というわけで今回もリクエストから、あのお色気担当人形さんのお話。
20XX年現在、自立人形は世界中の至る所で活躍してる。民生用として企業や個人の元で過ごす人形、戦術人形として戦場に身を置くもの、あるいは自由気ままに暮らすもの。
そんな多種多様な人形たちには、やはり同型といえどいくつか違いが見られることがある。当初は調整ミスとされたこれらだが、人間社会に溶け込むにあたり『個性』として活かせるということで、そのまま残っているのだ。
まぁもっとも、世間一般の認識は通常モデルのそれなので、思わぬところで勘違いされることもしばしばあるのだが。
カランカラン
「いらっしゃいませ」
この日も、いつも通り営業する喫茶 鉄血。いつも通りに店をあけ、いつも通り客を迎え、いつも通り食事を提供する。そんないつも通りの中に、彼女は現れた。
「あら? DSRさん?」
「え? あ、はい、そうですが」
「? もしやこの地区の方とは別の?」
「え、ここにも私がいるんですか?」
やってきたのは以前この店にもやってきたDSR-50。 だがその見た目はいつものなんか際どい服装ではなく、むしろ真逆の清楚さ溢れる装いだった。スプリングフィールドに近い雰囲気だろう、といってもここのスプリングは清楚の皮をかぶった獣であるが。
そして先の会話通り、やはり彼女はこの地区の彼女とは別個体のようである。
「いつまでも入り口でというのもなんですから、どうぞこちらへ」
こういう客の場合、とりあえず何か訳があることが多いのを、代理人は経験から知っていた。特に今回の場合、一つの地区に同じタイプの人形が二人もいるのは極めて稀ということもあり、聞ける範囲で話を聞こうと思うのだ。
カウンター席に案内されたDSRは、なんとも落ち着かない様子だった。
「ではご注文を・・・・・それとも、ここにいらした理由を聞いた方がよろしいでしょうか?」
「えっと・・・・・・では、両方で」
「畏まりました。 ご注文は何になさいますか?」
「このブレンドを」
注文を聞く傍ら、目の前の彼女をつぶさに観察する。服装が違うのもそうだが、やはり雰囲気もまるで違うようだ。正直、DSRによく似た別人と言われた方がまだ納得できそうだ。だが代理人の視覚情報にはちゃんと人形、それも『DSR-50』として表示されている。
そんな彼女が持つ悩みとは、いったいどういうものなのだろうか。
「お待たせしました、ブレンドです」
「ありがとう・・・・・・・あ、美味しい」
「・・・・・・・・・」
見れば見るほど、目の前のDSRらしくないDSRが不思議でならない。立ち居振る舞いも淑女と呼ぶに相応しく、男と目が合えば悪魔的な笑みを浮かべてちょっかいをかけるアレと同じ人形だとは到底思えない。店内の客もその姿に唖然としているらしく、仕切りに目を擦っては夢ではないのかと凝視している。
「先程、『ここにも』と言いましたよね? もしやあなたは別の地区から?」
「え? あ、はい。 この度S09地区司令部に配属となりました、DSR-50です。 どうぞよろしくお願いします」
「あら、ご丁寧にどうも・・・・といっても私に挨拶をされても何もありませんが」
「あ! そ、そうでしたね・・・ごめんなさい・・・・・」
顔を赤くして俯く。もう何から何まで真逆な彼女は、やはりDSRで間違いなかったようだ。それも民生用ではなくちゃんとした戦術人形である。となればなおさら、この服装や性格の違いが気になるところだ。
「あの・・・大変失礼ではありますがその、どうも私の知るDSRさんとはちょっと違うようなのですが」
「そ、そうですよね。 では説明いたしますね」
そうして彼女は静かに語り始める。彼女が生まれ、そして今日に至るまでの苦労を・・・・・・
ーーーーーーーーーー
IoP、17labにて。
「所長、製造中の『DSR-50』にバグが発見されました」
「何? どの部分だ?」
「メンタルモデルの一部です。 性能に影響はありませんが・・・・」
「ふむ、では後からでも調整がきくな、このまま完成させよう」
数時間後、研究室にて。
「お願いです! もう少しマシな服を用意してください!」
「何を言うんだ、それが君の装備だろ?」
「でもこんなスケスケの・・・・・ち、痴女みたいな格好なんて・・・・」
「所長、これはもしや」ヒソヒソ
「あぁ、『初心で純粋なDSR-50』だ」ヒソヒソ
「どうしましょうか? 今なら調整すれば」ヒソヒソ
「いや、これはこれで需要がある、このままいこう」ヒソヒソ
「聞こえてますよ!」
さらに数時間後
「・・・・・ということでして」
「なるほど。 ならS09地区がいいだろう、そこならきっとやっていける」
「もし難しければ?」
「喫茶 鉄血を知っているな? そこのマスターに相談させればいい」
ーーーーーーーーーー
「・・・・・・というわけです」
「なるほど(後でお話しますわよクルーガーさん)」
結局、また17labがやらかしたのだった。ちなみに人形の製造過程は全自動と言っても複雑なもので、ごく稀にこのようなバグが生じる。多くの場合は再調整を行なって世に出るのだが、今回はそのままにされたらしい。
だが性能的にはなんら問題なく、しかしそこらの司令部に配属してしまうと何かしらのトラブルが起こりそうだということで、個性的な面々の揃うS09地区に白羽の矢が立ったのだ・・・・・・ついでに代理人もいるし。
「どうしましょう・・・・・ここの『私』と会うようなことがあれば「私がどうかしたのかしら『私』?」きゃああああああ!!!!!?」
「こんにちはDSRさん。 今日は何になさいますか?」
「彼女と同じものを」
「畏まりました」
過去話に没頭していて気がつかなかったようだが、この地区に所属するDSRが店を訪れていた。素っ頓狂な声を上げて飛び上がったDSR(純)だが、目の前の
「な、なんて格好をしてるんですか!? 公衆の場なんですよ!?」
「あら? これくらいいつものことよ、むしろ大人しい方・・・・・ね?」
DSRの言葉に、黙って頷く男性客一同。さりげなく組んだ足を組み替えたり流し目で見たり胸元に手を持っていったりと、こいつ人形じゃなくてサキュバスか何かじゃないかと思うような仕草で男性客を翻弄する。完全に手慣れたそれにDSR(純)はさらに赤面し、わなわなと震える。
「は、ハレンチですよ『私』! いたずらに人の心を弄ぶなんて・・・」
「ふふふっ、途中から聞いてはいたけど本当に初心なのね。 でも、あなたの格好も十分誘ってるわよ?」
「なっ!? こ、これのどこが・・・・」
ちなみに清楚な服とは言ったが、その見た目は暗めのハイウエストスカートに白のブラウス、髪を白いリボンでまとめるという、まぁ例の『特定層を殺す服』である。本人は至って真面目だがボディはDSRなので、結果としてやたらとエロく見えるのだ。言うなれば近所のお姉さんである。
「あら、特に狙ってもいないのにその服を選ぶなんて、やっぱりあなたも『私』なのね」
「ど、どういう意味ですか!?」
「DSRさん、落ち着いてください」
しかしこう見ると、 普段のイメージというものがどれほど大切かわかる気がする。なにせ世間一般のDSRのイメージは、『エロいし誘ってるように見えるが手が出せない』である。ところがDSR(純)は、『告ればワンチャンありそう』感がなくもない、むしろ目一杯甘えられる感じがする・・・・・・・という男性を魅了するという意味ではDSRはどこまで行ってもDSRなのである。
「うぅ・・・・私は誠実に生きていきたいのに・・・・」
「私が誠実でないみたいに言わないでちょうだい。 これでも身持ちは固いのよ」
「つまり処jy「な・に・か?」いえっ! 何も!」
いらんことを呟く男性客に釘をさしつつ、フッとため息を吐きながらDSRは手を差し出す。
「まぁいいわ。 どのみちこれからはこの基地の同僚よ、よろしくね『私』」
「そ、そうですね・・・・よろしくお願いします『私』」
ぎこちない手つきで握手を交わし、とりあえずこの場は一件落着する。これからまた騒がしくなりそうだと思いつつ、また一人常連客が増えるかもしれないことに少し喜ぶ代理人だった。
「・・・・・ところで、服はそんな感じだけど『下』はどうなのかしら?」
「ひぇ!? い、いきなり何を言い出すんですか!?」
「何って、私は普段からずっと『黒』だから、それ以外ってどんな感じなのかと思ってね」ピラッ
「きゃあああああああ!!!!!!!」
「あら、やっぱり『白』なのね」
「DSRさんっ!!!」
「もうやだお嫁に行けない・・・・・」
end
人形にも個性があるはず、ということを気付かされたリクエストでした。機会があれば今度は『清楚な春田さん』とか書いてみたいですね・・・・・え?春田さんはもともと清楚だって?ハハハ、ご冗談を
というわけでキャラ紹介
DSR-50(純)
製造段階でメンタルモデルがちょっとバグったDSR。通常のものとは違いかなり初心で、服装も露出を避ける傾向にある。が、それが逆にエロいことに本人は気付いていない、狼さんホイホイである。
フリー素材
DSR-50
いつぞやに着任した、男心を弄ぶプロ。男心に限らず指揮官ラヴァーズも手玉に取る強キャラ。下着は基本黒。
代理人
グリフィンのおいて『人形の相談事=代理人』になっていることに若干呆れている。でも相談されればとりあえず乗る。
クルーガーは後日必ず〆る。
リクエストの注意点ですが、基本的にリクエストされた順番で書くようにしていますがパッと話が出来上がったらそっちを書ききるようにしていますので若干の前後はあります。
・・・・・という保険を書いておきますので許して☆
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=204672&uid=92543