喫茶鉄血   作:いろいろ

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ここ最近コラボ関係ばっかり書いているのは実に喜ばしいことだと思います(唐突)

というわけで今回は『一升生水』様の『本日もよき鉄血日和』とのコラボ!
鉄血主体のカオスな日常は是非読んでもらいたい!


第九十七話:世界が違えば人も違う

夏真っ盛り、空には綺麗な入道雲が漂っている今日この頃。今日も今日とて繁盛しつつも緩やかな時間がすぎて行く喫茶 鉄血では、代理人以下従業員がキビキビと働いていた。つい昨日には店内での発砲事件もあったというのに、そんな騒動の面影など微塵も感じさせないのは流石と言ったところか。

 

 

カランカラン

「ただいま戻りました」

 

「いやぁ、相変わらず暑ぃな・・・・・」

 

「あら、おかえりなさい。 アイスコーヒーでもいかがですか?」

 

「ええ、頂きます」

 

 

まるで実家のような雰囲気で帰ってきたのは昨日の発砲事件の当事者、傭兵のレイとその雇い主であるスケアクロウだ。忘れ物を取りに帰ってきたついでに少し休暇を取り、せっかくなので近くの公園やホールでショーを披露しているのである。その間、宿代わりに喫茶 鉄血の空き部屋を使わせてもらっている。

 

 

「お、お帰り二人とも! 実は新作の衣装が・・・・・」

 

「「お断りします(する)」」

 

「ちぇ〜」

 

 

ぶーっと膨れたまま奥へと消えるマヌスクリプトをジト目で追いつつ、出されたアイスコーヒーを一口飲む。冷たいコーヒーとその風味が口いっぱいに広がり、さっきまでの暑さを一気に吹き飛ばしてくれるようだ。

 

 

「あ〜生き返る〜」

 

「昨日は昨日でいろいろありましたから。 なんだかようやく一息つけた気がします」

 

「ああ、あんなことそうなんども続かねえだろ」

 

 

昨日の珍妙な出会いを思い返しつつ、二人揃って気の抜けたようなため息を吐く。

 

・・・・・ところで世の中には、滅多に起こらないことが続けて起こるということが少なからずある。『二度あることは三度ある』とか『稀によくある』とか。

そして今回は、言うなれば『おかわり』である。

 

 

カランカラン

「鉄血っていつからカフェも開いたんだろうね?」

 

「というよりも大丈夫なのか? 寄り道したことが01あたりにバレると面倒なんだけど」

 

「まぁなんとかなるでしょ・・・・・・あ」

 

「いらっしゃいませ。 開いている席へどうぞ」

 

 

新しく入ってきたのはやや小柄で中性的な男性と、2メートルに迫るかというほど背の高い女性。腰にぶら下げた銃とかやや荒っぽい服装から傭兵、もしくはPMCや軍などの荒事メインな方々であると察しがつく。が、それ以上に目を引くのは女性が背負っている大振りの『クレイモア』だ・・・・・時代錯誤にもほどがあるだろう。

さてそんな異様な見た目であってもお客様はお客様、キチンと接客したつもりなのだが、男女二人は若干引きつったような笑みを浮かべている。というより若干警戒しているように見えなくもない。

 

 

「? どうされましたか?」

 

「え? あ、えっと・・・・・・代理・・人?」

 

「ええ、そうですが・・・・・・失礼ですがどこかで?」

 

「え!? お、俺だよ代理人!」

 

 

なんとも噛み合う感じのしない会話に、それを聞いていたレイとスケアクロウは首を傾げ、そしてこんな反応に覚えのある喫茶 鉄血一同は速やかに行動を開始する。まずDが代理人に変わって指揮をとり、代理人はカウンターの端・・・・・()()()()()用の席に水を置いて招く。

 

 

「立ったままというのもなんですから、どうぞこちらへ」

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

その日、鉄血工造でハイエンドたちの訓練やら教導を請け負っている傭兵四人のうちの二人、03と04は街へ買い物に出かけていた。03が出かけるということもあって案の定代理人が暴走したり、04が出かけるということで案山子が尾行しようとしたりしたが01や02に捕まって連行された。

そんな二人は街で必要なものを買い、04の思いつきでちょっと散策ついでに寄り道してみることになった。ところが道を進み入ったことのない道を抜けていくと、目の前に現れたのは自分たちが世話になっている『鉄血』の文字が入ったカフェ。興味本位で入ってみればそこにいたのは・・・・・

 

 

「・・・・・ねぇ、アレって本当に代理人?」

 

「そうとしか見えないけど・・・・・・・」

 

「でも代理人がカフェやってるなんて知らないんだけど・・・ていうかさっき連行されたばっかでしょ?」

 

「新手のドッキリ、とか? ほら、あそこに案山子もいるし」

 

「本当だ・・・って隣の男は誰よ?」

 

 

終始疑問の絶えない光景だった。

まず代理人。03をみれば目の色を変えて襲いかかってくる(本人はスキンシップのつもり)のだが、今のところそんなそぶりはないどころかまるっきり別人だ。ちゃんとしてれば美人なのになぁ、と常々思っていた03の予想は当たったのだ。

次に案山子。彼女も04を見つければすぐに寄ってくるはずなのだが、ちらっと見たっきり隣の男性と親しげに話すだけ。むしろまるで面識がないかのような態度に違和感と寂しさを覚える04だった。

 

 

「どうぞ、ご注文のアイスコーヒーです」

 

「あ、どうも・・・・・ってそうじゃなくて代理人」

 

「おっしゃりたいことは存じております。 少々お待ちを」

 

「行っちゃった・・・・・」

 

 

首を傾げながらコーヒーをすすり・・・・・その美味しさにびっくりする二人。まぁ知らないので当然だが、ここは彼女たちが住む世界とは違う場所、コーヒーも天然ものなのだから美味しくないわけがない。

というところで代理人が奥から何かを抱えて戻ってくる。見た感じ新聞のようだが、結構年代に幅があるのか古いものはもう数年前のようだ。

 

 

「・・・・・うん? あれ?」

 

「どうしたの03?」

 

「いや、なんかどこにも・・・・・E.L.I.Dとかの文字がないんだけど」

 

「えっ!? 嘘っ!?」

 

「嘘ではございませんし、ドッキリでもございません。 ・・・・・・単刀直入に申し上げますと、ここはあなた方の世界とは別の世界、異世界や並行世界というものです」

 

「「・・・・・・・・は?」」

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

つい昨日もこんなやり取りをしたなぁ、と思いつつ一つ一つ丁寧に説明していく代理人。その過程で彼らのことも聞き、彼らの世界との違いも擦り合わせていく。

なんでも、彼らは別の世界の鉄血工造でハイエンドたちの訓練やら教導やらを行うために雇われた傭兵であるらしく、守秘義務からか本名は教えてもらえなかった。男性の方は『03』、女性の方は『04』というらしく、ハイエンドに訓練をさせるくらいなのだから相当腕が立つのだろう。そして意外なことに、彼らは割とあっさり異世界であることを受け入れてしまった。それはいずれ帰れるという楽観からなのかはわからないが、今はのんびりコーヒーを飲みながら()()()()鉄血の話をしてくれている。

 

 

「でね、03の悲鳴が聞こえたと思って駆けつけたら、全裸の代理人が覆いかぶさってたってわけ。 いよいよやっちゃったかぁって思ったわね」

 

「ほ、本気で怖かったんだぞ!?」

 

「はぁ・・・・・・異世界とはいえ私が・・・・嘆かわしい限りですね」

 

「安心してください代理人、あくまで異世界の話です」

 

「あ、でもあっちの案山子ちゃんは盗撮魔だよ」

 

「へぁ!?」

 

「スケアクロウ・・・お前・・・・・」

 

「違います! あくまであっちの私であって私は違います!」

 

 

聞けば聞くほどまともなのはいないのか、そう思えるくらいにはひどい有様だそうだ。ちなみに破壊者とか計量官とかはマシな部類だし建築家もやらかしはすれどヤバい部類ではないのだが、それを知らない代理人の中では全員やばい扱いである。

 

 

「・・・・まぁ、その節はあちらの私がご迷惑をおかけしました」

 

「おぉ・・・まともなのに違和感が・・・・・」

 

「04、それは言わないであげようよ」

 

「私にお詫びができるのでしたらなんでもいたします」

 

「・・・・・・だって、03。 頭でも撫でてもらったら?」

 

「うぇ!?」

 

「? それでよろしいのでしたら」

 

 

カウンター越しに頭の手を置き、撫で始める代理人。最初は戸惑っていた03だがだんだん顔を赤くしながら小さくなっていき、その隣で04がニマニマ笑う。なんともフランクで緩そうな感じ(背負っている得物を除く)に、同じ傭兵であるレイは若干複雑そうな表情を浮かべるが、昨日世界の広さというものを実感したばかりなのでそういうものだと受け流すことにした。

 

さて一通り03の醜態を楽しんだ04は、グッと背伸びをすると席を立ち、レジの方に向かう。

 

 

「さて、じゃあ私たちはそろそろ帰るわね。 お会計は・・・・・あれ?」

 

「ふふっ、お代は結構ですよ。 皆さんこちらとは通貨が違うようですので」

 

「う〜ん、なんか悪い気もするけど・・・・ありがと代理人、ご馳走さま」

 

「ええ、またいつでもいらしてくださいね」

 

「う、うん・・・・・ありがとう代理人」

 

「はい、また・・・・・あぁ、忘れていましたね。 はい、これを」

 

 

二人が店を出る前に思い出したかのようにカウンターの下から瓶を取り出す。いつのまにか渡すのが当たり前になってきた、『喫茶 鉄血ブレンド』である。

 

 

「ぜひ、あちらで皆さんと飲んでください。 それ、そっちの私に程々にするように、と」

 

「うん、ありがとう。 じゃあね!」

 

「さようなら、代理人」

 

 

手を振りつつ店を出て、そのまま路地の先へと消える二人。少し気になってちらっと路地を覗くとそこにはもう二人の姿はなく、無事元の世界に帰ったのだと安堵する。

 

 

「・・・・こんなにあるのか、こんなことが」

 

「私も話には聞いていましたが、二度も会うとは思いませんでした」

 

「ふふふ、皆大切なお客さんですよ」

 

 

そう言って代理人は笑うと、一度だけ振り向いて店へと戻っていった。

いつか、別の世界の自分とも会ってみたいな、なんて思いつつ。

 

 

end




口調ってこんな感じだったっけ?
きっと二人から見ればこっちの代理人はおかしく見えることだろう。何を言っているかわからないという人は今すぐ『本日もよき鉄血日和』へGO!


というわけでキャラ紹介

03
男性。背が低く中性的な顔立ち。
一人称は『俺』だが、よく代理人がらみで怯えている気がする。代理人に好意を持っている、らしい。

04
女性。2メートル近い身長で、だいたい背中にクレイモアを背負っている(地雷の方じゃないよ)。
かなりいたずら好きで、電子戦のプロでもある。案山子と侵入者が可愛いらしい。

代理人
まともな人形。きっとあっちの代理人と出会ったら即倒からの説教コースだろう。

スケアクロウ
こっちのほう。あっちのほうが盗撮魔なのであらぬ容疑をかけられてしまった。二話連続の登場。

レイ
スケアクロウ出しといて出さないわけにもいかないくらいペアになったコラボキャラ。何気にコラボキャラが二話連続は珍しい。
異世界ってすごいなぁ、と純粋に思っている。



コラボ、リクエスト受け付けてます!
*コラボ依頼の場合、その作品を読んだことがない場合は最新話まで読んでから書き始めるので時間がかかる場合がございますのでご了承ください。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=204672&uid=92543

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