喫茶鉄血   作:いろいろ

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最近全く出番がなかった喫茶 鉄血組の面々。
思えばハイエンドやらダミーやら増えたなぁ。


第八十一話:資料収集

「お前は俺のものだ・・・・そうだろ?」

 

「は、はい・・・・・・」

 

「・・・う〜〜〜〜〜ん・・・・・・もうちょっと上でもいいかなぁ。」

 

「む、だがコレくらいが自然体だぞ。」

 

「・・・・・・・何をやっているんですか?」

 

 

いつも通りの平和な喫茶 鉄血。世間は夏真っ盛りだということでそこそこ繁盛しているが、客の顔ぶれはやや変わっている。というのもこの期間は遠方から訪れる客が多く、逆に地元の人間は旅行に行ったりしているためである。

さてそんないつもとは違った客たちが目を見開く光景、ハイエンドたちによるおふざけ劇(いつも通り)の光景である。

 

 

「ん? 今後の資料をと思ってね。」

 

「ちょうど三人とも休憩が重なったからな。 私としても面白そうだと思ったからだ。」

 

「・・・・・Dは?」

 

「ちょ、ちょっと憧れてたからつい・・・・・」

 

「はぁ〜〜〜〜・・・・・・・」

 

 

代理人が深くため息をこぼす。

トラブルメーカーのマヌスクリプト、トラブルを助長させるゲッコー、面白がると止めないD、この三人が何をやっていたかというと、マヌスクリプトの資料集めのモデルだった。具体的には店内の壁にDがもたれかかり、その顔の横にゲッコーが腕を置いて見つめ合う・・・所謂壁ドンというやつである。それをマヌスクリプトが写真に撮り、あーでもないこーでもないと首をひねっている。

・・・・・もちろん営業中であるしなんならすぐそこには客がいるのだが、直接迷惑をかけなければ割と好き放題だ。それに加え、客も客で別に鬱陶しく思っておらずむしろ、

 

 

「・・・・あぁ・・・ゲッコー様に壁ドンされたい。」

 

「同性でも人形でも関係ないわ・・・・・」

 

「Dちゃん! そこ変わって!」

 

「なぁお前、代理人とDならどっち選ぶ?」

 

「冷たく見下ろしながら踏んでくれそうな代理人。」

 

「このドMめ!」

 

「なんだとこの野郎!」

 

 

こんな感じだ。中にはゲッコーに抱かれるなら写本先生のネタになってもいいとさえ呟く猛者までいるくらいだ。

・・・・・この店の客層は大丈夫だろうか。

 

 

「・・・・あっ! そうだ代理人!」

 

「ダメです。」

 

「・・・・・まだ何も言ってないんだけど。」

 

「ろくでもない内容なのは目に見えています。」

 

 

ぶーっと頬を膨らますマヌスクリプト。その後もしきりに『やらしいことはしないから』とか『写真も撮らないしお金も取らないから』とかしつこいので、一応話だけでも聞いてやる。

 

 

「はぁ・・・・・で、何を思いついたんですか?」

 

「ふふふ・・・・ズバリ、お客さんがやってもらいたいことを私たちがやってあげるんだよ! お客さんは望みが叶うし私は資料を集められる、いいことづくめじゃん!」

 

「・・・・・この店に対してのメリットは?」

 

「評判が上がる!・・・・・・・多分。」

 

 

一度サクヤのところに送って再調整でも受けてきたらどうか、と割と本気で思った代理人だが、まぁ確かに合意の上でならトラブルもなさそうだ。というよりも・・・・・

 

 

「げ、ゲッコー様とあんなことやこんなことが・・・・・」

 

「俺、Dちゃんにあ〜んされてみたいなぁ。」

 

「写本先生だって改めて見りゃ美人だしな。」

 

「・・・・・・はっ! これは夢にまで見たハーレム体験ができるチャンスなのでは!?」

 

 

客の方がすでに盛り上がっている。子連れなどは単純に写真を撮りたいだけのようだが、明らかに危ない妄想にまで走るバカも散見される。非難じみた目でマヌスクリプトを見ると、本人もここまで反響が大きいとは思っていなかったようで明後日の方角を見ながら口笛を吹く。

代理人はそれ以上文句は言わなかったが、とりあえず付け足しておく。

 

 

「・・・・お一人様一回まで、それとご注文された方に限る、これでよろしいですねマヌスクリプト?」

 

「あ、ありがとう代理人!」

 

「後日何らかの処分を考えておきます。」

 

「・・・・・・・はい。」

 

 

何はともあれ要望は通った。客の何人かはガッツポーズしたり感極まって泣き始めたり・・・・カオスだ。

釈然としないまま、厨房から出された料理を客のところまで持っていく。おそらくこれが最初の要望になるんだろうなぁなどと考えていると、注文した客が誰かわかった時点で思いっきり渋面になる。

 

 

「おぉ代理人さん。 聞きましたよ、さっきの話。」

 

「・・・・・暇なんですか?」

 

 

そこにいたのは在ろう事か、いつぞやの人権団体の会長だった。無駄に紳士的な服装と立ち居振る舞いだが、その実態は代理人ファンクラブ創設者という(代理人にとっては)とんでもない男なのだ。

嫌ってはいないが最大限にまで警戒を強め、さっさと料理を置いて立ち去ろうとするが、まぁ世の中そんなに甘くない。

 

 

「では早速ですが・・・・・」

 

「あぁ、やっぱりあるんですね。」

 

「思いっきり罵ってください!」

 

「・・・・・・・・・・・。」バチンッ

 

 

気がついた時には平手を振り抜いていた。完全に無意識、そして純度100%の敵意だった。かつてここまで無表情で人を殴ったことがあるだろうか、と言えるくらいに。

 

 

「・・・・バカなんですか?」

 

「おぉ・・・・ぶっていただいた上に罵ってもらえるなんて・・・・」

 

「・・・・・もうよろしいですか?」

 

「はい! ありがとうございます!!」

 

 

あのおっさんスゲェ・・・・・それが他の客たちの心境だった。が、良くも悪くも最初の勢いというのは肝心で、その最初があれだけやってくれたのだから他の客も我先にと頼み始める。注文がまだの客などものすごい勢いでメニューをめくっては目で追いかけている。

当然こうなっては店員は引っ張りだこで、中にはハイエンドではなく奥のリッパーやイェーガーを呼ぶ者までいる始末だ。

 

 

「ほら、恥ずかしがってないで口を開けてくれ、お嬢様。」

 

「は、はい・・・・・・あ〜〜ん。」

 

「ふふっ・・・おや? 口元にクリームがついてしまった。」

 

「え? あ、ほんと・・・・・あっ。」

 

「・・・・・これで取れただろ? 美しい顔に元どおりだ。」

 

「・・・・・・・はぅ。」パタン

 

 

「もう・・・・・本当に甘えん坊さんだね()()()()()は。」

 

「そ、それはDちゃんだけだよ(何だこの子天使かよ!)」

 

「お兄ちゃんって猫舌なんだよね? じゃあ冷ましてあげるね・・・・ふーっ、ふーっ・・・・・」

 

(うぉおおおおおおおDちゃんがフーフーしてくれるなんてぇええええええええええ!!!!!!!)

 

 

「あ・・・・あの、先生?」

 

「ん? 何を言ってるんだい? 今の私は()()だろ?」

 

「え、あ、はい・・・・じゃなくて、そ、そうだね・・・・・ただ、あんまり見られると食べづらいっていうか・・・・・」

 

「うん? 美味しそうに食べる君を見るのが楽しいだけだよ。」

 

(あああああああこんな彼女が欲しかったあああああああ!!!!)

 

 

「だ、代理人さん! 『おかえりなさい、あなた』と言ってもらえますか!?」

 

「うわっ、コイツ本当に頼んだぞ!」

 

「マジですみませんうちの後輩が・・・・・」

 

「いえ、これも仕事ですので。 では・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おかえりなさい、あ・な・た♪」

 

「かはっ!?」

 

 

いろんな意味でひどい光景だった。ごく一部が白い目で見ているが、止めようとしないあたりどこか楽しんでいるのだろう。それとここは常連が目を光らせている店でもあり、幸いなことに良識から外れた注文はなかった。

その後はいつも通りきた人形たちも巻き込み巻き込まれ、騒がしくも楽しげなひと時が流れていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ疲れた・・・・・でも結構面白かったね。」

 

「うむ、なかなか楽しい時間だった。」

 

「それは何より・・・・・で、いい資料は取れましたかマヌスクリプト?」

 

「もっちろん! 特に代理人の『あ・な・t「何かおっしゃいましたか?」・・・・いえ、何も。」

 

 

ようやく閉店となり、まだ店の前にいた客には丁重におかえりになってひと段落がついた。結局最初の客がどこかで話したのか、噂を聞きつけた客が殺到するという事態になり、予定外の大繁盛でケーキの在庫が尽きかけたほどだ。まぁ儲かったのでいいとするが。

 

 

「でも意外だったのよね、処刑人の迫真の演技。」

 

「あぁ、あなたたちは見たことがなかったんでしたね。」

 

「WAさんと416さんのツンデレ対決も面白かったですよね!」

 

「そうだな、二人とも想い人がいるのが悔やまれる。」

 

「直す気はないんですかそのタラシ癖。」

 

 

終始ノリよく楽しんだD。

女性から求められるケースが多く大満足だったゲッコー。

ノリノリで資料を集めまくったマヌスクリプト。

そしてほとんどの要望が罵りと叱責という変な心労を背負った代理人。

慣れないことの連続でぐったりしたまま部屋に戻っていったリッパーとイェーガー。

大変な一日ではあったが、まぁそこまで悪くない一日だったのかもしれない。

 

 

「今日は本当にありがとう、代理人。」

 

「私だけではありません。 協力してくださった皆さんやお客様のおかげです。」

 

 

そうだね、といってニカッと笑うマヌスクリプト。その笑顔を見てついつい代理人も口元が緩むが、忘れないうちにこれだけは告げておこう。

 

 

「それはそうとマヌスクリプト。」

 

「ん? なになに?」

 

「今回の一件は全てあなたの休憩時間としてカウントします。 当分は業務に励むように。」

 

「・・・・・・・・・え?」

 

 

 

end




マヌスクリプトやゲッコーを出したい。
でも毎回騒ぎを起こして怒られるのでは忍びない。
・・・・・そうだ、代理人も巻き込んで楽しめばいいんだ!

以上、深夜に目が覚めて思いついたことでした。


というわけでキャラ紹介。

マヌスクリプト
今回の元凶。ある意味いい仕事をしてくれた。
お姉さんキャラから妹キャラ、子供っぽさから大人の色気まで幅広く演出できる。こんな彼女が欲しかった

ゲッコー
いつもの。
女性人気が凄まじいが男性からも熱い支持を受ける。この時は主に幼馴染キャラになることが多い。
倒れそうになった女性は両手と尻尾で優しくキャッチ。

D
こういうイベントが楽しくってしょうがない。
見た目は代理人なのに中身は快活な少女なのでそのギャップがいい。
お兄ちゃんって言われたら誰だって堕ちる。

代理人
喫茶 鉄血が誇るS担当。
手が出たのは会長だけだが、それだけ遠慮がないと言える。
ちなみにあの後輩は『ご飯にします?お風呂にします?それとも・・・・ry』と言わせたかったらしいが、直前でへたれた。

リッパー&イェーガー
番外編で。

処刑人&WAちゃん&416
番外編で。

会長
普通の客を殴らせるのはなぁ。でも一発目くらい飛び抜けて変態がいいなぁ。
・・・・あ、いるじゃん。


別の作品でリクエスト用の活動報告を載せているのでこちらでも載せます。本編・番外編・もしくはこんなIFでも構いません。
ぜひ送ってね!
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=204672&uid=92543

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