問題児が日常を過ごしたかったようですよ   作:たこ焼き屋さん

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激戦を終えた後

 

 

 巷で騒がれる事になった【龍VS不死鳥】のレーティングから二日余りが経過していた。

 

 今でも二人の激闘のシーンだけが切り抜かれた映像が多数で周り、龍と聞けば兵藤一誠、不死鳥と聞けばライザーの名前が上がるほど多大な影響が現れていた。

 

 その話題の中心人物たる二人は

 

 

 

「なぁ普通こういう時は部屋を分けると思わないか?」

 

「なんでも病室が満室なんだとよ、このリンゴ美味いな」

 

「はぁ・・・あんな死闘をしたと言うのに締まらんな。あっ、俺は梨を寄越せ」

 

「ほらよっ」

 

 

 

 冥界屈指の大病院の一室のすぐ真横同士で入院していた。

 

 ライザーの傷は初日に治っているのだが覚醒した【超越者】としての力の計測のためそのまま入院。

 

 一誠は人間離れした回復力を見せているが腹部がやき爛れたのだからまだ完治にさ至っていない。幸いなことに傷口が焼けていたおかげで出血も感染症も起こらずかなり安定して治療ができた。

 

 二人は果実にそのまま齧ぶりついて口いっぱいに果汁を溢れさせて間食を済ませる。

 

 

 

「ふむ・・・何にしてもだ中々良かったよ一誠」

 

「だな。あんだけ興奮した戦いは初めてだ、それにこんな大怪我もな」

 

「それは光栄だ。一誠の初めてを貰えたのだから純粋に喜ぼう」

 

 

 

 廊下で貴金属が落ちる音と共に周りの人に謝る看護婦の声が微かに間扉の隙間から聞こえる。

 

 

 

「にしてもあの力何なんだ?神器でも無いようだが」

 

「さぁな・・・この力はあのクソッタレに植え付けられた力だ。確か”原典”とか言ってたか」

 

「生まれつきではないのか。てっきり生まれつきの力かと思ってたが」

 

「全然そんな事はねぇよ。昔に色々あってなその時に対価を払って植え付けられた」

 

「対価?」

 

 

 

 齧りかけの梨を自分のテーブルに置いてから疑問を聞き返す。

 

 本能でこれは重要な会話なのだとどこかで感じていたのだろう。

 

 

 

「面白い話じゃねぇよ。フードを被った女に『何時の記憶と控えに英雄の力を授けよう』とか言って、両親の記憶を奪いやがった」

 

 

 

 さもそれが日常の会話であるかのように簡単に言ってのけ、どこか他人事であるかのように語るら、

 

 だが、逆にそれはしょうがないのかもしれない。

 

 記憶を奪われたそれが意味する事は

 

 

 

「初めから親がいない。喜怒哀楽全ての感情が両親を知らない。それが当たり前常識だと言わんばかりに世界は普通に回る。それは俺も例外がない。

 

 この話をしても自分の事なのかどうか怪しいと思ってる。現実味がない・・・いやリアリティーがないが正しいか。幾度も家庭を見て回ったけど欲しいとも思わないし憧れもしない」

 

「それは・・・・・・」

 

 

 

 言葉が何一つ続かない。

 

 自分には両親がいない事は想像出来ても、両親が初めから存在していない事は想像が出来ない。

 

 厳しいルールを決めた両親であってもそれは将来の事を考えての事であり、愛情の裏返しのような物。だから本質的には恨んだり憎んだりした事がない。

 

 その感情すらも一誠は感じた事がないと言う。

 

 幼少期にそんなに経験していれば必然的に精神は崩れ並の人間には育たないだろう、一誠の狂った性格がそれを証明してしまっている。

 

 

 

 果実で潤っていたはずの喉から水分が消えた。

 

 

 

「そんな顔すんなよ。俺は別に悲しいとか思ってないんだからよ」

 

 

 

 それは愛を知らないからだと口から出そうになるがぐっと堪える。

 

 愛を知る者が愛を知らない者に愛を知れなど哀れみでしかない。それは一誠が望まない事だ。

 

 

 

「まぁなんだ。俺はお前の好敵手()だからな苦しい事やしたい事があったら言ってくれ手伝うぐらいは出来るからな」

 

「あんがとよ」

 

 

 

 二人は正面を向いたまま掛け布団から一誠は右手、ライザーは左手を出して互いの拳をぶつけ合わせる。

 

 小っ恥ずかしいそうに鼻で笑いまたリンゴと、梨をかぶりつきその日を待った。

 

 

 

△△△△△△△△△△△△△△

 

 

 

 一日後。互いに退院が決定し一誠は最後の検査を終わらせて病室へと戻る。

 

 最後の検査は冥界に訪れた事による肉体への負荷だわ、

 

 冥界は魔素が濃く人間が生きるには明らかに不可能な数値を示していて、訪れただけで穴という穴から血が溢れ死に至る。

 

 それを阻止する護符は存在しており一誠は所持はしていたが、もしかしたら貫通し何かしら異常をきたしている可能性を考慮しての検査だ。結果としては何も反応なく問題が一切無かった。

 

 

 

「にしても・・・冥界て意外と俗世に染まってんな。あんまし日本と変わってないように見えるが」

 

「それもそうだろうな。ここはサーゼクス様の直属の領地、日本をモデルに制作したと言っていたよ。あの人はかなり俗世に染まり切っているからな」

 

 

 

 日本と代わり映えのない高層ビルやコンクリートの建物を眺めながら感想を述べた。

 

 技術力としては魔力を使える分かなり進んでいると期待をしていたが、日本とほぼほぼ同じで少しがっかりしていた。

 

 やはり夢にまで見た人外の街が日本と同じなのにショックは隠せそうにない。日本に訪れた外国人が忍者が居ないことに驚くのと同じ感じだろう。

 

 

 

「全くもう露骨にがっかりしないの」

 

「いやこれっぽっちも全然全く九割しかガッカリしてない」

 

「ほぼじゃない・・・また今度機会が会ったら凄いとこを見せるから」

 

「お?マジか?約束だぞリアス」

 

 

 

 露骨に気分が変わるわねと苦笑いを浮かべながら首を縦に降る。

 

 

 

「そう言えばもう帰るのにいつまでここに居るの?」

 

 

 

 今居る場所は病院の出口から出てすぐの場所。

 

 ライザーは自分の領地に帰るために向かいを待つのは分かるが、一誠はリアスが連れて帰ると言うのに何故か一向に動こうとしない。

 

 そこに疑問を思ってしまったリアスは逃げるのではなく聞く選択をしてしまう。

 

 

 

「そりゃ待ってるからだろ」

 

「待つ?何を?」

 

「なーに焦るなよリアス。貴様がガッカリするような代物ではない」

 

 

 

 満面の笑みで被害者に近づく二人はがっつり肩を掴んで離さない。

 

 

 

「ねぇ、何でそれなら肩を強く掴むの?」

 

「逃げないためだよ」

 

「なんで逃げるなんて選択がでるの?」

 

「なんでってお前がこれからメイドになるからだろ」

 

 

 

 咄嗟に振り返り逃亡を図る。

 

 が、【超越者】と【超越者】以上の戦闘力の持ち主の二人に肩を捕まれ、逃げられる物などこの世に存在しない。

 

 振り返る事は出来ても足が一歩前へ出ることが無く逆に地面へめり込む。

 

 

 

「あははは・・・ねぇ二人とも離してくれない?私用事が」

 

「どんな用事だ?要件によるぜ」

 

「生徒か──」

 

「学園の仕事は女王の朱乃嬢に依頼してある」

 

「・・・グレ──」

 

「グレモリー家の方はサーゼクスがやってるぜ。てかこれもサーゼクス公認でリアスの両親も了承してるからな」

 

(逃げ道が・・・ない・・・!?・・・)

 

 

 

 頭脳ですらトップクラスの二人には所詮凡人より秀でてる程度のリアスが取るような行動は手に取るように考えられ、先回りをして逃げ道を潰すことなどお茶を淹れる如く簡単だ。

 

 逃げ道を完璧に防がれたリアスの額を汗が伝う。

 

 

 

「な、なんで私がメイドに?どこからそんな話が」

 

「おいおいレーティングゲームの賞品は覚えてるか?」

 

「えっ?・・・レーティングゲームのよね?それは勿論自由だけど」

 

「そうだ。そして、そのゲーム勝てたのは俺が居たからだな?」

 

「まぁそうね。貴方が居なきゃ【超越者】のライザーを倒すなんて不可能だったわ。それが何?」

 

「それで俺が勝った。そして賞品はリアスの権利って訳だ」

 

「ちょっ──」

 

 

 

 突然飛躍した答えに後ろを振り向けば

 

 

 

「くくくくく」

 

「ヤハハハハ」

 

 

 

 二人の悪魔が居た。

 

 目が不気味に光り輝き口元は嬉しさからか大きな弧を描いている。

 

 それは玩具を手に入れた子供と同じ笑みだ。

 

 

 

「それは・・・あっ、そもそも私が受けなきゃ」

 

「だから権利としてはリアスに一がある。で、俺が居なきゃ勝てなくて実際勝った。なら、権利が一なんて言わないよな?てか勝ったの俺だし、だから俺が権利を二貰う。そしたら分かるだろ?リアスの権利より俺の方が上」

 

「いやいやさすがにそれは」

 

「さっき言ったろ?サーゼクス及びグレモリー家が同意してるってな」

 

 

 

 勿論愛する愛娘がメイドになるなど普通なら許容出来ないだろう。特にリアスは将来が有望視されている貴族。

 

 そんな者がメイドの真似事などさせられる訳が無い。

 

 だがそこは巧みな一誠の口車によって上手く騙されメイドになる事に許可を出した。サーゼクスに関してはメイド写真を渡す事で手を打つ。

 

 

 

「ははっ冗談・・・よ・・・ね・・・」

 

 

 

 理解した──いや本能が察知した。

 

 この二人は本気だと。本気でメイドにする気だと。

 

 

 

「百歩譲ってメイドになるとして、服はさすがに用意──」

 

「お待たせしました。リアス様に合わせた特注のメイド服完成致しましたのでお届けに上がりました」

 

「完璧のタイミングだユーベルーナ」

 

 

 

 いつもライザーの隣で支える女王は静かにアタッシュケースから綺麗に畳まれた白と黒の女中服──特注のメイド服を手に取り主に渡す。

 

 

 

 完成品を確認するため広げる。

 

 全体的に黒が基調され、胸元は大きく開け放たれ乳房がチラ見所ではなく大胆に見える。そこから締まった腰を強調するように実用性のない白い装飾の前飾りがある。

 

 フリルもかなりあしらわれていて、リアスが着れば妖艶な雰囲気が一気に増すこと間違いなし。

 

 付属品としてミニスカートのため素足を隠すごく一般的なタイツのように見せているが、濡れれば身体に吸着し素足の形を丸写しするこれまた特注品。後はメイド用のフリルがうねりを上げるカチューシャ一つ。

 

 

 

「こ、こ、これを私が?」

 

「YES」

 

「冗談よね」

 

「NO」

 

「・・・・・・土下座をしても」

 

「ダメ。リアス・・・諦めろ。なるようになるさ、時期になれる」

 

「いぃぃぃぃいやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

 少女の悲劇的な叫び声はその日生まれ変わる事を告げる悲しきベルであった。

 

 

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