喫茶鉄血   作:いろいろ

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なんか思いの外予定がうまいこと進んでくれたので無事復活!
よし、今度からは『一週間以上空く』時だけ遅れるというようにしよう。

そんなわけで久しぶりの番外編、今回はこちらの四話
・思い出整理
・特殊クエスト『所属不明人形捕獲作戦』
・天使と変態
・快眠プログラム


番外編24

番外24-1:思い出整理

 

 

「D、それはあっちに持っていってください・・・・マヌスクリプト、気になるようでしたらそれはあげますので手を動かしてください・・・ゲッコー、手が空いたらイェーガーたちの手伝いを」

 

 

代理人の指示で慌ただしく動く店員たち。気温はまだ夏真っ盛りだが季節で言えばもうすぐ秋になるということで、喫茶 鉄血は臨時休業で模様替えを行なっていた。秋といえば食欲の秋、そんな秋の味覚を使ったメニューを増やすということで、それなら内装もちょっとそれっぽくっしようということになったのだ。もともと木造風の落ち着いた感じだが、ところどころに秋を感じさせるインテリアを置いたり照明を少し暗めにしてみたり、いろいろ試しながら模様替えを進めていく。

ついでに厨房や従業員側の整理もしておこうかと代理人は戸棚を一つ開け、そこに並んでいるものに目を止める。

 

 

「・・・・・・・・」

 

 

その戸棚はいわば喫茶 鉄血の歴史・・・と呼べるほど古くはないが思い出を集めた棚である。オープン当初の写真や一番初めに作った手書きのメニューなどが置かれているが、それとは少し分けるようにして置かれているものがある。

代理人はその一つ、鈍く輝く一枚のコインを手に取るとフッと笑いながら手のひらの上で転がす。なんの変哲も無い(と代理人は思っている)この店で、他には無い特別な出会い・・・・・その始まりとも言えるのがこの一枚のコインだ。それ以来なぜかよく()()()()()()()()客が訪れるようになり、時にはその客がまた何かを置いていくこともある。

 

 

「・・・・・そうですね、ここも一度整理しましょうか」

 

 

今までは棚の中に並べられていただけのそれらを代理人は一度取り出し、机の上に並べてきれいに掃除する。始まりのコインに結婚式の写真、最近のものでは大きなサファイアと忘れ物の端末。ここにあるものはごく一部だが、それほど多くの客がここにきたのだ。それも異世界から。一時的に迷い込んだものもいれば、もうこの世界の住人として暮らす者もいる、不思議なことに、そのいずれもここ喫茶 鉄血が関わっているのだ。

そんな思い出の品を一つ一つきれいにしていき、ついでにきれいな小箱を用意して一つ一つ収めていく。端末はきっと取りに来るだろうから、そのまま棚に戻した。

 

 

「・・・・・・・ふふっ」

 

「ん? どうしたのOちゃん?」

 

「いえ、なんでも」

 

 

満足したように笑い、店の模様替えに戻る代理人。

今度誰かが来るときは、美味しい秋のスウィーツを出してあげようと思うのだった。

 

 

end

 

 

 

番外24-2:特殊クエスト『所属不明人形捕獲作戦』

 

 

所属不明の人形がおり、それが今S09地区にいるらしい。そんな情報とともにここ最近まで暇だった404小隊に久方ぶりの指令が届く。内容はその人形の捕獲だ。

・・・・・そんな特殊任務のブリーフィングを喫茶 鉄血の貸切個室で行うあたり特殊部隊としての矜持が見えなくもない。

 

 

「対象は『AUG』と名乗るアサルトライフル、薄桜色の髪に黒い服、頭に白い花の飾りをつけているそうよ」

 

「随分と詳細な情報ね。 だれか会ったことがあるの?」

 

「代理人たちとKar、あとデストロイヤーが会ったって」

 

「どこにも製造履歴のない人形・・・・・」

 

「おお、やっと特殊部隊らしい任務だね!」

 

「えぇ〜、寝ていたいんだけどなぁ」

 

 

あくまで情報は直接会った人の目撃情報でしかないが、本人が『アサルトライフル』と名乗ったことから武装してる可能性が高い。名前となったと思われる銃の性能からもそれなりの強者であることを予想し、こうして404小隊全員出動となったのだ。

初期の四名に加えてゲパードと40、SMG三人にAR二人とRF一人というガチ部隊での捜索だ。

 

 

「よし・・・・・じゃあいきましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」」」

 

「あら、どうしたのかしら? ここに入りたいんだけどいいかしら?」

 

 

喫茶 鉄血の二階から一階へ、そして入り口のドアを開けたところで第一段階の『目標の発見』を達成してしまう。

情報通りのその人形は白昼堂々と正面から店に入ろうとしていたようで、入り口で固まる404に困ったような表情を浮かべる。相変わらず丸腰のようだが、その身のこなしはやはり戦術人形特有のものだった。

で、いち早く復活した45が警戒しつつ問いかける。

 

 

「・・・・・あなたがAUG、で間違いないかしら?」

 

「えぇ、そうよ・・・・・そういうあなたたちは、噂の404小隊でいいのよね?」

 

「・・・・よく知ってるわね、グリフィンにもIoPにも所属していないくせに」

 

「そうね、でも情報を集めるだけならいくらでも手段はあるわ」

 

 

グリフィンにもIoPにも所属していない、それを認める形となったAUGに、45たちは改めて任務の遂行を決意する。

 

 

「戦術人形AUG、貴女を所属不明の人形として身柄を確保するわ。 同行してもらってもいいかしら」

 

「ふふふっ、まぁそうなるわよね・・・・・・いいわ、ただし一つだけ条件があるの」

 

 

条件、という言葉にさらに警戒度を上げる45たち。その様子に満足そうに微笑んだAUG。

 

 

「・・・・・条件?」

 

「そう・・・・言い換えればゲームね。 私はこれから一時間逃げ回るわ。 捕まえることができたら、そのまま連行してくれて構わない」

 

「・・・・・・もし捕まえられなかったら?」

 

 

45がそう問いかけるが、これは本来なら不要な質問である。彼女らは特殊部隊としてグリフィンの看板を背負っている以上失敗は許されない。だが45はあらゆる可能性を考慮するために、あえて尋ねたのだ。

 

 

「そうね・・・・・・私はこの店のスペシャルケーキというのを食べてみたいの。 だから私が逃げ切ったら、それを奢ってちょうだい」

 

「・・・・・それだけ? いいわ、やってあげる」

 

「45、いいの?」

 

「ここで捕まえようとしたら何をされるかわからないわ。 周りに被害を出さないためにも、ここは乗っかりましょう」

 

「ふふ、話が早くて助かるわ・・・・・・じゃあ、スタート」

 

 

そう言うと同時にAUGは路地を走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

「お姉様、そっちは?」

 

「いないね、完全に見失った・・・・・あとそろそろ『お姉様』はやめてくれないかな?」

 

「私のお姉様はお姉様だけですよ」

 

「あーうん、もういいよ」

 

 

このS09地区は中央の大通りを中心に枝分かれするように大小様々な路地が四方に伸びている。走り出したAUGはまるで道が上から見えているかのように走り続け、固まって追っていた404をあっという間に振り切ってしまった。仕方なく45は散開を指示、G11とゲパードは高い民家の屋根に登って上から探していた。

 

 

「下よりは見やすいですけど、やっぱり路地が多いですね。」

 

「おまけに人もそこそこいる・・・・あんなに目立つ格好なのにどこに?」

 

「ここにいるわよ?」

 

「「へ?・・・うわぁあああ!?」」

 

「あら大変」

 

 

上から見下ろすために屋根の淵に陣取っていた二人。その後ろから突然現れたAUGにビックリし、G11は思わず足を踏み外してしまう。落ちる直前でなんとかAUGが手を貸してくれたので無事だが、今手を離されたら間違いなく真っ逆さまだ。

 

 

「ふふ、大変・・・・・このままじゃ落ちちゃうけど、助けてほしい?」

 

「くっ・・・・・ゲパード!今のうちに・・・」

 

「うふふ」

パッ・・・・ガシッ

 

「ひゃあああああ!!!?」

 

 

G11をつかんでいるうちにゲパードに確保させようとするも、それを見越してなのか手を一瞬離して再び掴む。それにビックリしたゲパードは動きを止め、G11は涙を浮かべながらプルプル震える。

そんな様子にAUGはケラケラ笑うと、

 

 

「ふふ、貴女たちの負けね? 引き上げてあげるから大人しくさっきの店で待っててくれるかしら?」

 

「ど、どう言うつもりよ・・・・・」

 

「あら? 私は言ったわよ、『ゲーム』だって・・・・・で、いいかしら?」

パッ・・ガシッ

 

「わあああああ!!! わかった! わかったから早く上げて!!?」

 

 

G11とゲパード、脱落。

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・はぁ!? ちょっとそれどう言うことよ!?」

 

『ご、ごめんよ416・・・・でも命は惜しいんだよ・・・・』

 

「それについては構わないけど・・・そう、『ゲーム』ね・・・・」

 

「416、大丈夫?」

 

「ええ、これではっきりした・・・・・あっちは攻撃する手段がないか、あってもその気はない・・・・見つけたら全力で捕まえに行くわよ9!」

 

「うん!」

 

 

とりあえず攻撃の心配がないことだけを確認できた二人は両手を開けるために武器を背負い、いつ飛び出してきても捕まえられるように進む。

そして最初の角を曲がったところで・・・・・・

 

 

「わー! おねーちゃんじょうずー!」

 

「ね! もっかいやって!」

 

「ふふふ、いいわよ・・・・・・よっ、ほっ・・よっと・・・」

 

「「・・・・・・・・・・」」

 

 

路地の真ん中でボールやらペットボトルやらで奇妙にジャグリングするAUGと出くわした。その周りには近所の子供が四人ほどおり、キラキラした目でAUGのジャグリングを見ている。

 

 

「・・・・よししょ・・・・・はい、これで終わりね」

 

「すごーい! かっこいいー!」

 

「ありがとう・・・・じゃあまたね」

 

「うん! おねえちゃんバイバーイ!」

 

「・・・・・・・はっ! お、追うわよ9!」

 

「え? あ、うん!!」

 

 

あっけにとられる二人だったがAUGが路地の角に消えたところで正気に戻り、すぐさま追いかける。一度見失ったら次見つけるのが骨だ。

・・・・・が、曲がったところに転がっていたバナナの皮を踏んづけた416が顔から綺麗に転倒、それに足を引っ掛けた9も盛大にこけ、二人揃って近くのゴミ箱に突っ込んだ。

 

 

「うぅ・・・・・は、鼻が・・・・・・」

 

「いたたた・・・・・・・はっ!? AUGは!?」

 

「呼んだかしら?」

 

「わああああ!!?」

 

 

顔を上げるとわずか数十センチの距離にAUGの顔。さっきまで背中が見えていたはずなのになぜここまで近づかれたのだろうか。

 

 

「じゃあ、貴方達もここでリタイアね・・・・・掃除が終わったら店で会いましょ」

 

「ちょっと! まだリタイアなんて言って「コラァ! 何やってんだいあんたたち!!!」うげっ!?」

 

「ち、違うんですこれは・・・・ってもういない!?」

 

「あ、あんの性悪人形があああああああ!!!!!」

 

 

416、9、おばちゃんに見つかり清掃活動(脱落)。

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

「うんうん、了解〜・・・・・45、416たちもダメだったって」

 

「・・・・・これはひょっとしてまずいんじゃないかしら」

 

 

まさかこうも立て続けにやられるとは思ってもみなかった45は冷や汗を流す。ゲパードはまぁ後で加入したのでいいとして残りの三人は初期からいる精鋭だ。それがあっさりと手玉に、それも闇討ちとかではなく単純にしてやられたという事実がAUGの手強さを表している。

だがこれではっきりとわかったことがある。AUGに隠れ続けると言う選択肢はなく、必ず目の前に現れるのだと。

 

 

「なら待っていればあっちからきてくれるわ・・・・・そこを捕まえましょう」

 

「うん! みんなの仇を取ろう45!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、時間切れ♪」

 

「なんで出てこないのよ!?」

 

「よ、45落ち着いて・・・・・・」

 

 

45たちの懸命な捜索・・・・・の甲斐もなくしかもなんのトラブルもなく、気がつけば時間切れとなってしまった。項垂れながら喫茶 鉄血に戻ってみれば何食わぬ顔でケーキとコーヒーをいただいているAUGの姿があり、いよいよ45が爆発してしまったのだ。

404小隊の完全敗北である。

 

 

「うふふ、このケーキ美味しいわね、もう一ついただけるかしら?」

 

「かしこまりました・・・・・でもよろしいんですか? お会計は・・・・」

 

「えぇ、彼女たちの隊長さんにツケといて頂戴」

 

「・・・・・・は? え、ちょ、嘘でしょ!?」

 

「あら、隊長なら失敗の責任を負うべきじゃないかしら?」

 

「くぅ・・・・って待ってなんで二個目なの!?」

 

「一個しか頼まないとは言ってないわ、ご馳走さま」

 

「ちくしょぉおおおおおおお!!!!!!!」

 

 

机に突っ伏して泣き出す45。だがAUGはその方にポンっと手を置くと、なだめるように言い出した。

 

 

「安心して、食べ終わったらちゃんと同行するわ。」

 

「え? じゃ、じゃあなんで逃げたのよ!?」

 

「ここのケーキが食べたかったから。 あとゲームとは言ったけど同行しないとは言ってないわよ」

 

「自腹で食べなさいよ!」

 

「高いじゃない」

 

「うわぁあああああん40〜〜〜〜〜〜〜!!!」

 

「あーよしよし・・・・」

 

「あ、お土産用にも一つもらえるかしら?」

 

「カハッ!」

 

「よ、45〜〜〜〜〜〜〜!!!」

 

 

こうして、404小隊の任務は終わった。一応連れてくることができたので評価としては成功だったが、なんとも言えない敗北感と45宛の伝票が残ったと言う。

 

 

end

 

 

 

番外24-3:天使と変態

 

 

その日、S09地区で一番品揃えが豊富と言われるホームセンターに来ていたのはコスプレ材料を揃えに来たマヌスクリプト。結構な頻度で買いに来る鉄血ということもあって特に服コーナーやハンドメイドコーナーではすでに顔なじみと言って良いくらいに知られている。

だが今日はそんな彼女の隣に、まず見ない組み合わせの人形が一人いた・・・・・・AR小隊の隊長、M4A1である。

 

 

「・・・・・で、この生地は裏面とおもて面で触り心地が全然違うの。 こっちのは結構しっかりしててちょっと重いけど形が崩れにくいよ」

 

「へぇ・・・・生地だけでこんなに・・・・・」

 

「これはあくまで服のベース。 リボンとかアクセントになるとあっちの棚が全部それ」

 

「えっ!? あんなにですか!?」

 

 

結構フランクにだがわかりやすく紹介していくマヌスクリプトの隣で、生真面目な気質からかメモを取りながら話を聞くM4。もともと一人でいることの多いマヌスクリプトが誰かと一緒でいることも珍しいが、それが品行方正なM4だとなおさらである。

というのも今回、前にマヌスクリプトの服飾技術に興味を持ったM4が彼女に頼んで教えてもらおうと思いついたのが始まりだ。そこでまずは生地や道具選びということで、ここに買い物に来ているのだ。

 

そしてその数メートル後ろ、柱に隠れるようにして覗き込んでいるのはAR小隊のシスコン、M16である。

 

 

「うぎぎぎぎ・・・・・あの変態め、M4と楽しげに話しやがって・・・・」

 

「M16、これはふつうにストーカーなのでは?」

 

「何をいうんだRO、これは可愛い妹が変態の毒牙にかからないように見守っているだけだ!」

 

(変態という意味では似たり寄ったりだけど黙っておこう・・・・)

 

 

そのM16に付き合わされているROは大きく溜息を吐くと、M16とともに監視を続行した。

 

 

「ミシンも結構色々だけど・・・・よっぽど凝ったのを作るんじゃなかったらシンプルなので十分だよ」

 

「なるほど・・・・・でもやるからには本格的にやりたいですね」

 

「それもそうだけど、まずは簡単なのからかな。 基本を覚えてから先に進んだ方がいいよ」

 

「・・・・そうですね、じゃあこれにします!」

 

 

 

「なんかいい雰囲気ですね・・・・・」

 

「うぅぅぅぅぅ〜〜〜〜〜〜〜」

 

「犬みたいに唸らないでください」

 

 

 

「アクセサリー・・・・結構簡単に作れるのもあるんですね」

 

「一からだと結構手間がかかるけど、あるものを組み合わせるなら以外と簡単だよ。 プレゼントとかにはもってこいだね」

 

「たしかに・・・・・うん、隊のみんなにお揃いのネックレスとかいいかもしれませんね」

 

 

 

「うぅ・・・M4・・・・私は気持ちだけで嬉しいぞ!」

 

「あ、すみませんこの人私の知り合いです。 けして怪しい者とかではないので・・・・はい、すみません、注意しておきます」

 

 

 

「マヌスクリプトさん、それは?」

 

「ジーンズ生地なんだけど、今まで作ったことなかったんだよね。 今回初挑戦」

 

「なるほど・・・・・私は何を作ろうかな?」

 

「手編みならマフラーがオススメなように、まずはシンプルなものだね。 Tシャツやワンピースとかかな」

 

「M16姉さんは結構ラフな格好が好きだからTシャツで・・・・あとはワンピースの方がいいかな?」

 

 

 

「うちの妹が天使だった件」

 

「M4、楽しそうですね・・・そう言えば彼女って趣味とかありましたっけ?」

 

「ん? いや、どうだろう・・・・・」

 

「無いなら、ちょうどいいかもしれませんね。 趣味があるのはいいことです」

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

さてそんな感じで二時間ちょっと。終始興奮しっぱなしだったM4はフードコートのテーブルにべちゃりと突っ伏し、その向かいではマヌスクリプトが苦笑しながらジュースを吸っている。

 

 

「つ、疲れました〜・・・・」

 

「お疲れ様。 やっぱりいきなりここは数が多すぎたかな?」

 

「いえ、知らないことばかりでとても勉強になりました。 今日はありがとうございます!」

 

「いえいえ、どういたしまして」

 

 

その後少し話、M4が化粧室に行ったタイミングでマヌスクリプトは隣の席を見る。自分の話とかで夢中だったM4には気づかれなかったようだが、そこにいたのはなんとも貧相な変装のM16とROの二人。サングラスと何故かつけ髭というチョイスのそれは逆に目を引くと思うのだが。

 

 

「・・・・・で、何か用かなストーカーさん?」

 

「訂正してください、私は違います」

 

「おい、それは私がストーカーだということか?」

 

「「え? 違うの(んですか)?」」

 

 

二人のツッコミにウッとなるM16。だがもう変装は無意味と思ったのかサングラスとヒゲを外し、マヌスクリプトに向き合う。

その目はいつになく真剣で、まさにエリート部隊AR小隊のメンバーと言えるのもだった。

 

 

「今日一日、お前がどういうやつかを見極めさせてもらった。 正直お前のことはただの頭のネジが外れた変態だと思っているが一応だ」

 

「え? 結構酷くない?」

 

「事実では?」

 

「ひどい・・・・・・それで、お眼鏡にはかなったのかな?」

 

 

スッと目を細めてM16を見据えるマヌスクリプト。それにも動じずまっすぐ睨むように見返すM16だが、フッと表情を和らげると一息ついて、

 

 

「・・・・・あぁ、そうだ。 お前はM4のためにいろいろとアドバイスしてくれた。 自分の用事もあっただろうに親身になってだ。 ・・・・・お前のことを誤解していた、すまなかった」

 

「え、いや、そこまでされるようなことは・・・・・」

 

「いや、あいつの姉として失礼な態度を取っていたんだ。 ・・・・・できればこれからも、あいつとは仲良くやっていてくれないか?」

 

 

頭を下げて謝罪し、頼み込むM16に若干戸惑いながらも、マヌスクリプトは迷わず頷いた。そもそもM4は喫茶 鉄血にとっても家族のようなものだし、今更といえば今更だ。

それに、人に教えるというのも悪くない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だが、妹に変なことを・・・・・特に破廉恥なものを着せるようなら容赦しないからな」

 

「そのシスコン癖は直した方がいいよM16・・・・あとあの子はすすんで着てくれるから」

 

「なにっ!? 貴様まさかあんな服やこんな服を!?」

 

「・・・・・・姉さん?」

 

「お、M4! 大丈夫か!? こいつに変なものを着せられたりとかはしてないか!?」

 

「ちょっとマジで人聞きの悪いことを言わないでよ!?」

 

「そうですよ姉さん! マヌスクリプトさんに失礼です! それ以上言うならもう姉さんに話すことなんてありませんっ!!!」

 

「えっ、M4ーーーーーっ!!!!」

 

 

end

 

 

 

番外24-4:快眠プログラム

 

 

人形は本来、睡眠を必要としない。というより『睡眠』という行為をわざわざする必要がないと言う方が正しい。姿形こそ人間を模してはいるが動力が続く限り動いていられるし、修復やバックアップの際にポッドに入ればそれだけで十分だからだ。

しかしその一方で、一度も睡眠をとったことのない人形は極めて稀だ。製造完了から少ししか経っていない新人はともかく、ある程度配属先で過ごすとみんな眠るようになる。理由は人形によってまちまちだが、大体が『悪くない』だそうだ。

 

さて、眠るということは夢を見ると言うことである。人形が夢を見るのかというと見るのだ。多くの場合がメモリーに記憶されているデータの再生のようなものだが、中にはそれらがごちゃごちゃにまざり合ったり突拍子も無い内容のものだったり・・・・・端的にいえば『悪夢』を見るのだ。そしてそれは、日頃ストレスを抱えている人形程よく見る。

 

 

「ということで例のプログラムをインストールして一週間経ったんだけど・・・・あれからどう?」

 

「悪くない・・・どころか本当に快眠だったよサクヤさん」

 

「なるほどなるほど、流石は『救護者』を名乗るだけはあるんだね」

 

「私も半信半疑でしたが・・・・・優秀な人形だったようですね」

 

 

鉄血工造の医務室に集まったのゲーガー、サクヤ、代理人の三人。先日またしても別の世界からやってきた客、そのうちの救護者という人形からもらった『快眠プログラム』なるものを、人形随一のストレス保有者であるゲーガーにインストールすることで効果を確かめていたのだ。

そしてインストールしてからちょうど一週間後の今日、検査にやってきたゲーガーは見るからに調子良さそうだった。

 

 

「解析してみたけど、見たことないような独自のプログラムが組まれてた。 ただ複製自体は結構簡単にできそうだから、あとでみんなに配るね」

 

「あら? てっきり売り出すのかと思いましたが」

 

「貰い物で商売はしないさ・・・・・それと、礼を言う代理人、ありがとう」

 

「お礼なら渡した彼女に・・・・言えませんね」

 

「あはは、じゃあ次にきてくれたときに言おうか?」

 

「あぁ、そうだな」

 

 

後日、大量に複製されたプログラム入り端末がグリフィンに納入され、各司令部へと配られることになったという。

 

 

end




低体温症が常設イベントになるそうですね。
いつでもアーちゃんに会えるよ、やったねみんな!


というわけでさっそく各話の解説!

番外24-1
なにかの後日談とかではなく、これまでのコラボ・・・・というか迷い込んできたみなさんの振り返り的な話。ユノちゃんに始まりD08の面々、あとまだお返しを書いてないけど他からも続々と集まってきてますね・・・・・・うちの世界線はあれかな、水に濡れた和紙よりもペラペラなんだろうか?

番外24-2
九十三話の後日談。
AUGの神出鬼没感とか余裕の笑みとかを想像しだしたらDSR並みの強キャラに変貌した。なおお支払いはスペシャルケーキ×3(うち一つ持ち帰り)+コーヒー=約5000円

番外24-3
九十四話の後日談。
きっとマヌスクリプトは自分の趣味になったら親切丁寧に教えてくれると思うんだ。
M4が変態に染まることは決して無いのでご安心を笑

番外24-4
『村雨 晶』様の作品『鉄血工造はイレギュラーなハイエンドモデルのせいで暴走を免れたようです。』でのコラボ回より、救護者の置いていった快眠プログラムが登場。
あちらの世界も鉄血たちが仲良くやってるほのぼのライフな作品ですのでおススメです!


無事帰ってきましたが引き続きリクエスト募集を一時休止します。
ある程度消化できたらまた募集しますのでよろしくね!

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