問題児が日常を過ごしたかったようですよ   作:たこ焼き屋さん

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問題児の理解者

 

 その日の午前から午後にかけた授業は何事もなく終わった。

 

 理科室が吹き飛ぶのは時々あるのでもはや日常である。

 

 

 

「あっーくそ。電子回路をあそこで間違えなければな」

 

「ん?爆弾を作ってたんじゃないのか?明らかに荷重があるなと思ってたけど、爆弾を作るならそうだろうと見逃してた」

 

「言ってくれよ!・・・・・・まぁもうやっちまった後だから良いけどよ」

 

 

 

 反省用紙五枚で理科室を吹き飛ばしたのは許され、適当に文字の量を盛った反省の一欠片もない反省文は受理され三人は帰路へ着くことを許された。

 

 

 

「そう言えばよ知ってるか?三丁目の路地裏に幽霊が出るって話」

 

「幽霊?なんだそれ」

 

 

 

 いつも通りの楽しく自由な会話。

 

 夕暮れに照らされたアスファルトやコンクリートが赤く染まり、いつもの駒王町ではないように感じる。

 

 教室の扉を適当に閉め、階段を下り下駄箱付近に近づいた時、緊急時や職員を呼ぶ時に使われるスピーカーに電気が入る。

 

 

 

『二年生の兵藤一誠くん、直ちに特別指導室へ来てください。繰り返します。二年生の兵藤一誠くん、直ちに──』

 

 

 

 スピーカーから聞こえた声は生徒会長様の声で同じ内容を後二三回繰り返した所で今度は電気が切られ、スピーカーから音が鳴ることは無くなる。

 

 この放送を聞いたとしても聞いてないで通そうと思えば通せる。

 

 それこそ、放課後の一般生徒が帰り部活をしてる学生しかいないこの時間に放送をかけるのがいけない。

 

 とは言え、相手はあの生徒会長だ。

 

 一誠が人生で初めて負けた彼女の呼び出しなのだから行かない訳にもいかない。

 

 

 

「残念、放送通りだ」

 

「仕方ねぇな。生徒会長様ならな・・・あの人の呼び出しを無視ると後がめんどい」

 

「それ、一年の頃無視ったら謎の不幸に見舞われてさ」

 

「俺もだ俺も。一日で十回小指をタンスの角にぶつけたな」

 

 

 

 悪魔の特権をフル活用した嫌がらせに事実を知らない二人は地獄だったなと、身震いしながら語り出す。

 

 この後三人で悲しい男の夜遊びをしようと画策していたのだが、それも放送の呼び出しでまた後日と言う事になる。

 

 

 

「また時間があった時にでも行こうぜ」

 

「だなすまん」

 

「いいってことよ。なぁ元浜」

 

「おうともさ松田」

 

 

 

 男の暑い有情が育まれ彼ら三人が問題児でなければ微笑ましい光景だ。

 

 

 

 残り惜しいが一誠は二人から離れ特別指導室へと向かう。

 

 特別指導室は生徒会室に隣接する形で設計された特殊な部屋で、爆弾が爆発しても外に音を一切漏らさない完璧な防音設備が整ってる駒王学園の名物室。

 

 昔はこの特別指導室にて、力による説教や教えをしていたなどと噂が流れているいわく付きである。

 

 

 

 一誠自身も噂や通りがかりで見てきた程度で実際に中に入るのは初めてであった。

 

 

 

(やっぱり外から見ると普通の部屋なんだよな)

 

 

 

 外観は至ってシンプルな黒い木の二枚扉。

 

 校長室の扉とかなり近いデザインで、違いと言えばドアノブが校長室の金ではなく銀な程度。

 

 煌めくドアノブを捻り押し込む。

 

 ゆっくりと木の擦れる音が鳴りつつ扉同士の隙間から光が漏れる。

 

 

 

「来たわね一誠くん」

 

「おう来たぜ」

 

 

 

 そこに居たのは入ると同時に振り向いた支取蒼那ことソーナ・シトリーだ。

 

 

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

 

 二人が会うのはかなり久しぶりである。

 

 方や生徒会長の激務をこなしつつ悪魔家業も疎かにしていない超優等生で、言わずもがなもう一人は圧倒的な問題児。

 

 混ぜるな危険。水と油。そのように外から見た者は考えるだろう。

 

 しかし、二人はとある出来事から他の人、一誠に関して言えば元浜や松田達よりも深い関係にすらある。

 

 

 

 その二人の再会。

 

 ソーナは待ちに待ち焦がれた時ではあるが、隠し事をしていたせいで思うように声をかけられない。

 

 

 

「気にすんなよ。人外じみた俺だ、そんな俺に近づく物好きは馬鹿か人外だからな。アンタが悪魔だって知って逆に納得してる」

 

「けど」

 

「俺が気にすんなって言ってんだからそれで納得しとけ、なっ?ソーナ」

 

 

 

 自分を責め続けるソーナの傍らにより頭に手を乗せる。

 

 駄々を捏ねた子供をあやす様に、艶々しく軽やかな髪を揉みしだく。

 

 これではどちらが年上か分からないが、この時ばかりはソーナが王でも生徒会長でもなく──一人の女として、ソーナとして居れる。

 

 

 

「全く本当に変わりませんね、昔から撫でるこの手だけは」

 

「心外だな。純粋さは昔から変わっていないぜ?こんなに礼儀正しいくて優しい人間なんかいないぞ」

 

「そう言う傲慢な態度は確かに変わってませんね」

 

 

 

 自身より背の高い彼の顔を見上げながら微笑む。

 

 微笑んだタイミングおでこにデコピンを食らわせさっさと黒いソファーへ腰を下ろす。

 

 デコピンされたおでこを抑えソーナはむぅと頬を膨らませながら対面のソファーに座る。

 

 

 

「で、なんでわざわざ呼んだんだ?それなりの理由があるんだろ?」

 

「えぇそうです。今回呼んだのは貴方の今後についてです」

 

 

 

 予め準備しておいた書類の束の片方を一誠へと渡し一ページ目を捲る。

 

 

 

「昔から一誠くんは欠席が多かったです。けれどそれも、ある程度計算してギリギリのラインを守ってきました。ですがレーティングゲーム参加など、休む場合が増えこのままのペースだと留年してしまいます。そこのところどのように考えているのですか?」

 

「それならリアス達も休んでるだろ?」

 

「彼女らはあの後に補習等で賄っています。先生から通達があったと思いますが・・・」

 

「そうだったか?俺は聞いて」

 

 

 

 ──突然大きな音が鳴る。

 

 ソーナはソファーから飛び上がりその爆発の大きさを物語る。

 

 爆発が日常的に起こるはずのない駒王学園で校舎を揺るがすほどの威力はふつうあり得ない。当然、一誠は原因について知らないのだが、心当たりのあるソーナはデコピンの痛さではなく別の痛さで抑える。

 

 ぜひとも何が起こったのか知りたいのだが、ソーナは言及したくないようで話を逸らす。

 

 

 

「はぁ・・・書類などの何もかもに目を通しています。渡しているのも確認済み、誤魔化そうと思わないでくださいね?」

 

「へーい。面倒くさくてバックれた」

 

「・・・・・・逆にそこまで開き直られると返す言葉がありません」

 

 

 

 今は逸らした意思をくみ取りすぐに返答し、下手に誤魔化せば拳骨の二つや三つ魔法の三つや四つ飛んできそうなので正直に包み隠さず大人しく答えた。

 

 いつものように暴走したり暴れたりしないのは、やはりソーナに救われた恩があるからこそだろう。そこを学校側も分かっているのか一誠に対して極力はソーナ向かわせるようにしている。

 

 

 

「とりあえずその事などを踏まえ補習授業を行います」

 

「ゲッ・・・帰っていいか?」

 

「ダメです。こればかりは大人しく受けてもらいます。もし逃げたら地の果てまで追いかけるのでそのつもりで」

 

「はぁ・・・分かった、大人しく受ける。じゃあこの話はここまでで、本当の理由を教えろよ」

 

 

 

 空気が一変する。

 

 先程まではソーナが場を支配していたが、簡潔にそれでいて核心をつく一言に表情が凍る。

 

 

 

「建前だろそれ。本当の目的は俺の行動を制限する事だ違うか?」

 

「・・・なぜそう考えたのですか?」

 

「はっ、そりゃわざわざアンタが放送を使ったからだぜ生徒会長様(ソーナ)

 

 

 

 推理小説の終盤のように持ち前の推理を堂々と語る。

 

 

 

「俺を名前で呼ぶ時はプライベートだ。けど、その場合生徒会長としての特権は常に使用しない。職権乱用とか嫌いな真面目な性格をしてるからな。

 

 だが今回は使った。もし、これがプライベートなら職権乱用をした事になる。それは絶対にありえない、ソーナと言う性格からして絶対だ。となると、ここまでの話は仕事としての話──生徒会長としての物だ。嘘だとは言わないが本質じゃない。ご満足したか?ここまでが作戦なんだろ?ソーナがこんか初歩的なミスはしない、となれば故意だろうよ」

 

 

 

 完璧すぎる推理にため息を零した。

 

 元のソファーに座り直してから、諦めて隠していた事を全て暴露していく。

 

 

 

「一誠くんに隠し事をするなんて意味ないって私は知ってるのよ。貴方の性格を一番熟知してる私からしたらね。一度推理する材料を渡せばそこから簡単に推理してしまう、リアスから言われたのは隠せるレベルで隠してとの事。バレたらなら語るのが通りよ」

 

 

 

 言わば初めのファーストコンタクトから既に種は仕掛けおいていた。

 

 後は勝手に推理して物事の本質に気づく一誠の性格から遅かれ早かれ特定された事だ。

 

 一誠に対して隠し事をすれば逆にそこへ全身を突っ込む。

 

 ならば最初から隠さなければ突っ込む愚かな真似もしない。と、ソーナは考えリアスのお願いを実行しつつ一誠に特定させた。

 

 

 

「実はね──」

 

 

 

 思惑通りに動いてくれた一誠に今回の事の真実を語る。

 

 特別指導室とは別の部屋、オカルト研究部で現在起こっている状況について一から話す事にした。

 

 

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