喫茶鉄血   作:いろいろ

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強キャラ感のあるセリフとともに現れるまな板のようなシルエット、そしてSOPとの舌戦ですら互角というポンコツ感溢れる人形・・・そんな印象のジャッジちゃん。
彼女を作った人は何を思って作ったのか小一時間ほど問い詰めたいところ(いいぞもっとやれ!)


第七十八話:巨乳に正義の鉄槌を!

最近、S09地区周辺で不可解な事件が多発している。なんでも、立て続けに人形が襲われているらしい。被害者は人形である以外に接点はなく、グリフィンから鉄血さらにはハイエンドまでと見境なし、発生場所も一貫性がなく、まさに目に付いたやつから襲っているといった感じだ。

そして、被害者の証言から次のようなことがわかっている・・・・・黒と白のモノクロカラーで小柄な人形だった、と。

 

 

「という噂を聞いたのですが、何かご存知ですか三人とも?」

 

「「「・・・・・・・。」」」

 

 

喫茶 鉄血の従業員控え室、そこにいるのは正座で項垂れる鉄血工造の三人と、それを冷ややかな目で見下ろす代理人。

これがアーキテクト一人ならいつものことなのだが、そこにゲーガーとサクヤまで加わったとなるとただ事ではない。というか貴重な常識人枠やストッパーがいなくなるのは非常に不味く、なんとしても原因を解明したいと思う代理人だった。

 

 

「あ、あのね代理人ちゃん、実は多分その子は・・・・うちの子なの。」

 

「・・・・・ほぉ。」

 

「ま、待ってくれ代理人! 確かに作ったのは私たちだが私たちが解き放ったわけじゃないんだ!」

 

「あの子がいきなり逃げ出しちゃったんだよ!」

 

 

一層冷ややかな声と目つきになった代理人に慌てて弁明する二人。

話を聞いてみると、どうやら今度はまともに要請があって作った人形らしい。

 

鉄血の騒動から一年以上、いくつか騒動やら馬鹿騒ぎやらはあったもののなんとか信用を取り戻した鉄血工造に、なんと軍から新型のハイエンドの発注が届いたらしい。人形・人間両方を指揮できて、単体での戦闘能力も高くてというそんな要望で。

・・・・・というだけなら問題なかったのだが、追加でこんな注文が殺到した。

 

『出来るだけ可愛く』

『ちっぱい』

『強気な性格』

『隊のマスコット的な感じで』

 

などなど、それはもう細かい要望がビッシリであった。これの正体はとある部隊の隊長で、配属されるのが自分たちの部隊であると知ると部下を巻き込んで要望を書きためたらしい。

 

 

「・・・・・で、あの子、『ジャッジ』が完成したんだけどね。」

 

「その・・・見られちゃったわけよ・・・・・・その要望書を。」

 

「そしたらその・・・・・急に暴れだしてな。」

 

「いや、当然でしょう。」

 

 

考えても見てほしい、自分のデザインが下心丸出しなものだったら、しかも配属先がそんな連中の配下だったら。

ジャッジでなくても逃げ出してることだろう。

加えて・・・

 

 

「襲ってるのはね、多分その、胸が大きい子ばかりだと思うの。」

 

「こればっかりはアーキテクトが悪い。」

 

「待って!? 確かにチンチクリンとは言ったけど私のせいなの!?」

 

「「当たり前だ(でしょ)!」」

 

「・・・・・はぁ。」

 

 

どうやらそのジャッジという人形、自分の容姿に相当のコンプレックスを持っているらしい。グリフィンにも似たような人形がいた気がするが武力行使には至らなかった。

まぁ確かに、これが噂ではなく事実として上に上がれば間違いなく不採用、鉄血の信用は再び落ちるだろう。

 

 

「どどどどうしよう代理人ちゃん!? あの子本当はいい子なのに解体処分とかされちゃう!」

 

「サクヤさん落ち着いてください。 というかそんなキャラでしたか?」

 

「だって、だってぇ〜!」

 

 

大袈裟かもしれないが、実はサクヤにとってはかなり大きな問題だ。些細な(と言っていいのかは怪しいが)事件で正当な評価が下されないというのは、彼女の生前の心残りの一つでもある。

そんなわけでポンコツに成り果てたサクヤを落ち着かせるため、また一応の部下というか同僚にあたる人形を助けるために、代理人も協力するのだった。

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・。」

 

『・・・・あの、代理人?』

 

「なんでしょうかアーキテクト?」

 

『いや、その・・・・なんかゴメン。』

 

「別に気にしてませんよ、えぇ気にしてませんとも。」

 

『ほんとに悪かったから! でもこれが今一番確実なのよ!』

 

 

代理人、アーキテクト、サクヤ、ゲーガーが小一時間ほど考えた策、それがこの『豊胸パッドをつけて人通りの少ない路地で待ち伏せよう』作戦である。

・・・・・もちろん反対したが残念なことにこれ以上の案は出なかった。そしてこの作戦のある意味犠牲者となった代理人は大変ご立腹である。

 

 

「まったく・・・・というよりも、本当に大丈夫なんでしょうか?」

 

『一応捕縛用の強化サブアームに換装してるし、ステルスドローンで周りも警戒してるから。』

 

「ですが、あの404小隊ですら一方的にやられたのですよ。」

 

 

そう、これに先立って厄介ごと専門の404小隊が捜索を開始したのだが、ものの見事に返り討ちにあった・・・・・・G11と45だけを残して。

残されたG11曰く、「自分よりも胸があるかどうかしか見ていない」らしい。45は大いに荒れたそうだ。

 

 

「でも本当なんですか? 蹴りだけで襲ってくるというのは。」

 

『う〜ん、確からしいよ。』

 

『家出したのは武装チェック前で、実弾一発も持って行かなかったからそこは大丈夫よ。』

 

『あぁ、だから近づいてきたところを捕縛すれば・・・・・待て、今のはなんだ?』

 

『代理人、上!』

 

「っ!?」

 

 

代理人が飛び退くのと何かが地面に激突するのはほぼ同時だった。慌てて顔を上げる代理人だが、土煙を破って現れたソレの猛攻をなんとかサブアームで防ぐ。

現れたのは情報通り、鉄血特有のモノクロカラーリング人形のジャッジだった。小柄な体躯に見合わずかなりのパワーで、それが軍用に調整されていることを物語っている。

そしてジャッジの目線は、はっきりと代理人の胸に突き刺さっていた。

 

 

「この脂肪の塊に鉄槌を!!!」

 

「いきなり何を言っているんですかジャッジさん!?」

 

 

わかっちゃいたが相当の巨乳嫌いである。その瞳はもはや親の仇を見るような目であり、心なしかさっきから蹴りの高さがちょうど胸のあたりに感じる。

 

 

「貴様にはわかるまい! 持たざる者の屈辱が!!」

 

「そこまで言うのでしたら盛ってもらえばいいのでは?」

 

「盛ったら不採用と書かれてたんだぞ!? そんなことできるか!」

 

「えぇ・・・・・・。」

 

 

この前の海の一件といい、この世界を守る軍隊はどうなっているのだろうか。一応補足しておくとごく一部がそうなのであって、決して全部が全部HENTAIなわけではない。

が、そんなことなど知るはずもないジャッジは、今の自分(持たざる者)盛った自分(不採用)かで揺れているのだ・・・・・軍に抗議したほうが早そうである。

 

 

「でしたら私も一緒に説得します。 このままでは不採用どころか解体ですから落ち着いてください。」

 

「チチデカの言うことなど誰が信じるか!」

 

「で、でしたらほら! これでいいでしょう!」

 

「っ!!!」

 

 

そう言ってパッドを捨て去りアピールする代理人。パッドで結構盛っていたので服がダボつくぐらいには慎ましくなったが、そもそもとして代理人は理解していない。

・・・・・代理人は、そこそこ()()のだ。

 

 

「何がほら、だ! それで無いとか嫌味か貴様ぁ!!!」

 

「えぇ!?」

 

『代理人ちゃん、流石にそれは無理があるよ・・・・。』

 

「でも、アルケミストとかに比べれば・・・」

 

『アレを基準にしたら世の中の大半はナイ側だよ代理人。』

 

 

思わぬところで火に油を、いやガソリンをぶち込んでしまった代理人。しかもまずいことにさっきから受け止め続けているサブアームが嫌な音を立て出した。そろそろ耐久的に限界らしい。

 

 

(・・・・一か八か・・。)

 

 

代理人はじっと機会を伺い、やや大ぶりの蹴りが来たタイミングでサブアームを引っ込める。勢いよく空を切って体勢を崩した間に一気に間合いを詰め、久しぶりのフルパワーで思いっきり殴りつける。

 

 

「ゲファ!?」

 

「いい加減・・・・大人しくなさい!」

 

「ゴハッ!?」

 

 

完全に間合いに入ったジャッジをサブアームで押さえつけ、ひたすら殴りつける代理人。基本的に大人しいことと普段の服装、そしてそもそも戦っているところをあまり見たことがないせいでイメージがつきにくいが、代理人は鉄血が誇る最高クラスの戦術人形である。当然、それなりに強い。

一応急所は外したものの完全に伸びるまでぶちのめした代理人はジャッジを担ぎ上げ、ドローン越しに見守るアーキテクトに通信を入れる。

 

 

「対象を確保しました。 そちらに戻りますのでよろしくお願いしますね。」

 

『う、うん、ありがと・・・・・・ねぇ代理人。』

 

「? なんでしょうか?」

 

『・・・・・まだ怒ってる?』

 

「・・・ふふっ、さぁどうでしょうか。」

 

『マジで謝るから本当に許して!!!』

 

 

その後、代理人が戻るまでひたすら通信で謝り続けるアーキテクトであった。

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

『あぁ、その・・・・・すまなかった、うちの部下がバカなことを言ってしまって。』

 

「い、いえ、お構いなく。」

 

『そう言ってもらえると助かる・・・・・で、ジャッジの件だが。』

 

「っ!?」

 

 

数日後の鉄血工造。

なんとか騒動が収まり軍に当たり障りのない範囲で伝えたらいきなり出てきたのはなんとカーター将軍。アーキテクトなんかさっきから冷や汗かきながらガタガタ震えている。その横で今までの行いを猛省しているジャッジに至っては刑を執行される前の罪人のような表情だった。

 

 

『先日の騒動での高い白兵戦能力、および市街地での機動戦も十分であることが証明されたわけだ・・・・・ぜひ、我が軍に来てもらえないだろうか。』

 

「!!! ほ、本当か!?」

 

「じゃ、ジャッジ! 落ち着いて!」

 

『あぁ、高待遇を約束しよう。』

 

 

感極まって泣きだすジャッジとサクヤ。カーター将軍は、詳細は追って伝えるとだけ言って通信を切り、アーキテクトはドッとため息をついたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ご協力、感謝します。」

 

「なに、彼女の配属はすでに決定していたのだ。 あの程度の騒動で覆るはずもない。」

 

「ですが、彼女たちを安心させることができました。 ありがとうございます、将軍。」

 

「それはこのコーヒーでチャラになったんではないかね代理人?」

 

「・・・・ふふっ、そうですね。 おかわり、いりますか?」

 

「あぁ、頂こう。」

 

 

 

 

end




と、いうわけで第9戦役のボスキャラ、ジャッジちゃん登場。ボスなのでなかなか強力だけど実はジョットガン一体と互角という悲しい性能・・・・・SG三体で余裕でした。


というわけでキャラ紹介

ジャッジ
鉄血の新型。初めから軍に配属される予定なので性能も折り紙つき・・・・なのだが性格面でポンコツ。ガイア同様に大人ボディを用意すべきか悩みどころ。

鉄血首脳陣
いつもの三人。珍しくサクヤも怒られている。
愛情を持って作ったため解体されるのはなんとかしたいところ、だけど彼女たちではあまりに頼りにならない(そもそも人間なサクヤ、運動不足なアーキテクト、実は戦闘経験皆無なゲーガー)

代理人
なんか段々武闘派になってきた気がするが、至って普通のオールラウンダー。今回装備したサブアームは先端に捕縛用の指、全体的に強度を増した接近戦用。それでも大破寸前まで蹴られた。

カーター将軍
群を出してこの人を出さないわけにはいかないだろう。今のところ原作(日本版)で最も偉そうな人。
この人も変態かポンコツにするかする予定だったが、収拾がつかなくなるので今のところ常識人。

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