住宅地の奥、そびえ立つ一軒家達よりも高くそびえ立つ西洋の建物があった。
人の通り道は舗装されていて数本の木々が客人をでむかえる。小さいとは言え庭には花壇で丁寧に育てられていたであろう花々。惜しい点を上げるならばそれが既に風化し過去の異物になってしまっている事。
栄養が行き届いてないようで木々や花々は萎れている。道の舗装もヒビ割れ辺りには瓦礫が散乱していた。
元の白い塗装であったろう教会と既に見る影もない。お化け屋敷として地域の子供達には覚えられていてもおかしくない。
そこに徒歩でたどり着いた御一行はその惨状を一見して口を開く。
「なるほどね・・・これは酷いわね。悪魔である私ですらここまでとは思っていなかったわ」
「俺も来たのは七年前だ、かなり悪化してやがるな。その方が存分に暴れられるってもんだけどな」
「程々にしなさいよ・・・それじゃあ皆じゅんびはいいわね!敵の本拠地に乗り込むわよ!!」
その問に言葉ではなく行動で示す。
姫島朱乃はうふふふと笑みを浮かべながら手に雷を纏わせる。
塔城小猫は赤いグローブを両手に填めて拳を作る。
木場祐斗は速度重視の短剣を二本神器の力で創造している。
三人の答えにリアスは笑みで返答して息を整える。
「ふぅ・・・さぁ行きましょうか」
「あぁそうだな・・・そう言えば悪魔が教会に入っていいもんなのか?」
「え、今更それを聞くの?問題ないわよ、まだ機能している教会ならまだしも、こんな廃れた教会なら悪魔でも入れるわ。これでいい?」
「随分とガバガバな設定だな」
「設定言わない」
一番前衛に位置している二人は互いにアイコンタクトを取って前へ進む。
相手も攻められる事が分かっているのだから防御手段の一つや二つ庭に設置されていてもおかしくない。なので、魔法や光の剣を無効化できる一誠と悪魔の中でも特別な力を持つリアスが先頭を歩いている。
しかし、警戒をいくらしていても罠の一つも発動しない。正直な話拍子抜けだった。
だがその防御のざるさは絶対的な力を持っているのではないかと脳裏をよぎらせる。
そして、扉の前まで無傷でたどり着いてしまった。
「随分とゆるいな」
「それじゃあリアス手筈通り、私と祐斗君で裏を塞いでくるわよ」
「ええお願い。それじゃあ配置地についた──」
「よし、そんじゃあ行くぜ!!」
ドガン!!!
軽く振るわれた右腕に教会の木の二枚扉は軽く弾け飛ぶ。
強引に剥がされた事により留め具は弾け飛びリアスの頬を通過、その他は全て教会内部を突き進んで奥のステンドグラスが頭上にある壁まで飛び、木の長椅子や牧師の机共々粉砕して巻き添えくった者達の阿鼻叫喚地獄を作っていた。
「悪魔より悪魔らしいです一誠先輩」
「俺は人間だぞ?悪魔なんてそんな馬鹿な話があるかよ」
だったら普通殴っただけで木の扉を飛ばすのはおかしいのだがと伝えることも馬鹿らしくなる。
土煙が巻いあげる中、人間の呻き声と共に聞きなれた女の怒声が飛び込む。
「いい度胸ね一誠くん?まさか乗り込んでくるなんてね。お仲間の悪魔達も連れて来て」
「ヤハハハ!コイツらは勝手についてきただけだ、それとこれとは関係ねぇよ堕天使さんよ」
「そう・・・なるほどね逃げ道を塞いだと・・・くくくく、その程度で私を止められると思わない事ね!!」
吠える天野夕麻は治療の終えた羽を羽ばたかせ宙へ飛び上がる。
「そっちは任せるぞお嬢様に白髪幼女!」
「存分に暴れなさい!」
「幼女じゃありません」
二人は別々に別れ小猫は敵の中へと突撃、リアスは後方支援に徹する構えだ。
瞬時にその行動が行えたのは一重に信頼と信用が二人の間にあった事だろう。
「それじゃあこっちも始めましょうか」
「そうだなかかって来いよ鴉」
「くっ、このつけ上がるなよ人間ガァ!それとこの私の名前はレイナーレだ、冥土の土産に覚えておけぇえ!」
「そんなんじゃ三途の川も渡れねぇよ!」
レイナーレは無闇に飛び込むような真似はしない。激情し大量の殺意に包まれているからといえ同じ轍を二度も踏まない。
ただの光の剣では粉砕されてしまう。だからこそ悪魔祓い達から巻き上げた武器を使う。
本当は人間が使う武器なんて使いたくも無いのだが、背に腹は変えられない。右手を前に突き出して聖の力を送り出す。
すると、一誠の足元から屋根に向けて光の柱が発生する。
反応がワンテンポ遅れた一誠は飛び抜くも足元に柱が掠り靴底が削れる。さらにそこへ追撃が訪れる。
背後の壁から三本の柱が産まれ一誠を貫かんとばかりに肉迫する。されど、さすがにもう遅れを取らない。
体制の安定しない空中でありながら身体を捻りあげて柱の下に身体を忍び込ませ、膂力に任せた蹴り上げを繰り出す。
柱は落ちたガラス細工のように砕け散り鮮やかさに一誠を歓迎した。
「馬鹿め!引っかかったなぁ!」
「なッ──」
合図を受けた悪魔祓いが床下から飛び出す。
その数三、体制が崩れその上すでに上へ足を蹴り上げた状態。防ぐ手立てがない。
悪魔祓いは
刃は月の光を受け銀色の閃光を放ち、重力と体重に任せた一撃だけの必殺──振り下ろしを行う。
その威力は熊の極太の首ですら容易く切断してしまう程だ。
勝利は絶対的だった。
予想に予測を重ね、この場面に持っていくための策を五個は用意し事が運ぶように仕向けた。引いたレールの上に一誠は飛び乗りこの場面まで訪れた。
確かに一誠の堕天使や天使の光の剣を砕く力は偉大だ。それこそ英雄の領域だろうそんな真似ができるのは・・・ならば異能の力ではなく人間の手で作り上げられた物ならば粉砕する事など出来ないだろうと考えた。
異能の力は力のみで砕ける物ではない。確かに力も必要だが異能を無効化する何かがあるはず、その何かは異能の力を無効化し一誠に強大な力を与えているのだろう。
そんな力に欠点がないわけがない。
この世に完璧な物など創造主以外存在せずありえない。
だからすぐさま大剣を用意させ扱える者を選出して備えた。これならば砕けまい、砕く事すらできまいと。そこで
「しゃらくせぇ!!」
止めてしまった思考が動き出したのは異能の力でもなんでもない大剣が人間の手で砕かれた時だ。
逃げ道が存在せず身体を支えるものがない宙──ならば支えを作って逃げ道を作ればいいだけの事。
咄嗟に左手を床へ突き刺し擬似的な支えを用意、右手で胴体を切り落とそうとする二本の大剣を粉砕。股関節の方から迫り来る方は両足で挟み込んで捻りあげる。
足の力で曲がらない部分を曲げられた大剣はその身を粉にさせて散らせる。
驚きに足を乱す悪魔祓いを尻目に床へ足をつけ立ち上がり、顎に瞬間的に高威力で小突く。
「がハッ──」
「ほらよっと!」
「え──」
一人目の顎を粉砕させて脳震盪までに至らせ気を奪う。続いて現状を把握し切っていない惚けた一人の胸に蹴りを叩き込む。
サッカーボールのように吹き飛んだ男は
ようやく事を理解した男は懐から銃を取り出してトリガーに指をかけるが、目の前にいた相方が吹き飛ばされた時点ですでに間合いに入っていた。
「このクソがァァ!」
「反応が遅ぇ」
一誠は一瞬で男の視界から消えた。
正確に言うならば足を折りたたんで視界から消えたが正しい。
目の前で同じ視線にいた一誠がしゃがみ込んだことで、瞬く間に転移したように写りトリガーに込める力が緩まる。
しゃがんで溜めた力を一気に放出。
顎に目がけて突き上げる拳が激突。顎から数CMのめり込んで屋根の上に頭だけ突き出す。
「そんな・・・ばかな・・・」
「ありえないか?ガッカリさせんなよ、まだまだ戦いからこれからだろうが。もっと策をめぐらせ、力を示せ、技を武を叩き込んでこい!そう簡単に満足はしねぇぞ!!」
一誠は両手を広げて次の攻撃を誘う。今なら確実に攻撃が当たるほどの隙、だが今のレイナーレにそれを行う余裕は無かった。
「はぁ・・・は・・・ぁぁ・・・嫌だ、誰か・・・誰か助けてぇ!誰でもいいわよ、助けてくれればなんでも・・・・・・」
振り向き仲間に助けを乞う──だが仲間などいなかった。
堕天使の仲間ミッテルトもカラワーナもドーナシークも裏口から逃げようとして、朱乃と祐斗に屠られた。
悪魔祓い達は堕天使達から送られてくる聖の力が無くなった事で一気に制圧された。
最後の希望すらない。背水の陣の覚悟で挑んだ結果見事に自身で喉元に刃物を押し付ける事になってしまった。
「お願い殺さないで!そうだ私の身体を好き──」
「歯食いしばれよ堕天使!俺に喧嘩を売ったんだその駄賃頂くぞ!!」
ふり抜かれるは第三宇宙速度の拳。
レイナーレ程度の視界では捉えることの出来ない速度。もちろん避ける事なんか出来なかった。
拳が頭蓋に衝突すると赤い果実が弾け辺り一面に血の雨を降らす。
一誠の白い服は赤く血に塗れ黒の瞳が赤く染まったようにすら感じてしまう。
目の前で爆ぜた命に一誠は何も思わない。人型の命をこの手で奪った事に何も思わない。なぜならば、
(二度目だあの時と同じ)
幼少期の頃、まだ大人の世界をこの世の悪事を知らなかった一誠が殺し尽くした組織の連中。その者達は皆人間であり、五〇名に及ぶ研究者の誰一人として生き残った者はいなかったのだ。
弾けた果実の近くに全て終わったと集まるリアス達はその亡骸に黙祷を捧げてから全てが終わったのだと緊張を解いた