喫茶鉄血   作:いろいろ

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百話だから一〇〇式、っていうのは安直だっただろうか。
でもそれを言い出すと97式とか95式もやれって言われそうだけど仕方ないじゃん!気がついたら百話だったんだもん!

とうわけで番外編やクロスオーバーを除く通常回が百話を迎えました。
みんなありがとう!


第百話:サブカル大国の人形

一〇〇式、という人形がいる。全人形的にも珍しい極東の島国・日本の銃をモデルとした戦術人形だ。何かの記念に設計され、開発の大部分に日本人技術者(HENTAI)が関わっているというこの人形は、他の人形以上にぶっ飛んだことをやらかしたりする。

銃撃戦が当たり前のこのご時世に銃剣突撃、ニンジャのごとき変態機動をもって懐に近づき、SMGにあるまじき火力を叩き込むのだ。プライベートでも祖国の良さを徹底的に布教し、お陰でここS09地区にはバレンタインや日本版ハロウィン、クリスマスなどの行事が多い。

 

 

「そんなわけで、もうすぐハロウィンの季節です! トリックオアトリートと仮装ですよ!」

 

「一応言っておきますが、本来のハロウィンは収穫祭ですからね?」

 

 

カウンターに身を乗り出し、鼻息を荒げて語る一〇〇式をつれない態度でバッサリ切る代理人。もちろんそんなことは言わなくともわかっているし、住民だって知っている。だが人というものは、楽しければ本来の道から外れたっていいのである。

 

 

「まぁ、こちらでもいくつか企画を考えていますが・・・・・」

 

「さすが代理人です! でも今日は代理人ではなくマヌスクリプトさんにお願いしたいことがありまして」

 

「マヌスクリプトに? ・・・・・・あぁ、なるほど」

 

 

鉄血のハイエンド・マヌスクリプト。喫茶 鉄血の服飾担当にして同人作家、最近は他店では頼めないような服をオーダーで作るという方向で収入を得ており、その筋では有名である。

そんな彼女に、ハロウィンの話を持ち出してまで頼むこと・・・・・コスプレ衣装以外にあり得ないだろう。

 

 

「わかりました。 呼んできますので少々お待ちを」

 

 

なんとも言えない不安を抱えながら、代理人は渋々マヌスクリプトを呼び出した。

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

「お願いします!」

 

「任せたまえ」

 

「内容を聞く前に了承しないでください」

 

 

まるでコントのようなやりとりに頭を痛める代理人。もっとも、話せば二つ返事でOKになるのだから結果は変わらないが。

 

 

「それで、どういった衣装がお望みかな?」

 

「事前に希望者には要望を出すように伝えておきました。 これがその全てです」

 

 

一〇〇式が持ち出したのは厚さ数十センチにはなろうかという紙の束。S09地区司令部所属と、彼女らと交流のある人形たちの要望を一人一枚でまとめた結果、思いの外大勢の人形が募集してきたのだ。

そんなわけでまだ早いとわかっているが、時間がかかりそうなのでマヌスクリプトの元へと持ってきたのだった。

 

 

「一応、ジャンル別に簡単に分けておきました」

 

「ジャンル別? 例えば?」

 

「あ〜・・・代理人には言ってもわかんないかもしれないけどまぁ、要するにまともなのかアッチ系なのかとかだよ」

 

「・・・・・・・一応、表に出られる程度にしてくださいよマヌスクリプト」

 

 

念のため釘を刺しておく。もちろんマヌスクリプトとて流石にあまりにもアレな服は作らないし、世間の目が厳しいのはよく知っている。

とりあえず大丈夫か、と代理人は適当に数枚手に取り、パラパラとめくっていく。

 

 

「ふむ・・・・意外とまともというか、可愛らしいものが多いですね」

 

「吸血鬼や黒猫、あとは魔女とかが王道かな」

 

「黒っぽい服に翼やツノをつけるだけでそれっぽく見えますからね」

 

 

ちなみに今めくっているのはハンドガンの人形たちの要望をまとめた部分だ。基本的に子供の多いハンドガンなら、そこまで危なっかしいものはないだろう。ちなみに57は今回も着ぐるみらしい。

 

 

「・・・・・・ってなんですかこれは!?」

 

「ん? うわっ、これはまた・・・・・・」

 

「さすがDSRさん・・・・・攻めますね」

 

 

では大人な人形の多いライフルの方はどうかと手にとってみれば、一枚目から飛び込んでくるのはなんとも過激なものばかり。DSRはぱっと見普通の黒いパーティードレスだが、胸元や足の方は際どいところまでスケスケでちょっとした拍子に見えてしまいそうである・・・・というか絵上手いな。

続くスプリングはもうターゲットの指揮官を悩殺することしか考えていないのか、胸の部分が大きく開いた上にスリットが太ももの付け根まで入った確実にアウトな服。おまけに下着までセットで要望を出しており、こちらに至っては外を出歩けないレベルである。

 

 

「もうちょっとまともな人はいないんですか・・・・・」

 

「作れなくはないけどこれで出歩かれるのはちょっと・・・・・」

 

「スプリングさん、昔はあんなに凛々しかったのに・・・・・」

 

 

DSRは単純にそれを楽しんでいるが、スプリングはもう手遅れなのかもしれない。同じ指揮官ラブ勢のモシン・ナガンが氷をイメージしたドレスというまともなものだけに、これ逆効果なんじゃないかと思ってしまう。

一応フォローするとすれば、深夜テンションで書き上げたために歯止めが効かなかったらしい。

 

 

「ところで、代理人はしないの? 仮装」

 

「・・・・・今度は何を着せるつもりですか?」

 

「信用ないね!? ちゃんと要望通りにするよ」

 

 

ジト目でマヌスクリプトを見るが、たしかに町のイベントに乗らないというのはちょっともったいない。普段はアレだが衣装の腕に関しては信頼できるマヌスクリプトがいるのだ、当日一日限りでもやって損はないだろう。

さてそうなると服装だけではもったいない。やるからには、店の内装までしっかりこだわりたいところだ。

 

 

「一〇〇式さん、何かいいアイデアとかはありませんか?」

 

「アイデア、ですか?」

 

「えぇ、飲食店という点を殺さず、お客さんに楽しんでいただけそうなものです」

 

 

ううん・・・・・と悩むこと数分。一〇〇式のこれまでの様々なイベント情報(提供:IoP Japan)を整理し、代理人の要望に合うコンセプトを探し出していく。従業員は代理人含めて人形だけ。店の雰囲気は落ち着いた感じで、どちらかといえば客の年齢層は高めな方だ。子連れも来るかもしれないが、どちらかといえば表通りのイベントの方に行くだろう。ということは狙う客層は『大人』でいいかもしれないなどなどなど・・・・・・作戦中、もしくはそれ以上に頭を回転させて考え込む。

そして・・・・・

 

 

「・・・・あ! こういうのはどうでしょうか!」

 

 

一〇〇式の出したアイデアに驚きつつ、しかし面白そうだということで採用する代理人。マヌスクリプトも人形たちのコスプレ服の採用不採用を仕分けれたようで、ちょっと早いがハロウィンに向けて動き出す。

この日以降、マヌスクリプトは店のシフトから外れて部屋に閉じこもり、代理人も頻繁に買い出しに出て合いそうな小物を探し始める。

 

いったいどんな店に変わるのか、それは当日になってのお楽しみ。

 

 

end




ハロウィンには気が早い?日本の二大テーマパークがハロウィンと言ったらハロウィンなのだよ。

今回は全体的に短めですが、ハロウィン回(十月ごろ)の伏線ということで。


ではキャラ紹介!

一〇〇式
銃剣突撃型SMG。
日本の伝統やサブカルチャーに染まっているが、オタクというわけではない(本人談)
武道全般にも長け、これも相まって近接戦闘では無類の強さを誇る・・・・・銃いらねぇんじゃねえのかお前。

マヌスクリプト
初登場はあんなにトラブルメーカーだったのに、今ではそれなりに信頼を得ている。
残念ながら同人活動では稼ぐことはできないが、オリジナル衣装等で結構稼いでいるらしい。
大人しくなっているように見えるが一度部屋に戻れば元どおりである。

代理人
店の雰囲気がマンネリ化している気がすると思いつつ、変わらない雰囲気に惹かれる客もいるので変えない。
今回は終始平和だった。



いつも通りリクエストBox置いときます。
ヴァルハラコラボ楽しみじゃ。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=204672&uid=92543

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