喫茶鉄血   作:いろいろ

141 / 279
要望があったので。

言われてみればハンドガンの話が少ないなって思いますね、深い理由はありませんが。
そしてコラボイベントでスピットファイアが手に入りました!この娘の服、いい!


第百三話:人間観察

人形は製造というシステムによって生み出される。義体と対応する銃、それらを結びつけるスティグマなどを現在の形に完成させたのがあのペルシカだということはあまりにも有名だ。だが、そんなペルシカをもってしても任意の人形を作り出すことは難しく、日夜多くの指揮官が喜怒哀楽の表情を浮かべながら製造システムを利用する。

 

その一方、製造システムでは作り出せない人形も少なからず存在する。より正確に言えば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という摩訶不思議なものである。ペルシカ曰く、「まぁできるんならいいんじゃない?」だそうだ。

G(グロック)17という人形も、そんな不思議な人形の一体である。

 

 

「ボス、休憩中に申し訳ありませんがお尋ねしたいことがあります」

 

「ん? なんだG17」

 

 

今日も平和な喫茶 鉄血、そのテーブル席に指揮官と二人っきりという特定の人形が見れば発狂モノのシチュエーションを作り出しているG17はそう言った。

対面に座る指揮官はコーヒーをすすりながら新聞に目を通し、昼休みのおっさん感満載である。

 

 

「先日、ダネルが任務をサボりここで休憩していたそうですが」

 

「あぁ、聞いている。 まぁ暑かったし休息は必要だろう」

 

「その前もVectorが勝手に有給をとって遊んでましたし、その原因も一〇〇式の余計な一言だったと聞いています」

 

「有給は受理したし、一〇〇式に関しても良かれと思ってやったことだ」

 

「・・・ここの人形は気が緩みすぎだと思います」

 

 

各々が自由に趣味を持ち、主な任務であるパトロールとたまにやってくる作戦に参加する以外ほとんど制限のないこの司令部は、真面目な性格のG17にはどうやら合わないようだった。言葉から分かる通り彼女はもともと他の地区の所属であり、そこは軍の基地とも近かったため規律の厳しい司令部だった。AR小隊や404小隊といったエリート部隊が所属するS09地区に憧れて転属してきたのだが、期待が大きかった分落差もひどいのだろう。

 

 

「ふふっ、そんなに責めてあげないでくださいグロックさん。 それに彼女たちもやるときはちゃんとやっているはずですよ」

 

「む、代理人か。 すまないがコーヒーの」

 

「お替りですね、お待ちしてますよ」

 

 

頼まれてもいないのに、まるでそんな注文がくるとわかっているかのように用意がいい代理人。ずっとこっちの話を聞いていたわけでもないのに会話に入るタイミングも完璧と言ってよく、広い視野を持っていることがうかがえる。

そんなことを考えながら代理人を凝視するG17が気になったのか、代理人は首をかしげる。

 

 

「あの、何か?」

 

「あ、いえ・・・・・この店は、規律がしっかりしているなと」

 

 

G17の言葉にキョトンとした後、代理人は思わずくすりと笑ってしまう。開店当初はそんな感じだったが、仲間が増え客層も広がるうちにかなり自由な風潮になったので、そんなことを言われるとは思っても見なかった。

 

 

「そうでもありませんよグロックさん。 とくに私から言っていることはほとんどありません」

 

「え? じゃあマニュアルがあるとか?」

 

「いえ、マニュアルもありません。 各々が自分で考え、行動しているだけです」

 

 

代理人の言葉に目を丸くするG17。長らく規律や規則の中で生活してきたせいか、規律規則がない=だらけているのイメージを持つ彼女には信じがたい光景のようで、これには思わず指揮官も苦笑いしてしまう。

 

 

「そういえばグロック、お前の趣味は人間観察だったな」

 

「え? あ、はい、そうですが・・・」

 

「なら、一度個々の仕事を見せて貰えばいい。 きっと見る目が変わるはずだ」

 

「あら、それはいい考えですね。 私たちも歓迎しますよ」

 

「・・・・・・・え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、その場の流れと指揮官の権限によってあっという間に申請が進み、気がつけば一泊分の荷物を持って開店前の喫茶 鉄血を訪れていた。ポカンとしたまま突っ立っていると、中から現れたDに招かれる。

 

 

「あ! あなたがグロックちゃんだね。 私はOちゃ・・・代理人のダミーの『D』だよ、よろしくね」

 

「え、あ、はじめまして、G17です。 お世話になります」

 

 

中に入ると、そのまま二階を通り過ぎて三階の従業員のフロアに連れて行かれる。そこに待ち構えていたのは何やら気味が悪いくらいにいい笑顔のマヌスクリプトと、その後ろにずらりと並んだ服の数々・・・・・明らかに仕事着に相応しくないのまで混ざっているが。

 

 

「・・・・マヌちゃん、また怒られるよ?」

 

「ふっ、そんなこと覚悟の上だよD。 そして君がG17だね、私はマヌスクリプト、というわけで今からお着替えしようか!」

 

「えっ、ちょっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

しばらくお待ちください(見せられないよ!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひ、ひどい目にあった・・・・・」

 

「うん、やっぱり素材がいいと何を着せても映えるねぇ!」

 

 

数十分後、げっそりとしながらも新しい服に着替えたG17は恨めしげにマヌスクリプトを見る。散々着せ替え人形のようにいろんな服を着せられ、まだ何もしていないのに疲労困憊になってしまった。おまけにそこまで時間を使ったにもかかわらず最終的には従業員用のスタンダードな服に決まり、今までのはなんだったのかと問い詰めたい気分だ。

 

 

「おや、終わりましたかマヌスクリプト」

 

「あ、代理人! これでバッチリでしょ」

 

「ええ、サイズもぴったりのようですね。 流石はマヌスクリプトです」

 

 

違う、こいつはそんな褒められるやつじゃない、と言いたかったがそんな気力もなくなり渋々その場の流れに従う。

さてこれで全員の準備が整ったため店の一階に戻り、開店前の朝礼を始める。

 

 

「さて皆さん、おはようございます」

 

『おはようございます』

 

「まずはじめに、今日はこちらのグロックさんが一日一緒に働かれます。 不慣れな面もあるでしょうから、皆さんでサポートしてあげてください」

 

『はい』

 

「次に今日の天気ですが、午後から少し崩れるかもしれません。 まだまだ日中は暑くなりますし急な雷雨もあり得ますので、そういった場面に出くわしてしまったお客様への対応もお願いします。 その他はいつも通り・・・・・ですがグロックさんもいますので確認しておきましょう。

まずお客様の安全と店内の清潔が優先です、食器類は割れ物ですのでよく注意するように。 お客様への対応は迅速にですが、慌ただしく感じられないように落ち着いて行動してください。 あとは常々言っていますが、お客様に感謝の意を持って接すること・・・・・お客様に満足していただける最高のサービスを届けましょう」

 

『はい!』

 

 

では、開けましょうか、という代理人の言葉に一斉に開店準備に入る。あまりにも内容の少ない朝礼にここでもポカンとしていたG17は代理人に尋ねてみる。

 

 

「あの、いつもこんな感じなのですか? もっと、こういう時はこう動く、とかは・・・」

 

「ふふっ、そういう指示は今までほとんどありませんでした。 私たちは人形ですから、指示を与えればそれ通りに動くことができるでしょう・・・・・ですがそれでは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()し、きっと寂しい雰囲気になってしまうでしょう」

 

「・・・・・・・」

 

「グロックさんにも実際働いていただきますが、もし気になられるようであれば、見ていただくだけでも構いませんよ」

 

 

そう言ってニコリと微笑むと、ドアの前に向かい鍵を外していく。

 

 

「では、今日も一日頑張りましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

喫茶 鉄血は大通りから少し外れた路地にある。そのため決して客の数は多くはないが、昼時などはそこそこ繁盛したりする。最初こそ彼女たちの動きを観察していたG17だが流石に何もしないのは申し訳なく感じ、今は彼女たちに混ざって接客したりしている。

 

 

「グロックちゃん、コーヒーのおかわりもらえるかい?」

 

「あ、はい!」

 

「すみませーん、お会計お願いします」

 

「い、今いきます!」

 

 

が、慣れないことに加えて真面目すぎる彼女はどうにも動きが固く視野が狭い。やや急ぎめでコーヒーを入れ、レジの方に向かおうとしたところで後ろから止められた。ゲッコーだった。

 

 

「ちょっといいか? ・・・・・あーすまんイェーガー、レジに行ってくれ」

 

「了解・・・・お待たせしました」

 

「ふぅ・・・・・さてグロック、服がちょっと乱れているぞ」

 

 

え?と声を上げるが見てみれば確かに襟が少し裏返ったりエプロンの紐が緩んだりしている。ワタワタと動いているうちに緩んでしまっていたようだ。

 

 

「す、すみません・・・」

 

「いや、謝るようなことじゃないが・・・・・・そうだな、少しこっちに来てくれ」

 

「? はい」

 

 

そう言われてついていくと、ケーキが二つ乗ったお盆を持たされて手招きされる。ゲッコーはティーポットとカップを二つ持って先を進み、あるテーブルで待つ二人の客の前にそれぞれ置いていく。

 

 

「お待たせいたしました、お嬢様方」

 

「あらやだ、お嬢様なんて・・・」

 

「お世辞が上手ねゲッコーちゃんは」

 

「ふっ、お世辞でこんなことは言わないさ・・・・まぎれもない本心だよ」

 

 

といきなり口説きだした。といってもこれは大変分かりにくいがゲッコーの挨拶のようなもので、客の方も常連なのかわかった上で乗っかっている。

見方によっては客によって差別しているとも取られかねない様子に唖然とするG17だが、不思議とその客も周りの客も誰も気にしていない。慣れているというのもあるが、あまり不快感を感じさせないようにしているらしい。

 

 

「ではごゆっくり・・・・・さて、次に行こうか」

 

「えっと、今のは?」

 

「ん? 私なりのサービスだよ。 もちろんそれを望んでいないお客もいるし、全てではないがな」

 

「は、はぁ・・・・・」

 

「それに、この店ではルールを守ることはそこまで重視していない・・・・・代理人なんて一番笑顔が少ないんだぞ?」

 

 

言われて改めて周りを見ると、確かに人によって接客の仕方も全然違う。マヌスクリプトはきっと常連相手なんだろうが、かなりコアな話までしているものの周りのことは気にしつつといった感じ。Dは元気いっぱいで明るい雰囲気で、とくに若い人や子連れに進んで話しかけている。イェーガーとリッパーは目元をあのバイザーで覆っているため表情は見えにくいが、口元だけでもその表情が伝わってくるように話しているらしい。そして話に上がった代理人だが、確かに表情の変化に乏しいもののそれを不気味に思ったりする人はいないらしい。

 

 

「真面目で規則通りというのは立派なことだ。 だがそれだけで回るほど世の中単純でもないし、時には型破りな方がいいこともある・・・・・ここは、そういう街なんだ」

 

 

さぁ、次に行くぞとゲッコーはキッチンに戻りティーポットとカップを用意する。それに続きながら、G17はゲッコーの言葉を何度も反芻していた。

ルールは守るもの。それは確かに当然のことなのだが、ではルールを守れば全て正解かと言われた時、自分ははっきりと『YES』と言えるだろうか・・・・・そう思うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとうございました、またお越しくださいね」

 

「ああ、今日もありがとう」

 

 

夕方、この時期になると少し薄暗くなってきたあたりで最後の客が店を出る。時計を確認し、営業時間を超えていることを確認すると代理人は閉店の指示を出した。

 

 

「では閉めましょうか。 D、後をお願いします。 グロックさんはこちらへ」

 

 

代理人に呼ばれて控え室に入ると、小さなテーブルと向かい合うように置かれた椅子が二つ。二人ともそこに座ると、代理人は少し表情を緩めながら話し始めた。

 

 

「さてグロックさん、今日は一日お疲れ様でした。」

 

「あ、ありがとうございます・・・」

 

「・・・・・・どうでしたか?」

 

 

何が、とか何を、とかはない。だがG17なりに今日一日を振り返り、見て感じたことを話す。

 

 

「その・・・・・意外でした。 あなたが率いているのだから、もっとキッチリとしていると思っていたのですが。 ゲッコーはずっとあんな調子だし、マヌスクリプトは何度かサボっているようにも見えました」

 

「ええ、あれはサボってますよ。 何度言っても聞かないどころかサボり方が上手くなっていますが」

 

「・・・・・・でも、なんというか、あんまりゆるいと感じることはなかったというか、やるべき時はやるという感じで・・・」

 

 

G17も、どう表現すればいいのかわからないのだろう。だが少しでも、この雰囲気になじんでもらえたのなら十分だ。G17には黙っていたが、もとより指揮官からはそういう依頼になっているのだから。

 

 

(着任以来休んでいるところをあまり見ない、何かと理由をつけて働こうとしている、ですか・・・・・ふふっ、この分だと改善されそうですね)

 

「・・・・・そう感じていただけたのなら、きっともう大丈夫でしょう。 ゲッコーも言ったと思いますが、真面目なのはあなたの長所です。 ただもう少し、肩の力を抜いてもいいと思いますよ」

 

「・・・わかりました。 今日はありがとうございました」

 

 

ぺこりとお辞儀をすると、そのまま店の片付けに加わろうと部屋を出る。去り際に見せた笑顔が、ここに来たときよりも柔らかくなっているような気がして、代理人もホッとしたようだ。

 

 

「失礼するぞ代理人・・・・ん? 何かいいことでもあったか?」

 

「あら、きっとお察しのことだと思いますよ」

 

「・・・・・あぁ、なるほど。 確かにいい顔をするようになったな。 真面目に後ろをついてくる姿は可愛かったが」

 

「手を出すな、とまでは言いませんが、ほどほどにですよ?」

 

「勿論だ、何度も代理人に怒られるほど馬鹿じゃない」

 

 

なら結構、と言って笑う代理人とゲッコー。

この日以降、G17は何度かこの店を訪れたが、雰囲気も良くなり笑顔も増えていたため、きっと上手くいっているのだろう。

また余談だが、この日を境にゲッコーに尊敬の眼差しを向けるようになったため、代理人はゲッコーに「襲わないように」と注意するのだった。

 

 

 

end




コラボドロップのステラちゃんが手に入りました!あとはセラちゃんを狙いつつホワイトナイトの欠片を集めるだけですね!

最近思ったことは、お世辞にも座り心地のよくない硬い椅子の方が捗る気がするんじゃないかな、ということ。みなさんはどうでしょうか?


ではではいつものキャラ紹介

G17
皆さんお馴染み第1戦役ボスステージのドロップキャラ。この世界では特定の資材量(5linkのAR×5体分の配給・弾薬・人力×10とコア5つ)で入手することが可能。
指揮官のことをボスと呼び、以前の配属先の環境から規則を重んじるちょっと堅物キャラ。趣味が人間観察の割に視野が狭いという欠点があったが、ちょっとは改善された。
胸が大きい。

指揮官
破天荒かつ個性の強い部下たちを束ねる優秀な指揮官。
口数は相変わらず少なく、そのせいで 誤解されることもしばしば。

D
マスコット。

マヌスクリプト
コスプレ(を着せる)担当。

ゲッコー
最近出番がなかったのでちょっとピックアップしてみよう、としたらなんかいい感じの先輩になってしまった。
G17とはちょっとちゃらけた先輩×真面目な後輩みたいな感じにしようかなと考えている。



リクエスト、置いてます。
それと良かったらドルフロ系のイベントの話も聞かせてください、いつか行きたいので!
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=204672&uid=92543

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。