冬香side
嫌……嫌ですっ!!お兄様がこの里から消えるなんて!!お兄様と会えない絶対に嫌です!!絶対に引き止めます!だって、だってお兄様は何も悪い事はしてませんっ!!外の人間を治療しただけ、たったそれだけです!それだけの事なのに里を出ていかなければならないなんておかしいです!
冬香「お兄様〜!!」
梅堂父「八幡、何処だ~!!」
梅堂母「八幡~!!」
里全体を探しても何処にも居ません。一体どこへ行ってしまったのでしょう?………っ!?まさかもう崖の所へ!?だとしたら一刻も早くお兄様を止めないとっ!!
ーーー里の外れ・鬼呼びの崖ーーー
冬香「お兄様〜!!お兄様〜!!」
この先はもうすぐ崖の筈です!この森を抜ければ、もしかしたらお兄様がっ!!
冬香「お兄様っ!!!」
八幡「………やっぱ1番は冬香か。」
冬香「お兄様、お考え直してください!!きっと他にも何か方法がある筈です!!お兄様、どうかお止めください!!」
八幡「もうそんな訳にもいかない。俺は一刻も早くこの状況を何とかしたい。その為には掟を破った俺が自ら罪を浄化しなければ意味が無い。お前も分かってるだろ?村の掟は絶対。破った者には罪の浄化を。先祖代々から伝わっている言葉だ。」
冬香「で、ですが……ですがっ!!」
八幡「………俺だって嫌だ。こんな形で里から出て行くなんて。けどもうこれしか方法が無いんだ、分かってくれ。」
…………………………嫌、嫌です!絶対に嫌です!!何が何でもお兄様を里まで連れ戻しますっ!!
梅堂父「八幡ー!!はちま……!!おい、そこで何をしている!?早くこっちに戻ってくるんだっ!!」
後ろからは梅堂のおじ様だけでなく、梅小路家の分家の皆様もゾロゾロとやってきました。
八幡「父上、止めないで下さい。もう俺にはこれしか方法がありません。里の為、ひいては里に暮らす民の為にもこの状況は早くなんとかすべきだと思っています。ならば、梅小路家に代々伝わる方法でやるしかないでしょう。」
梅小路父「何を言っても止まらぬか……ならば実力行使しかあるまい、急急如律令!!」
お父様はお札を取り出して訳の分からないような呪文を唱えた途端、そこから鬼が現れ、武士のような格好をしていました。
梅小路父「行けっ!八幡を捕らえるのだ!!」
鬼「グオオォォォォォ!」
八幡「不可視の壁よ、不可侵の領域を作り、我の障害と道を邪魔する者を防げ!」
お兄様が何かを唱えた。するとお父様が召喚した鬼が何かにぶつかり、動きが止まった。その後は鬼が前を刀で斬りつけるような仕草をしていましたが、壁のようなものが鬼の行く道を阻んでいました。
八幡「我が式よ、我が主命に従いて、指標を滅せよ!急急如律令。」
お兄様がまた呪文もを唱えると、今度はこの前私に見せてくれた鬼火を召喚しました。しかも今度は1体だけではありませんでした。その数は10体を超えていました。
梅小路父「なっ!?これだけの数の式神を1度に!?」
梅堂父「っ!当主様の式神が!」
お父様の式神が鬼火によって攻撃を受けています。お父様の式神も攻撃はしているようですが、流石に数の差が違い過ぎます。
梅小路父「くっ……戻れ、式神よ!………まさかここまで星辰力と陰陽術を使いこなしているとは……」
梅堂父「俺が教えた時はこんなに使いこなせてはいなかった筈なのに……いつの間に。」
梅堂母「感心している場合ですか!今は八幡を止める事を考えましょう!八幡、お願いだからこっちに戻って来て!」
八幡「それは聞けないです。もう、この手段しか無いんですから。お願いですから、最後くらいは息子の願いも聞いてくださいよ。俺だってこんなお別れは嫌なんですから。」
梅堂母「なら「なら戻って一緒に他の方法を考えよう。なんて言わないでくださいよ?」っ!?」
八幡「何度も仰ったと思いますが、俺はもう、俺だけの為にこの里の迷惑にはなりたくありません。ならいっそのこと、この方法で終わらせるしかないでしょう。」
八幡「もう一思いに飛び降りさせてください。」
冬香「っ!!!ダメですお兄様!!」
鬼火が近くまで来ていますが、そんなの構っている暇はありません!!
八幡「手を出すな!!その子は傷つけるなっ!!」
冬香「っ!」
お兄様が叫んだ。その途端に鬼火は私から遠ざかり、距離を置きながら私を見ていた。チャンスだと思った私は前に走りました。ですが、それ以上前には進めませんでした。そう、透明な壁があったからです。私には叩くくらいしか考えられませんでした。
冬香「お兄様、考え直してくださいっ!!飛び降りてはいけません!!お願いですっ!!」
八幡「……冬香。」
冬香「………はい?」
八幡「最後の兄ちゃんの頼みくらい、聞いてはくれないか?頼む。」
そんな言葉を言われました。何で……何でそんな顔をしながら私にそんな酷いお願いをするのですか!?あんまりです!!そんな……そんな今にも泣きそうな顔をしながら、私にお願いをするのですか!?
八幡「………出来るなら、冬香と高校くらいまで一緒に居たかったな。」
冬香「お兄様!!ダメです!!お考え直しをっ!!」
八幡「冬香、元気でな。」
そして、お兄様は私の目の前で崖から飛び降りた。
冬香「お兄様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」ポロポロ
重い……重過ぎるよ………