前話と時系列が異なります(こっちの方が先)が、気にしないでください。
独自設定がありますのでご注意ください(今更)
ア「ジュピターを八基円形に並べてストーンへn
ゲ「やめい」
「この通りだ代理人、鉄血に戻ってきてくれ。」
「何度来ようと私の答えは変わりませんよ、ゲーガー。」
2月の頭、今日も変わらず営業する喫茶 鉄血の店内にはめずらしいきゃくがきていた。鉄血クーデター事件後に完成した新型人形の片割れ、ゲーガーである。
事件後のハイエンド不在の鉄血に産まれた彼女がこうして代理人のもとを訪れるのはこれが初めてではないが、白昼に客として来たのは初めてだった。
「鉄血の司令塔を押し付けてしまったことは申し訳ないとは思っています。 が、私の道は私が決めます。」
「あぁ、それは何度も聞いたし、そのことで私がどうこう言うつもりはない。 それよりもだ・・・
・・・なぜ私より
「そう作った
これが現在の、というよりも産まれてから今日に至るまでのゲーガーの悩みである。
彼女と同時期に製造された人形のアーキテクト。その名の通り施設の建造や運用を可能とする拠点型ハイエンドとして設計された彼女だが、その過程で技術者たちが暴走し始める。
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「新型は二体で一つというコンセプトだが、何かいい案はあるかね?」
「デストロイヤーやドリーマーなんかの人気モデルに倣って腋は見せるべきだと思います!」
「二人で一つ・・・プ◯キュア・プロジェクトなんてどうでしょうか!」
「クールな姉と無邪気な妹というのは・・・いや、逆の方がいいか?」
「ならば上はポンコツ、下はそれを支える苦労人ポジにしましょう。」
「だがどこまでポンコツにする? 兵器としては欠陥になってはならんのだぞ。」
「戦術面をポンコツの突撃脳にしましょう!」
「そして副官ポジに優秀な戦術プログラムを!」
「よし、全部採用! 続いて性格や性能面で話を詰めようじゃないか。」
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「ヤツラハイツカコロス」
ゲーガーの呟きに他の客も頷く。というかクーデターの原因って人間じゃね?とか思ったりする。
その後もゲーガーの恨み節が続く中、店の扉が開き一人の少女が入ってくる。
「あら、ゲーガーさん。 こちらにいらしたのですか!」
「おお、カリン! わざわざ探してくれたのか!」
そのまま話し続けるゲーガーとカリーナ。意外なことにこの二人は親友と呼べる仲であり、鉄血人形を除けばゲーガーが唯一心を許せる人物でもある。またカリーナの方も、愛称のカリンを呼んでくれる数少ない人物であるため仲がいい。
「今月は新しいアロマを持って来ましたわ。 まだ市場に出ていない試作品ですよ。」
「ほぉ、いい香りだ。 ならこれといつものもの・・・あと胃薬も頼む。」
「はいはい。 ですがあまり無理をしてはいけませんわよ?」
「わかっているさ。 カリンがいてくれるおかげだよ。」
「まぁ、お上手ですこと。 でも、お安くはしませんからね。」
二人の世界に入り込んでいくゲーガーとカリーナ。客の何人かからは『尊い』という呟きが聞こえてくるが無視する。
そんな平穏は唐突にぶち壊される。
「あー! ゲーガー見っけ! あ、代理人久しぶり。 アイスコーヒー一つ!」
「わかりましたから店内では静かにしてくださいね。」
りょ〜かい!というとアーキテクトはゲーガーの隣に座り、周りの客に笑顔で手を振る。
鉄血の中でもかなり珍しい社交的な人形なので、いつしかアーキテクトは『鉄血のアイドル』とか言われている。ちなみにゲーガーはマネージャーと呼ばれている。
「ひどいじゃんゲーガー。 代理人のお店に行くなら誘ってよ!」
「なぜ私の癒し空間に貴様のようなノイズ発生機を置かねばならんのだ。」
「あなた部下、私上司、アンダスタン?」
「(イラッ)」
フツフツと怒りのボルテージが高まるゲーガーをよそにアーキテクトは代理人の方に向き合うと、持っていた割と大きい荷物をテーブルの上に置く。
「? これは?」
「まあまあ開けてみてよ!」
代理人が不思議そうな顔で開けると、中に入っていたのは小型のカラオケ機器一式。
「カラオケ喫茶ってのがどっかの国にあるらしいから、ここにも置いてみたらってことで持ってきました!」
「・・・まさか自分で作ったんですか?」
イエス!とやたらいい笑顔でサムズアップするアーキテクト。まあ彼女の行為を無下にするわけにもいかず受け取り、一言お礼を言う。
ふと以前風の噂で聞いたことを思い出し、確認する代理人。
「そういえばアーキテクト。」
「ん? なに?」
「半年前に聞いたのですが、新型のジュピターを作ったそうですね。」
「ありがと代理人! お金は置いてくからお釣りはいらないよ!」
「逃すかこのバカ上司!」
目にも留まらぬ速さで財布からお金を出して席を立つアーキテクトと、それ以上のスピードで取り押さえるゲーガー。
代理人としては単に聞いたから確認したいだけだったのだが、こうなっては仕方がないとしてとりあえず話を聞く。
「はぁ、今度は何をしたんですか?」
「聞いてくれ代理人! こいつジュピターを勝手に改造して・・・」
「だ、だって火力は高い方がいいじゃん! というか近づかれなきゃいいじゃん!あれがなんのためにあると思ってるの!?」
「もしもの場合に備えてに決まっているだろうが!」
聞けば半年前に世に出された新モデルのジュピターはやたらと攻撃的だったらしい。本来自衛用で搭載されている基部の機銃を撤廃、代わりに主砲と同口径の短砲身を取り付け、遠近共に高い火力を発揮できるようにしたとか。
「そのせいで重量が増えて旋回速度が下がっただろうが! おまけに装甲まで増やしやがって!」
「高火力重装甲の良さがわからないの!」
「なら口径の大きい機関砲でいいだろ!」
「弾が一種類で済むならそれでいいじゃん!」
「持ち込める弾数が減るだろ!」
「それがガチタンでしょっ!」
「知るかっ!」
ちなみにそのあまりにも極端な仕様は一部の軍には受けたらしく、すでにいくつかは導入されているらしい。
この二人だけでもうるさいのだが、この話に影響されたのか店内の男性客を中心に話が過熱してしまっている。ガチタンこそ全てだとかブレーダーにかかればただの紙だとかとっつき信者に対する宣戦だとかアクアビットマ-ンだとか・・・。
いよいよ収拾がつかなくなってきた店内を一瞥すると、代理人はわざとらしく大きな展開音を立てながらサブアームを展開する。
「・・・お静かにお願いしますよ(ニッコリ)」
それを見て客たちは自分たちの席に戻り、鉄血の二人もとりあえず黙る。皆、代理人を怒らせると怖いと言うのはよくわかっているのだ。
ひとまず元の空気に戻ったのを確認すると代理人はフッと一息つく。
「・・・その飲み物代はサービスします。 二人には、いろいろ苦労をかけていますから。」
「・・・それは違うんじゃないかな代理人?」
この件の責任は自分にもあると言う意味で言った代理人だが、アーキテクトは即座に否定する。見ればゲーガーも同じように頷いている。
「私たちも代理人と同じだよ。 代理人がここに居たいように、私たちも鉄血に残りたいから残ってるんだし。」
「まあ苦労はしているが、だからといって出ていきたいとは思っていないさ。」
「アーキテクト・・・ゲーガー・・・。」
二人はにこりと笑いながらそれぞれの代金を置いて席を立つ。
「じゃあね代理人。 コーヒー、美味しかったよ!」
「気が向いたら、こっちにも顔を出してくれ。 ちゃんともてなすし、皆も喜ぶ。」
そう言って店を出る二人。
しばし呆然としていた代理人だが、机の上の代金を回収する。しかし、なぜか視界がぼやけてうまく拾えなかった。
「・・・愛されてますわね、代理人さん。」
「・・・ハンカチ、売っていますか?」
「今回は特別に、サービスいたしますわ!」
喫茶 鉄血は、今日も平和だ。
祝・低体温症「帰郷行動」完全クリア!
資源がものすごい勢いで減ったけど、なんとかなりました!
・・・ランキング戦?ナンノコトデショウ?
終始ギャグで進めるつもりだったのに・・・まぁいっか。
というわけでキャラ(?)紹介です。
アーキテクト
残念系ポンコツ上司。
鉄血自体は代理人が任命したノーマル人形で運営しているが、有事の際には彼女が指揮をとる。こう見えてやるときはやる。
ジュピターや機械兵の整備、改造を主として軍や傭兵と取引している。
某ハイスピードロボットアクションゲーの影響され、ガチタン道にのめりこむ。
部下思いで上司思いのいい子。
ゲーガー
ポンコツ上司の部下。
アーキテクトの無茶振りや後先考えない改造に頭を悩ませ、胃薬の絶えない日々を送る。前衛指揮官として機能することも多く、鉄血参加の傭兵企業で指揮をとることも。
最近、その企業に暴走ハンドガンが二人も入ってきたためストレスがマッハ。
趣味、というよりは必要に迫られてだが、アロマや観葉植物などを集めている。その過程でカリーナと出会う。
カリーナ
二度目の登場。司令部や本部以外でも取引し、その集合場所の一つとして喫茶 鉄血お利用している(代理人公認)。
カリンという愛称を呼んでもらえないことが密かな悩みで、カリンと呼んでくれるゲーガーとはすぐに仲良くなった。危ない商売には手を出さないが、逆に言えば危なくないものにはほとんど手を出すため、商売の幅は広い。
カラオケ機器
その後は毎週金曜日の夜にカラオケ喫茶として設置することになった。アーキテクトが趣味で作ったものだが音楽関係の企業とは許可を取り合っているため、大抵の曲は入っている。
ジュピター改
性能は本文の通り。早い話が包囲してもあの高火力砲が飛んでくる。その分命中率と攻撃頻度が下がっているが、装甲も桁違いに増しているため押し切ることができる。
イベントで出てきたらドルフロやめるレベル。