電撃特攻の告白をした少女──天野夕麻とは放課後であったため時間も時間なので、帰宅のため別れる事になった。
一応付き合うと言う事なので連絡先を交換し、夕麻は嬉しそうにスキップしながら帰って行った。その後ろ姿を軽くみ送り自宅へと戻る。
自宅はありふれた住宅街にある、二階建ての一軒家だ。小さな庭に服が干せる程度の小さなベランダ。
時刻で言えば五時ほどで、辺りも少し暗くなっている。普通であれば明かりが灯っていて、帰宅を心待ちにする家族がいるはずである。
だが、電気は一つも灯っておらず、鍵穴に鍵を刺して開けると自分用の靴二足が玄関にあるだけでそれ以外はない。
「ただいま」
その声に答える人物はいない。正確にいえばその家には一誠以外の人間が住んでいない。
ドアを開けても目下に広がるのは暗闇。僅かな月明かりで物の位置がどうにか知覚できる程度。
何度も通っている家の中であれば例え視界が悪くてもさほど問題にはならず、そのまま靴を脱いでリビングへと向かう。
リビングへ入ってすぐに電気のスイッチを付け明かりを灯す。
視界が二秒ほど光に包まれた後、視界は明瞭に殺風景なリビングを捉える。
あるのは床に引かれたカーペットとソファーに小さな机と大型の薄いテレビ、それだけである。生活感がまるでないリビングだ。
「米は炊けてるな・・・昨日の残りの野菜と肉を炒めて、あ?醤油どこいった」
『ふぁぁ、しっかりしてくれよな相棒。眠い・・・・・・冷蔵庫の中に閉まったはずだ』
「お、役に立つな居候」
『居候言うな!俺だって好きで居るんじゃ無いんだからな!』
はいはいツンデレ乙。心の中でツッコミを入れると共に、自宅での唯一の話し相手が目を覚ました事に気持ちが高まる。
「今日は何時間寝てたよ」
『半日以上だな、お前が告られた時は起きてたぞ』
「ほぉん」
『相棒にしては趣味が悪いなあんな鴉を女にするなんてな』
「またそれか」
会話をしながらもテキパキと調理を進め、瞬く間に味噌汁と野菜炒めとご飯を器にのせソファー前の机に乗せ腰を下ろす。
「堕天使てか悪魔、天使の話だろ?信じろって言われてもな」
『ここに赤龍帝たる本人がいるのにまだ信じてないのか。やれやれ今年の相棒は随分と頑なだな』
「おいおい俺は一般的な高校生だ。そんな超常的な事を信じられるかよ、悪魔がいる滝とか侵入したが結局居ないし信じるだけ損だ」
イグアスの滝──悪魔の喉笛と呼ばれる世界が誇る危険で美しい滝である。
世界三大瀑布の一つとされ、常に大量の激流と轟音が発生している。人間が飲み込まれればまず助かることは無い。
その光景などから悪魔がいるのでは?と言われていた。その言葉にワクワクした一誠は命を顧みず滝へ飛び込み、悪魔がいないと言う事を証明してしまった。
人外であればこの身体能力にも多少は着いてこれるだろうと考えていたからこそ、かなり落ち込んだ。三日三晩寝込んだりしていた。
『とはいえなアイツは堕天使だ。それこそ相棒が探して探して見つけられなかった人外だ、もっと楽しそうにしたらどうだ』
「楽しそうね・・・この身体になって此方そんな事思った事は一度もねぇよ」
『まぁいい。あちらから近づいて来たってことはお前を殺す気のようだ。三下それも下級の堕天使事にやれる相棒でも無いからな心配するまでもない、だから俺はまた寝る』
その言葉を皮切りに翌日の朝まで起きることは無い。
食事を食べ終えた後は簡単に後片付けをして、風呂に入り日課の読書を終わらせてから就寝する。
翌朝時刻は九時を回り、遅刻確定の時間。目覚ましは五月蝿いと寝ぼけて壊し続けてきたので寝室にはない。
『相棒朝だ。もう九時だ、遅刻するぞ』
そんな仕事が出来るのは
オカンのような口うるさい言葉に起こされ若干不機嫌ではあるが、寝坊したこちらが悪いので大人しく布団から身体を出して、カーテンの隙間から入る日光に身体を伸ばす。
「んんっん・・・はぁっ・・・・・・学校行くの面倒いな」
高校生や学生は毎日言うであろう文句を口にしながら顔と歯を洗い、制服を着て学校へと向かう。
時間があまりないのでトーストした食パンを一枚口に加えて家を出る。
家を出て数十分。太陽の黒点の数を数えながら歩いていると、前から歩いてきた白髪の男にぶつかる。
「おっとすまんな、大丈夫か」
「もちもち大丈夫よ!逆にこっちらこそ申し訳ねぇぜ」
「そうか・・・ん?神父か?」
ぶつかった男は西洋人風の顔に神父のような長いローブの格好をしている。だがどちらかと言うと神父よりは祓魔師の方が近い。
この真昼間に全身真っ黒はどこぞの剣士顔負けだ。神父と思ったのには男の格好よりは後ろの金髪の女性が見えたからに近い。
「あわわわえっとえっと、大変ご迷惑をお掛けします」
「いやいやアーシアちゃん。それ日本語的にはお掛けしましただな、それに言うの普通は俺っちだぜ」
「ヤハハハハ!気にすんな気にすんな、人間常に上を向いて歩くからな前なんて見ないもんだ」
「おっ、旦那いい事言いますね!俺っちもよくそう考えるんですぜ」
「ふぇ?」
意外と気が合う二人の男をよそにシスターはなんでそうなるのか首をかしげている。
ガシッと手を組み合うと同時にとある疑問が浮かんだ。白髪神父に金髪シスター、この地区には教会や聖堂は無かったはずなので場違い感がある。
記憶を巡らせても寂れた教会ぐらいしか記憶にない。
「アンタ達はあのさびれた教会の使者か?」
「・・・んまぁそんなとこだな。本当は別のようがあるんだけど、それまでの暇つぶしで街を観光だな」
「観光か、ならそこを先に進んだ所にある商店街に行くといい。あそこは食べ歩きがし放題だからな」
「おっいい情報まじでたすかるぜ!旦那とは今後もいい付き合いが出来そうだ」
「俺も同じだよ、俺の名は兵藤一誠アンタは?」
「フリード・セルゼンあっちのおどおどシスターが、アーシア・アルジェントだ。よろしく頼むぜ旦那」
「おう。そんじゃな」
「ばいにゃらー」
同気質の男と運命的な出会いを果たした一誠は、やはりいいことをするといい事が起こるなと関心しながらゆっくりと歩いて学校へと向かった。
それにどこか今後も結構付き合いが長くなるような感じを覚えていた。