小苑side
彼、比企谷八幡さんと過ごすようになってから2週間が過ぎました。この期間で彼の事について分かったのは、彼自身がとても優秀である事。柔軟な思考力、思考をした後に迅速に動く事の出来る行動力と決断力、人の本質を見抜く事が出来る程の観察力と洞察力、これだけでも充分なくらいです。ですが彼の最も大きな美点は気配りの出来て優しいところです。
毎回の事なのですが、私と彼は一緒に買い物をします。その時は決まって八幡さんが荷物運びをして下るのです。私は何も言っていないのにも関わらず、彼は無言で荷物を持ったのです。私は最初断ったのですが、彼は『力仕事なんて男のやる事ですから任せて下さい。』と言ってくれました。彼の不器用で分かりづらい部分ではありますが、他人への思いやりは人一倍強い人だと思っております。
そしてもう1つ、彼は後天性の星脈世代である事が判明して、私の知りうる限りの武術と星仙術を教えています。この2つの才においても、彼は突出した才能を持っています。過去に1人だけいた私の弟子よりも遥かに上回る程の強大さです。これは来年が楽しみですね。
八幡さんは来年の4月から私の母校である、界龍第七学院へと転校予定です………いえ、転校させます。このまま今の学校に行かせるわけにはいきませんからね。勿論、彼の家にも。私は彼を否定した学校や家族には八幡さんを絶対に会わせたくありません。八幡さんが……いえ、人があんな顔をするところを私はこの人生で見た事がありませんでした。その瞬間に思いました、もう2度とあんな顔にはさせないと。
そして私は彼と過ごして初めて思った事がありました。これが家族というものなのだと。
小苑「八幡さん、今日の鍛錬はどうでした?少しだけ難しくしてみたのですが……」
八幡「やっぱり俺はまだ星辰力の扱いが下手なんだな〜って思い知りました。大きな扱いは出来ても、細かい星辰力の使い方がまだまだで。明日も今日と一緒の鍛錬をしてもいいですか?出来るまでは次のステップには行きたくないって感じがして……」
小苑「向上心があるのは良い事ですよ。分かりました、明日も同じ鍛錬で構いません。それと、お身体の調子は大丈夫ですか?」
八幡「何ともありません。あるとしたら、小苑さんと1週間に1度だけやる組手くらいですね。自分の未熟さを思い知るのと、小苑さんの拳と蹴りの強さに悶絶するばかりです。」
小苑「ふふふ、私の前でよくそれが言えましたね。では今晩も一緒に寝ますか?それなら痛みもすぐに無くなりますよ?」
八幡「い、いや、それはちょっと……恥ずかしいので。」
小苑「おや?つれませんね、最初は受けてくれたではありませんか。」
八幡「あ、あの時は最初だったから知らなかっただけです。まさか一緒に寝るのが最善の方法だとは知らなかったんですから。」
皆さん、誤解しないで欲しいのですが、私と八幡さんは決して性行為を実行したわけではありません。ただ普通に寝ただけで私が八幡さんの身体に星辰力を流し込んで、体内の疲労や痛みなどといったストレスなどを除去しているのです。起きている場合でも効果はあるのですが、八幡さんも男の子なのでしょう、恥ずかしいようですね。あの時の八幡さんは1番可愛かったですね。
あまり気分の良い質問ではありませんが、いつかは聞かなければいけない事、今聞いておいた方がいいですよね。
小苑「八幡さん、1つ質問をしてもよろしいですか?」
八幡「はい、何です?」
小苑「八幡さんは今の家に戻りたいですか?それとも此処で暮らしていきたいですか?」
八幡「………どういう意味です?」
小苑「そのままの意味です。今後生活する上ではどちらの環境で生活していきたいかを聞いています。家族とこれまで通り残りの半年間を過ごしていくか、私と共に半年間生活を共にするか、どちらが良いかを聞いています。」
私は現状、彼の身元保証人のようなもの。彼の心情次第では彼の家族へと返さなければいけなくなります。私は彼の母親でもなければ家族でもありません。言い方を変えるとただの他人ですからね。
八幡「そんな答え、決まってますよ。このまま小苑さんと暮らしていく方が何億倍もマシですよ。」
小苑「……理由をお聞きしても?」
八幡「そんなの簡単ですよ。逆に何で嫌いな奴等と一緒に生活しなくちゃいけないんですか?俺の家族は基本俺の事は放置してますからね。戻りたいなんて思う方が不思議ですよ。だったら……その、アレです。好きな人と一緒に生活した方が良いじゃないですか。」プイッ
彼は少し恥ずかしかったのか、顔を赤くして背けながらそう答えた。
その答えを聞いた私も、胸が少しだけキュッと締めつけられました。嫌な意味でではありません。とても嬉しかったからです。私も八幡さんと一緒に過ごす日々は気に入っています。なので、出来れば行って欲しくない、まだ一緒に暮らしていたいと思っていました。
八幡「それに……」
小苑「それに?」
八幡「なんか、初めてだったんですよ。こうやって隣で一緒に歩いたり、買い物をしたり、世間話をしてるを考えてたら、家族ってこんな感じなのかって。」
小苑「っ!」
………驚きました、八幡さんも私と同じ事を思っていたなんて。また嬉しさが増しました。
小苑「ふふ、私は良い
八幡「俺も、良い
小苑「素直じゃないですね。でもそれが八幡さんでもあります。」
軽い会話をしながら、私と八幡さんは今日も夕日が眩しい帰り道を通っています。