問題児が日常を過ごしたかったようですよ   作:たこ焼き屋さん

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最近とあるTRPGの動画を見ていたせいで、唐突にオルガったりDies iraeの長い詠唱とかやらせたくなってきました



主人公は守るべき者を見つけた

 冥界にてリアス達の処罰が決定した頃、廃教会から離れたビルの屋上から教会を見つめる二人の影があった。

 

 

 

「あっちゃーありゃやられたな」

 

「やられてしまったのですか?」

 

「そそ、あんだけ悪魔が出入りして抵抗ないならね。それに俺っちの剣が展開しないし十中八九殺されたな」

 

 

 

 教会にいた戦士達が持っていた剣と同じものをクルクル手の中で回転させながらフリードは呟いた。

 

 光の剣(フォトン・ソード)は堕天使か天使から聖の力を注がれる事で初めて起動するので、その力を送る相手が居なくなった時点で何にも役に立たないゴミになってしまっている。

 

 

 

 

 

「どうすっかな・・・食い扶持無くなっちまったぜ」

 

 

 

 傭兵の要領で金を受け取って仲間になっていたので死んだ事に対してフリードは差ほど気にしない。

 

 戦場では昨日の友が今日死ぬ事など日常茶飯事だ。だからこそ切り替えがすんなり着くようにしているが、隣の本聖女のアーシアはそうではない。

 

 

 

 修道院にてその神器(セイクリッド・ギア)にて怪我人を癒してきた。瀕死の人、重症の怪我人、かすり傷の人・・・その全てを救ってきた。一人も殺すことなく確実に。

 

 だからこそ聖女ともてはやされ拝まれ敬われた。

 

 そんな彼女の知人が死んだと言う事実をそう簡単に切り替える事は出来ない。

 

 

 

 

 

「うっ゛・・・ぁ゛ぁ・・・」

 

「気にすんなよアーシアちゃん、よくあることだ。俺らの生きてる世界はそんなもんだ」

 

「けどぉ゛けどぉ゛」

 

 

 

 

 

 実際に死体を見た訳でない。けれど感じたのだレイナーレの死を。

 

 傲慢で威張り散らしていて良い印象のないレイナーレであっても、慈愛の塊たるアーシアにとっては死を嘆くべき相手であり悔やむべき堕天使であった。

 

 

 

 あまりにも優しすぎて脆すぎる彼女の心には大きなヒビが入っている。

 

 初めての知人の死はそれほどに恐ろしく悲しい。

 

 

 

 ──フリードも初めのうちはそうであった。

 

 教会の戦士として育てられた彼に与えられた最初に試練は至極簡単な事だった。

 

 産まれた時から戦士として旅立つまでの十年間苦楽を共にしたルームメイト、一番の親友の殺害。

 

 

 

 嫌だと嘆いた。無理だと叫んだ。

 

 

 

 だが大人にとってそれは意味が無い。反抗した子供は大人に殺され、そいつの親友も殺された。

 

 相手を殺さねば自身が生き残るどころか二人共死んでしまう。幼き頭で察したフリードは涙ながらに親友を殺した。

 

 

 

 親友が血の海に沈み、手から滴り落ちる生暖かい液体。肉体に刃物が突き刺さる肉の裂ける音が耳から離れない。

 

 息はいつまで経っても整わず乱れ続ける。

 

 

 

 親友は二度と自分に笑いかけない。二度と親友の声は聞けない。星を見ながら将来の夢を語り合った親友はもう居ない。

 

 

 

 その事実に幼きフリードの心は粉々にヒビ割れ、廃人一歩手前の大人達の操り人形になっていた。

 

 それからは簡単だ。教会に逆らうもの人外その全てを狩り、殺すのに慣れてしまった。友が死ぬのに慣れてしまった。

 

 

 

(だから俺はアーシアちゃんが嫌いなんだ)

 

 

 

 

 

 もう後戻りは出来ないほど穢れ切ったフリードにはアーシアはあまりにも純粋すぎるし温かすぎる。

 

 

 

 死に一番遠くにいながら進んで入ろうとする。愚直なまでな理想主義者にして偽善者。

 

 何度も何度も偽善者だと罵るが彼女は、

 

 

 

 

 

『偽善者でも構いません。私の偽善で一つの命でも救えるのなら』

 

 

 

 

 

 殺す事でしか救えないのに、癒す事で救うと言う。

 

 理想だ。夢だ。非現実的だ。ありえない、不可能だ。出来るわけが無い。

 

 麻薬のようなあまりにも純粋すぎる言葉はフリードを蝕む。どす黒く穢れた心にはあまりにも輝いて見える。

 

 

 

 そのせいで自然と目がアーシアを追うし、ぼっーとしているとアーシアの事ばかりの事を考えてしまうし、アーシアが他の男と駄べっていると苛立つし、鍛え上げた心が突き動かされてしまう危険な存在。

 

 

 

 

 

「ほら泣きやめよ、汚ったない顔だぜたくよぉ」

 

 

 

 

 

 ──なのに、なんで切り捨てられない。

 

 

 

 いつもと同じだ殺すだけ。自分に不要な物は殺して捨てるそれだけの事。

 

 

 

 けどそれが出来ない。アーシアを殺せない、アーシアを殺したくない。こんなにこんなにアーシアの事を思っているのに手が動かない。そんな初めての感情に理解が追いついていなかった。

 

 

 

 勝手に手は動き泣きじゃくる彼女にハンカチを差し出していた。

 

 

 

 

 

「やっぱり優しいんですねフリードさんは」

 

 

 

 ──やめろ、やめろ。

 

 

 

 

 

「フリードさんと一緒で良かったです」

 

 

 

 ──もうその笑顔を向けないでくれ。笑わないでくれ。

 

 

 

 

 

「ふぅ・・・泣きじゃくるだけじゃダメですよね。もっと頑張らないといけませんよね」

 

 

 

 ──これ以上俺に踏み入らないでくれ。

 

 

 

 

 

 もう限界だ。別れよう、これ以上一緒に居れば俺はおかしくなる。その一言を出せばいいそれだけだ。

 

 

 

 

 

「はは!泣き虫アーシアだな、写真に撮って後世にまで語り継ぎたい顔だったぜ!」

 

「むぅぅ!酷いです!さっきの発言は前言撤回です!」

 

 

 

 

 

 けれどその言葉は出ない。いや出せなかった。

 

 

 

 俺の意気地無し、馬鹿野郎、クズ人間、ロクでなしのゴミ、何度罵っても不可能だ。もう俺は彼女から離れられない、もはや半身とすら錯覚している。

 

 

 

 この沸き立つ謎の感情に結論づけが出せないまま、なぁなぁに過ごすことにした。

 

 

 

 

 

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