喫茶鉄血   作:いろいろ

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忘れた頃にやってくるアイツ

そういえば結構前に銃の擬人化アニメがあったりしましたが、戦術人形もリンクした銃を触ったら反応とかしないんでしょうか?
もしするならUMP9の銃床をなでまわs(銃声


第九十話:彼女の好みは

「代理人の好みって、なんだろうな?」

 

「ふむ、そういえば聞いたこともないな。」

 

 

酒が入っていい感じにほろ酔い状態のダネルとゲッコーがいるのは、週に一度だけバーの時間が訪れる喫茶 鉄血。今日はちょうどその日で、通常の営業時間が終わると同時に飲み目当ての客に入れ替わる。

任務終わりのダネルも、その一人だ。

 

 

「なぁゲッコー、お前は代理人のそばにいるんだから、何か浮いた話とか聞かないのか?」

 

「残念だが、全くの皆無だ。 何より客の『好きです』がどこまで本気かわからん・・・・・アイドルに近いんじゃないか?」

 

「あ〜、なるほど。」

 

 

ちなみにゲッコーが飲んでいるにも関わらず咎められないのは、彼女が今日は休みだからだ。だが特に行くあてもないし用事もないので日中は適当に時間を潰し、夜になってちょっと飲みにきたのである。ついでに社員割りがきくのもある。

そこでダネルと出会い、代理人の話で意気投合して盛り上がっているところだ。

 

 

「くそっ、せめて代理人好みの容姿でもわかれば・・・・・」

 

「だが代理人の理想か・・・想像もつかんな。」

 

 

代理人に想いを寄せる、どころか告白紛いなことまでやった上に玉砕したにも関わらずしぶとくアプローチをかけ続けるダネルはなんとか代理人の好みを知りたいのだ。ゲッコーの方は別に代理人を狙っているわけではないが、今後の参考のために知っておきたいのだろう。

が、最大の難点は彼女の周りに男の影すらないことだ。人の幸福を願うあまり自分の幸福を疎かにしがちな代理人らしいといえばらしいのだが、もうちょっと異性に興味を持ってもいいんじゃないだろうか。

 

 

「むむむ、考えても仕方がないな・・・・ここは協力者に頼ろう。」

 

「協力者?」

 

「あぁ、何人か当てはある。」

 

 

そう言って端末を取り出し電話をかけ始めるゲッコー。彼女の提案に一抹の不安を覚えながらも、現状どうしようもないダネルはおとなしく見守ることにした。

 

 

 

 

 

協力者A

 

「どうも会長です。」

 

「・・・・・いきなり人選ミスではないのか?」

 

「安心しろ、代理人の情報にかけては最も頼れる男だ・・・だがその自己紹介はなんとかならんのか?」

 

「これがしっくりハマってしまったので。 で、代理人のことでお悩みですな?」

 

 

何人かに連絡を取り、最初に来たのが例の人権団体の会長。鉄血人形ファンクラブ『代理人の部』の会長でもあるこの男なら、おそらく二人の知らない情報も持っているはずだ。

というわけでさっそく事情を説明し、何か心当たりがないか聞いてみる。

 

 

「ふ〜む、好みですか・・・残念ですが、それらしい情報は我々も持っておりませんな。」

 

「そうか・・・・・」

 

「ですが、彼女のハードルはあまり高くないとは思いますよ。」

 

「うん? どういうことだ?」

 

「まぁあくまで想像ですが・・・彼女は家事全般はほぼ完璧です。それこそ、パートナーができても彼女一人でこなせてしまうでしょう。 ということは、求める条件に家事云々はないと思ってもよろしいのでは?」

 

 

なるほど、と唸るダネルとゲッコー。まぁ確かに代理人の家事は問題ないし、なんだったら一人で全部こなしてしまいかねない。こういうのを尽くすタイプというのだろうか。

家の扉を開けば、エプロン姿の代理人が優しい笑顔で『おかえりなさい』と・・・・・・

 

 

「・・・・・いいな、それ。」

 

「ダネル、鼻血出てるぞ。」

 

「ほっほっほっ、若いですなぁ。」

 

 

 

 

 

 

協力者B

 

「・・・・こいつらこそ人選ミスだろ。」

 

「失礼な。 代理人と最も付き合いの長い『男性』といえば、我々17labの他にありませんよ。」

 

「まぁ、そういうことだ。 本当に不本意ではあるがな。」

 

 

次に呼ばれたのはあのIoPにおける最強の変態集団、そして元鉄血工造の技術部門である彼ら17labである。

そう、『元』鉄血工造なのだ。当然代理人の製造にも携わり、また戦闘やその他のプログラミングも担当した、まさに代理人の生みの親である。そう言った経緯から、他のハイエンドほど代理人は彼らを毛嫌いしてはいない・・・・・トラブルメーカーなのを除けば。

 

 

「鳶が鷹を産むというが・・・・・こんな変態どもからあの女神のような代理人が生まれるとは・・・・・」

 

「ふふっ、褒めても何も出ませんよ?」

 

「褒めてねえよ。」

 

 

だがこいつらを呼ぶのは一理ある。なにせ代理人のAIを設計した連中ならば、代理人の好みを設定したと言っても過言ではないはず。

だが・・・・・

 

「好み・・・・ですか? 残念ながら我々にはわかりませんな。」

 

「「・・・・・は?」」

 

「なにせ我々が設計したのはあくまで代理人という人形とそれを動かすプログラム、あとは彼女の学習機能だけですから。 彼女が何を見、何を感じ、何を考えるのかは彼女にしかわかりませんよ。」

 

「・・・まぁ、確かに。」

 

「そういう意味では、彼女が健全に育っているというのは喜ばしい限りですよ。」

 

「鉄血工造を乗っ取られたのにか?」

 

「それも、彼女らがそうすべきだと判断したからにすぎません。 つまり、彼女らは人形で初めて、自由を叫んだのですから。」

 

 

チラッと代理人を見る主任の目はいつもの得体の知れないものではなく、娘の成長を喜ぶ父親のような目だった。なんだかんだで、彼らも人形を愛する研究者なのだと思うのだった。

 

 

「しかいいつ見ても素晴らしいフォルムだ。 やはりメイド+ガーターベルトは正しかった。」

 

「今ので全部台無しだこのやろう!」

 

「というかやはり貴様らの趣味か!?」

 

『当然です!』

 

「素晴らしいっ!」

 

「おいこら会長!」

 

 

 

 

 

協力者C

 

「えっと・・・・・なぜ私なのでしょうか?」

 

「いや、よくよく考えればD(ダミー)に聞くのが一番だと思ってな。」

 

「最初からこうすればよかった・・・・・」

 

 

三人目の協力者はあの代理人の高性能ダミー、いつの間にか自我を持ったり本体とは違う成長を遂げているDだ。今でこそ個性というものが出ているDだが元は代理人、よって彼女の好みは代理人の好みであると言えよう。

 

 

「好み、ですか? う〜ん・・・・・優しい人、ですかね。」

 

「そ、そうか・・・他には?」

 

「他には・・・まぁ家事は私、じゃなくてOちゃんができますからそこは重要ではなく・・・・・あ、自分を大切にする人ですね。」

 

「「自分を大切にする人?」」

 

「えぇ。 仮にOちゃんがだれかと結ばれたとして、二人でこのカフェを営むのかそれとも専業主婦になるのかはわかりません。 ですが、私たちはメンテさえすれば変わらぬ人形です。 当然人よりも長く生きていられますから、相手の方には自分を大事にしてもらって、長く隣にいられるようにしたい、と思いますよ。」

 

 

言いながら若干顔を赤らめるD。おそらく代理人ではなくDの理想やらが入ってはいるが、言っていることは理解できるし納得もできる。誰にでも優しい代理人だが、惚れたらきっと一途なんだろうとも。

だがそこまでならよかったのだが、Dがいらんことまで話し始める。

 

 

「あ、でもOちゃん宛てにラブレターが届いたこともありますよ。」

 

「「なにぃ!?」」

 

「というかお前は知らなかったのかゲッコー!?」

 

「初耳だぞ!?」

 

 

送ってきた相手は誰だとか、見つけ次第蜂の巣にしてやるなどと過激なことを言い合う人形二人に苦笑しつつ、Dは話を続けた。

 

 

「まぁ流石に冗談か何かだと思っていたので心配はいらないと思いますよ。」

 

「そ、そうか・・・・・」

 

「でも、『ウェディングドレスとか似合いそうだね』って言ったらちょっと照れt「D?」・・・・ギクッ」

 

 

ピシッと石のように固まったD。その背後には笑顔の、凍りつくような威圧感を漂わせた笑顔の代理人が立っていた。そしてその右手がゆっくりと持ち上がり、Dの頭に乗せられて・・・・・・

 

 

「イダダダダダダダダダダダッ!!!!!!!!!」

 

「D、休憩はとっくに終わってるはずですよ? それと・・・・・『口は災いの元』という言葉は知っていますね?

 

「ご、ごめんなさいいいいいいいいい!!!!」

 

 

ギリギリと頭を握りながらギロッとダネルたちを見る代理人。そしてニコッと笑うと、

 

 

「他言無用、わかっていますね?」

 

 

とだけ言ってDを引っ張って戻っていった。しかもいつの間にやら会長も17labの連中も帰っていたようで、ダネルとゲッコーだけがビクビクと震える。

結局好みやらのはっきりしたことはわからなかったものの・・・・・

 

 

「あれ? 私がダメな理由ってなかったような・・・・・」

 

「ん? そうだな。」

 

「つまり、チャンスはまだあるのか・・・・・・よし!」

 

 

ひたすら前向きなダネルが再びアプローチをかけていくきっかけにはなったようだ。

もっとも、ダネルが断られる理由が『同性』なのだが、それに気づくのは当分先のこと・・・・・もしかしたら一生ないのかも知れない。

 

 

end




17labが元鉄血工造の研究員って設定、覚えていた人はどれくらいいるのだろうか。
それはさておきここまで残念なダネルって結構珍しいなってのに最近気づきました。


ではキャラ紹介

ダネル
代理人に想いを寄せる乙女。
今のところ代理人に恋愛感情を抱いているのは彼女だけなので、粘ればなんとか・・・・・ならない(同性なので)
竹槍要員だからか、微妙に突撃脳。

ゲッコー
今日は非番。
相変わらずの口説きグセだが、さすがに恋する乙女には言い寄らない。今回は自分がくどく時の参考で付き合っている。
忘れられがちだが、喫茶 鉄血で最強クラスのパワーを持つ。

会長
名前もないのに主張の強いモブ。
代理人が主役である限りこいつの出番は終わらない。

17lab
みんな大好き変態集団。
ACで言えばアクアビット、バイオで言えばアンブレラ、MGSで言えばMSF開発班。
こんなんだが人としての道は踏み外さない。

D
最近被害者寄りになっている。
他の方の作品でも見られるので探してみよう。



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可能なものは応えていくつもりですので!
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