Aigisにはパイルバンカーとかドリルとかが似合うと思います。
鉄血工造製の人形は、IoP製に比べて喜怒哀楽が乏しい。
それが、世間一般のイメージである。確かにIoP製は個々の性能に優れ、鉄血は生産性や規格統一という面で優れる。その結果、IoPの人形にはいわゆる個性というものが多く見られ、鉄血のものはハイエンドを除きあまり見られないのだ。
さてそんな鉄血製の量産人形であるが、その中でも一際変わった種類の人形がいる。軍用を除いた全人形の中でも極めて珍しい男性型モデルの人形、Aigisである。
「なぁ知ってるか?
「あぁ知ってるさ。 俺たち用の装備だろ?」
「近接一辺倒な俺たちのために、重火器を持たせようって話らしいな。」
喫茶 鉄血の一階、丸いテーブルを囲みながら全く同じ顔(?)で話し合うAigis三人。人形が鎧を被っているのではなく元々がこのデザインのAigisたちの表情などわからないものなのだが、不思議とこいつらの表情はわかるのだ。
「わかってねぇ、わかってねぇよ全く。」
「あぁ、そうだ。 俺たちが不平不満を言いながら
「むしろ俺たちが望むのはさらなる火力を持った接近武器、すなわち・・・・・」
「「「パイルバンカーだっ!!!」」」
心が通じ合ったのか、互いに拳をぶつけ合うAigisたち。別に彼らとてアーキテクトを嫌っているわけでもなく、ただ単純に要求したい内容を語り合っているだけだ・・・・非常にやかましいが。
「・・・・・コホン、お待たせしました、ブレンドコーヒーです。」
「ちょうどよかった代理人殿、ちょっと聞いてくれ。」
「パイルバンカーとドリル、どっちが良いだろうか?」
「あとロケットパンチもだな!」
「・・・・・・・他に候補は?」
「「「無いっ!!!」」」
深く、深くため息を吐く代理人をよそに、Aigisたちはコーヒーのカップを持ち上げる。するとちょうど口(?)にあたる部分の装甲がスライドし、中からまるで蚊のようにストローが伸び、熱々のコーヒーをちゅ〜っと飲み始めた。
「・・・・ふぅ。 やはりこの店のコーヒーは美味い。」
「ああ、疲れた脳が一気に冴え渡る。」
「お陰で目もぱっちりだ。」
「皆さん脳も目もありませんよね?」
当然ながら
代理人の言うように目も脳もないが、心なしかメインカメラが惚けているように見えなくもない。
「・・・・・そういえば遅いなアイツ。」
「またどこかで人助けだろう。」
「アイツは根っからのいい奴だからな。」
そんな三人の座るテーブル席だが、実は空席が一つある。空いている席には四人目が来る予定なのだが、どうやら遅れているらしい。
そんな話をしていると何やら入口が騒がしい。それに続いてドアが開くと、遅れて来た四人目が・・・・・
「ぶぁっはっはっはっ!!!! お前、なんだそのラクガキは!!!」
「ずいぶん派手な塗装だなwwww」
「さしずめ『幼稚園迷彩』ってとこか笑笑」
やって来たそいつは全身いたるところにラクガキがされていた。どうやら子供たちの相手をしていたようだが、見た目ゴツいAigisがなんともファンシーな色合いになっている。
しばらく黙って聞いていたそいつ(四人目)だが、いまだに笑い続ける仲間の元へ無言で歩み寄ると、そのレンズに指を押し付ける。
さて、この四人目はさっきまで子供達と遊んでいた。当然ながら手でも触れている。そして人間というものには皮脂という油があり、Aigisの手にももちろん付着している。
さて問題だ。 皮脂のついた指でカメラのレンズを触ればどうなるか・・・・・答えは言うまでもない。
「イェアアアアアアア!!!!!」
「き、貴様ー! 何をするだー!?」
「このド畜生がぁああああああ!!!!」
両手でメインカメラを抑えながら床を転げ回るAigis三人。もちろん痛覚なんてものはないが、その仕草は目に玉ねぎ汁を入れられたと思うくらい悲惨なものだ。
というか図体のでかい装甲人形がゴロゴロ転がるだけだも大迷惑である。
「皆さん、お静かにお願いしますね。」
「「「「アッハイ」」」」
いい笑顔で絶対零度の空気を解き放つ代理人に大人しくするAigis四人。すごく今更だが何故彼らがここにいるのか、そもそもコイツらの保護者(?)はどこにいるのか、そんな疑問が尽きない代理人。
が、そんな疑問はすぐに氷解する。ドアを勢いよく開け、白髪の人形が鬼のような形相で詰め寄って来た。
「き・さ・ま・らぁああああああ!!!!」
「あらゲーガー、あなたの部隊のでしたか。」
怒り心頭ですといった感じで入って来たのは鉄血工造の苦労人、以前はアーキテクトのせいで胃に穴が空きかけたが最近は持ち直したと聞いていたゲーガーである。
彼女の率いる輸送・護衛部隊の主戦力こそがこのAigisたちなのだが。
「ふんっ!」バキッ
「ありがとうございます!」
思いっきり振りかぶり、一番近くにいたファンシーなAigisをぶん殴る。殴られたAigisは何故か感謝を述べながら壁まで吹っ飛び、崩れ落ちる。表情のないその顔が何故か恍惚の表情に見えるのは気のせいだろうか。
鉄拳制裁を下したもののまだ落ち着かないのか、ひどく冷たい目で他のAigisを見下ろす。
「ま、まるで養豚場の豚を見るような目だ・・・・・」
「あぁ・・・・堪んねえぜ。」
「スカートの見えそうで見えない感じもグッとくrぶべらっ!?」
今度は思いっきり蹴飛ばし、追撃とばかりに踏みつける。頑丈さが取り柄のAigisはハイエンドであっても踏まれた程度ではビクともしないが、本人に抵抗のそぶりはない。
むしろ・・・・・
「蹴ってもらえる上に踏みつけてくれるなんて!」
「我々の業界ではご褒美ですっ!」
「さすがです姐さん!」
「黙れ」
「「「はい」」」
何をどう間違えたのか、
「・・・・・で、ここで何をしている?」
「コーヒーを飲んでました!」
「輸送任務終了後はグリフィンと協力してパトロールだといったはずだが?」
「指揮官殿から不要であると言われました!」
「・・・・・隊長である私への連絡は?」
「「「「あ・・・・・」」」」
ピキピキと青筋を浮かべてこめかみをひくつかせるゲーガー。これがもしアーキテクトなら迷わずぶん殴って再起不能にするところだが、部下に優しいと評判のゲーガーはまだ堪える・・・・・・すでに数発ぶつけているが。
さてそんな上司の苦労やら思いやらだが、残念ながら
「隊長・・・・・・・
寂しかったんですね!」
「それに気がつかないとは・・・・・」
「この
「さぁさぁ隊長! お席を用意しました!」
「ちっがぁあああああああう!!!!」
ついに切れた、というよりよく持ちこたえた方であるがもう限界だった。今すぐ片っ端から殴り倒して解体してやりたいところだったがここは喫茶 鉄血、代理人に迷惑をかけるわけにはいかないのだ。
だがここまでいっても効果がない上に殴ってもさして反省してくれるわけではない。しかも頑丈さが取り柄でジュピターの直撃すら一応耐えるAigisに鉄拳制裁などほとんど効果がない。
ふぅぅぅぅと息を吐くと、目の前のAigisが飲みかけだったコーヒーを一気にあおり、再び深く息を吐く。
そして・・・・・・
「うわぁあああああもうやだぁああああああ!!!!!!」
「「「「た、隊長っ!?」」」」
泣きながら店を飛び出していった。これには流石に驚いたのかAigis四人も慌てて後を(律儀に代金だけ置いて)追いかける。が、もとが鈍重なAigisなので当然追いつけずに見失った。
それでも諦めずに追いかけるAigisたちを見送りつつ、代理人は心底疲れたようなため気を吐くのだった。
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「うぅ・・・私の何がいけないんだぁ・・・・・」
「あ〜よしよし、大変だったねゲーガーちゃん。」
「上は上でバカだし部下は部下で変態ばっかり・・・・・もう疲れたよサクヤさん・・・・」
「私がちゃんと注意するから・・・・だからお酒はその辺で。」
「ふぇえええええええん・・・・・・」
後日、鬼のような形相で怒鳴り続けるサクヤと、正座しながらヘコヘコと頭を下げ続けるAigisたちの姿が見られたという。
end
と、いうわけで第三十四話以来のAigisたちが登場。
原作では男性モデルか女性モデルかがわからなかったのでここでは男性としています・・・・・というかおっさん?
てなわけでキャラ紹介
Aigisたち
第三十四話にて初登場。
こんなんでも人形としては優秀で、盾役からアタッカーまでなんでもこなせる。
ちなみにゲーガーの魅力を語らせた場合にそれぞれが語るのは「尻」「胸」「腋」「太もも」である。
ゲーガー
アーキテクトのストレスからは解放されたが今度は部下の心労に悩まされるようになった。
いまや彼女の癒しはサクヤのみである。
サクヤのことを密かに想っている。
代理人
最近変な客しかこないのでは?と思い始めたが、かといって追い出すこともなく店を開け続けている。
彼女がストレスでダウンしたところを誰も見たことがない。
サクヤ
鉄血最後の癒し。
直接開発に関わったわけではないが本人の過去から鉄血人形全員を家族のように思っている。
Aigisにも鉄拳制裁を敢行できる。