問題児が日常を過ごしたかったようですよ   作:たこ焼き屋さん

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悪魔の悲劇

 

 

 駒王学園の本棟裏にある旧校舎──オカルト研究部の部室では日夜悪魔達が闊歩していた。駒王町の管理者として人外を抑え込むため力を誇示し続ける赤髪の少女。

 

 その美貌は数多の男をウィンク一つで落としてしまう、まさに悪魔のような美貌を持っているリアス・グレモリー。

 

 

 

 冥界を支配する四大魔王の妹君にして、他の悪魔とは格段に違う特殊な魔力を持っているので実力も折り紙付きだ。そんなリアスは机に突っ伏しながらココ最近の激務の愚痴をこぼす。

 

 

 

「多いわ・・・なんでこんなに」

 

「まぁまぁ部長、随分とお疲れのようですわね」

 

 

 

 辺りに散々している書類の山を超えて現れたのはリアスの劣らずの美貌を持つ黒髪の少女──姫島朱乃だ。

 

 来ている服はピッチリと身体に吸い付いていてそのあまりある体型を惜しげも無く見せつける上に、一度微笑めば既婚者だろうと彼女が居ようと独身だろうと恋に落とすことは間違いない。

 

 

 

 二人は同じ駒王学園の三年生にして、知らぬ者はいないとすらされている二大お嬢様である。

 

 

 

 そんな二人が同じ空間にいるだけで学園の生徒が見れば卒倒物だろう。されどそこには唯一の男が騎士のように立っている。

 

 

 

「昨日ははぐれ悪魔を狩った後に契約者の依頼を数件解決してましたから、疲れるのも無理ないです」

 

「あら、そうなのね。私の方もはぐれ悪魔を退治したのだけど・・・出現数が多くないかしら?」

 

「確かに例年に比べると多いですが、誤差の範囲内だと思います」

 

 

 

 駒王学園にお嬢様が居るのならば王子様がいてもおかしくはない。

 

 日本人では似合わない黄金の髪が食パンとバターのように互いを高め合う相乗効果を産み、左目の涙ボクロがチャーミングポイントの少年、木場祐斗は朱乃に笑顔で返答をする。

 

 うふふ、ありがとうと相槌を返すように朱乃は返答すると淹れたての紅茶をリアスの前に置く。

 

 

 

「とりあえずこれでも飲んで落ち着くといいわ」

 

「ありがとう朱乃」

 

 

 

 ため息を吐きながら上体を起こし角砂糖を一つ加えて飲む。

 

 

 

「祐斗君はどう?」

 

「大丈夫です。そろそろ鍛錬の時間なので」

 

「分かったわ・・・で大丈夫なの?本当に大変なら休んでも」

 

「問題ない・・・と言いたいけどいい加減仕事が多すぎるわね、ソーナにも手伝ってもらいたいんだけど何だか別の仕事?が立て込んでるらしくてね・・・はぁ、せめて事務仕事が出来る人がもう一人居たらねって考えちゃうわ」

 

 

 

 湯気の立つ紅茶を机に置いて一息吐く。

 

 紅茶の一休みによって身体のある程度のリフレッシュが完了した。今日は学校もない土曜日だと言う事も大いに関係している。

 

 

 

 オカルト研究部には計五人入部している。その内一人は能力の危険性から封印されているので事務仕事を任せられない。

 

 他はとなると一年生の塔城小猫はそこまでの知識は無く、二年生の祐斗も同様だ。ギリギリ朱乃も出来なくはないが、及第点でありリアスとやれば足を引っ張ってしまうので参加はできない。

 

 そのせいもありしわ寄せがリアス一人に集まってしまっているのだ。

 

 

 

「そうだ、この後駅前のケーキ屋に行かない?イチゴのショートケーキが有名らしいの」

 

「そうね、祐斗も鍛錬で出ていくし気晴らしも必要か・・・おっけ行きましょ」

 

「ふふ、それじゃあ今から席の予──」

 

 

 

ピピピッ!

 

 これから出かけようとした時に町に起きた異変を告げるアラームが鳴り響く。

 

 

 

「これは、朱乃!地図を出して」

 

「ええ」

 

 

 

 朱乃は慌てて後ろの棚の引き出しから円筒に包まれた地図を取り出し、机の上に目一杯広げる。その地図は駒王町を記した物だ。

 

 市販で売られている物であり裏路地、新設された道路なども載っている完全版だ。

 

 その地図をリアスは覗き込むように見下ろし机の隅に置いてある赤い石を、地図の中心地点に設置し魔力を流す。

 

 

 

 赤い稲妻が迸ったかと思うと石はひとりでに動き出し一つの地点で停止する。

 

 

 

「駒王公園、直ぐに向かうわ!祐斗は小猫に辺りの警戒をするように連絡を、朱乃は私と一緒に来て」

 

「了解です」

 

「分かったわ」

 

 

 

 リアスの迅速な指示通り祐斗は電話でもう一人の部員の小猫へと連絡をし始め、リアスと朱乃は地面に展開した公園へと転移する魔法陣の上に乗る。

 

 魔法陣は二人が乗ると高速で回転を初め地脈を龍脈を読み取り光が包み──こまなかった。魔法陣はその稼働を停止させ転移魔法陣は起動しない。

 

 

 

「なっまさか結界ッ!!どこの誰、このタイミングで結界を使うなんて・・・ソーナからはそんな事打診されてないわ」

 

「となるとまずいわ。別勢力の介入の可能性が高い、急いで向かわないと」

 

「今書き換えてるから少し待って」

 

 

 

 人払いの結界及び転移無効の結界が公園を囲むように展開されているせいで転移が出来なかった。発生地点から離れたこの場所から結界を破壊するなどできる訳もなく、出来ることと言えば範囲外に転移する事だが、一体どれほどの範囲で展開されているのかが分からない。

 

 だからと言えど遠くに転移しては無駄であり限界ギリギリの範囲に飛ばねばならない、その事を考慮しながら計算していると──今度は結界が消失した。

 

 

 

「は?何が起きてるの、全然意味がわからない」

 

「これは戦闘かしら・・・この数分で戦闘が終わったとなると、情報が掴めなくなるわ」

 

「あぁもう!せっかく書き換えたのに!!祐斗連絡は終わったわね、なら一緒に来なさい」

 

「は、はい」

 

 

 

 せっかくの労力が無駄にされた事に怒りをあらわにし、原因が誰であれ捕まえて情報を聞き出さなければ虫の居所が収まらない。急いで設定を戻し転移魔法陣を起動させる。

 

 魔法陣は回転を始め魔力を放出、光が三人を包み込んで数秒も経たずにその場から魔法陣ごと姿が消える。

 

 残ったのはまだ暖かい湯気の立ち込める二杯の紅茶だけだった。

 

 

 

□□□□□□□

 

 

 

 リアス達が転移する事数時間前、私服に身を包んだ兵藤一誠は駅前で一人立って待っていた。

 

 

 

 この日、学校のない休日たる土曜日にカップル定番のデートに出かけることになった。数少ない友に彼女が出来たと報告した時は祝えや踊れやどんちゃん騒ぎになり、収拾がつかない惨事だったが特に問題はなかった。

 

 そして、カップルなのだからと夕麻の方からデートの誘いの連絡が飛んできて、断る理由も無いので了承し今に至る。

 

 

 

「ごめんなさーい。はぁ、はぁ・・・遅れました一誠君」

 

「ん、あぁ問題ねぇよ今来たところだからな」

 

「そうですか・・・」

 

 

 

 彼氏彼女の定番のやり取りをしてから二人は駅前を離れる事にした。

 

 この日の予定は正確には決めていないが色々と歩き回るとの事でまずは駅前のケーキ屋へと足を向けた。時刻は昼過ぎという事もあってか少し混んでいて、数分待たされてから店内へと案内される。

 

 

 

 内装はかなり落ち着き目で、店内BGMは風が木々を揺らすようなゆったりとしたものが多く、至る所の木があしらわれていて心が安らぐ。

 

 

 

「私はイチゴのショートケーキとミルクティーで」

 

「俺はチョコレートケーキとホットのコーヒーだな」

 

「はい、畏まりました少々お待ちください」

 

 

 

 注文を受けた店員は直ぐに次のテーブルに向かう。

 

 

 

「ここのケーキは有名らしいですよ」

 

「へぇそうなのか。あんまりこう言う店は来ないからな・・・男同士で入るのは何か違うだろ?」

 

「確かにそうですね、どちらかと言えば女子の方が多いようですから」

 

 

 

 ケーキを待つ間はたわいもない会話を続けていく。

 

 

 

「学校ではどうなんですか?」

 

「普通だよ普通。逆に暇すぎていつもつまらないな」

 

「今はどうですか、暇ですか?」

 

「ヤハハハ!暇と言えば暇だな」

 

「むぅ辛辣です!」

 

「不貞腐れんなよまだ始まったばかりだからな」

 

 

 

 傍から見れば立派なカップルに見える行動や会話は見事としか言い様がない。周りで二人の会話を聞いてる人達はブラックコーヒーが欲しいと嘆く者達が続出する。

 

 それに対してコーヒーが有名なのか?と首を傾げる二人は余計にタチが悪い。

 

 

 

 注文したケーキは見た目も味も完璧であり有名なだけはあると、一誠の舌を巻かさた。その後も雑談をし二人は店を出ていった。

 

 

 

 服屋、アクセサリーショップ、本屋さんなど色々な所を見て周り初デートとしては満足のいく結果となった。

 

 デート終盤、夕暮れに沈む太陽をバックに二人は公園へと足を運んでいた。

 

 

 

「んんーはっ・・・今日は楽しかったよ、ありがとね一誠君」

 

「気にすることは無いぜ」

 

 

 

 今日一日の会計は全て一誠が受け持つ事になったが、金など腐るほど持っている一誠には心底どうでもいい。けど、相手はそうは思っていないようだ。

 

 

 

「お金を返せと言われたらさすがに無理だけど、何か絶対に返すね。うんん、絶対に返して上げるよ」

 

「期待しないで待っとくよ」

 

 

 

 二人はゆっくり歩きながら木のベンチへと向かう。その過程で一誠は自販機に飲み物を購入してから向かうので、先に夕麻が座って待っている。

 

 

 

「ほらよ」

 

「おっとと」

 

 

 

 投げ渡された缶コーヒーを数度バウンドさせながらキャッチする。缶コーヒーは甘めのタイプ、今日一日で好みを覚たようだ。

 

 二人は互いに一口飲んでから空を見上げる。

 

 

 

「優しいよね一誠君は」

 

「優しい?随分と見る目がないな、俺は俺の好きなように生きてるだけだ。その過程でたまたまお前に優しくしたように感じただけだろ」

 

「そう言う所だよ・・・そうやって自分に近づけ過ぎないようにしている所・・・優しいよ一誠君はね」

 

 

 

 ははは、と気の抜けた愛想笑いをする。

 

 それを疑問にすら思わない一誠は飲み終えた缶をゴミ箱へと投げ捨てる。缶は縁に当たって中央へと落ち他のゴミ達と同化する。

 

 それを真似するように夕麻も缶を投げ捨てる。缶は縁に当たるも外へと跳ね、地面に転がる。

 

 

 

「あはははは、外れちゃった。ちゃんと捨ててくるね」

 

 

 

 立ち上がって小走り気味に缶へ近づき、今度は投げずにしっかりと入れる。

 

 

 

 一度空を見上げ視線を戻した夕麻は、

 

 

 

「ねぇ・・・したい?」

 

 

 

 告白するかのように告げた。

 

 夕暮れに照らされる夕麻の顔は紅く見え、手を後ろで交差させながらもじもじしている。デートの終盤と来たら城跡通りアレのことを指しているはずだ。

 

 

 

「いいのかよ、まだあって数日だぞ?」

 

「いいんだよ。一誠君とは今日一日一緒にいて分かったもの、ね・・・だからしょっ?」

 

「とんだ物好きだな・・・まぁいいぜ、やるか」

 

 

 

 了承の返事をしてベンチから立ち上がり夕麻の前まで移動する。

 

 

 

「目を閉じてね、恥ずかしいから」

 

「キス顔見たかったんだけどな」

 

「恥ずかしい事を言わないの!全くもうそんな事じゃして上げないよ」

 

「そりゃ勘弁だ」

 

 

 

 そっと目を閉じてその時を待つ。

 

 

 

 夕麻は足を伸ばして高さを上げ唇と唇を重ね──その瞬間に手元に光を収縮させて光の剣を精製。人間の急所たる心臓目がけて一思いに突き刺す。

 

 

 

 光の剣は確かに夕麻が持っても問題ないがそれは自分の魔力を使っているからであり、触れればどんな人間でも簡単に殺すことが出来る。だからこそ、

 

 

 

「なんで・・・」

 

「やっと本性を出したか、待ちくたびれたぜ」

 

 

 

 胸部を貫くはずの光の剣を握りつぶしていた一誠に驚きを顕にしてしまう。

 

 屈託なく笑うその様は正しく化け物と呼ぶに相応しい存在であった。

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