問題児が日常を過ごしたかったようですよ   作:たこ焼き屋さん

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二人の狂人は出会ってはいけない

 

 白がメインのありふれた司祭平服を着ながら、その上に黒いロングコートを羽織っている。

 

 白と黒のコンストラストにより神父としての異端さが強調されている。

 

 

 

 前にあった時は比較的まともな神父の格好をしていたが、今は神父と言うよりカッコ良さを求めたコスプレイヤーのように感じている。

 

 それを差し引いてもフリードから漏れる気配は尋常ではない。

 

 

 

「随分と変わったな、一体どんな心境の変化があったのかね」

 

「いやーーー、一誠くんに伝えたいけどあまり楽しい話じゃないからメンゴ」

 

 

 

 放つ気配はライザーにすら引けを取らない。

 

 気配だけで見ればライザーより下。だと言うのに額を流れる汗が格下ではないと語っている。

 

 

 

 フリードは軽薄で道化師のようにケタケタと笑い続ける。

 

 

 

「怖い怖い・・・怖いついでにそんな剣捨ててそこの喫茶店とかで話そうぜ。俺は男女平等の平和主義だからな、無益な争いは好まない」

 

「あっははははは!!いーっひひひぃ!」

 

 

 

 途端に腹を抱えて地面へ転げ大爆笑し始める。

 

 先程から明らかに情緒が安定していない。壊れたラジカセのように途切れ途切れに笑い続け、辛うじて落ち着気を取り戻し剣を壁にしながら起き上がる。

 

 

 

「平和主義っっ!!いひゃひゃひゃ!随分と面白い事を言うね。人を殺し回った一誠くんが言うなんてこりゃなんて冗談だろな?」

 

「なんでそれを知ってる」

 

「知ってるぜそりゃ。この街で事を起こすには一番の障害は一誠くんだ。相手の情報を集めるのは上等手段だろ?」

 

 

 

 意図も容易く行ったように言うがそれはありえない。

 

 確かに後からの細工ではあるものも、ソーナが家の名【シトリー】を使って権力により捏造した記録が史実になっている。

 

 政府と深い関係性がある悪魔達との取り引きにミスをする彼らでもない。

 

 言うなれば難攻不落の一夜城だろうか。

 

 人を殺した情報は引き出せないはずだった。

 

 

 

「十や百ならまだ可愛げもあるのによ、九歳児が千人以上殺してるとかマジモンの化け物じゃねぇかよ!!」

 

「一誠・・・先輩・・・・・・」

 

「おっ、そこの悪魔っ子も初耳って顔だな。いいぜだったら教えてやるよこいつが何をしてたのか」

 

 

 

 少し離れた位置で会話の内容を聞いていた小猫は信用しかけていたのに、裏切られるような発言に驚きを隠せない。

 

 もしそれが事実でないならすぐに否定するはずなのに、どこか気まずそうに顔を逸らしている。

 

 

 

「まずは紛争地帯、アソコは血と鉛で溢れかえってる。戦場帰りの大半が頭がイカれる程にな。それに単身乗り込んだんだよガキが・・・普通なら笑い話で済むんだがな、そのガキが訪れた場所は敵味方関係なく皆殺し。血のオアシスをあちこちに作ったから【殺戮の天使】なんて二つ名があったな」

 

 

 

 ネタばらしを楽しむ子供のように告げるフリードは意気揚々と続ける。

 

 

 

「次は日本で話題になった組織だな。これはマジすげーぜ、何せ命乞いをしてきた奴の顔面を一撃殴って殺していくんだからな。骨って砕かれた時ガラスが割れる時みたいな音がするんだぜ?いひゃひゃひゃひゃ!マジ最高!

 

!」

 

 

 

 嘘ですよねと黙っている一誠を見つめる小猫。

 

 しかし、その返答は無言だった。

 

 

 

 とは言え大人しく聞いてるだけに止めるほど大人しい問題児ではない。

 

 

 

「まるで見たような言い方だなフリード」

 

「ビンゴ!!俺っちは確かに一誠くんの過去を見てきたぜ。君が覚えてない親の顔もその死に様も──」

 

「ならこれが駄賃だ受け取れ」

 

 

 

 座っていた瓦礫の欠片をもぎ取り勢いよく投擲した。

 

 会話し煽る事に集中していたフリードには身体で隠してバレないようゆっくり行動していたので気づけない。

 

 

 

 第三宇宙速度で投擲された瓦礫の欠片に気づいた時には既に遅い。

 

 気づく前に回避行動に移ればまだしも見てからでは確実に当たる。剣を抜く間も与えず瓦礫は肉を断つ。

 

 ぐちょぐちゃと肉の捻れきれる気色の悪い音に加え、火薬を積んでいないただの瓦礫なのに激突と同時に小さな爆発を起こす。それは第三宇宙速度で投げられた事による効果であった。

 

 

 

「あがっあが!」

 

「安心しろ捕獲した後に治してやるよ!」

 

 

 

 右腕が引きちぎれ小猫の傍に落下する。

 

 その痛みは想像を絶する物であり意識を保てている方が異常である。

 

 歯を食いしばり引きちぎれ血のたれる二の腕の中間地点を強く圧迫し、出血による意識が落ちること死ぬことにならないように応急的であるが対処する。

 

 だが、その動きにより剣から手を離してしまい一誠の接近を許す。

 

 

 

「砕けな!!!」

 

 

 

 地面を蹴り砕き飛翔。

 

 空中で回転しながら踵を高く上にあげ遠心力を込めた踵落としを繰り出す。

 

 一誠の蹴り出しからの遠心力を加えた一撃は絶大な一撃であり当たればまず間違いなく勝てる。それも悪魔でも天使でも堕天使でもない、人間のフリード相手なら過剰すぎるほどに。

 

 遠くから見ていた小猫の目には何も見えず、ライザー戦の時の一誠と同等以上の力に見える。

 

 

 

「甘ちゃんだね・・・頭を狙えば良いものを!!」

 

 

 

 一誠の踵落としより先に届いたのは腹部に骨を砕きながら侵入するフリードの右腕。

 

 

 

 ついさっき右腕を失い痛みに苦痛の音を上げていたはずなのに、そこには何事も無かったかのように腕がある。

 

 殴られながら飛んだ腕は幻影だったのかと小猫を流しみるが、確実に本物の腕がある。

 

 幻影や厳密に再現された偽物ではない。多くの血肉が弾ける様を見てきた一誠だからこそ断言出来る。あの腕は本物であり、フリードの右にある腕も本物だと。

 

 フリードの足場が悪かった事もあってかそこまでの威力ではないが、前へ加速した分の力を逆に後ろへ飛ぶ力へと変えられ肉屋に突撃。築三〇年の皆に愛された肉やを破壊してしまう。

 

 見慣れた看板を砕いて背もたれのようにもたれ掛かり現状の確認をした。

 

 

 

「肋は・・・折れた・・・・・・左腕もやられたか」

 

 

 

 最初に確認した脚はかすり傷や瓦礫が刺さっているが、再起不能とまではいかない。

 

 しかし、店へ突っ込む時や加速の衝撃を左腕一本に集中させたせいで、関節から本来曲がってはいけない方向に折れ曲がってる。

 

 肋も見事に折れていて口内に血が上がってきている。

 

 

 

『相棒急いで俺を展開しろ!!』

 

(バランス)

 

「ところがぎっちょん!!それはさせないぜ!!掻き毟れ白亜の聖槍(アウスヴァール・ロンゴミニアド)!!」

 

 

 

 つい少し前とは逆のフリードが追撃を仕掛ける番。

 

 完全に完治した右腕と左腕で槍という名の剣を振りかぶり、その能力を発動させる。

 

 幾重にも風が重なり小さな竜巻が周囲の存在そのものを破壊しながらターゲットに向かう。

 

 

 

 赤龍帝の篭手を禁手化(バランス・ブレイク)させる時間はなく、先に迎え撃つことになる。

 

 上半身を後ろに傾け頭を振りその反動で起き上がる。

 

 起き上がりの反動で左腕がさらに捻じれ痛みが全身に駆け巡るがお構い無し、まだ動く右腕で全力で殴る。

 

 

 

「やっぱしそっか!あひゃひゃ!!俺っちの予想通り一誠くんには俺の神器の能力を無効化できない様だね」

 

「なん・・・だと・・・・・・」

 

 

 

 悪魔の魔術。天使の光の槍。悪魔の炎。それら全てを無効化し砕いてきた一誠の拳が、フリードの作りだした竜巻に関しては何故か無効化せず破壊できない。

 

 逆に右腕に無数の傷が生まれ始めダメージを負い始めてる。

 

 

 

「このッ!!」

 

 

 

 無効化出来ず破壊できないとなれば逸らすしかない。

 

 飲み込まれかけてる右腕を犠牲に右方へ進行方向をずらす。

 

 右腕の肘から先がねじ切れ、血肉が爆ぜるが直撃するよりダメージは少ない。

 

 

 

 血はねじ切れた事により流れる事は無かったがこれで戦闘力は半分に低下する。

 

 

 

「一誠先輩!!」

 

「小猫逃げろ・・・庇いきれねぇ」

 

 

 

 いつもの余裕が欠片も存在してない。そもそもここまで追い込まれた一誠を見るのすら小猫にとっては初めてだ。

 

 

 

「おや?そう言えば邪魔な悪魔っ子が居たんだった。よしそんじゃ、悪魔祓いのお仕事をしますかね」

 

 

 

 そう言いながら剣をまた上段で構え振り下ろす。

 

 先程よりも小さく細い。竜巻と言うよりは針のような風が無数に降り注ぐ。

 

 一誠の損傷、突然の戦闘に身体が追いついてない小猫は震えるだけで避ける動作がない。

 

 

 

「さっと逃げろ!!」

 

「え、」

 

 

 

 横から怒声が聞こえた。

 

 腹部に軽い衝撃が走り一気に遥か後方へ飛ばされる。

 

 飛ばされながら遠くなる視界の先に一誠が居て、無数の針に貫通される場面を目撃する。

 

 

 

 

 

 商店街を覆っていた結界を突き抜け、何時もの人通りのある大通りへと飛び出る。

 

 周りの人達は何故かボロボロの状態の少女に怪訝な目線を向け、何人かはケータイで警察にかけたり動画の撮影を行っている。

 

 商店街での体験。それはトラウマレベルで身体を震わす。

 

 

 

 目元からは涙が溢れ右腕は痙攣を続ける。腰を抜かしたのか立ち上がれず、また付近は生暖かくアンモニア臭がする。

 

 一誠に蹴られた腹部には目立った外傷は無く、かなり手加減して逃がすために蹴ったのだと気づく。よく見ればワイシャツには赤い蹴られた後が刻印されていた。

 

 では、一誠先輩はどうなった?その思考に至るまでにそう時間はかからない。

 

 両腕を奪われ何時ものように無効化できる能力でもない。オマケに神父は謎の再生能力を持っている。信じたくはないが一誠が負ける。そう考えてしまう。

 

 

 

(けど、私が行っても何も出来ない・・・あんな化け物と戦えない。怖い怖い)

 

 

 

 今まで討伐してきたはぐれ悪魔や、リアスの眷属になる前の主にすらこんな感情を抱いた事は無い。

 

 純粋な恐怖。負けるはずがない、ずっと勝ち続けるのだと思っていた、理解してた、想像していた、理想としていた。そんなヒーロー(兵藤一誠)が負けかけている相手に、足元にすら及ばない力しかない自分が入った所で足を引っ張るのが精々。そのせいで死ぬことすら考えてしまう。

 

 じゃあこのままここで泣き続けるのか。

 

 何も出来ないと嘆き続けるのか。

 

 子供のように言い訳を連ね続けるのか。

 

 

 

(違う!それじゃ何も変わらない!私は決めたんだ、強くなる・・・一誠先輩みたいに、それで・・・それで)

 

 

 

 まだガクガクと震える身体にムチを打ち立ち上がる。

 

 まるで生まれたての子鹿だ──いや子猫か。

 

 涙を払い除け今できる最前の方法を実行する。

 

 

 

 小猫一人では意味が無い。なら、一人じゃ無ければいい。

 

 協会側の聖剣使い、頼れる副部長、居場所をくれた部長。四人がいる一誠の家に戻って連れていけばなんとかなる。

 

 

 

 家の方角へと必死に駆け出し、周りの目など気にせず人外の秘匿も気にしない。ただ、無心でひたすらに一誠の事を考えながら駆ける。

 

 息も絶え絶えながら最短でたどり着き急いで玄関へ飛び込んだ。

 

 

 

 

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