服が破けそこから滴る血により、白い肌は色っぽく映る。
その箇所に雑に布を巻きながら
「すまない、彼に怪我を負わせてしまったかもしれない」
「あの子は大丈夫よ。悪魔の頑丈さを舐めないで、それより貴方の方が重症よね」
「この程度の怪我問題ない。肉を沢山食べれば勝手に治る」
本当に人間なのか疑いたくなる答えに驚きながらも頭を下げる。
今回の件どちらが悪いのかは明白。
非行に走った眷属を諌められずその相手に怪我まで負わせてしまったのだから、これで二種族間における関係が悪化など起これば大戦争の幕開けとなってしまう。
「ごめんなさい本当に・・・」
「気にしなくていい。それに・・・なぁイリナ、君は何か見たか?私が怪我を負ったのは鍛錬の最中だよな」
「えぇそうね、一人の鍛錬ではなく二人で行う鍛錬で負った傷よ。鍛錬で怪我をするのはいつもの事だし何の問題もないわ」
「だそうだよ」
「二人共ありがとう」
寛大な措置に深々く頭を下げ感謝を示す。
これにより両種族の関係が悪化し戦争に発展する事は無いだろう。
「祐斗はどう朱乃」
「完全に気絶してますわ、保健室に連れて行くから先に部室に戻っていて」
「そっちの事は頼むわ」
朱乃は軽々と祐斗を抱き抱え部室から離れ本棟の一階にある保健室へと向かう。
小猫も付き添おうとしたが「一人で大丈夫よ」と拒否され、その場に残る事になる。
「順序がと言うか話がかなり脱線したけど、改めて話をしましょう」
「それで構わない・・・だけど、その前にシャワーを借りていいか?一応こう見えて女なのでね、身だしなみにはそこそこ気を使っているんだ」
確かにその言葉通り戦闘や隠密の邪魔になる香水などは付けていないが、髪の保湿を保つ無臭のオイルを塗っていて薄くメイクもしている。
そこを見れば女性なのだとさっきの戦闘を思い出しながら考えつつ、部室に備え付けてあるシャワー室に案内をしようとする。
「あっ、シャワー室は壊れたのよね。と言うより、修復を後回しにしてて直すのを忘れてた」
「むっそれは困った」
ライザーに殴り込んでくれた一誠のおかげでオカルト研究部の備品や設備は壊れ、修復をする事になるのだがついでと改修も行っていた。
一誠の家に住むようになってからシャワー室より、大浴場付きの家のお風呂の方が気持ちがいいとそっちばかりを使うので、ついつい設置を後回しにしていてほぼ改修も終わっているのに忘れていた。
その改修も先程壊されほぼではなくなってしまったが。
(どうしようかしら。部室の方にシャワー室は壊れてる・・・けど、一誠には)
今までこの街で過ごして初めてと言うぐらい大事件に巻き込まれてきた。
その全てに【兵藤一誠】の存在は欠かせない。堕天使の最初の標的にされ、レーティング・ゲームの勝利に不可欠であった。
まるで彼を中心に世界が回ろうと動き始めたように。
そんな彼だが、化け物じみてても人間である。
車に跳ねられば死ね──ない。
高層ビルから落ちてもし──なない。
銃で撃たれても──死ぬことはないだろう。
本当に人間?とまた思うが、それでも百年あまりしか彼は生きれない。肉体などを調べたがそれは確定的だった。
分類学上はしっかりと人間と定義され短い命を燃やして生活している。
人間をこれ以上こちら側に関わらせていいわけが無い。
本来は問題児三人衆などと呼ばれ続け、楽しく命の危険もない人生を送るはずだ。
それを壊してしまったのはリアスが張本人で、何度も何度も後悔し続けながらもどこか彼がいるから大丈夫だと思うようになっていた。
昔はそんな事はなかった。
一人の王として、主として、悪魔として、誰にも頼らず自分の力だけでたち続けてきたはず。
それが腑抜け他人に全てを託すようになっている。
ダメだ。駄目だ。だめだ。
だから今回は一誠は排除し兄に伝えずに事を進めている。自分だけの力でも充分なのだと勇気を得るために。
(・・・・・・・・・・・・)
そのはずだったのに、眷属は暴走し部室はいくつかの場所が壊れた。
情けなく哀れだ。
「仕方ない・・・私達のホームにお風呂があるからそっちを使って。ただし、そこには人間が住んでるからできる限り関わらないで」
「了解した。それで汗を流せるならいい」
自身の不手際を帳消しにするためにまた彼に頼ってしまう。
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
「なるほどな。それでわざわざ関わらせないように俺をここに呼んだのか」
「リアスもここ最近メイド服で特攻してきたりおかしな箇所が目立つのよ。制服にしなさいと言ったら制服ぽくしたメイド服着るし、行動の意味がまるで分からない」
その全ての原因は一誠ですと知らないソーナは嘆く。
外と空間が隔絶されている影響で、二人の戦闘音や衝撃は伝わらず何も起こっていないと思っていた。
「それだったら正直に言えば別に関わらないんだがな」
「ならこのボタンを押しちゃダメよ」
机の裏側に付いていたボタンを取り外して一誠の前に置く。
もちろん、先程自分で語ったように【ダメ】と言われればその事はしない──はずもなく人差し指で置かれた直後に押す。
「リアスもこれが分かってるから言わないんでしょ」
「バレちまったか、聖剣だとか聖剣使いだとか興味が唆られるネームが並んでて超関わりてぇ・・・てか関わるわ」
「一誠これは仕事でも何でもない、貴方の理解者としての発言”これ以上、こちら側に関わらないで”」
ソーナが初めて見せた明確な拒絶である。
仕事や業務として拒絶する事はあっても一友人として拒絶を示したのは、長い人生の中でまだ一度もなかった。
それだけ、関わらせたくない思いが強いと言うことでもある。
「・・・・・・分かったよ。今回は進んで関わらない」
「ホントね?」
「あぁソーナに面と向かって言われれば無下に出来ねぇよ」
頭の後ろで手を組んで飄々とした表情で誓う。
「ならいいわ、これで一安心」
「じゃあもう帰っていいか?これ以上ここにいるメリット無いんだが」
「そうね・・・時間も時間だし良いでしょう。真っ直ぐ家に帰るのよ」
隔絶されていた空間は接続され特別指導室としての学校の一教室へと様変わりする。
内装は一切変貌していないが体感として空気が軽くなったような気がする。
「また今度生徒会室行く時は菓子でも持っていくよ」
「一誠くんのお菓子は美味しいと好評ですので是非お願い」
「おう」
カバンを肩からかけるようにして持ち上げヒョイっとドアから出ていく。
特に何か待ち構えている事はなくいつもの静かな放課後の廊下が広がっている。
「くうっっ・・・っぁ・・・・・・良かった、一誠くん許してくれた」
一誠が姿を消して数秒の間を開けてから年相応の声を漏らす。
ずっと騙してきた嘘が発覚しそれにより嫌われたらどうしようと、思考がその事ばかりを考えていたが許され一安心し気が一気に緩む。
ソファーに体重を預けていきスカートが捲れ、生徒会長にあるまじき格好を取るが今ここで起こる人物はいない。
「それにしてもリアス一緒に住んでるのよね?それもメイド姿で・・・・・・私ですらした事ないのに!!ずるいずるいぶるいずるい!」
食事を作り、背を流し、夜のお務めをする。
なんて羨ましいと身悶えしながら妄想を膨らませていく。
この状態になったソーナは当分戻らず迎えに来た椿姫の見られるまでこのままであった。