駒王学園とは、駒王町の僅かに隆起した土地を土台に力を霧散させる目的で建てられている。
力と言うのは地球が生まれながらにして持っている莫大な力の集合体。そのままの地脈や荒々しい力から龍脈などと呼ばれていて世界各地に存在している。
それらがある場所では何かしらの力が活発に働き、火山活動を今現在も続けている富士山や桜島等がそれに該当する。そして駒王町がその名で呼ばれる前から不自然な程食物が育つと有名だった。
品質も良く尚且つ早く育つ。
農民に取ってはありがたい効果で、次第にその感謝は【信仰】へと変化する。
毎年育った食物を領主様に渡すのと別に供物として捧げ終いには人柱まで使う程に狂信していたのだ。火山がなく安全性の高い地でありながら高密度の力の噴出地点でもある。人外達が喉から手が出るほどに欲する物でもある。
それを封印し拡散させるためにあるのが駒王学園であった。
この事実を知るのはごく一部ではある。堕天使、天使では到底知り得るはずのない情報だ。それこそ過去を直接見ない限りは分からないはず。
「六本と少ないせいか予定より早く結合する・・・完全体とはいかないがこれでも十分な性能を発揮するだろう。さらには地脈と繋ぐことで更なる力を・・・くくくくく」
虚ろな目で誰に語り掛けるわけでもなく言葉を紡ぎ続ける。その姿は健全とは言えず狂人が相応しい。
目の前にそびえる光の柱。
六つの聖剣が重なり始め一本の形に変化──元に戻り始めた。
あと少しで夢が叶う。
──夢?そういえば何故作っているんだ?
僅かな達成感で満足していたのだろうと湧き上がった考えを放棄し、目の前にある甘美な光景に身をよがらせる事しかできなかった。
△△△△△△△△△△
「ち、クソ厄介だテメェら!」
「ならば嬉しい限りだね!」
「私も──よッッ!!」
一撃必殺。通常の人間ならば防御をすれば防御を貫通して命まで奪う凶悪な拳が、これみよがしに数十発以上打ち込まれている。
とある手段で超回復しているとは言えダメージを受けないのではなく、ダメージを回復しているので毎回死ぬ一歩手前まで至り続けている。
拳を警戒し剣で受け流すと次は青い聖剣が隙を狙う。
破壊に特化した聖剣と矛盾があるような気もするが、嘘ではなく空振り地面に当たった場所は一撃で陥没している。
生身の人間に近いフリードが喰らえばこちらも即死。
歯を食いしばり必殺級の一撃を交互に相手をしなければいけない。
だと言うのに──
「またか!!!」
「へっ、俺を忘れてもらっちゃ困るぜ」
二人の攻防の隙間を縫って飛び出してきたのは細い管。
影の薄さにより二人との攻防では存在が脳からこぼれ落ちてしまう匙だが、その薄さを利用し他人の力を吸収する管を身体に巻くことで足止め件持久戦に持ち込ませない二段構えの策があった。
近接戦最強格の二人とサポート特化の能力。この二つが混じりあった事で過去幾度となく経験した多人数戦の中で一番の強敵と言っても良いレベルにある。
これがつい少し前にであったと言うのだから驚きだ。もし、三人が最初から連携を鍛えていた場合フリードの負けは決まっていたに違いない。
「掻き毟れ!!」
土を上へ巻き上げる旋風により大量の土煙が立ち込め全員の視界を完全に奪う。
(土煙を上げた・・・やはり空間を切り取る能力ではない)
三人は優勢で攻められているがフリードの能力自体は不明な点が大きかった。
白亜の槍から放たれる旋風は先程【滅びの魔力】を消した。無論切断や逸らすではなく消失した。
質量や性質に関係なく消滅させる【滅びの魔力】を消失させるということは、上位互換にあたる消滅能力で無ければならないはずだ。
となれば戦闘などひと薙ぎでで終了のはず。なのに、先程から時々距離をとるために砂塵を巻き上げて時間稼ぎをしている。
明らかに能力とやってる事がチグハグすぎる。ともなれば能力は【消滅】ではない可能性があるそれは何か──
「フリード・セルゼン。君のその剣の能力当初は消滅系かと思っていたが、戦闘を通じてそれは無いと確信した。そうなるととある結論に至る、無効化だな。魔法、魔力その他もろもろの無効化がその剣の能力だ!!」
「と言われてもはいそうですなんて答えるわけがないだろ。けどまぁいい所まで推測できてるからな答えてやるよ」
土煙が収まり視界に入った塵ゴミを書き出しつつ前を見ると剣を地面に突き刺し、剣によりかかるフリードが映る。
「半分あたりで半分不正解──答えは言わないがヒントをやるよ。
「ロンゴミニアド・・・」
アーサー王伝説に登場するエクスカリバーに並ぶ秘宝こそがロンゴミニアド。語る人によってはロンゴミニアドの方が強力であると言う。
この世の果てに位置する柱の形状が変化し人間でも扱える槍になっているとされ、この世の果てにあるため人間では絶対に辿り着く事が出来ない。
槍がある場所こそが果てである事から選定の槍とも呼ばれることがある。
ゼノヴィアが知り得るのここまで、枢機卿以上の階級であれば知っているかもしれないが本質的に分かったとしてこの力の理由を説明できるとは思えない。
フリードが求めているのは並べられた知識ではなくその先。
「残念ながら勉強は嫌いな立ちなので詳しい事はさっぱりだ」
「そりゃ残念・・・この場なら一誠くんの次に頭の回転が早いと思ったが、如何せん知識が足りねぇか」
「まさかそこまで褒めてもらえるとは」
「褒めちゃいねぇよ。嫌味だ嫌味・・・たくっ、教会の戦士はこうだからいけねぇ。せっかく神なんか死んだと伝えてやったのに愚直にここまでされるとはね」
神は死んだ。
このワードにぴくりとゼノヴィアとイリナは反応し、匙はなんの事だ?と頭を傾げている。
これでも教会に信徒として入会し適性があったため戦士となった二人は、朝目覚めた時から夜眠る時まで何回も神に祈りを捧げている。
神に祈りを捧げるのが日常でありいると信じているからだ。
それなのに神は死んだと告げられた。
神の存在自体が否定された言葉はありえないと否定をしても僅かな疑念が大きな疑念になる材料足りえた。
「それは所詮貴様の戯言だ、私達が直接見た訳じゃない」
「あひゃひゃひゃ!!随分と面白いこというじゃねぇの。その口ぶりからすると神様を見たって事か?じゃあどんな顔でどんな体型でどんな神か言ってみろよ、なぁ!!」
「・・・・・・それ・・・は・・・」
「ゼノヴィア!アイツのペースに巻き込まれてるわよ」
「そうだなすまないイリナ」
二人は我を戦場で失うのは負けだと分かっているからこそ抑えようと言葉を交わし、頭は冷静に心は熱く保ち攻撃に備える。
後ろでこそこそして影を薄くしてる匙もそのために
三人の動向を伺い冷静さを奪おうと煽ったのだが、逆に闘争心を増してしまったなと自分の煽りスキルの高さに後悔をしながら大剣の先を突きつける。
「お喋りもここまでにしてそろそろ再開しようぜ」
「勝った暁には聞かせてもらうぞ貴様の戯言の真実を」
「いいぜなんなら一誠くんが記憶を失った理由もセットで付けてやるよ」
「──お前が一誠くんの記憶ォォォォォ!!」
「イリナ待て!」
道化師は笑い続ける。
観客のイリナは激高し拳を握りしめ突貫する。先程のように技で攻め立てるのではなく力によるゴリ押し。身体強化に全神経を注ぎ込み一撃で龍すら殴り倒せる領域にまで昇華させた究極の一打。
だが──フリードの作戦通り一人を炙り出せた。
問題だったのは殺人級の拳でありながら、破壊に関しては右に出る物はない聖剣と、ちょこまか力を奪う神器との三連携が一番の苦だ。
琴線を触れるワードに連携を忘れ一人イリナは飛び出し、慌てて二人が合わせようとしているが何もかもが遅い。
「このぉぉぉぉぉぉ!!」
「いい闘志だが大きいだけでそれじゃあ無意味だぜ!!」
太陽でも纏ったかのように熱く燃える魔力が圧縮された拳が穿たれる。身体強化を少し下げ右拳に大量の魔力を集結させていた。
今の拳ならば山を容易く粉砕できる災害級の拳である。
狙い通りに動いたイリナにフリードは笑いが止まらなかった。
剣で防ぐ振りをして拳を右手で受け止める。当たり前だが受け止めた右手は肩からねじ切れるように引きちぎれ、身体も僅かに反り返る。
人外より人外地味たパワーではあるが右手一本なら安い。
身体強化=防御力が低下した現在であれば大剣は確実にダメージをイリナに与える事ができる。
反らされた身体を元に戻す反動の力も使い一刀両断の絶技を繰り出す。完全な突貫の構えに防御の姿勢は遅れ死は避けられない。
他の二人はまだ距離が足らず援護に間に合わないず無慈悲にも剣は振り下ろされた。
「イリナァァァァ!!」
ゼノヴィアの悲痛な叫びだけが虚しく木霊する。