踏まえれば分かってしまう。
初めから出来レースだったのだと。
いくら躍起になった所で勝つことなんて出来なかったのだと。
徐々に目から希望の光が抜けていき頬を伝う涙は惨めさをより表わしている。
「さっさと終わりにするか。もう気が済んだだろ、娘の我儘もここまでだ。いい加減諦めろ」
「あ・・・・・・っ・・・」
「はぁ・・・降伏すらできんのか。ホント惨めな女だよ貴様は」
裕斗を仕留めた時と同じく指を向ける。
「最後の勧告だ降伏をしろ。そうすればそこまで惨めにはならんぞ」
「・・・・・・・・・」
「落ちるところまで落ちたな。これで終わりだ
五段階中四段回目の威力にして上級悪魔を簡単に屠る事が可能とすらされている。
先程の
この技の利点はその広範囲破壊力。
一段回下の
完全にオーバーキルではあるのだが、念には念をそして力の誇示を目的として放たれた。
完全に戦意を喪失した彼女は迫る火炎に見向きもしない。ひたすらに空を見上げ天を仰いだ。
(私は自分の好きな人と結婚したかった。学校で出会ったりして、学校帰りに買い食いをして立ち寄って遊んで・・・・・・そんな当たり前を謳歌したかっだけなのに)
ポツリ。ポツリ。心の中の隙間に水滴が垂れる。
(分かってた。グレモリーとして産まれた私にそんな事許されないって・・・けど夢をみたかったのよ・・・・・・それも無駄になっちゃった)
滴る水滴は隙間を埋めていく。
懺悔と後悔が心を支配していく。
(私のせいで皆傷ついた。私が我儘言ったから・・・)
水滴は積もり大きな塊となった。
心の隙間を埋める巨大な感情の塊。そこには自尊心や自己欲が詰まる。
大きな殻で包んでもう溢れないように封印する。
もう私の人生は私のものでは無い、ライザーの物になるのだからそこに感情はいらないと消えていく。
残ったのは言うことを聞くだけのロボット。操り人形。もう終わりだ、全てが終わった。
──ホントに諦めるのか?
声が聞こえた。どこか聞きなれた男の声。
・・・どうしろって言うのよ
──お前は兄を超えるんだろ?
・・・私にそんなに力は無かった無理なのよ。不可能だったの。
──随分と簡単に諦めるんだな。世界を敵に回してもと言ってたのにか?
・・・それは、
言葉が詰まった。あの時は確かに言った。絶対に叶えると、兄を超えると。
けれどそんな資格消えた。消えてしまった。
負けたのだから。ここからどうやっても負けは決まっているなのに何をしろと言うのか。
──ふぅぅん。そうやって逃げるのか。おまえが選んだんだろ?眷属を仲間を巻き込んで戦うって、そのお前が諦めんのか?
男の声は閉じ込めた感情の殻にヒビを入れる。
導火線に火をつけ徐々に限界が近づく。
否定していも分かっているのだどうすればいいのか、何をすればいいのかは。
男の声は聞こえなくなった。けど、それで良かったのかもしれない。最後の決断は自分で決めなければいけないのだから。
私は空に向けて
「負けたくない!!勝ちたい゛!!」
叫んだ。
木霊する声。空は大きく嘲笑う。手を差し伸べない。
この行動に意味があったのか。そんなことを思った直後──
「ヤハハハハハ!!俺を忘れてんじゃねぇぞォォ!!」
空から飛来する言葉と人影。
ソレは踵落としでリアスを倒すべく放たれた火炎を粉砕した。
「一誠・・・」
「たく、勝手に終わらせんなよ。俺がまだやってねぇってのによ」
その背中はどこか大きく偉大で──英雄に見えた。