リクエスト、キャラ案を頂きましたので書いてみました!
オリキャラ注意!
「・・・・はい・・・えぇ、分かりました。 こちらでも気を付けておきます・・・はい、では」
「Oちゃん、何かあったの?」
真剣な表情で受話器を握っていた代理人を心配するD。ちょうどお昼に差し掛かろうかという頃にかかってきた一本の電話が、その一件の発端とも言えた。
かけてきたのは鉄血工造においていつの間にか最も偉い地位についてしまっているサクヤからだった。その内容は・・・・・
「先程、鉄血工造でトラブルがあったようです。 心配は要らないそうですが」
「・・・・・・・・・」
代理人は心配いらないというが、それが半分嘘であることをDは見抜いていた。というよりも本体のダミーなのだから、本体の微妙な違いくらい気がついて当然だ。だがそこはあえて触れないでおいた。
そんななんとも言えない雰囲気が漂い始める喫茶 鉄血だったが、少し強めに開いた扉に意識を向ける。
「よお代理人、席空いてるか?」
「あら処刑人、来ていたのですね。 空いていますよ」
「あ、その子も一緒に来たんだ。 こんにちは」
「・・・・・・・・」
現れたのはいつも通りラフな格好をした処刑人と、その後ろに隠れるようにしてひっついている少女の二人。ある一件で処刑人が引き取って育てているこの少女も連れてきたようだ。
前回きたときからそう時間は経っていないが、どうやらしばらく休暇になっているらしい。傭兵である処刑人としても、自分たちの出番が少ないならそれでいいいと思っているようで、気兼ねなく休みを楽しむつもりらしい。
「それで? 今日はなにをしに?」
「ん〜、挨拶かな? ほら、代理人やハンターは知ってるけどこいつと暮らすことになったからな。 付き合いが長い奴には一言言っておこうかって」
「なるほど・・・ではこの後は鉄血工造に?」
「ああ、他の奴はいずれ会うだろうし、とりあえずな」
「そうですか・・・・・では、ご注文を伺いましょう」
「ホットコーヒーを。 それとこいつにはジュースとパンケーキ」
そう言ってポンっと少女の頭に手を乗せる。カウンター席に座って足をブラブラさせる少女ににこりと微笑むと、代理人は奥へと下がる。そしてDが入れ替わるように二人の前に立つと、少し目線を合わせて少女に語りかける。
「こんにちは! お名前は?」
「っ! ・・・・・・」
「はははっ! ビビんなくていいぜ、こいつは私の仲間だ」
「・・・・・・」コクッ
頷き、一応警戒は解いてもらえたもののまだ一言も喋らない少女。ちなみに引き取って以来処刑人ですらまだ一度も声を聞いたことがないらしく、当然名前も不明・・・・というかあるのかすら怪しい。一度医師に診せたことはあるが、声帯等に異常があるわけでもないらしく、ただ本人が話さないだけらしい。
まぁそれなら仕方ないか、と納得してDはまた話しかけようとしたそのとき、突然ドアが勢いよく開き、店内に怒号が響き渡る。
「見つけたぞ! 処刑人!!!」
「っ!? 誰だてめぇ!」
名前を呼ばれた処刑人が振り向く。そこにいたのは、どことなく雰囲気が処刑人と似た一人の人形。黒を基調とした服装に、両腰にぶら下げた二本のブレードとソードオフショットガンが一丁、ショートの髪を揺らし、処刑人によくに高い目には憎悪の炎が宿っている。
鉄血人形らしきそれは腰のブレードを引き抜くと、処刑人に突き付けた。
「忘れたとは言わせねぇぞ処刑人、あの時の屈辱を倍にして返してやる!!」
「あの時? つかどこかで会ったか?」
「しらばっくれてんじゃねえぞてめぇ!!!」
いまにも斬りかかってきそうな雰囲気に、Dは少女を守るべく前に出る。だが現在武装を外しているため、本当に襲いかかってきたら身を挺する他ない。
一触即発、という時に、鋭い声が突き抜ける。
「そこまでです! 他のお客様に危害が及ぶようなことは、当店としては見過ごせません」
「っ! てめぇは!」
奥から帰ってきた代理人が一喝し、謎の人形に向き合う。彼女も代理人を知っているらしく、処刑人と同じく鋭い目つきで睨む。
トレーを置き、ゆっくりと武装を展開しつつ口を開いた。
「お久しぶりですね・・・・・
『執行人』
それがこの人形の名前だ。この独特な名前から分かる通りに鉄血工造で製造されたハイエンドモデルである。
だが、処刑人は彼女のことを知らない。いや、正確には
「てめぇは覚えてるってわけか・・・なら大人しくそこをどきな!」
「お断りします、そして武器を治めなさい」
代理人が語尾を強めつつ警告する。だが執行人も決して下がろうとはせず、睨み合いを続けている。
すると、その間に割って入る人影が。処刑人だ。
「! 処刑人、なにを!?」
「・・・お前の狙いは私だろ? 相手になってやる、表に出ろ」
「はっ、いいぜ、決着をつけてやる」
処刑人に促され、外へと出る執行人。それに続こうとする処刑人を、代理人が呼び止める。
「処刑人・・・」
「悪いな代理人、勝手に進めちまって・・・・けどあいつは、私の妹みたいなもんなんだろ? なら、ちょっとだけ姉貴面させてくれよ」
「・・・・・・・・」ギュッ
「ん? そんな心配そうな顔すんなって。 ちゃんと戻ってくるからよ」
そう言って処刑人はやや乱暴に少女の頭を撫でると、店の外へと向かうのだった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「・・・・・来たな」
「ああ・・・・じゃ、始めるか」
喫茶 鉄血の目の前にある小さな公園、その中央に立った二人は、向かい合ったままそれぞれの得物を抜く。処刑人はいつものブレードを、執行人は処刑人のそれよりかは小ぶりのブレードを二本、互いに銃は抜かなかった。それは周りへの配慮というよりも、刀だけで相手を超えるという意志の現れのようだ。
ゆっくりと構え・・・・・同時に地を蹴った。
「オラオラオラオラァ!!!」
「ちっ! 無茶苦茶だなおい!」
執行人の剣技は、お世辞にも綺麗なものではなかった。ただ力任せに振り回すだけの荒々しいものだが、しかし決して楽に捌けるものというわけでもなかった。おそらく我流でここまで来たのだろう、二振りの刀を交互に、時には同時に振り抜き、一切の反撃も許さずに追い詰めていく。加えて処刑人の戦い方は大振りの一撃離脱で、一対一の切り合い自体不得手であった。
「いける・・・これで、お前を超えられる!」
「超えて・・・それでどうすんだよ!」
「んなもん知るかぁ!!!」
叫び、斬りかかる。それを辛うじて受け止めた処刑人は、それまで抱いていた考えを全て消し去った。
代理人と少女には悪いが、処刑人自身は負けてもいいと思ってこの戦いに臨んだ。むしろ処刑人が負けることで彼女が前に進めるのなら、後悔はないとさえ思っていた。しかしどうやら彼女は『勝った後』のことをまるで考えていないらしく、それはつまりなにも残らないということになる。
(ふざけんな・・・・んなもん絶対ぇ認めるか!)
さて、話は変わるが鉄血工造を抜けた後のハイエンドたちは、それぞれの能力を生かせる道へと進んでいる。その中で処刑人は傭兵、それも防衛や護衛を主とする傭兵だ。それはつまり、
・・・・・・当然、そこから攻めに転ずることなど朝飯前である。
「おりゃあああああ!!!!」
「なっ!?」
思いっきり足を振り上げ、
「いつまでもダダこねてんじゃねぇぞクソガキがあああ!!!」
「ごはっ!!」
意表を突かれ、顔面を殴り抜かれた執行人が吹き飛ぶ。あまりのことに両手の武器を手放してしまい、これで完全に丸腰となった。
「て、てめぇ! 武器を捨てるなんて卑怯だぞ!」
「卑怯だぁ? 戦場に卑怯もクソもあるか!」
そう言って処刑人はブレードを拾い上げ、ゆっくりとした足取りで執行人のもとに向かう。手をついて起き上がろうとする執行人だが、いい具合に入ってしまったのかバランサーが狂い、うまく起き上がれない。やがて目の前に処刑人がくると、忌々しげに見上げて吐き捨てるように言った。
「・・・・・殺せよ」
「アホか、誰が仲間を殺すかよ」
「仲間? 俺を捨てたお前らが、それを言うのかよ!」
今にも噛みつきそうな勢いでそう言うが、処刑人は冷たい表情で見下ろすだけだ。それがさらに執行人の神経を逆撫し、怒りを募らせる。それが暴力として具現化しようとしたその時・・・・・
タタタタタタッ・・・・・バッ!
「・・・・・・!」
「なっ!?」
「お、おい・・・・」
いきなり二人の間に割り込んできたのは、後ろで見守っているはずの少女だった。それが執行人の前まで来ると、両手を広げて処刑人に立ちはだかる。唖然とする処刑人の後ろからは、その少女を追ってきた代理人が駆け寄ってくる。
「すみません処刑人、いきなり走り出して行って」
「あ、いや、びっくりしたけど・・・・・・はぁ」
「・・・・・」ブンブンッ
「あー分かった分かった、殺さねぇから大丈夫だって」
「・・・・・・・・・」
「・・・頑固ですね」
「だな」
突然の乱入者によってうやむやになってしまった空気に当てられたのか、執行人もポカンとしたまま少女の背中を見ている。やがて処刑人はため息をつきながらブレードをしまうと、少女を抱き上げてから執行人に手を伸ばした。
「あ〜・・・ほら、立てよ」
「え? あ、あぁ・・・・っておい! まだ勝負はついてねぇぞ!」
「つってもなぁ・・・こいつ抱えたままじゃどうしようもないしなぁ」
「だいたいなんなんだそいつは! ま、まさかお前の子供か!? 相手は誰だ!? まともな男なんだろうな!?」
「違ーよ。 つかなんでお前がんなこと気にすんだよ?」
二人でギャーギャーと揉め始めるのをちょっとホッとしたような表情で見守ると、周りに集まったギャラリーを追い返しつつ、代理人は店へと戻って行ったのだった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「あら、お帰りなさ・・・・・・い?」
「あー・・・・言いたいことはわかるよ代理人」
数分後、処刑人と少女と執行人が帰ってきたのだが、その光景はちょっと奇妙なものだった。まるで親子のように、処刑人と執行人の両手を少女がつないでいたのだ。慣れていないのか、執行人はガチガチに固まっている。
「一応話はしたよ。 まだ納得してなさそうだけどな」
「そうですか・・・・・改めて執行人、私たちはあなたを迎え入れます」
「よろしくね、執行人!」
「あ、あぁ・・・その・・・こ、こいつをどうにかしてくれないか?」
「・・・・・・・」フルフル
「嫌だそうです」
「そんなぁ〜」
項垂れる執行人を、不思議そうな顔で見上げる少女。処刑人はケラケラと笑うと、少女の頭に手を乗せて言った。
「さて、じゃあ食うか・・・・腹減ったろ?」
「・・・・・・」コクッ
「ふふっ、ではすぐに用意しますね」
三人を席に座らせ、代理人は奥へ下がる。
なんだかんだ、今日も平和だ。
end
本作における貴重な戦闘シーン笑
というわけで今回はとある方より頂いたオリキャラ『執行人』が登場しました。書いてみると結構原作の処刑人に近い雰囲気になった気がする(ここの処刑人がおかしいだけ)
てなわけでキャラ紹介!
執行人(エンフォーサー)
処刑人の姉妹機。処刑人と同じく前衛での切り込み役だが、その処刑人よりもさらに前に出ることを想定されている。このため武装も取り回しのしやすいソードオフSGにやや短めのブレードという構成。
中止が決定した頃はまだハイエンドたちも製造途中だった者が多く、彼女を知るのは代理人のみである。
他にもいろいろ設定はあるが、後の話で詳しく語るだろうが・・・・・とりあえずこれは言っておく、アホの子。
処刑人
休暇中。ちなみにだが鉄血ハイエンド内での認識は、代理人やアルケミストが姉、デストロイヤーが妹、他は家族だが姉とか妹とかの括りはない。特にハンターとは言葉では表せない仲。
少女
いまだに名前も台詞もない少女。いい名前が全く思い浮かばず、いっそこれを個性にしてもいいかなとか思っている。
ちなみに処刑人のことを母親のような感じで見ており、よって執行人はおばsゲフンゲフン
代理人
当店2度目の殺傷未遂。それでも冷静でいられる彼女こそがここのマスターなのだ。
D
ダミーだが本体と違い普段は非武装。だが武器を掲げて解決するのはよろしくないので今後も非武装。
今回のようなオリキャラも募集しております!
設定はあるけど自分とこでは出しづらい、考えたけど小説を書くのはちょっと・・・・・という方でも大歓迎です!
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=204672&uid=92543