というわけで今回は番外編!
・酒に飲まれる者たち
・ピーちゃんと私
・にゃんにゃん装備、再び
・ノインの旅路2ndG
番外28-1:酒に飲まれる者たち
「いい加減にしてください!」
離れた席でWAちゃんが代理人と話しながら静かに飲んでいた頃。飲み会の席でそんな声が響き、ほとんどの人形が何事かと振り向く。そして声の発信源が誰であるかを確認すると、皆興味を失ったかあるいは関わらないように目を逸らした。
そんな周りの目など一切気にせず、顔を真っ赤にしたスプリングフィールドは熱く語る。
「私ほど女性としての魅力の溢れた人形はいません! 私こそが指揮官に最もふさわしいんです!」
「いいえ、それは断じてあり得ませんわ! だいたいただ胸が大きいだけで勝ち誇るその浅ましさ、気品のかけらもありませんわね!」
「まったくです! むしろあなたの場合はただ下品に大きいだけでしょう!」
「あら? 持たざる者の僻みですか? みっともありませんよ」
「どっちもどっちやろ、二人揃って仲良くいがみ合っとき。 節操のない人形は嫌われんで」
「そうそう、だからあなたもあっちに行ってていいわよガリル。 指揮官の隣は私がもらうから」
この場で最も混沌とした席、指揮官ラブ勢のテーブルでは、お馴染みの春田さん、Karちゃん、ウェルロッド、ガリル、モシン・ナガンの五人が火花を散らしていた。
司令部の飲み会なのに指揮官不在という事態に打ちのめされた五人は慰め合うために固まり、しかし気がつけばどれだけ指揮官が好きか、どれだけ自分がふさわしいかを語り合いはじめ、最終的にライバルを蹴落とし合うに至っている。誰も止めないのは、止めるともっとややこしくなるからだろう。
「もう我慢なりません! そこまでいうなら見せてあげます!」
「ちょっ!? 姉さんストップ!!!」
酒が入るともともとゆるい貞操観念がさらに低くなる春田さんが、上着に手をかけて脱ぎ始める。それを必死にガーランドが止めに入り、そのまま姉妹による取っ組み合いが始まる。
ここまではまぁいつも通り、だが今回は
「ストップ! ストップですKar!」
「離してください! そこの
「女の子が
暴れるKarを全力で押さえ込むカラビーナ、その光景眺めていた人形たちは『馴染んだなぁ』とちょっぴり嬉しく思うのだった。
結局収まりがつかなそうだと思ったカラビーナが無理やり酒を飲ませて潰すまで、ライフル二人の暴走は続くのだった。
end
番外28-2:ピーちゃんと私
司令部には医務室があり、それに併設される形で動物保護施設もある。保護施設といっても飼い主の居なくなったペットなどを引き取るか人形たちが個人的に飼っているペットを飼育しているだけで、おまけにこの街にも動物保護施設があるためそんなに数はいない。
そんなペットたちの箱庭だが、基本的に誰が管理しているとかも決まっておらず、ここを訪れる人形たちが交代で見て回っている。が、ここ最近は常連とも言えるある人形が主にここの管理を行なっている・・・・・FALだ。
「えへへ〜、みんなおはよう〜」
だらけきった顔で飼育小屋を掃除していくFAL。彼女の相棒であるフェレットもここの一員なので、他の動物たちを邪魔にならないところに誘導している。慣れた手つきで掃除を済ませ、綺麗になった部屋でふぅーっと一息つくと、再びにへっと表情を緩ませてある区画に行く。いくつもの籠と止まり木が並ぶ、鳥類用の飼育スペースだ。そしてそこに、FALの最近お気に入りの子がいるのだ。
「おはよ〜ピーちゃん〜!」
止まり木に止まったまま首をかしげる猛禽類、戦術人形ファルコンの相棒であるピーちゃん(命名:FAL)だ。ファルコンはこの名前をあまり気に入っていないようだが、FALが勝手にこう呼んでいる。
相変わらずだらけた表情のまま腕をスッと出すと、ピーちゃんがピョンと飛び乗る。
「うふふ〜、ピーちゃんは本当にいい子ねぇ〜」
他の人形が見たらドン引きするくらいの猫なで声で語りかけるFAL。もちろん言葉が通じているというわけでもなく、要するに独り言だ。だがここまでキャラが崩れきるほど、FALのストレスは大きいのだ。
「・・・またですか、FALさん」
「ん? あらファルコン、ピーちゃん借りてるわよ」
「だからピーちゃんでは・・・いえ、もういいです」
はぁ、とため息をつくのは本来の相棒であるファルコン。もちろん彼女とて自分の相棒が他人とベタベタしているのはあまり嬉しいことではない。しかしペルシカから聞いた「ピーちゃんと触れ合うおかげで胃薬の処方が減った」という話で色々察して諦めた。
そんなわけで、今日も先輩の憩いの時間を提供しているのだった。
「ピーちゃ〜ん♪」
(・・・・・これ、私が別の地区に行ったらどうなるんでしょうか?)
FALの将来をちょっとだけ心配するファルコンはそっと、自分がここにいる間だけでも彼女のストレスを和らげようと誓うのだった。
end
番外28-3:にゃんにゃん装備、再び
「さくやはおたのしみでしたね」
「いきなり何を言い出すんだ貴様は」
「・・・・・・/////」
喫茶 鉄血で衣装を借りてから一夜明け、というか体が動かなくなるまで××したので昼過ぎくらいにお礼を言いにマヌスクリプトのもとを訪れたハンターとAR-15。そんな二人にかけた第一声が、さっきの一言である。
「え? だってヤったんでしょ?」
「おまっ!? ち、ちょっとはオブラートに包め!」
「そ、そうよ!」
「あ、否定はしないんだ」
「「〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」」
しれっと言い放つマヌスクリプトに顔を真っ赤にして黙り込む二人。決して初心なわけではないが、残念ながら相手が悪すぎた。さらにそんなマヌスクリプトはメモを片手にさらなる追撃に入る。
「で? どうだったの?」
「な、何がだ!?」
「何って・・・つけたんでしょ? にゃんにゃん装備」
にゃんにゃん装備、それはいつぞやにアーキテクトが開発した、装備するだけで語尾が「にゃん」になる謎装備。ご丁寧に本体とリンクして耳や尻尾が動くという徹底ぶりで、本人も自信作と言っている。そのうちの一つが代理人に送られ、それを取り入れたのが今回の仮装だった。
「さしずめ、子猫ちゃんを襲う狼ってとこかな?」
「わかった、正直に話すからAR-15に席を外させてくれ、今にもオーバーヒートしそうだ」
ハンターの隣、顔をこれでもかと真っ赤にさせて両手で覆い、それでも頭から湯気を立ち昇らせるAR-15は確かにもうダメそうだ。とりあえずAR-15を離れた先に移動させ、準備万端とばかりにマヌスクリプトの聴取が始まる。
「で、どうだった? 可愛かった?」
「あ、ああ、そうだな」
「へぇ〜、どの辺が?」
「その、感情に合わせて耳や尻尾が動くところが・・・」
「そして安易に触っちゃってビクッと」
「し、仕方ないだろ、まさか感覚まであるとは思わなかったんだ」
「でも反応が可愛かったから触り続けたと・・・・二人とも可愛いなぁ〜」
「うぅ・・・もう勘弁してくれ・・・」
この後マヌスクリプトが代理人に捕まってこってり絞られるまでの約一時間、ハンターの恥ずかしい話は続くのだった。
end
番外28-4:ノインの旅路2ndG
前回のあらすじ
ダイナゲート(CV.中田ry)が なかまに なりたそうに こちらをみている! なかまにしてあげますか?
・はい◀︎
・はい
「と、いうわけだ」
「いや、どういうことよ」
ここはとある国の小さなホテル。その一室にお邪魔させてもらった(追加料金払済み)ノインとダイナゲートは、そこでしばらく過ごしている人形たちのお世話になっていた。例の鉄血工造傘下の軍事会社所属のカスール、ジャッカル、サムライエッジである。
もっとも、カスールとジャッカルは微妙な表情のままダイナゲートを睨んでいるが。
「ん? どうかしたか?」
「いや、なんというかな・・・」
「貴様のようなチンチクリンでその声を出されるとイラッとくる」
この二人がここまで不機嫌になることも珍しく、また迷惑をかけるのかと頭を悩ませるサムライエッジ。一方のノインも早速トラブルメーカーになりつつあるダイナゲートにため息をつく。
「本当にすみません、騒がしくしてしまって」
「いえ、こちらこそ・・・泊めていただいている側なのに御迷惑を」
「・・・・お互い大変ですね」
「えぇ・・・」
「ええいもう我慢ならん!」スチャッ
「クククッ、私を殺すか?」
「「はぁ・・・・・・」」
とりあえず、ホテルに迷惑をかけないためにもこの三人(?)を止めることにした二人は、同じ苦労人としてか仲良くなれそうな気がするのだった。
end
なぜか間が空いてしまった。おかしいな、書く時間はあったはずなのに・・・・・
また私事ですが、先日企業様の内定式に出席しました。なんというか、いよいよ社会人が近づいてきた実感が湧きますね。
というわけで各話の解説!
番外28-1
WAちゃんと代理人が話している間に何があったのか、という話。相変わらず残念な春田さんですが、多分もう手遅れかと・・・
番外28-2
ようやく訪れたFALの癒し。でもどうしてもFALの笑顔が儚いものになってしまうのはなんででしょうかね?
番外28-3
ハロウィンの後日談。マヌスクリプトが完全復活を遂げて帰ってきた!
AR-15のつつましやかな胸が猫ランジェリーとか似合いそうだと思いm(銃声)
番外28-4
せっかくだしHELLSINGな二人もいるし、ということで前回に続いて今回の番外編も登場。
ちなみにこのダイナゲートは驚異的な回避力を誇るので二人がかりでも捉えられない。
はいではいつもの。
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