八幡side
………あぁ、なんか久し振りに誰かと一緒に寝た気がするな。だが昔はこんな風に抱き枕にされた事は無かったと思う。俺は今、熟睡している冬香に抱き枕にされている。背は俺の方が高いから冬香が俺の胸に顔を埋めているような感じになっている。幸い、俺の両腕は巻き込まれていなかったから自由に動かせる。しかし本当に気持ち良さそうに眠るな……なんか微笑んでるし。
俺はもうこの時間から起きるように体内時計が出来ているが、少し早過ぎるか?今朝の6時なんだが……この状態じゃあ何も出来ない。
………仕方ない、冬香が起きるのを待つか。
ーーー30分後ーーー
冬香「すぅ……すぅ……」
……起きる気配全く無いな。それどころかこのまま寝たままなんじゃないかって思うくらいだ。だが、こんな風にコイツの寝顔を見るのも8年振りなんだよな。
冬香「……ん、んんっ……んぇ?」
八幡「起きたみたいだな。」
冬香「あぁ……お兄様、おはようございます。」
八幡「あぁ、おはようさん。」
冬香「………っ!!お、お兄様!!も、申し訳ございませんっ!!だ、抱き着いていたなんて知らずに……」ガバッ!!
八幡「気にするな。それだけお前も人肌が恋しかったという事だろう。冬香、俺はいつも6時くらいに起きるんだが、お前はどのくらいだ?」
冬香「は、はい。私もそのくらいの時間に起きています。今日は少しだけ長くなってしまいましたが。」
八幡「そうか。とりあえず着替えて冬香がいつも食堂に行く時間に動くか。」
冬香「かしこまりました。」
ーーー食堂ーーー
ガヤガヤ……ザワザワ……
ガチャッ
八幡「冬香、頼むから人前で腕に抱き着くのはやめてくれ、少し恥ずかしい。」
冬香「良いではありませんか。私達が強い絆で結ばれている証拠なのですから。」
八幡「あのなぁ……ん?」
シィ〜ン………
……朝からすんごい注目を集めちゃってるよ。俺はなるべく目立たないように学院生活を送りたいんだが、どうやらそれはもう叶わないらしい。昨日の時点でもう噂になっていたのだろう。転校してきた奴がこの学院の序列4位と慣れ慣れしくしているみたいな噂が。そして『お兄様』と呼ばせているっていう噂も流れてそう。
冬香「お兄様、朝食は何になさいましょうか?」
八幡「……日本料理でもあればそれにするんだが、界龍には日本料理が無さそうだな。」
冬香「そうですね……私は中等部からこの学院に在籍しておりますが、日本料理が出た事はありませんね。」
……要望に日本料理も出して欲しいって頼んでおくか。中国の料理も美味いが、朝から唐揚げとかは食べたくないしな。
ーーー高等部校舎・3年廊下ーーー
八幡「……冬香、お前は1年だろ?なんで俺についてくる?」
冬香「お兄様はご存知ないのも無理はありませんね。私、もう大学部までの勉学を修了しておりまして、学院の勉学を受ける必要が無いんです。だから今までは自由にさせてもらっていました。」
八幡「それっていいのか?」
冬香「というわけなので、今までは空いた時間を梅小路家の秘術の研究に費やしていたのですが、今はお兄様と過ごす時間が何よりも大切なので、お兄様のクラスへ行き、一緒に授業を受けようと思っています。」
……今の説明、全く嘘に聞こえない。だって迷いが全く無いんだもん。この子、きっと本気だよ。本気でウチのクラスに来て授業受けるつもりだよ。
あぁ……だんだん俺の静寂が崩れていく。
ーーー教室前ーーー
あぁ、この扉が大きい門に見える……この一歩を踏み出すのってなんか怖い。
冬香「お兄様、早く参りましょう?」
八幡「あ、あぁ。」
俺は滅入るような思いを抱きながら、教室の扉に手を伸ばして横に開いた。開けた途端、外まで聞こえていた話し声が一気に無くなった。
冬香「お兄様の席は……あちらでしたね。では私もそちらの隣にもう1席用意致しますね。」
八幡「……あのさ、授業受けるのに俺の隣で居なきゃいけない理由ってあるの?」
冬香「勿論あります!私がお兄様と一緒に居たいからですっ!」
あぁ……もうここまで純粋な思いだと断れませんわ。
陽乃「冬香ちゃん、おはよう。」
冬香「あっ、陽乃様。おはようございます。」
陽乃「比企谷くんもおはよう。」
八幡「あ、あぁ…おはよう。」
……こりゃまた随分と端正な顔立ちの人だな。
陽乃「ちょっと聞きたいんだけどさ、冬香ちゃんと君の関係って何なの?冬香ちゃんの態度とか言動からしてただのお知り合いには思えないんだよねー。」
さて、どう答えたものか。下手なことは言えないな。俺が梅小路の分家だなんて。
冬香「その事ですか。簡単に申し上げますと、お兄様は私の全てです。私はお兄様に全てを捧げると決めています。私は幼き頃からお兄様と一緒に居ましたが、ある日をきっかけにお兄様は私の前から消えました。その理由をお話しするつもりはありませんが、昨日8年ぶりにお兄様と再会出来ました。平たく言えば幼馴染みたいなものですが、私にとってお兄様は私の人生そのものであり、生きていく上で必要不可欠な存在とも言って良いでしょう。」
冬香………
陽乃「えぇ〜と、つまり冬香ちゃんと比企谷君は……よく分からないけど、恋人とか婚約者に近い関係、なのかな?」
教室は女の黄色い悲鳴と男の悲嘆な叫びが混じったかなりカオスな空間になってしまった。いやマジで何これ?これどうやって収集つければいいんだよ。俺知らんぞ?
冬香「こ、こここ恋人っ!?/////わ、私とお、おお兄様がですか!?そ、そのような関係ではご、ごごございませんっ!!んんっ!さらに砕けて言えば、義兄妹のようなものです!/////」カアァ!!
教室内の生徒(それを最初から言えば良かったのに……)
陽乃(それに冬香ちゃん、その反応は比企谷君と恋人になりたいって言ってるようなものだよ?)
八幡「まぁそういう訳だ、小さい頃によく遊んでてな。それで多少仲が良いんだ。」
教室内の生徒(いやアンタ等の行動は多少仲が良い奴等が取る行動では無いっ!!もう恋人だ!!)
そして予鈴が鳴って
それと冬香、隣に座るのはもういいけど手とかは握らなくてもいいから!