台風も! ちょくちょく現れるゴ◯ブリも!! 私の邪魔をするものは、皆◯ねばいいっ!!!
諸君は覚えているだろうか。かつてIoPが開発し、とある人形が受け取った着ぐるみのことを。多少の銃弾やナイフ程度なら防ぎ暑苦しい見た目に反して最新のナノマシンによる温度調整機能を追加された技術の塊。そして唯一の、開発陣に言わせればデメリットにもならないデメリット・・・・・着用時は全裸であるというそんな着ぐるみ。
譲り受けた人形、57によって倉庫に封印されていた代物だが、今の今まで本人も忘れていたものである・・・・・が、それが見つかってはいけない人形に見つかった。
「と、言うわけでこれがその人形です! じゃあ着てみてよ57ちゃん。」
「嫌に決まってんでしょ! 誰がそんな悪趣味な着ぐるみなんて着るか!」
「まったく、相変わらず頭の固い人形だ・・・そのオッパイくらいに柔らかく考えたまえ。」
「程よい張りと弾力、そして柔らかさを兼ね備えたな。」
「だがどれくらい柔らかいかまだまだ不明だ、揉んでもいいかな?」
「もしもしポリスメン?」
「もうやだコイツら。」
「こっちのセリフです。 なぜわざわざここで話すんですか?」
喫茶 鉄血の二階、収容人数をちょっとオーバーした上に着ぐるみまで突っ込まれて狭苦しい個室の中、アーキテクトと57と代理人とIoP技術部の面々がテーブルを囲んでいた。話の内容は先の通り、この万能着ぐるみについてである。近々IoPと鉄血が共同で運営するテーマパークを作ろうと考えており、そのマスコットキャラとして着ぐるみを使おうというのだ。
そこで当然というべきか、話題に上がったのは57の所有するフェレットの着ぐるみ。この技術を使ってさらなる着ぐるみを作ってしまおうというのが今回の目的だ。
「と言ってもデザインが決まればすぐに出来るんだけどね。」
「では唯一の所有者である57よ、何かいい案はないかな?」
「今すぐ中止すべきだと思うわ。」
「なるほど、どうせ裸なら水中でも使えるやつか。」
「さすが人前で肌を晒すことに定評のある人形だ、発想が違う。」
「人の話を聞け!!!」
57のツッコミも虚しく、あっという間に新作の着ぐるみが考案されていく。項垂れる57とワクワクしたアーキテクト、白熱する技術者たちを眺めながら、代理人はそっと個室から出て行った。
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一週間後、鉄血工造にて。
「・・・・・ねぇゲーガーちゃん。」
「なんだこのポンコツバカ。」
「流石にひどくない? 今回は私も被害者なんだよ?」
「貴様が持ち込んだ話だろ。 それとも何か? これをサクヤさんに着せるつもりか?」
「・・・我慢する。」
わずか一週間という短期間で新型の着ぐるみを二つも作り上げ、鉄血工造に納品したIoP技術部。なぜこれをわざわざ鉄血に持ち込んだかといえば、これを着るべき者が技術部にはいなかったからだ・・・・・なにせ技術部には男しかいない。
そんなわけで鉄血工造の女性陣三名のうち、誰か二人が着る羽目になったのだが、いくらなんでもサクヤにやらせるわけにはいかないのでハイエンド二人に決まったのだ。
ちなみにユウト君には着ぐるみの下とはいえ真っ裸は刺激が強すぎたらしく、真っ赤になって出て行ってしまった・・・可愛い奴め。
「・・・・・私の気持ち、理解できたかしら?」
「あ〜、うん、ごめん57ちゃん。」
「うちのバカが本当に済まない。」
現在、それぞれが個性あふれる着ぐるみに身を包んでいる。57は言わずもがなフェレットの着ぐるみ、アーキテクトは水陸両用を意識してなぜかサメの着ぐるみ、ゲーガーはひときわ大きいゴリアテの着ぐるみ。ちなみにサメとゴリアテは顔の部分だけ開いている。
「まぁたしかに着ぐるみの割には快適だ。 暑くも寒くもない。」
「うん、まぁ水着だと思えば納得できる、かな?」
「なんでそんなに順応早いのよ・・・。」
「あ、それが例の着ぐるみ?」
三者三様の反応を返していると、奥の方からひょっこり現れたのは鉄血の常識人であるサクヤ。57は期待した、彼女ならこのおかしな状況を打破してくれると。ついでにこのアホな技術者どもにも喝を入れてくれるだろうと。
だが、現実は非情である。
「ねぇ、私も着てみていい?」
「「「ふぁっ!?」」」
「え、えぇ、構いませんが・・・・・・。」
まさかの提案、よもやこの着ぐるみを着たなどと言い出すとは、あの技術者連中ですら予想だにしていなかった。ドがつくほどの変態集団である彼らとて、女性が全裸で着ぐるみを着ることに抵抗がることくらい知っているのだ。
57? 彼女は自主的に脱いだし問題ないでしょ。
その間にもアーキテクトの手を引いて奥の更衣室に消えていくサクヤ。そして十分くらい経った頃、それはそれは晴れやかな表情で踊るように出てきた。
「あはははっ! なにこれ全然暑くない! しかも泳げるんでしょ!? ちょっと泳いでくる!」
「さ、サクヤさん・・・?」
「・・・・・あんたの彼女、疲れてるんじゃないの?」
「サクヤさん、なんの抵抗も躊躇もなく服脱いでたよ。」
酷い言われようだが別に疲れているわけでもおかしくなったわけでもない。もともと殺伐とした世界を生き、こんな平穏極まりないイベントとは無縁であった彼女は、こう行った見るからに面白そうなことにはとことん首を突っ込みたがるのだ。
隣接したプール(実験用の水槽)にドボンと潜ると、着ぐるみのくせにやたらと軽快に泳ぎ始める。
「あの着ぐるみの尻尾には水中でのみ機能するモーター類が内蔵され、見た目通りサメのように泳ぐことができるのです。オプションでフェイスプレートを装備すれば、あのまま長時間の潜水も可能ですよ。」
「なんて無駄な性能を・・・・・。」
「でもサクヤさん、楽しそう。」
「まぁ、たまにはいいんじゃないのか。」
なんとも微笑ましい様子で眺める人形三人。それほどまでにいい笑顔で泳ぎ続けるサクヤの姿は大変レアだったのだ。
そんな感じで眺めていること三十分、ふとゲーガーが違和感を覚える。
「・・・・・・なぁ、最後に顔を上げたのはいつだ?」
「え? でも潜水できるんでしょ?」
「フェイスプレート付きならね・・・・・付いてないわよね? あれ。」
「「「・・・・・・・・。」」」
今尚止まらず泳ぎ続ける着ぐるみ。そして改めてよく見ると、全くずれなく綺麗な円形に泳いでいることに気がつく。まるで泳いでいるというより、ただ勝手に回っているというような・・・・・。
「っ!? まさか!」
「え? あっ! ゲーガーちゃん待って!」
「ちょっとあれ溺れてるんじゃないの!?」
場が騒然となる。ゲーガーの呼びかけにも反応せずぐるぐる回り続けるサメの着ぐるみにいよいよヤバイと気がついた技術者連中も白衣を脱いでプールに飛び込む。大人たちと人形三人がかりでなんとか動きを止め、陸まで引き上げると案の定というか溺れていたサクヤはすでに虫の息だった。ゲーガーは周りの目すら気にせず着ぐるみから上半身を出し、サクヤの着ぐるみをはだけさせて肺を押して水を吐き出させる。
「頼む、目を開けてくれ・・・・・!」
「さ、サクヤさん・・・・・。」
苦しそうな表情のまま目を閉じているサクヤに呼びかけつつ、なおも懸命に救助活動を続ける。そうやってしばらく続けると、ようやく咳き込みながらサクヤが目を覚ました。
「ゲホッ! ゴホッ! ・・・・・はぁ、はぁ、はぁ・・・げ、ゲーガー?」
「っ! サクヤさん!」
「よ、よかったあ〜・・・・」
なんとか最悪の事態は免れたようで、皆一様にホッとする。と、そこに駆けつけてくる二人分の足音。どうやら技術者の一人がユウトを呼びに行っていた様である。血相を変えたユウトが叫びながら走ってきた。
「ね、姉さん!」
「ゆ、ユウト・・・。」
「姉さん、無事なのk・・・・・」
さて状況を整理しよう。この着ぐるみは一切の衣服を着用しないまま着ており、先ほどの救助活動のためにゲーガーとサクヤは半脱ぎ状態にしている。技術者連中は無事だとわかった瞬間潔く目線を彼方に向け、アーキテクトはやっちゃったみたいな顔で苦笑い、57に至ってはこの後の結末を予想して医務室に連絡している。
・・・・・そう、ゲーガーとサクヤの上半身が普通に露わになっているのだ。
キュ〜〜〜〜パタンッ
「ゆ、ユウト!?」
「わぁ!? とりあえず前を隠してサクヤさん!」
「え? あっ! きゃあああああああああ!!!!!!」
「あっち行ってろこの変態集団!」ゲシッ
「ありがとうございます!」
鉄血工造は、今日も平和だ。
end
俺は一体何を書いてるんだろう・・・・・(自問)
まぁでもユウト君は17歳の男の子だからね、仕方ないね。
そんなわけでサクッとキャラ紹介とか。
57
この破廉恥着ぐるみ最初の犠牲者。
アーキテクト
被害者二号。
ゲーガー
被害者三号。この件以来ユウトが目を見て話してくれなくなった。
サクヤ
自主的に着た人。ユウトに性教育を施していなかった向こうの自分に憤慨する。
IoP技術者たち
変態的な頭脳と紳士的な心の持ち主。バカと天才は紙一重である。
ユウト
ごめんよ、こんなオチ担当の予定じゃなかったんだけどね。
あんな世界でまともな恋愛なんてないだろうからきっとウブなんだろう。
喫茶 鉄血のリクエスト、随時募集中!
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