レーティングゲーム開始直後に時は戻る。
一人一誠は制服を着て部屋にて本を読んで寛いでいる
その本にはフェニックスについて記載されていた。
そも悪魔の七二柱として知られる前は神聖な物として崇められていた。
世界最大勢力のキリス・・・キリ・・・・・・キリス〇教においても、死んだ直後に蘇る事からキリストの復活を象徴する物とされてきた。
だが、キリス〇教の元となったユダヤ教の教えの基礎となったヘブライ神話においては、悪魔として恐れられている。
結果として聖なるフェニックスと魔なるフェニックスの二つの相反する属性が存在していた。
「てなわけだがよ。そこら辺どうなんだ?」
「それはどっちに対する問だい?フェニックス家とは本当に純血の悪魔なのか、それかフェニックス家は
「断然後者だ。俺の見解てか、この本の通りに読み解けば悪魔と聖のフェニックスは別個体なんだろうな。現に、フェネクスと悪魔の方は呼んでるわけだからな。となるとだ、さて今の悪魔サイドにいるフェニックスはどっちなのかって疑問がわくね」
色々セッテングしている人妻メイドを尻目にその夫たるサーゼクスは暇そうな一誠と言葉を交わしていた。
数々の文献を漁った上での疑問はつい最近悪魔の事実を知った一誠では答えを出せず、数百年生きているサーゼクスだからこそ答えられる質問だ。
その上でサーゼクスは驚嘆に値すると心の中で思っていた。
(人間に与えられた情報は数少ない。だからこそ、私達を本当に存在すると信じる者は少ないし、例え信じたとしてもこちらが歩み寄らない限り交わらない。だと言うのに彼はその少ない情報から、この一月あまりでここまで考察を・・・・・・本当に)
──人間でよかった。
もし彼が悪魔であったのならば現状の冥界事情は大きく変貌していたであろう。良い方向または悪い方向にでも。
だがそれはあまりに早すぎる変化だ。
生き物とはその早すぎる変化について行くことはできない。そのように出来てしまっている。
確かにサーゼクスも冥界を変えていこうとしているが、それは永遠に近い寿命によりゆっくりじっくり急激ではなく慎重に変えていこうと策略していた。そこに
逆に言ってしまえばそれほどまでの頭脳を有している存在が人間側にいると言うこと。
大きな変革が訪れようとしているこの世に産まれた逸材。果たしてそれが偶然なのかはたまた必然なのか。
「さすがに始まりの七二柱を知っている訳じゃないから明確な答えを与える事はできない。けど、悪魔であって悪魔ではないとは言えるよ」
それは独自の路線から七二柱を研究していたサーゼクスが行き着いた答えだった。
魔王の業務をしながら趣味でその土地に元から住む悪魔、家に継がれている古文書などを読み解き集めた点を線で結んで形作った答え。
始まりの七二柱は全員死んでいるのでその答えを合否するべき存在がいない。なので前置きをした上で行き着いた答えを発表する。
「聖のフェニックスと魔のフェニックスは違う別固体と言ったが明確には違う。元は同一存在であったが分裂したが正しい」
「同一存在から分裂・・・・・・なるほどね。悪魔の名にルシファーが居た時点でそれを考慮すべきだったか。聖と魔の相反する二つの属性を宿している悪魔もいると」
「そういう事だよ。さすがに別れた理由までは見つからなかった。それこそ信仰されたから分裂したのか、はたまた分裂したから信仰されたのか。鶏が先か卵が先か問題だから祖先様に聞く他にないね。
ただ、これだけは言える。今のフェニックス家には悪魔としての側面が強く反映されていて、表立って聖の力が現れていないが、聖の力を覚醒させる要因は十分にありえる。もし、そうなれば悪魔の勢力図は大きく変化するだろうね」
腕が落ちても瀕死であっても治してしまう万能治療薬【フェニックスの涙】
例えどんなに強大な技であっても死ぬ事の無い【不死性】
悪魔に対して絶対必殺の文字を掲げる【聖の力】
この三つが揃えばフェニックス家が独立し新たに4大勢力となる可能性すらありえる。
その事なども考えるとサーゼクスの父が強引に婚約を決めたのは妙案でもあった。
魔王の妹のリアスとフェニックス家始まって以来の天才ライザーがくっつけば独立を防ぐ防波堤にすらなりえている。
とはいえ、感情を無視して強引にくっつけるのは反対と思うのが兄としてのサーゼクスの考え。しかし、魔王としてのサーゼクスは政略結婚もありだと考えてしまう。
今回は下手に介入しなかったのはこの矛盾に苛まれていた事も起因する。
「結局倒すには殺す気でボコれって事か」
「ごめんね必勝法とかは授けらないよ」
「いやいい。勝負の前に疑問が解決出来たのはラッキーだ」
「そう言ってくれと助かるよ・・・さてアジュカ準備はとうだい?」
『全く・・・こちらも忙しいと言うのに面倒な仕事を押し付けおってからに。終わったよ、あとは飛ぶだけだ』
「なら上々。さぁ始めようか一誠くん」
開始を告げる言葉に自然と口角が上がる。
堕天使レイナーレは確かに人間よりかは戦えたが、それでも一誠が楽しめたか?と聞かれれば楽しめなかったと言う他にない。
もっと強者を。最強を──退屈を飛ばせる相手を欲した。
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「随分と負けてんなリアス。あんなに倒すって言い張ってたのにな」
「うるさいっ!ちょっと見誤っただけよ」
「ヤハハハハ!言い訳にしちゃ苦しいぞ」
頬を含ませて不貞腐れるリアスだがどこか安堵した表情であった。
「ホントに待たせてくれたよ人間。あまりにも遅すぎてもう少しで終わっていたところだぞ?」
「その文句は魔法陣の設定に手間取ってた魔王に言ってくれ。俺は関係ないからな」
「ハハッ!この勝負が終わったあとにでも文句を言うとしよう」
掌に炎を圧縮させ先程放った時よりも高威力高火力の技の準備に入る。
その隣で構える手を前にかざし構える女王。
二対一。
セコいと言われようともこの盤面を作ったリアスの問題であり、途中乱入の一誠に選ぶ権利などない。それは一誠も分かっているようで口を出すつもりは無い。と言うよりそうしないと身体が温まらないと思っているので問題ですらない。
「ちっとは俺を楽しませろよォ!」
「俺のセリフだよ!」
先手を放つのは女王。
一誠の完全な真横に六つの爆発源を発生させる。
波が集まるように魔力が圧縮され一秒にも満たない時間で臨界点を突破。姫島朱乃との戦闘時よりも遥かに高い威力で襲う。
だが爆発するより早く一誠は地面を蹴っている。
第二宇宙速度。加速時に起きるソニックウェーブで爆発源は圧縮を乱され想定より早く起爆。
それが一誠の追い風を作り一瞬で女王との間合いを詰める。
体制を低く空気抵抗を減らして肉迫し女王の真下へと滑り込ませ、そこから上空──顎に向けての強打、左足をバネに右足で渾身の一蹴りを狙う。
「甘い!俺をリアスのように力をコントロールできない軟弱者だとでも思ったか!」
「チッ、めんどくせぇなおい!」
集めていた炎を拡散、小さな追尾式の銃弾として撃つ。
視界の端に飛び込む火花や足にまとわりつく火炎、体制が僅かに崩れている今邪魔以外の何物でもなく、さらにこの隙に軽く後ろに飛び退き女王は回避している。
完全に距離を取ったのを確認してからライザーは開いてた手を握りしめ連鎖起爆させる。
最初は小さな爆発、それが隣の火球を引火させ爆発──これを瞬時に数百個行い回避どころか、防御も許さない全面爆発を繰り出す。
ユーベルーナは爆発のプロだが。その術を鍛え上げたのはライザーであり、爆発のコントロールや力も格段にライザーの方が高い。
だからこそ爆発源を最高十個発生させるのが限界のユーベルーナに比べ、超極小サイズの火球を爆発源にして動かしながら起爆する事が出来ていた。
一誠の居た場所を覆い尽くすように爆発が支配する。瓦礫の焦げる匂いと共に衣服の焼ける匂いを感じる。
(この程度か?あの時感じた脅威はこんな物では・・・なッ!)
爆発が収まりそこにあったのは黒焦げに炭化した瓦礫と黒焦げのブレザー。そして、屋上から下の階へと続く大穴。
一誠の焼き爛れた姿など一切なかった。
危険を察知し後ろを振り向く。もし、自分を襲う目的で下の階へと避難したのならばすぐに攻撃するはず、それが無いと言うことは狙いは一人。
女王──ユーベルーナが危ない。
その直後真横を何かが通り過ぎていく。
遥か後方に、リアスが座っている真横を通り屋上の出入口に激突。そこから漏れる女の声からその正体を察した。
「これで一対一だなライザー」
「面白い。だが本当に良かったのかな?この俺を本気にさせたこと後悔させてやるよ」
炎の熱量が跳ね上がる。数十M以上離れていると言うのにそのとてつもない熱気を感じる。
肌を照りつかせ水分を奪い、にじみ出る汗が地面に着くより先に姿を水蒸気へと気化させる。
目の前に溶鉱炉があるのではと間違えるほどの熱量に学校の枠組みが徐々に溶け始めている。
もしその熱量で地肌を触れられたらと後ろから見てる事しかできないリアスはぞっとする。
「もう」
「そう来なくちゃな!行くぞ!!!」
「来い人間!!」
もういいと。私のために傷つかなくていいと伝えようと手を伸ばすが、二人の男にはその声は届かない。
「オラァァァァァァァァアア!!」
「速い、だが所詮早いだけ、貴様の肉体能力ですら防ぐ事の出来ない熱量だ。貴様に蹴れるかな?」
その熱量はもはや魔力で防御をしていてもその上から貫通してダメージを通す事が出来てしまう。
言わば超高温の鎧を着ているようなもの。
防御力は不死性から度外視して、一誠の攻撃手段の接近戦を潰す算段だ。
高機動、高威力、ついぞ人間では不可能な所業。終いには
神器を一切使わずにだ。しかし、そう考えると一誠の肉体は本来ありえない事柄が競合している事になる。
肉体を攻撃力を強化する能力に、相手の魔力及びそれに該当する力の無効化。
陰と陽や聖と魔などの表裏の関係ではない。相反する力であればコインのように存在できる。だが、一誠のソレは相反する表と裏の力ではない。+と+を繋げるような所業。
同じ力を強引に繋ぎ合わせる愚かな行為にほかならない。
そこから考えたたライザーの考察とは。
「貴様の能力は大幅な肉体強化だ。それこそ仙人と呼ばれる存在は極限まで肉体鍛え上げて、熱や寒さ等どもビクともしない肉体を得ると言う。貴様はそれを擬似再現しているんだ。
私の能力を無効化したのではない、あの程度耐えきれたと言うこと。私の爆発の時も無効化能力があるのならば無効化していればいいはずだ。なのに、わざわざ階層をぶち抜いて不意打ちするなど、回りくどい方法を取った理由はそれだな?」
それが理由だろうと揺るがない自身のまま宣告した言葉。それを聞いた一誠は
「あ?そうなのか?」
「は?」
気の抜けた答え。逆に聞き返してしまうのだった。
「まて、私は貴様の能力を考察したのだぞ。合否ぐらい言ったらどうなんだ!」
「知るかよ、こちとらお前ら悪魔を知ったのは最近だ。次いでに言えばこの力だってつい最近使い始めたんでね、生憎と知らねぇぇよ!!」
高熱の鎧。それを纏い安全だと鷹を括っていたライザーの顔面に拳がめり込み、首から上を消失させた。
反動で身体は後方へ吹き飛び屋上から落ちるギリギリのラインで踏みとどまる。
だが顔はない。視界はない。嗅覚はない。聴覚はない。
五感の内四感が一瞬でも奪われた事で大きな隙が──回避すらできない状態を作りだした。
顔の修復を急ぐが顔を炎で形作ってからそこに重要なパーツを後から付ける。この工程で最低でも二秒かかる。
二秒も殴れる時間があるのならば、一誠はラッシュを食らわせられる。
「オラオラオラァ!!再生させる猶予なんて与えるわけ無いだろォ!」
一誠の言葉が聞こえてはいないだろうが、何をされているのか体感で分かっていた。
炎で顔を形作った段階で飛んでくる隕石級の拳に頭蓋は吹き飛びまた一から作り直す。そして作って破壊する。それの繰り返し。
ゲームで言うところのハメ技。
再生させて消されるその光景を何度見せつけただろうか。二十回以上行われた末でどうにか蹴り腹部に入れてラッシュを止める。
人間がいくら鍛えても防御力の高まらない場所。腹部へ沈み込むような感覚が足を伝い手を止めさせた。
二秒の時間を稼げ回復し暗黒から色がついた視界へと移行した。
「ヤハハハ!決まったと思ったかよォ!」
「がふっぁ」
ラッシュ終わりのお返しの腹部蹴り。
人間と同じ肉体をしているライザーもその弱点は補えず確実に骨を粉砕し、身体をくの字に曲げさせて校庭へと吹き飛ばす。
地面に向けて超高速で走り着地すれば、大きな地割れを発生させて校庭全域が崩壊寸前までになる。
白ワイシャツの腹部に付いた汚れを払い落としながら、校舎の屋上から見下ろす青年の目はこれで終わったとは思えていなかった。
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
「やっぱり彼の能力は異端的だね」
サーゼクスは一誠の肉体におきた異常や今目の前に広がる光景を見ながら呟く。
そもそもなぜ転移魔法陣が効かなかったのか。それは、魔法や異能を砕く拳のせいではなく魔力の総量が問題だった。
転移魔法陣はB点とC点とを異空間を介して繋ぐ。
悪魔、人間、魔物……様々なものを転移させる。それを一から構築などをしていれば時間がかかりすぎて無駄すぎる。そこで世に出回る際に簡略化させるため指定を設けた。
生き物や無機物などが必ず持つ【魔力】があるものだけを転移せるようにした。
本来ならそれで問題がないはずなのにどこぞの問題児は魔力を一切持たない摩訶不思議な現象が起きていた。
「まるで分からんぞ。私も
「それじゃあダメなんだよアジュカ。彼の使っている力の前にはね」
一誠を送り出したあと観戦ステージへと向かった二人は魔王特別席に腰を下ろしながら観戦している。
その流れでライザーの取った行動を見ながらアジュカはもうお手上げだと告げる。
一誠の力の招待を知るサーゼクスは含み笑いをしながら首を横に振る。
「一誠くんの使う能力は”原典”──”神器”などとは格が違う。多少の不合理も不都合も常識も通用しない力。僕達が考えようと努力すだけ無駄なんだ」
「”原典”ね・・・私にすら秘密にしていたのか、そんな面白そうな事を」
新たな未知との遭遇に都市を忘れ玩具を見つけた子供のように無邪気な笑みを浮かべる魔王の一人。
だから伝えてなかったんだよと苦笑いを返すサーゼクスはすぐにモニターへと視線を戻した。
「ささ、そんな事より今は彼だ。ここまで追い詰められたんだ多分出るいや、覚醒するよ
「さてなどうなる事やら。
「でも、もしもがあるからこうやって居るんでしょ?僕達が。もし彼が覚醒したのならば──一誠くんではとてもではないが止められなくなる。その時は僕達が乱入して止めるよ」
アイコンタクトで二人は最後の確認を取る。
この二人は送り出した一誠を見るために二人だけで集まっている訳では無い。もし、ライザーがただの最上級悪魔ならば一誠が勝つ事は確信できていて、見る様子すら必要はなかった。
そう、ライザーが普通ではないから二人はもしもの時のために集まっている。
悪魔の枠組みを超えた【超越者】と呼ばれる二人が集まり、その二人でしか止められない力。そんなもの一つしかない。
ライザー・フェニックスは【超越者】の候補である。