問題児が日常を過ごしたかったようですよ   作:たこ焼き屋さん

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ひと時の安らぎは一瞬で去る

 

「それじゃあ話の続きといきましょう」

 

「そうだな。彼もいない事だし」

 

 

 

 部外者である一誠が居なくなった事でやっと中断していた、訪問の理由が判明する。

 

 

 

「ふむ・・・どこまで話した?」

 

「行動の自由と私たちがどちら側につくかって所よ」

 

「そうだったな。なら簡潔に言おう」

 

 

 

 ここまで右往左往ありタイミングが伸びたが、ゼノヴィア達はリアス達に求めたのはあまりにも不自然な事だ。

 

 行動の自由、これに関しては聖剣使いが悪魔の領地を彷徨くのだから問題ない。

 

 誰の見方か求める。これはあまりにも不自然だ。

 

 まるでその言い方では天使以外の別勢力がこの町に潜伏しているかのような言い草なのだから。

 

 

 

「この町は滅びる」

 

「え?」

 

「ん?」

 

「はぁ・・・まとめ過ぎよ。もう私が変わるわ、初めからこうしてれば良かったのね」

 

 

 

 簡潔にまとめると言ったが簡潔にまとめすぎて何を言ってるのかさっぱりのゼノヴィアの代わりに、幾分かまともに喋れるイリナが口を開く。

 

 

 

「過去の大戦で分割されたエクスカリバー、その内の六本を私達は保有している。残りの一本は相変わらず行方不明・・・この点は理解してるわよね?」

 

「えぇもちろん。で、今回わざわざその聖剣(エクスカリバー)使いがこの町に訪れたのと何か関係があるの?」

 

「六本中四本が無理矢理強奪されたの」

 

「なっ!!!」

 

 

 

 三種族が休戦している今ではどこかの陣営が襲撃されるなんて事はまず無かった。

 

 人間世界に紛れているはぐれ悪魔が教会の戦士に討伐される事などは合ったが、それは人間を守るための戦闘で冥界側にとっても敵なので黙認していた。

 

 もちろんこの世には天使、悪魔、堕天使、以外の種族も居るには居るが表立って行動する種族は三種族だけなのである。

 

 そのはずが教会側が襲われあまつさえ聖剣が奪われたなどと、行った種族が種族なら休戦が終わるような大事件に他ならない。

 

 

 

「聖剣を盗んだのは聖書にすらその名が載っているビッグネーム──コカビエル。堕天使の中で幹部に位置するかなり危険な存在よ」

 

 

 

 リアスの想像しうる上で最悪の悲劇だ。

 

 三種族の内の一つ──堕天使が天使側に宣戦布告仕掛けたのと同意義の大事件。

 

 既に彼女一人でどうにかできるレベルの事件ではなくなった。

 

 普通ならこの時点で魔王等に掛け合うのが正解なのだが、今のリアスにその選択肢はない。いつまでも一誠に助けて貰い続けるのを脱するのに必死で思い浮かばなかった。

 

 

 

「・・・・・・まさか!コカビエルが来ているの?この町に!!」

 

「残念ながらね。この事件はかなりの大事よ、教会上層部がすぐに収拾に乗り出すけども後手後手で、もうこの町に逃げ込まれた後になってしまった」

 

 

 

 朱乃もこの事実に唖然としていた。

 

 教会に宣戦布告した相手がこの町に逃げ込んできた、故意であれ偶然であれ黙っていられる問題ではない。

 

 

 

「なるほどね、だから貴方達二人しか教会は派遣しなかったのね」

 

 

 

 それに同意するようにイリナは頷く。

 

 

 

 リアスは今出された情報から教会から逃げたコカビエルを追いこの町に辿り着いた事に気づいた。

 

 逃げた者を追う直後はかなりの人数が居た事だろう。百や千はくだらない。

 

 その人数全てが武装しこの町へ侵入してきたとしたら・・・それは天使側からの悪魔への宣戦布告と読み取れてしまう。

 

 魔王とは別の意思決定機関の長老達がこれを見逃す程バカではない。

 

 止まった戦争がまた動きだし多くの血が流れ、今度こそいずれかの種族がこの世から消える事になる。

 

 

 

 それでも追わねば堕天使と天使は結託していると戦争を再開する口実にもなってしまう。

 

 だから二人という最初人数で戦場へと派遣したのだ。

 

 最悪死んでもいいラインでありながら勝てる可能性を少しでも含んでいる二人を。

 

 

 

「貴方達は理解してるの?対戦時代にあの大虐殺を起こしたコカビエル相手に二人だけなんて」

 

「まず持って勝てないでしょうね。多く見積っても一%未満・・・本当にやな仕事──けどやらないわけには行かない。私達は教会に拾われ育てられ剣となると誓った身、例え死ぬと分かっていても戦う。それが宿命」

 

 

 

 もしリアスがその立場であれば絶対にこの仕事は受けない。

 

 確かに恩義も大切だがそれ以上に自身の命の方が大事なのだ。見知らぬ誰かより知っている誰かを守るそれが普通の思考。

 

 彼女らの思考では自身より他人を優先する歪な価値観があった。

 

 それこそが戦士となる上での絶対条件なのかもしれない。

 

 

 

 その覚悟を示す彼女らに自然と冷や汗が滲む。

 

 

 

「一応助っ人もいるのよね・・・ただ異常に遅れてるだけで。日本に帰るなら実家に挨拶をしてから行くなんて言って、どこかに姿を消したわ……自由人目」

 

「大変そうね貴方も」

 

「ゼノヴィアと暴走機関車(アレ)に囲まれるなんて地獄以外の何物でもない」

 

 

 

 かなり鬱憤が溜まってたのか眉間に血管が浮かぶ形相で語る。それを聞きショックを受けたゼノヴィアはソファーの上で、体操座りをして膝に円を指で描き続ける。

 

 

 

「そんな話は置いておいて、それで貴方達の立場を聞いて起きたかったの。堕天使につく?天使(私達)につく?」

 

 

 

 ここでの返答が今後の冥界を揺るがす重要なファクターになるだろう。

 

 選択を誤れば滅び、正解すれば生きる。この二択だ。

 

 

 

(順当に言えば天使側よね。堕天使と結託する理由も何も無い、戦争を再開させるわけにも・・・再開?まってそうなると天使側にもつけない)

 

 

 

 天使側と返答する直前にこの考えの過ちに気づく。

 

 確かに堕天使に付かないのなら天使に付くのが普通に見えるが、敵の敵が味方とも限らない上に戦争が再開してしまう。

 

 

 

 ここまでの話を全て信用すれば天使と協力しコカビエルを撃退または殺害する。

 

 そうすれば仇をとるのに躍起になり堕天使側が総攻撃を仕掛けてくる事になる。幹部の一人であるコカビエルが殺られればその道は回避できない。

 

 敵に狙われる二種族と同盟を結ぶに十分すぎる理由。

 

 同盟を繋ぎ多数の血を流して堕天使を滅ぼす。それは正しく戦争にほかならない。

 

 

 

「どちらにもつかない。悪魔は悪魔──私達の信念の元に行動するわ、だけどこれだけは約束する。決して堕天使と結託はしないしするつもりもない」

 

「神・・・貴方達で言うところのソロモンに誓える?」

 

「もちろんソロモンに誓って」

 

「ならおっけー・・・これで安心できるわね。はぁ良かった後はコカビエルをどうにかできれば良いんだけど」

 

「そればっかりは私達でもどうにでも出来ないわね」

 

 

 

 互いに緊張が解けたのか口調が少しマイルドになり親しみが増した。

 

 それでも本来は敵同士なので必要以上に関わろうとしない。

 

 

 

 ふと、時計を見れば一誠が出て言ってから三十分が経過していた。

 

 何時もならとっくに帰ってきそうな時間であるが、そのような気配はまだ微塵もない。なので一息入れるために立ち上がりキッチンへと向かう。

 

 

 

「二人共紅茶に砂糖かミルクは入れるかしら?」

 

「両方ともお願いします」

 

「ストレートで頼む」

 

 

 

 二人の注文を受け取りメイドとしての本領を発揮する。

 

 水を沸騰直前まで一気に温度を上げる。この間にガラスのポッドに常に湧いてる湯ポッドのお湯を入れ温めておく。

 

 沸騰直前まで至ったらポッドの湯を捨てティースプーンでしっかりと測って投入し、一気にお湯を注ぐ。

 

 すると紅茶の芳しい匂いがキッチンからリビングに居る三人の元へ届く。

 

 そこからは時間勝負、蓋をして二分間蒸らすので適当な摘む焼き菓子を皿に乗せ、ミルクと砂糖を用意テーブルへ運ぶ。

 

 二分が経過しリビングへ運び四人分のティーカップへ淹れる。

 

 

 

「どうぞ召し上がれ」

 

「凄いなこれが悪魔の王なのか」

 

「王よりメイドの方が向いてる気がするわよ」

 

 

 

 二人共凄まじい手際に驚いて純粋に賞賛の声しかかけられない。

 

 その言葉に何故か嬉しそうに笑い一息つく。

 

 話で疲れた身体全体に生気が戻っていく。紅茶はやはり最強の飲みのもだと考えながら小さく何回も口に運ぶ。

 

 三人も同じようで頬が緩んでいる。

 

 

 

 と、和やかな空間が出来つつある中玄関の開閉音がリビングに届きやっと帰宅したとドアを向く。

 

 遅いの一つでも言おうとあの問題児を思い浮かべ待つがドアを開けたのは、全身から汗を吹き出し血が滴る眷属の小猫だった。

 

 

 

「一誠先・・・輩・・・・・・がぁ・・・死んじゃいます!助けてください!!」

 

 

 

 焦燥し疲労が目に見てわかる状態の下僕が告げたのは雷が落ちたような衝撃だった。

 

 手元からカップが落ちカーペットを紅茶が侵食していく。

 

 

 

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