八幡side
八幡「貴方が俺達を《鳳凰星武祭》に出させようとする目的、それは……星導館の運営母体《銀河》の幹部になる為でしょう?」
その瞬間、鋼一郎さんは驚いたように目を見開いたが、すぐに普通の表情に戻った。恐らく驚いたのを隠そうとしたのだろうが、もう手遅れだ。これで魂胆が分かった。要は自分がのし上がりたいから俺達を利用したいだけだ。俺はともかく、まさか身内に手を染めるなんてな………星導館だけに限らず、運営母体の幹部になっている連中は非人間的な奴等が多いってよく聞くが、それが本当なら鋼一郎さんは絶対になれないだろうな。
見たところ、この人の我欲、欲望、野心が強いからだ。予想だが、幹部の奴等に鋼一郎さんみたいな人は居ないだろうな。
八幡「それで、どうなんです?俺の答えは正解なのか、不正解なのか、お答えしてもらってもいいですか?」
鋼一郎「ふん、不正解だ。」
八幡「虚勢張って嘘つくくらいなら正解って言った方がまだカッコ良かったですよ。俺には貴方が答えを言った瞬間に目を見開いたのがよく見えましたから。もしそれが無かったとしても、貴方は相当分かりやすい人だ。」
鋼一郎「……何故そう思う?」
八幡「普通に考えれば分かる事です。運営母体の幹部、聞こえは良いですが、中身は相当黒いと思いますしね。それこそ身内を使ってまでのし上がろうとする人の事なんて、考える暇なんて無いくらいだと思いますよ。寧ろ相手にされないと思いますけど?」
鋼一郎「黙れっ!!貴様に何が分かる!?家族から迫害されたような奴に、私の気持ちが分かるものか!!」
綺凛「お、伯父様っ!!」
漸く綺凛が声を挙げた。一応綺凛も俺が刀藤家に居候のような形で来た訳は形上では知ってるからな。俺が星脈世代だから、簡単ではあるがそれだけで片付けられるものではない。まぁ、この人がこういう思いをするのは俺も分からなくもないけどな。
八幡「………分かりますよ、貴方の気持ち。」
鋼一郎「何?」
八幡「俺だって貴方と同じだ。手に取るように分かる。『自分が星脈世代だったら』『人より特別な力を持っていたら』そういう風に思っていたでしょう?俺も貴方と同じで今までどれだけ『普通の人間が良い』とか『普通の人間になりたい』と思った事か。貴方はまだマシな方ですよ。星脈世代でなくとも居場所がある。刀藤家があります。それに比べて俺は何処にもありません。家に帰るだけで異物扱い、飯だって偶にしか食わせてもらえなかった。暴力だって日常でしたしね。そんな所に貴方は行きたいと思えますか?」
鋼一郎は固まっていた。いや、喋りたくとも喋れないのであろう。八幡の受けていた迫害の内容があまりにも凄絶なものだったからであろう。
八幡「血は繋がっていようと違う人種になって生まれた。人間ではなく星脈世代として。たったこれだけの事で俺の人生の半分は真っ黒に等しかった。けど、そんな時に誠二郎さんに出会った………あの時、俺は本当の意味で救われた。あったかい飯や風呂があって布団がある。そして何よりも、刀藤家の暖かさに救われた。家族ってのはこんなにもあったけぇものなんだって初めて思った。琴葉さんも俺の両親と同じ非星脈世代なのに、なんの躊躇いもせずに普通通り接してくれた。鋼一郎さん、貴方の両親や祖父母のいずれかに非星脈世代はいたと思います。その時の反応とかはどうでした?師匠だって貴方の弟だ、その弟は貴方を見下すような事を1度でもしましたか?俺にはそんな事をするような一族には到底思えません。」
次第に鋼一郎さんは俯いていった。そして何かを思い出しているような、そんな仕草を取っているかのように何もせず、ただ俯いていた。
八幡「……鋼一郎さん、貴方はそんなあったかい家族の、自分の娘も同然の子を道具として扱えるんですか?」
鋼一郎「………」フルフル
綺凛「八幡先輩……」
鋼一郎「……八幡、済まなかった。私は娘も同然の子を知らずに道具にするところだった。そしてお前にも酷い事を言った、済まない。」
八幡「……いえ、気にしなくていいですよ。俺は家族は大切にするべきだって本気で思ってたから、熱弁しちまっただけですから。」
鋼一郎「………綺凛も済まなかった。」
綺凛「い、いえ!私なんてただ居ただけみたいなものですから。」
鋼一郎「さっきの話だが、忘れてもらって構わない。もう行っていいぞ。」
さっきとはまるで別人だな。めちゃくちゃ良い人になってんじゃねぇかよ。
八幡「じゃあ行きますね……綺凛、行くぞ。」
綺凛「は、はい!」
鋼一郎「呼び出して済まなかった、良い学園生活を送ってくれ。」
そして俺達は応接室から出て、廊下を歩いた。綺凛はまだ戸惑っているようだった。まぁ無理も無いだろう。一瞬の出来事だったからな。
八幡「綺凛〜帰って来てるか?」
綺凛「は、はいっ!?」
八幡「声が物凄い裏返ってたな。飯食いに行こうぜ、ずっと話してたら腹減っちまった。」
綺凛「……はい、分かりました。」
そして俺たちは本日まだ行ってない夕食を食べるべく、食堂へと向かうのであった。