喫茶鉄血   作:いろいろ

135 / 279
おかしいな、コラボ依頼を書き上げたと思ったらまたコラボ回を書いていた、何を言っているのかry

というわけで今回は『じゃすてぃすり〜ぐ』様の『ROCKMAN CROSSLINE』とのコラボ。
実は作者はロックマンをほとんど知らないんですが、それでも楽しめるいい作品だと思います!


第九十八話:異世界の英雄

世界にはいたるところに不思議な現象を引き起こす場所が存在する。いくつもの飛行機や船が消息を立つことで有名なバミューダ・トライアングルなど、一説にはそこは異世界と通じているのではないかとも言われている。

そんな魔境と呼ぶにふさわしい場所と同じくらい摩訶不思議なことが起こる店が、ここS09地区にはある。それが、喫茶 鉄血だ。

 

今日も今日とて仕事に励む代理人。この不思議なカフェを営む彼女は、もしかしたらそういう運命の元に生まれているのかもしれない。

そんなわけで今日もまた、一風変わった客が訪れる。

 

 

カランカラン

「「っ!?」」

 

「いらっしゃいませ、ようこそ鉄血喫茶へ」

 

 

入ってきたのは一組の男女。まだ10代くらいの若いカップルだろうか、男性の方は青色系、女性の方は緑色系で揃えた服を着ており、初々しいデート姿に見えなくもない。

が、そんな二人は実はこの世界の人間では・・・・というより人間でもない。こことは違う世界で鉄血と戦い、かたや世界を救った英雄でもある『ロックマン』ことロックと、そんな彼と映画館デートしてきたばかりのM4A1である。その二人は代理人を見るや表情を硬ばらせた。

 

 

「どうかしましたか?そんな驚かれた顔をして」

 

「え?ああ、いえ・・・なんでもありません」

 

 

そう言って目を泳がせる二人に首をかしげる。男性(ロック)の方は店を見渡し、何かを見つけたのかさらに驚いたような顔になる。

女性(M4)の方も若干・・・いやかなり挙動不審で、二人は小声で話し始める。

 

 

「ど、どうしましょう・・・」

「と、とりあえず落ち着こう。今の僕達の格好は普通の私服だから、グリフィンの人間だってバレてはいないはずだ。

 見たところ、一般人のお客さんも居るみたいだし・・・一般人の振りをしていれば大丈夫の筈・・・多分、きっと、メイビー」

 

 

かなり小さい声だったことと店内の喧騒で代理人には聞こえていなかったが、二人とも人形とは思えないほど人間臭い挙動で冷や汗ダラダラである。

そしてそんな反応は、接客業として人を見る目のある代理人には違和感の塊なのだ。

 

 

「お客様?どうかなされましたか?」

 

「「ウェイ!?」」

 

 

思わず上ずった声になる二人。それもそのはず、今はまだ気づかれていないが目の前には敵の親玉、対して二人は丸腰・・・・・そりゃ焦りもする。

 

 

「な、ななななな何がでしょうか!?」

 

「いえ、物凄く汗をかいておりましたからどうかなされたのかと」

 

「だ、大丈夫ですよ。ちょっと軽く走ってきただけですから」

 

「そ、そうですか・・・(はっきり言って、軽く走ったというレベルではないほどの汗をかいてるのですが・・・とやかく聞かないでおきましょう)

 

 

 

 

・・・あら、M4?よく見たらM4じゃないですか」

 

 

―ギックゥ!

バレた、思いっきりバレた!警笛を鳴らしまくるもどうすればいいかわからず、縋るようにロックを見る。

そんなM4の心中など露知らず、代理人は善意100%で尋ねた。

 

 

「珍しいですね、男の子と一緒にここに来るなんて。貴方の友達ですか?」

 

(誰だお前?誰だ、お前!?貴方、そんなキャラじゃなかったですよねぇ!?もっと冷酷無比でしたよねぇ!?あの時、思いっきり首締めて殺そうとしてましたよね!?なのに何でこんなにフレンドリーなんですか!?)

 

 

いよいよ混乱極まるM4。当たり前だ、ちょっと前まで殺しあっていたどころか何時ぞやには鬼気迫る形相で首を絞められた(原作プロローグ参照)のが、今度は一転して優しいお姉さん調である。

・・・・・新手のウイルスか何かだろうか?

 

そんな時、

 

 

ガチャリ

「あら、いらっしゃいませM16」

 

「よォ、()()()・・・」

 

 

店を訪れたのは代理人にとっても、そしてM4(とロックも一応)にとっても見覚えのある人形、M4の姉であるM16A1である。

ここにいるはずのない姉の登場にさらに混乱したM4は、やや慌てた様子で、

 

 

「え、M16姉さん!?どうしてここに!?」

 

 

そう尋ねた。

ん?とM16はM4の方を向き、そして妹の見慣れない服に疑問を覚える。妹の私服全てをインプットしている彼女は、こんな私服は知らないのだ。

 

 

「M4何だ、その格好h」

 

 

そこまで聞いてハッと気づく。というより服という疑問のせいで妹しか見ない視野がやや広まったせいだろう。M4()の隣にいる、そして妙に距離の近い『男』の存在に。

 

 

「おい、M4・・・。何だ、その男?彼氏か?」

 

「「・・・へ?」」

 

 

目が座り、声の抑揚が減る。

シスコンモードが発動してしまったのだ。

 

 

「ちょちょちょ、ちょっと待ってくださいM16さん!僕とM4さんはそんな関係じゃないですよ!」

 

「・・・じゃあどんな関係だ?」

 

「僕と、M4さんは仲間ですよ」

 

「仲間?」

 

 

なんか本当に化けそうなくらいに低い声で聞き返すM16に、M4がはいっ!と答える。

 

 

「かけがえの無い仲間です。私が安心して背中を預けられる、大切な仲間です!」

「大切・・・、そうかぁ・・・」

 

 

わかってくれたか、と安堵する二人だが、直後にガバッと顔を上げながらM16は背筋も凍るような声色で言い放つ。

 

 

「大 切 な 仲 間 か ぁ ・ ・ ・」

 

「「怖ッ!?」」

 

 

そんじゃそこらのホラーやハイエンドよりもよっぽど怖い。何が怖いって、ちょっと見ない間に豹変していた姉が怖い。目から血涙を、そして口からは明らかにおかしな量の血をダラダラと垂れ流してけたけた笑い始める・・・・・怖い。

 

 

「大切な仲間なら、それはそれで仕方ないさ。私は、とやかくは言わないよ。M4、お前が幸せならそれでいいんだ」

 

((せ、盛大に誤解されてる・・・!))

 

 

何やら思いっきり誤解されているがそれを正す勇気はない。というより今何を言っても無駄な気がする。ならばと代理人を見るがそっちはそっちでじっと何かを考えている・・・・・というよりもう目星はついていたりはするが。

 

 

「んで?アンタ、名前はなんて言うんだ?」

 

「え、ええと・・・ロックです」

 

 

ヌッと近寄ってきたM16に顔を引きつらせながら答えると、両肩をガシッと掴み掛かられる・・・・・めっちゃ怖い。

 

 

「良い名前じゃあないか。なぁ、ロック」

 

「な、なんでしょう」

 

 

いよいよナニカサレルんじゃないかと思うロックをグイッと引き寄せたM16は、突然オイオイと鳴き始めた。血涙ではなく普通の涙である。

 

 

「M4の事を幸せにしてくれよな~・・・頼むよ~・・・可愛い妹だからさ~」

 

 

号泣である。代理人は相変わらず、少し考えがまとまってきたようだがそのまま静観している・・・・・止めてくれよ。

さて流石にこのままでいるわけにもいかず、嘘をつくのは心苦しいがここはそういうことにしておこう。

 

 

「はい、えm「こんにちは~、M16姉さん来てませんか?」M4さんが二人ィ!?」

 

「えっ!?私!!?」

 

「はい?」

 

 

とりあえず覚悟を決めて言おうとした言葉は、現れた()()()()()M()4()によってパッと消え去る。代理人はやっぱりという顔でいるが、他は皆目を点にして固まっている。

 

 

「ど、どうなってるんだ!?AR小隊の戦術人形は、同じ個体は存在していなかったはず・・・。まさか、コピーロボット!?鉄血の奴らが、こんな技術まで持っていたなんて!」

 

「コピー?一体何の話ですか?私、れっきとした『M4A1』なんですけど」

 

 

ロックの困惑した言葉にM4ははっきりと否定を述べる。

ちなみにコピーロボットと言うのはry(あっちで解説してくれてるよ!)

そして、考えることはこっちも同じようだ。

 

 

「どうなってんだ、コリャ?まさか、AR-15や代理人の時と同じような自立可能なダミーなのか、このM4は?」

 

「いえ、私立派なオリジナルのM4ですが」

 

 

ちなみに自立可能、ということになっているがいつのまにか独立してしまったダミー達のことだ。よってダミーでありながらダミーではないのだが、そんなことは今どうでもいい。

これにはあっちのM4も困惑しつつ否定し、事態はますます混沌としていく。そんな中・・・・・

 

 

「あの、ちょっとよろしいでしょうか?」

 

 

代理人がそう言いながらすっと手を上げたことで注目を集める。皆が静まり、そして代理人は言葉を続ける。

 

 

「来店した当初から、お客様方の様子がおかしいと思っておりましたが・・・この事態を見て確信に変わりました」

 

「確信・・・って言うと、どう言うことだよ代理人」

 

 

M16が首をかしげる。それもそうだ、今でもさっぱりなこの状況を一体どうやって説明しようというのか。

とりあえずどんな説明が出てくるのかと待ち構えれば・・・・・

 

 

「まぁ、単刀直入に申し上げれば・・・こちらのお方とM4は『違う世界の人間』と言う事です」

 

「「・・・は?」」

 

 

やたらと荒唐無稽な話が出てきた。

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・信じがたい話ですね。『この世界』が『僕達のいた世界』とは全く別の世界だなんて・・・。並行世界ってコミックだけの話だと思ってましたよ・・・」

 

 

衝撃的な話から数十分後、テーブルへと案内していくつかの資料とともにこっちの世界のことを話した代理人。ロック達はにわかに信じられないと言った表情だが、代理人以下誰も嘘をついていない様子と、そもそも鉄血とグリフィンが並んで座っているというこの現状に渋々納得するのだった。

 

 

「『貴方達の世界』では鉄血(わたしたち)が人類に宣戦布告する以前に、悪の天才科学者が世界征服を企んでいた・・・ですか。・・・何と言うか荒唐無稽ですよね」

 

「だな。しかも、それを阻止するために生みの親に頼んで戦術人形に改造してもらってそいつと戦うって・・・ぶっちゃけ、アニメかゲームになってそうだよなぁ」

 

 

信じられない、という点では代理人達も同じだ。特に過去に何度もこう言った事例や話を知っている代理人でも、世界征服などという規模の大きい話は聞いたことがなかった。しかしながらいくら安全な街だとはいえ、そんな世界で丸腰で歩くのはどうなんだろうっと思う代理人でもあった。

そして話がひと段落ついた頃、異世界のM4は今一番気になることを聞いてみた。

 

 

「それはそうと、元の世界に戻る方法ってあるんですか?」

 

「ありますよ」

 

 

あっさりと返ってきた言葉に拍子抜けする。

え?だって異世界だよ?そんなにホイホイ行ったり来たりはできないでしょ。

 

 

「・・・マジですか?」

 

「ちょっとキャラ崩壊してませんか、私」

 

 

もしかして、あっちではこれが私のキャラなのだろうかと少し不安になるこっちのM4。だがまぁ気持ちはわかるのでそっとしておく。

 

 

「ええ・・・、何でか分からないですけどね。皆様無事に帰られましたよ」

 

「『皆様』って言うと、僕達以外にも来た人がいるんですか」

 

「はい、こういう事例は結構あるんですよね。・・・どういう訳か知りませんが・・・」

 

「「えぇ・・・(困惑)」」

 

 

なんとも不思議なことがあるものだと思いつつ、なるほど代理人が妙に落ち着いてたり手際よく説明してくれたのは慣れているからかとも納得する。

そして同時に、帰ることができるという事実に安心して気を抜いてしまう。

 

 

-グゥ~・・・。

 

「「あ」」

 

 

気を抜いたからか、二人のお腹がいい音で鳴る。

それに代理人はふふっと笑い、二人は気恥ずかしそうに俯く。

 

 

「お腹がすいているみたいですね」

 

「ええ、お恥ずかしながら。昼食を食べようとおもって、ここに来たもので」

 

 

時計を見ればお昼時をちょっと超えている。そりゃお腹も空くわけだ。ふむ、と代理人は顎に手を置き・・・・

 

 

「ちょっと待っていてください、今からお二人のお昼をお作りしますので」

 

「え、いいんですか?」

 

「勿論です」

 

 

そう言ってウインクすると、代理人は店の奥へと入っていく。さてでは何を作ろうかと考えて、厨房にある食材と時間を見ながらメニューを決める。お腹を空かせた客を待たせるわけにはいかず、手軽に食べられてお腹も満たせるもの・・・・・そうだ、サンドイッチにしよう。

パンを軽く焼いて、その間に野菜とハムを切っていく。熱したフライパンに溶いた卵を入れ、ささっと火を通しながら混ぜていく。あとはパンに挟んでカットすれば、シンプルなサンドイッチの完成だ。

最後に皿に盛り付け、代理人は厨房を出た。

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせしました。サンドイッチです」

 

 

代理人が言うより早く振り返ったのは、その匂いに釣られたからなのかもしれない。皿をテーブルに置くと、二人は最初は遠慮がちに一口かじり・・・・

 

 

「お・・・」

 

「美味しい・・・」

 

 

どこかで誰かが言った、『空腹は最高の調味料である』と。

というわけで腹ペコだった二人は結構勢いよくがっつき始める。代理人はそれを見ながら微笑ましそうに笑い、追加でコーヒーも持ってくるのだった。

 

やがて二人はあっという間に完食し、コーヒーも飲み干して満足げな顔で手を合わせる。

 

 

「「ごちそうさまでした」」

 

「いえ、お粗末様でした」

 

 

空になった食器を重ね、片付けようとする代理人。ふと二人を見れば、またまた挙動不審な様子で周囲を見回す。

 

 

「何だろうこの音・・・」

 

「音?何も聞こえないが」

 

「私も聞こえます。・・・これは・・・」

 

 

ロックとあっちのM4は何か聞こえたようだが、M16たちこっち組は首を傾げたままだ。だがそんな光景も代理人からすれば()()()()()()だ。

 

 

「どうやら、そろそろお帰りになるようですね。恐らく、ここを出ればすぐ『元の世界』に戻る事ができると思います」

 

「そうなんですか?」

 

「ええ、実際に『この世界』に来られた方は皆そうでしたので」

 

 

何故かはわかりませんけど、と付け加えて。

顔を見合わせたロックとM4は、よくわからないが帰る時間だと言うことなので帰ることにした。

 

 

「それじゃあ帰ろうか、M4さん」

 

「はい、では代理人コーヒーとサンドイッチご馳走様でした」

 

 

二人は席を立ち、店を出ようとしたところで代理人はふとまだアレを渡していないことに気づく。急いでカウンターの裏に行き、袋を取り出して二人に手渡した。

 

 

「これは?」

 

「お土産です、基地の皆さんと飲んでください」

 

「ありがとうございます。あっ、そうだ・・・ここって、『ゼニー』は使えませんよね・・・」

 

「『ゼニー』?ああ、『貴方達の世界』の通貨ですか。取り扱ってませんね」

 

「そうですか・・・、このまま金を払わずに帰るのはなんか後味悪いや」

 

 

そんな反応に思わずクスッと笑う代理人。きっと根っからの真面目な人なんだろうと思い、それならばと一つ案を出してみる。

 

 

「今度こちらにお出でになられた時に、ロックさんには店の手伝いをしてもらいます。それならば、今回の件はチャラになるのではないでしょうか」

 

「・・・そうですね、いつこちらに来るかは分からないですけどもし来たら、お手伝いします」

 

「ふふっ、楽しみに待ってますよ」

 

「はい、ではまた」

 

 

二人は並んで店を出て、やがて路地に入るとその気配もなくなってしまう。毎度毎度どうやって帰っているのかはわからないが、今回も無事に帰ることができたようだ。

しかしあの二人、恋人ではないとは言っていたが果たしてどうだろうか。ロックの方はともかく、M4はもしかしたら・・・・・

 

 

「・・・・ふふっ、応援していますよ」

 

 

きっとあっちでは多くの困難が待ち受けるのだろう。願わくば、また会える時まで元気で。

 

 

 

end




はい、というわけでロックとM4が迷い込んできちゃいました。
ほんとうちの世界線はガッバガバだな(今更)


というわけでキャラ紹介!

ロック(ロックマン)
ROCKMAN CROSSLINEの主人公。やたらとチート気味な戦術人形。鉄血よりも嫉妬に狂った身内の方が怖いと思い知ったことだろう。

M4
ロックに恩を感じており、そしてその先は・・・・・
典型的ないい子ちゃん。

代理人
もう慣れた。

M16
彼氏だと!?ゆ゛る゛さ゛ん゛!!!

M4(喫茶 鉄血)
もっとお話しできればよかったかも。


リクエスト用活動報告↓
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=204672&uid=92543

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。