というわけで、いつもとは少し違う雰囲気の喫茶 鉄血をお楽しみください。
カレンダーも10月に入り、時折肌寒い風が吹き始めた頃のS09地区。その街は今、全体的に黄色っぽいカラーリングに包まれていた。カボチャをくり抜いて作られたランタンがあちこちに飾られ、いつもより少々騒がしくなった大通りを子供達が駆け抜けてゆく。
そんなこの時期最大のイベント、『ハロウィン』一色に染まった街の一角にある代理人が営む喫茶 鉄血も、例外ではなかった・・・・・いや、むしろ大いに盛り上がっていた。
「いらっしゃいま・・・あらハンター、それにAR-15さんも」
「やぁ代理人、今日はやけに繁盛してるな」
「へぇ、服も内装もそれっぽのね」
やってきたのはこの店の常連にしてペア客第一号のハンターとAR-15。イベントごとのたびにハンターはこの街に帰ってきて、二人でデートするというのが鉄板になりつつある。当然ながらそのうちの一つでこの店にも訪れたりするのだが、今日は非常に珍しいことになっていた。
「ただ今カウンターのお席しか空いておりませんが、よろしいですか?」
「それは構わないが・・・・列ができるのなんて初めてじゃないか?」
そう、客の多い少ないはあれど収容人数を上回ることのなかった喫茶 鉄血で、初めて列ができてるのだ。流石に長蛇の列というわけではないが、こういうことは初めてなのでやや慌ただしい。
そして客の装いだが・・・・・なぜか仮装している客が多い気がする。
「えぇ、店の雰囲気を変えるのは決まっていたのですが・・・・・マヌスクリプトの思いつきで人が集まりまして」
「「思いつき?」」
代理人が困ったような顔で奥を指差すと、壁に貼られた矢印の下に『衣装貸し出しはコチラ!』とカラフルな文字で書かれていた。どうやら奥の従業員用休憩室につながっているらしく、そこに人が入ってはいかにもハロウィンですといった黒っぽいドレスで出てくる。なるほど、仮装が多いのはそんな理由か。
「てことは、ここにいる人はみんな?」
「全員ではありませんが、ほとんどはそうですね。 子供用のものもありますよ」
「アイツすごいな・・・」
そのマヌスクリプトだが、今朝まで不眠不休で衣装を作り続けた結果オーバーヒートを起こし、現在鉄血工造にて緊急メンテナンス中である。本人は泣きながら修復ポッドに入ったらしい。
それはさておきカウンター席に座った二人はそれぞれケーキとコーヒーを注文し、料理が出てくるまで店内を見渡す。
まず目につくのは当然ながら従業員の服装。いつもの喫茶店っぽいものではなくウェイターのようなもので、そして全員目元をマスクで覆っている。ゲッコーなんかは胸にバラを一本添えており、心なしかいつもより落ち着いた雰囲気のようだ。次に店の内装だが、流石に大きくは変えられなかったもののジャック・オ・ランタンや蝋燭、多分手芸で作った蜘蛛の巣とかが飾られており、ハロウィンっぽさが出ていると思う。
そんな感じでぼぉっと過ごしてると、ハンターは隣のAR-15が妙にソワソワしているのに気がつく。彼女も店内を見渡していたのだが、見ているのはほとんど仮装客か奥の衣装貸出室のようだ。相変わらず可愛いなぁと思いながら、ハンターは声をかけた。
「まだ少し時間がかかるかもしれんな。 ちょうど空いたようだし、奥に行ってみるか?」
「え? い、いいけど・・・」
「いかなくていいのか? 奥ばかり見ているからてっきり仮装したいのかと思ったが」
「うっ!? そ、それは・・・・・」
「私は見てみたいな、お前の仮装」
「う、うぅ〜〜〜〜・・・・・わかった、行く」
ハロウィンのお菓子のように甘ったるい空気を放ちながら、二人は近くにいたイェーガーに一言言って仮装室に入っていった。
仮装室のラインナップは、一言で言えば「流石マヌスクリプト」といったものだった。スタンダードともいえる黒いドレスやマント、吸血鬼をモチーフにした紳士服などからちょっと攻めた黒猫やゾンビ服やキョンシー、さらにどう考えても表には出れそうにないアダルティな服まで、とりあえず片っ端から作ったといった感じだ。といっても流石に着れるものと着れないものの区別はあるらしく、シンプルな服は結構な数を用意してある一方でダメな方はそれぞれ一着ずつぐらいだ。
「ふむ、なかなか悩むな・・・・・そっちはどうだ?」
「・・・・・・・・・」
「おーい、AR-1・・・5?」
「ひぇ!? な、なんでもないわよ!?」
慌てて服を戻すAR-15だが、そもそもそこはダメな方の服が集まる一角、隠したところでである。しかもチラッとみた感じでは、猫っぽい耳とか尻尾が見えた気がする。あたふたするAR-15を微笑ましく眺めつつ、二人とも黒いドレスに猫耳カチューシャで合わせることにした。
「あら、お帰りなさい二人とも。 お揃いの子猫さんですか?」
「ああ、何にするか決められなくてな・・・・・似合うか?」
「それはお互いに聞いてみれば良いのでは?」
「似合う以外に言うと思うか?」
こうサラッと惚気られるのはハンターらしいのだが、その隣で彼女が顔を真っ赤にしながら俯いてしまっている。付き合い始めて長いはずだが未だに初々しい二人に、代理人もつい頬が緩んでしまう。
「ふふっ、では冷めないうちにお召し上がりくださいね」
「ありがとう、いただきます」
「い、いただきます」
二人は注文したケーキを一口食べる。ハンターの方はカボチャのモンブラン、AR-15の方はベリーのタルトで、どちらもこの秋限定のケーキだそうだ。わざわざ二人とも別々のケーキにしたのは、どっちも食べてみたかったから。
そしてこの二人の場合どうするかというと、まぁいつものアレである。
「はい、あーん」
「あーん・・・・ん、美味しい」
「じゃあ私にも一口くれ、あーん」
「言われなくてもあげるわよ・・・はい」
(褒められると照れるのに『あーん』は平気なんですね)
代理人の感想はほとんどの客の感想でもある。この二人は何故か照れる時と照れない時の差が不明瞭で、なんだったらこの場でキスするのは後者に含まれるらしい。というわけで終始甘〜い空気を漂わせ続けた二人は、気がつけば周りも気にせずイチャつき続けるのだった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「すまん、やりすぎた」
「ご、ごめんなさい/////」
「まぁイチャつくなとは言いませんが・・・・・もう少し節度をもっていただければ」
一時間近くもイチャつき続ければそうなる。客の一人が鼻血を出して倒れたところで流石に代理人も止めに入り、軽く説教となった。彼女たちといい9と416のカップルといい、どこでもラブラブなのはいいことだが周りに気を配って欲しい面も多々あるのだ。
幸い客足も落ち着いてきたので大きな混乱は起こらなかったが、続けるなら他所でということで二人とも帰り支度を始める。AR-15に荷物を持たせて外で待ってもらい、ハンターは会計のためにレジに行くとお金を出しながら代理人に小声で言った。
「・・・・代理人、わがままついでに一つだけいいか?」
「? なんでしょうか?」
「実はさっきな・・・・・・・・」
ハンターの要望にちょっと驚いた代理人だったが、まぁ多分マヌスクリプトなら喜んで応じるだろうということで了承する。
「ただし、いつものことですが羽目を外しすぎないようにですよ」
「し、信用ないな・・・」
「普段はともかく、彼女のことになれば尚更です」
言っても無駄なんだろうな、とか思いつつ厳重に釘を刺しておいた。
「ねぇハンター、なんか長かったけどなんだったの?」
「ああ、実はこれを借りてきたんだ」
「これ? ・・・・・・って、嘘でしょ!?」
「気になってたんだろ?」
「そ、それはそうだけど・・・こんなの着る場所なんて」
「なくはない・・・・・ほら、あの建物とか」
「っ!? ば、バカ////」
end
ハロウィンの話を書こうといたら何故かハンターとAR-15の話を書いていた、何を言っているかry
続きはWEBで!
・・・・なんてのは置いといて、各々の脳内補完でお願いします(丸投げ)
じゃあいつものキャラ紹介!
代理人
前に一〇〇式の案で喫茶 鉄血をハロウィン仕様に。内装と制服をそれっぽくし、雰囲気を楽しむお店として1日限りのオープンとなった。
普段のメイド服に血のりをつけるだけでもよかったのだが、飲食店で血のりはちょっと・・・ということでボツに。
マヌスクリプト
多分誰よりもこの日を待ち望んだ人形・・・なのだがテンション上がりすぎて運動会当日に風邪をひく小学生のようなことになってしまった。
衣装の腕前は間違い無いので今後も需要はあるかも・・・・・クリスマスとか。
ハンター&AR-15
お馴染みのカップル。今更だが貧乳をいじられないAR-15が見れるのがこの作品の特徴だと思う。
なんか毎回『そういう所』に行ってる気がするけど仕方ないよね!
。すまきとい置LRU用トスエクリ
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