一気に時を超えました。
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比企谷八幡とパーシヴァルが共に仕事をするようになってから約1年の歳月が経った。パーシヴァルが1人でも仕事をこなせるようになった頃、八幡は漸く指導係として外され、パーシヴァルは1人で作業をこなす事になった。そして2人は覚えも早い事もあってか、あっという間に清掃や挨拶、礼儀やその他の作法、料理、知識、剣術や槍術などといった武芸を次々とこなしていった。
そしていつの間にか2人は、伯爵家の守護統括隊長と副隊長に任命されていた。そう、自分達よりも遥かに年上で歴も長い大人を差し置いてである。なので2人は今は給仕としてではなく、騎士として屋敷の中を警備している立場になっている。
そんな中、当家当主の伯爵から2人に話が持ち掛けられていた。
八幡「舞踏会……ですか?」
伯爵「あぁ、今度の日曜日に開かれる事になっていてね。日頃この屋敷を守ってもらっているお礼として、君達に是非参加してもらいたいんだ。」
八幡「……折角の申し出なのですが、私と副隊長が抜けては代理の者が居なくなってしまいます。勿論、部下を信用していないわけではないのですが……」
パーシヴァル「屋敷を守れないとなると、旦那様の衣食住に問題が生じてしまいます。」
伯爵夫人「その点は問題ありません。屋敷にはセバスチャンを残していきます。彼なら何の問題も無いと思いませんか?守護統括隊長様?」
セバスチャンは60歳の年寄りだが、その分この屋敷に居る年月は誰よりも長く、地形や戦術なども数多く知っている。また本人も戦う事が出来る。組手では八幡とパーシヴァルが2人で掛かっても、未だに勝てた事が無い程である。
八幡「それなら安心なのですが……」
比企谷父「八幡、時にそのような申し出を断る時は主人の気分を害するものだと思え。」
八幡「はっ、失礼致しました!」
伯爵「それで、一緒に来てくれるかな?」
八幡「その申し出、喜んでお引き受けさせて頂きます。」
パーシヴァル「隊長が行くのであれば、私も同行致します。その申し出、私もお受け致します。」
伯爵「引き受けてくれて嬉しいよ。」
伯爵夫人「私も嬉しく思います。それではタキシードとドレスの採寸をしなくてはなりませんね。八雲、明、お願いします。」
2人「畏まりました。」
八幡(た、タキシードッ!?)
パーシヴァル(……ドレス?)
八幡「だ、旦那様?我々が行くのは警護が目的ではないのですか?」
伯爵「ん?勿論パーティのだよ?警護は主催者側がするから問題無いよ。」
比企谷父「行くぞ八幡、早く採寸をする。」
八幡「え?あ、ちょっ……」
比企谷母「パーシヴァルはこっちよ。当日に向けてしっかりコーディネートしてあげるわ。」
パーシヴァル「………私もタキシードではダメでしょうか?」
比企谷母「ダメよ。貴女も女の子なんだからそれに見合った服装にしないとダメ。」
こうして八幡とパーシヴァルは舞踏会へ参加する事になった。
なっちゃったのである。
八幡side
ーーー舞踏会当日ーーー
比企谷父「うん、中々様になってるぞ。」
八幡「こんな窮屈な服着たの初めてだ。執事服はもっと軽やかで余裕あったのに。」
比企谷父「そりゃ給仕をする奴が動きづらい格好をしてたら、出来るものも出来なくなるだろうに。」
八幡「それはそうだが……」
伯爵「似合っているじゃないか八幡。」
伯爵夫人「これで貴方も貴族ですね。」
八幡「あ、ありがとうございます。お世辞でも大変恐縮です。それから奥様、私などでは旦那様や奥様のようにはなれません。」
伯爵「お世辞じゃないよ。さて、あとはパーシヴァルだけど、これは待つしかないね。女性は準備に手間をかけるからね。紳士、騎士たる者は女性を待つのも己を磨く嗜みだよ。」
比企谷父「流石は旦那様でございます。」
ーーー5分後ーーー
少しの間会話をしながら待っていると、扉からノックの音が聞こえた。
比企谷母「失礼致します。旦那様、パーシヴァルの準備が出来ました。」
伯爵「ご苦労様。ん?パーシヴァルは何処だい?」
比企谷母「こちらに。」
パーシヴァル「し、失礼いたします///」
声と同時にパーシヴァルが入室してきたのだが、言葉が出なかった。目の前に居るのは本当にいつも俺の隣に居たパーシヴァルなのかと目を疑った。黒のロングスカートに青の肩が露出したドレスを着ていて、腕には純白のロンググローブを履いていた。
伯爵「うんうん、パーシヴァルもよく似合っているよ。八幡くんも感想を言ってあげたらどうだい?君の副官がこんなに綺麗になったんだ。一言くらいかけてあげるべきだよ。」
パーシヴァル「だ、旦那様!私にそのようなお言葉は……」
八幡「あー……その、見違えた。なんつーか、すげぇ綺麗だ。」
パーシヴァル「っ!!あ、ありがとう……ございます/////」カアァ
おいっ!そこでもっと顔を赤くするなよ!俺も変に意識しちまうじゃねえか!
伯爵「さて、これで全員揃ったね。じゃあ早速向かおうか。紳士諸君はエスコートする女性を忘れないようにね。相手は言わなくても分かるよね?」
……相手くらいは分かるから、俺は無言でパーシヴァルに向けて手を差し伸ばした。
八幡「……今日のお前は副隊長ではなく、1人の淑女だからな。俺もその対応をさせてもらう。」
パーシヴァル「は、はい///」
パーシヴァルは俺が差し出した右手を左手で掴んだ。そしてそのまま俺がエスコートをする。当たり前の事だが、見知った仲だからこそ、今まで以上に恥ずかしく感じた。それと旦那様に奥様、そんな生暖かい目で見ないでください!父さんと母さんも初々しいとかそんな感情を込めた目で見るなっ!初めてだから仕方ないだろう!
パーシヴァル「八幡さんからのエスコート……か、顔が熱いです/////」
パーシヴァルの顔はラノベの表紙で見たから分かりますが、あの顔の赤面を想像したら、破壊力が凄まじかった。