初投稿し始めた2018年12月26日から考えていたので約一年半かかってやっと表に出せたぜ。本来ならもう少し早くするはずだったのに……
世界は瞬く間に色を取り戻していく。
太陽の日がなく月と星の明かりが遠慮気味に照らす中、人工灯により照らされた薄暗くも視認可能な黒い空。自然の緑や茶色、戦闘で髪を揺らす赤髪や黒髪など見慣れたものとなった世界だが、節々で異変が生じていた。
「あ?避けた・・・いやありえない、あの角度速度は全て完璧だ。避ける所かダメージを抑える事すらできるはずが・・・」
フリードは剣を振り下ろしていたが手には何かを切った感触はない。
剣先を見れば切るべき対象はそこにおらずもう一人の膝をついているゼノヴィアよりも後ろに転がっていた。
何かしらの高速移動系術式を使ったのかと辺りを確認するが、それらしき術式の痕跡はなく彼らの顔を伺うがそれぞれ驚愕しているようで原因は他にある事がわかった。
「こりゃやべーかもな」
それこそ時間が消し飛んだような違和感にフリードは警戒をより強くする。
△△△
死ぬ恐怖から目を閉じたが一向に身体を貫く痛みは訪れない。
恐る恐る目を開けると身体には致命傷になる傷はなく、光の球体は投擲した本人を強襲していた。
「今何が起きた!まるで時間が飛んだような」
身体と頭が別々に動いているからこそ落ち着いて考える事が出来ているのだが、それでも何が起きたのか正解に至れない。
この場にいる誰かに攻撃を反射する手段などないのは実力差から明白で、ましてや反射した瞬間すら察知させないなど下級悪魔程度にできることでは無い。
駒王学園で戦闘する者の殆どが原因不明の現象に頭を傾げる中、約一名戦闘のさなか別の方向へ頭を向けていた。
視線の先にあるのは旧校舎。オカルト研究部のある建物である。
(助けてくれたのねギャスパー)
最強の眷属が窮地を救ってくれた事に心の中で感謝を表した。
だが窮地を脱しただけで未だに戦力差は埋まっていない。
イリナ、ゼノヴィアはダウン寸前、ソーナは魔力切れ、リアスと匙だけが今辛うじて戦闘を続行できるが、一対一で勝てるとは到底思えない。
「今の内だ私がこれの対処をしてる内に逃げるんだ」
コカビエルが動けていないのは最大威力の矛を跳ね返され、当たらないように両手で弾き返しているからに過ぎない。これが大きく逸れて当たらなければすぐさま戦闘を再開するだろう。
そうなればもはや勝ち目はない。この場にいる全ての者達が殺されるだろう。それを皮切りに三種族を巻き込んだ大戦争がまた起こってしまう。
コカビエルを倒せていれば最初から倒せていれば良かったが現状まで続いてしまい、もしここで魔王の妹達が殺されれば戦争の回避は不可能になってしまう。
最悪戦争さえ回避出来ればいいのだからリアスとソーナに逃げろと告げ続けた。
「確かに戦争を回避するために私達が逃げるのが得策よ・・・でもね、私たちの街で好き勝手されて終いには私たち二人だけがおめおめ逃げるなんてプライドが許さない!!」
「そんなプライドな──」
「捨てられない。これだけは絶対に譲れない物だから!!」
逃げない、背を向けない、隠れない。
恐怖で目を閉じた自分が恥ずかしいと責め続ける。
もう二度とこんな愚かな真似はしない覚悟と共に、最強の敵に胸を張って立ち続ける。
戦況は劣勢で最悪という文字が一番似合う盤面だが、リアスの宣言は二人の男を動かすには十分足りえた。
「よく言ったぜリアス」
校舎の方から発せられた音はいつもピンチを救ってくれた英雄の声。
人間でありながら人間を超えた異常な力を保持する人類最強の男が飛び立つ。
リアスの前に土煙が僅かに立ち込めその中には見慣れた背中が浮び上がる。
「お前が何故ここに」
「はっ、そんなん俺抜きでこんな面白そうな事をしてるからだろうが。なぁ木場」
「それは一誠くんだけだよ」
首を少しだけ傾け声を上げると突然音もなく人影が現れ問に答えた。
数日前の力に固執しすぎてどこか様子がおかしかったはずの木場が、全てキレイさっぱりしたのかいつもの優しい笑みを浮かべている。
「リアスごめんなさい遅くなったわ」
「朱乃・・・これは」
「一応言っとくが寝起きの運動がてら来たからな、小猫には留守番させてるぜ」
「そんな事より色々聞きたいけど、あっちはそうも言ってられないわよね」
突然の莫大な情報量に一度整理したい思いが強いのだが、ここは戦場。そんな事が許されるはずがない。
光球を上空をはじき飛ばしたコカビエルは増えた標的に誰から殺すか目配りを始めていた。
「だけどお前の敵は俺じゃねぇぜ」
「そうだね。ここは僕の持ち場だ・・・一誠くんは借りを返してきなよ」
「お言葉に甘えて俺はあっちに行くとするか!」
肩を並べた二人は拳を軽くぶつけ合わせてそれぞれの目的を遂行する。
木場は新たに得た力を試す実験台としてコカビエルと単独での戦闘を望み、ボコボコにしてくれたお礼参りをしたい一誠は地面を蹴って一旦停止しているもう一つの戦場へ移動する。
「よっ、さっきぶり」
「本当に人間かよ」
「分類学上は一応こう見えて人間になってる。まぁ、あの時のお礼をしてやるよ」
大剣を振り下ろしではなく、全力で初手から倒すために振り上げるため後ろへ引く。
飛んできた一誠は不意打ちで剣を引く前に攻撃が出来たのに、わざわざ引かせる時間を作るために口を開いて言葉を交わす。
一誠を半殺しにした一撃が来る事を分かっていながら、その技を使えるようにするとなると何かしら対応策があると思われるが、どんな対策をしようとも一誠の能力上不可能な物は不可能だ。
生憎と一誠の背後にはゼノヴィアやイリナがいて攻撃を躱す事も許されない。
「慢心してるところ悪いが雑魚には用はねぇよ!掻き毟れッッ!」
風──空間を刈り取る鎌鼬が剣から放たれ真っ直ぐに一誠に向けて直進する。
フリードはあの時の拳と接触し砕け散った右腕のイメージが脳裏を過る。同じ結果になるだろうと思われたのだが、
「成長しないな。馬鹿の一つ覚えかよ!」
つい少し前には決着が着いたはずの一撃が簡単に右腕で簡単に殴り壊された。
これにはさすがのフリードも動揺が隠せず目をめいっぱい見開く事になり、その反応を見て一誠は不敵な笑みを浮かべた。
「どういうことだ・・・お前は
「簡単だよ俺は今まで使おうとしなかった力を使う事に決めたからだ。こんな考えに至ったのはアイツらに出会ったおかげだな」
そう言いながら視線を配るのは木場の背中で守られているリアス達である。軽く殴れば人間を容易く殺せてしまう一誠は力を極力使わないようにしていたため、自身の力と向き合おうとすらしてこなかった。
だが、人外という存在と出会い殴り合える好敵手とも出会え、力を徐々に解放する方向に向かっていく。
リアス・グレモリーと出会わなければ一生不完全燃焼のまま、死んで行った事だろう。それには感謝してもしきれない。
それでも敗北にまで至る明確な弱点があった。
それは神器を無効化できないということ。
自分以外の神器使いに出会った事がないので気づかなかったが、魔力や超能力は無効化できても神器だけが無効化できない。木場祐斗のような武器を作るタイプの神器ならば力で破壊できるから良いが、能力を駆使するフリードタイプは致命的な弱点となる。
人間の絶対容量を一○○として考える。この数値を超えたり減ったりすると死亡してしまう。生まれた瞬間から既に容量を何に使うかは決められていて、それを「運命」や「人生」と呼ぶ。
兵頭一誠も莫大な魔力と
本来原典を足せば容量オーバーで死に至るのだが、その対策として原典が付与される前に生きていく糧「運命」を一部抜き取って、空いた容量に原典を入れる事で容量を一○○でキープしている。
両親の記憶を失ったのはこのためで必要な犠牲だった。
これで容量ぴったり問題ないとなるはずが、原典の無効化能力が一誠の膨大な魔力と神器に反応してしまう。
本来ならば簡単に打ち消せばいいのだが魔力を消せば大きな容量のマイナスになり、神器を消せば反発神器抜いた影響で死ぬ事になる。
入れた瞬間に強烈な痛みが走りこれが原因で一部記憶が欠如してしまう。それでも早急に対処しなければいけなくなり妥協案を設定した。
失った魔力分の容量を身体能力や肉体強度に回し、神器を能力の例外とする事で反発を抑え完全に定着させるというもの。
この時に一誠の弱点が作られた。
「その通り神器が弱点だった、それが原因でお前に負けたよ。だったらその弱点を無くせばいいよな」
「それができるならあの場でしていたはずだ!!だがしていない、そう簡単にできるはずが」
「俺もできないと思ってたさ。お前の神器の名
一誠は総じてこの事実を知らないが故に今まで解決してこなかった。というよりも原典に対しても詳しくは知らなかった。
使えるから使ってるのであって無ければないで別の物を使っていた。それがフリードの神器の名を聞いた瞬間部分的に原典について思い出した。
「俺の原典の名【
これが無効化能力に繋がるのは最果てを設定する事に起因する。
徒競走にしてみればわかりやすいのだがスタートとゴールどちらが良いかと言われればゴールで、最果ての聖槍が最果てと今現在認識しているのは一誠達がいる世界ではない。
槍自体は一誠が所持しているが最果てとしているのは平行世界の一つ、魔法も悪魔も堕天使も人外を全てオカルトとし化学だけが発展している世界を最果てとしている。
一誠は世界と世界の衝突をその掌で起こしている。
世界の衝突は突然力が強い方が残りそれが最果ての世界の事象である。魔法は存在しないため意味が無い、魔力もないため意味が無い、この原理により数々の人外の力を無効化してきた。それでも絶対的な限界があって生き物を触れて無効化まではできない。
そのため神器を例外というよりも、神器があるが悪魔等の人外がいない世界を最果てとしていると言える。そうではなぜ一誠はフリードの神器を無効化できたのか、それは──
「なぜだ何故!」
「そんなの簡単だろ。原典と神器を融合させて、異物と認識させないようにしただけだ」
「な・・・・・・」
簡単に言ってのけたが原理は複雑で一歩間違えれば死んでいてもおかしくはない。割に合わないギャンブルだったが、一誠は命をかけてギャンブルに望み望んだ成果を得た。
「だから改めて紹介するぞ。赤龍帝の篭手改めて【
掲げた左手に篭手が出現するがいつもと姿形が違い極光を放つ。
篭手は手首から指先までは今まで通り赤い鎧なのだが、そこから先に広がるのは赤黒いラバースーツだ。見た目がラバースーツに似ているだけで、その本質は極小の龍の鱗が隙間なく並んでいるのでそのように見えているだけで、動きやすさを追求しながら防御力を兼ね備えた一誠らしい進化だ。
そこに足首から下、脛、腰周り、胸部、頭に部分的に鎧が付け加わる。
鎧の凹凸は今まで以上で鎧というよりはもはや龍そのもの、巨大な龍を人型にした物という印象が強くなる。身を守る事よりも戦闘をする事に特化したのだ。
フェイスの変化は凄まじく人の口に当たる部分には鋭い牙が上下立ち並び、双眼の翠色をより目立たせる般若のようなシワは龍をより表している。
|最果ての赤き聖篭手の鎧《ブーステッド・ロンゴミニアド・アライヴ・スケイルメイル》はここに完成した。
「こっちの準備は終わったぞ」
「マジかよ・・・」
直接見たのは初めてとはいえ映像越しに見た旧鎧よりも、凄まじいオーラを肌で感じ取りまるで地球そのものを相手にしているような錯覚に陥る。
兵頭一誠はもはや誰にも止めることは出来なくなった。