冬香side
本日は界龍第七学院に新たな仲間を歓迎する入学式です。晴れやかな舞台でもあります。ですが、私は梅小路家の研究に勤しんでいるので、頻繁に参加しているわけではありません。なので参加するのはこれが2度目です。私が入学した時と、今現在で2回です。
そしてこれは初めてではないのですが、男性からの視線が私に集まる事が多いのです。理由は理解しておりますが、改めてそういう目線を向けられると良い気分にはなりませんね。
セシリー「いやーやっぱり人気者だねー冬香さん!」ニヤリ
冬香「はぁ……なぜ私に目を向けるのか理解が出来ません。陽乃様の方がよっぽど……」
セシリー「そりゃあ冬香さんもナイスバディだからねー。それにー、陽姐と違って制服の露出がねー。思春期の男が見ない理由なんてないってー。」
冬香「私も普通の制服にした方がよろしいでしょうか?」
セシリー「いやいやーその方が似合ってるからそのままにしなよー。冬香さんが普通の制服にしたら……地味になるかセクシーになるかのどちらかしかないからさー。」
……恐らくセシリーさんが言っているのは、木派と水派の制服の事でしょう。確かに木派が来ている制服は漢服ですからね。水派の制服は……少し趣向が違いますが、胸元が開けていますからね。それに足も見えてしまいますから、今とあまり変わらないでしょうね。
冬香「……このままでいましょうか。その方が良さそうです。」
セシリー「そだねー。これ以上セクシーな冬香さんは見たくないかなぁー。男共絶対何人か倒れちゃうもんねー。」
はぁ……まぁいいです。ですが先程から気になっている視線が1つだけあります。その視線は探しては消えるの繰り返しで隠れるのが非常に上手な視線でした。ですが、その視線は私の胸を見ているようではなく私の顔を見ていて、なんだか……心が温まるような視線でした。
何故でしょう?こんな風に見てもらえたのは………
はぁ……私も未練がましいのでしょうか?いつまでもお兄様の事を忘れられないなんて………でもどうしても忘れる事が出来ません。幼い事に過ごしたあの日々、どれどけ幸せだったか……
でも、もう忘れなければいけませんよね。いつまでも縛られたままではお兄様に叱られてしまうかもしれませんし。
あぁ、またこの現象ですか………私は色覚に異常があるのか、偶に色が見えなくなる時があります。幼い頃はこれが何年も続いて入学してからは1〜2ヶ月に1回というくらいにまでなりましたが、あの時の事を思い出すと必ずこの現象が起きます。
早く治ってほし………え?
何故あの人だけ色がハッキリしているのでしょう?それに温かい………あっ、此方を見ました………っ!!?
そ、そんな………で、でも、あの時………確かに、崖から飛び降りて………でも、何で?え?あの髪、あの顔、あの目、それに……あの微笑みは………
冬香「…………お兄、様?」プルプル
………っ!!い、いえ!そんな筈はありません!お兄様は8年前のあの時に崖から飛び降りて死んだ筈ですっ!!あの人がお兄様なわけがありません!!他人の空似ですっ!!
冬香「はぁ……はぁ……」
セシリー「……っ!冬香さんー?」
冬香「っ!す、すみません。何でしょうか?」
セシリー「いや、息荒かったですけど、大丈夫ですかー?休みます?」
冬香「い、いえ……大丈夫です。お気になさらず。」
いけません、今は入学式なんです。式典の邪魔をしてはなりませんね。
ーーー界龍・廊下ーーー
………どうしてもあの方が気になってしまいます。あの人は……私よりも2つ年上の人でしたね。だから……私が1年ですのであの人は3年の方ですね。
陽乃様にお聞きした方が早いでしょうか?いえ、お手を煩わせる訳にはいきませんね。
陽乃「あれ、冬香ちゃん?どしたの?此処は高等部3年の階だよ?」
冬香「は、陽乃様!いえ、大した事では無いのですが、少し気になる方がいまして………」
陽乃「おっ、それはもしや男かなぁ〜?」
冬香「ち、違います!男性である事には否定しませんが、そのような方ではありません!」
陽乃「はいはい分かったよ。それで、どんな人?特徴とかは分かる?」
ーーー2分後ーーー
冬香「……以上です。」
陽乃「ふむ……その男の子、きっと私のクラスだよ。見覚えがある特徴だからね。」
冬香「ほ、本当ですかっ!?」
陽乃「着いて来て、私のクラスまで案内するから。」
冬香「お願いします。」
ーーー教室ーーー
陽乃「今、親睦を深めてる最中でね。どんな武術をやっているのか〜とか、趣味とか特技とか色んな事を話してるよ。冬香ちゃんが言っていた彼は……あっ、あの人じゃないかな?」
………居ました。白黒の世界にたった1人だけ色があった人に会えました。
陽乃「人付き合いが苦手なのか、あんまり話してくれないんだよね〜。それで冬香ちゃんは……ってあれ?」
一刻も早く確かめたい……この人がお兄様なのか、あるいは赤の他人なのか……陽乃様には申し訳ありませんが、ここからは1対1でお話がしたいのです。