そんなわけで今回は番外編
・ほろ酔い気分
・敬老の日
・百式
・元 復讐者の眼に映る世界
番外25-1:ほろ酔い気分
人形は酔うのか?と聞かれることがしばしばあるが、その答えは『YES』だ。より正確には、『酔うことができる』と言ったほうがいいだろう。お酒の場とは古くからコミュニケーションの場として親しまれており、人間の姿を模している人形たちにとって、人間とコミュニケーションをとることはとても大切なことなのだ。そんな酒の場でいくらなんでも全く酔わない、というのはやや不自然であるため、ある程度酔うことができるようにしてあるのだ。
「・・・というわけでSOP、これ以上飲んだら潰れちゃうから」
「やらっ! もっろのむろぉ!」
ペルシカの説得も虚しく、コップを手放そうとしないSOP。強引に剥がそうとしてもそもそもが相手は戦術人形、おまけに準ひきこもりのペルシカの腕力ごときではまるで足りず、結果としてまたSOPの一気飲みを防ぐことができなかった。
(不味いなぁ)
苦笑するペルシカだが、内心かなり焦っている。今日はAR小隊のメンテナンス日であり、それが終わってせっかくだから泊まっていくことになったSOPと飲む流れになった。その際にM4からは「絶対に飲ませ過ぎないでください」と釘を刺されており、酔いつぶれるようなことがあればお説教コース待ったなしだ。
「ほらSOP、もう今日は寝よ?」
「ん〜・・・ペルシカだっこ〜」
「はいはい」
今日は一段と甘えん坊だな、とか思いつつもSOPを抱き上げるペルシカ。そのまま寝室に運ばれる頃には静かに寝息を立て、だがそれでも離す気はないのかガッチリと掴んだままのSOPにペルシカはちょっと困ったような顔をしながら、
(はぁ〜、明日にはしわくちゃになってるかな)
なんて考えながら、二人揃ってベッドに倒れこんだ。
翌日、酒臭さで目を覚ますと同時に、昨日の甘えっぷりを思い出して真っ赤になったSOPが見られたそうだ。
end
番外25-2:敬老の日
「「お母さん、いつもありがとう!」」
「ど、どうしたの急に?」
9月16日の昼ごろ、いつも通り自分の司令部でデスクワークに勤しみ丁度昼時だからと食堂にやってきたレイラと、同じく食堂にやってきたヴァニラを出迎えたのはエプロン姿のユノとミーシャ。そしてその後ろではおそらく彼女たちが作ったであろうオムライスが二つ並んでいた。
「あ、あのね、今日はお世話になっている人に感謝する日なんだって!」
「ニホンっていう国の特別な日なの! FMGさんが教えてくれた!」
なんかよくわからないがFMGグッジョブ!と心の中でガッツポーズを決める二人の親バカ。むしろこれでも耐えている方で、ここが食堂ではなく私室だったら抱きついて頬ズリだけでは済まないだろう。だがここでは人目がある。
「ところで二人とも、その特別な日ってどういう日なの?」
「えっとね、『ケーローの日』って言うんだって!」
「お世話になっている人や偉い人に感謝する日なの!」
なるほど、だから二人はこっちにきたのか。
ますますFMGグッジョブ!と思う二人は、幸せいっぱいの昼食をとるのだった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
さてそんな幸せ時間が過ぎ、二人でそれぞれの職場に戻ろうかという頃、ふとレイラが気になってたことを口にした。
「そういえばさ、『ケーローの日』って本当はどういう日なんだろうね?」
「あの子達が言ってた通りじゃないの?」
「でもニホンのそんな日をあの子たちがちゃんと知ってるか怪しいじゃない」
「まぁたしかに・・・・・じゃあ聞いてみる?」
そう言ってヴァニラはおそらく詳しいであろう一〇〇式に電話をかける。
その後、鬼のような形相でFMGを追いかけることになるのだった。
end
番外25-3:百式
一〇〇式は思い悩んでいた。そしてそれは現状自分だけでは到底解決できないことであるのも知っていた。それは一〇〇式自身の問題であり、同時に彼女のモデルとなった銃の問題でもある。
その問題とはズバリ、火力不足である。
「むむむ・・・・どうしましょう」
一〇〇式という人形は、言うまでもなくSMGタイプである。それもヴェクターやUMP40のようなアタッカー向きのものではなく、トンプソンらと同様の回避重視型である。敵を倒すことよりも、囮として部隊に貢献することが主となる。
それは一〇〇式とて理解している。理解してはいるがそれでいいかと言われればNOだった。なんとか前衛でも敵を倒せるようにと銃剣突撃やその他近接戦闘をこなしてみたが、やはり1対多では思うようにいかないのだ。
(ある程度機動性を犠牲にして・・・でも根本的にこの銃では・・・)
「お困りのようだね!!!」
一人悩む一〇〇式の前に突如として現れた二人組。
黒っぽい服に黒のサイドテールを揺らし、キラッと言う音が聞こえそうなポーズを決める女性。見慣れた店の服を着たまま鏡合わせになるように同じポーズを決める女性。
サブカルチャーにどっぷり浸かった女・・・・・アーキテクトとマヌスクリプトだった。
「火力が出ない? なら火力が出せるものを持ち歩けばいい!」
「機動性が犠牲になる? ならば武器そのものに機動性を付与すればいい!」
「「ここに、君の望むものがあるっ!!!」」
・・・・と手渡された地図に印がつけられているのは街外れの小さな倉庫。早速向かってみるとそこに転がっていたのはいかにも珍兵器扱いされそうな代物ばかり。そのいずれにも鉄血工造のマークが彫られており、おそらくゲーガーらが身を呈してストップをかけたものなのだろうと察する。
そんな中の一つ、馬鹿でかい砲に足場とブースターをつけたようなものに目を引かれる一〇〇式。
これは、後にグリフィン・鉄血・軍による三つ巴の戦いを駆け抜けた一人の人形の物語である。
「というのを書こうと思う」
「どう考えてもバッドエンドじゃん」
end
番外25-4:元 復讐者の眼に映る世界
とある地区のとある基地。辺境とも言えるこの場所にも一応グリフィンの司令部があり、指揮官と人形たちがいる。とはいえ辺境中の辺境で周りを豊かな自然にかこまれ、テロどころか過激な集団すらいないようなど田舎。町で売っている銃はどれも猟銃というくらいの町だった。
「リー、アウストを呼んできてくれ」
「了解です、リベンジャー様」
そんな平和な町の司令部、そのキッチンで朝食を作るのはこの司令部に所属する二体の人形の片割れ、表向きは鉄血工造の人形であるリベンジャーだった。鉄血由来の黒っぽい服の上から白いエプロンを身につけ、その手の薬指の指輪から新妻感が伝わってくる。
「さて、これで完成だな。 アウストはじきに来るだろうから先に食べててくれ」
「ありがとう、いただきます」
そう言ってトーストにかじりつくのは旅の一環で立ち寄ったノイン。といってもノインもリベンジャーも、サクヤを中心とした『流れ者の会』で情報を共有しているので互いの事情は知っている。こういう時は助け合いだ。
「おはようリベンジャー」
「おはようアウスト、相変わらずお寝坊さんだな」
「休日の朝くらいゆっくりしたいのさ」
「なんだ? 私の朝食を食べたくないのか?」
「まさか」
そんな軽口を言い合って口づけを交わし、席に着く。指揮官であるアウスト、「妻」兼「副官」兼「第一部隊隊長」のリベンジャー、第一部隊副長のリー・・・・・それがこの司令部の全戦力だ。ちなみに最初の頃はリッパーと呼んでいたアウストだが、せっかく名前があるのならと言うことでリベンジャー呼びに戻し、リベンジャー自身もそれを『復讐者』ではなく自分の名前として名乗っている。
「そういえばアウスト、今朝早くに町の自警団が来ていたぞ。 なんでも、クマが町の近くまで降りてきたから手伝って欲しいそうだ」
「あぁ、そんな時期か・・・二人とも、悪いが」
「こら、仮にも指揮官だろ? ちゃんと命令してくれ」
「そうですよ指揮官。 私とリベンジャー様にお任せください!」
「あ、じゃあ私も手伝うよ。 泊めてくれたお礼にね」
「・・・・うん、わかった。 じゃあ第一部隊とノイン、出撃してくれ」
「「「了解!」」」
end
書けるうちに書かねば・・・!
というわけであとがきで書くこともなさそうなので早速各話の解説!
番外25-1
リクエストから。
酔っちゃったSOPとそれを介抱するペルシカさん。このまま夜戦でもいい気がしたけどたまにはこんな終わり方でもいいんじゃない?
番外25-2
敬老の日・・・多年にわたり社会に尽くしてきた
子供らしい勘違いだけど可愛いからいいんじゃないかな。
FMGに悪意はない
番外25-3
やってみたかっただけ。
百式と違って頭部武装はないので両手両足を失ったら終わり。
番外25-4
番外編でのシリーズ化を考えているノインの旅路、その一つ。
リベンジャーの笑顔を見ながら朝食を食べたいです。
リクエストは引き続き受け付けます。
バッドエンドの救済依頼も可。
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