喫茶鉄血   作:いろいろ

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待・た・せ・た・な!(スライディング度下座)

たまには代理人を休ませてという声が多いので。
ついでにこの世界が原作とどれだけかけ離れているかの再確認もしておきましょう。


第百十七話:たまには仕事も休みましょう

「「「改装工事?」」」

 

「えぇ、週明けから三日ほどで行います」

 

 

もうすっかり秋の空気になった頃の喫茶 鉄血。暗くなり始めて店じまいを終えた代理人から通達されたのは、そんな一言だった。

喫茶 鉄血自体はまだ開業から一年が経ったくらいなのだが、この建物自体は結構古い。しかもただの民家だったそれの一階部分を強引に店に改装し、さらに今では二階部分の改装と三階の増築という素の面影すらないくらいだ。もちろん業者は信頼できる相手だし別に違法建築の類でもない、だがそもそも建物としての作りがちょっと古いので、一度補強工事をしておかなければいけないらしい。

 

 

「ということで、月曜日から三日ほどお休みにします。 グリフィンが司令部の予備宿舎を貸してくれることになっていますが、旅行に行かれる方は行っていただいても構いません」

 

「イャッフゥウウウウウウウ!!!!」

 

「ふむ・・・・なら久しぶりに遠出でもするか」

 

「折角だからスプリングさんのカフェで勉強してこようかな」

 

 

突然降って湧いた3連休、それも平日という人も少ない期間でだ。マヌスクリプトは早速ニッポン行きの航空券の手配を始め、ゲッコーも店に置いてある旅行のチラシを広げ始める。Dは遠出こそしないものの、いつか店をオープンする時のために勉強するらしい。

さて、そうなると逆に困るのは開業からのメンバーである代理人・リッパー・イェーガー・ダイナゲートである。喫茶 鉄血オープン以来、誘われない限りはずっと働き続けていた彼女らは、『自由にしていい』と言われると何をすればいいのかわからないのだ。まだダイナゲートは司令部のペットたちと戯れていればそれでいいが、他三人に関しては本当に何もない。

 

 

「なぁリッパー、こういうときはどうすればいいんだ?」

 

「私に聞くな・・・・・そうだ、久しぶりに皆のところに行くか?」

 

「お、それもそうだな」

 

 

そんな中、頑張って目的を捻り出したリッパーとイェーガーは、鉄血工造で働く同期や後輩たちに会いに行くようだ。忘れている者も多いと思うが彼女たちはそれぞれの一号機であり、下級モデルの中では最長クラスの稼働時間を誇る。そんな彼女たちにとって、鉄血工造に残って働く人形は皆可愛い後輩なのだ。ちなみに製造年月という意味では、そんじょそこらのハイエンドやグリフィン人形よりもベテランである。

 

 

(なるほど、あまり会わない人に会いに行くのもありですね・・・・・よし、これでいきましょう)

 

 

二人の会話を参考に、ハイエンドらしい高速演算で予定を組み上げていった代理人は、早速連絡を取るために端末を開くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

週明け、月曜日。

集合時間の少し前に到着した代理人は、時計を見ながらパンフレットを開く。広い敷地には見所となるものが多くあり、どこを誰と回ろうかと考えているところだった。

 

 

「あ、代理人〜!」

 

「お久しぶりです」

 

「おっはよー!」

 

「すまない、待たせてしまったか?」

 

「皆さんおはようございます。 先ほど着いたところですよ」

 

 

次に現れたのはおそろいのパーカーを羽織ったサクヤとゲーガー、その後ろでハイテンションのアーキテクトに振り回されるように連れられるユウトの、鉄血工造四人組だ。どうやらリッパーとイェーガーの帰りに合わせてあっちでも歓迎会をやるらしく、臨時で休業にしたらしい。誘ったのはサクヤとユウトなのだが、ゲーガーはともかくアーキテクトが来るとは思っていなかった。

 

 

「考えてもみてくれ代理人、こいつを一人残せば間違いなくいらんものを作りだす」

 

「ひっどいなぁゲーガーちゃん、私がそんなことするように見える?」

 

「「「見える」」」

 

「うぅ〜代理人〜みんながいじめる〜!」

 

 

ただ集まっただけだというのに早くも騒がしくなる一同。するとそこへ最後の二人が合流する。ちょっと出遅れたと思ったのか片や元気いっぱいに、片や運動不足気味に息を切らせて走ってきた。

 

 

「代理人さん! おはようございます!」

 

「はい、おはようございますミーシャちゃん。 ヴァニラさんもおはようございます」

 

「お、おはよう・・・代理人・・・・・」

 

 

ヴァニラ親子が合流したところで、改めて全員揃ったことを確認する代理人。これが今回代理人が誘ったメンツであり、目的地も彼女たちがみたことのないものを取り扱う場所だ。

 

 

「では行きましょうか。 途中からは自由行動になりますが、それまでは逸れないように気をつけてくださいね」

 

 

引率役としてそう言うと、代理人たちはゲートを潜り、大きな『水族館』へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わぁ! 見て見てお母さん! おっきいお魚さん!」

 

「あれはえっと・・・・・・・・・・なんて魚だっけ?」

 

「絵は見たことあったけど・・・・・本物って大きいね」

 

「姉さん、興奮するのはわかるけどガラスから離れなよ」

 

「そう言うユウト君もソワソワしてるのは気のせいかな〜?」

 

「おいこらアーキテクト、冷やかすんじゃない」

 

「ふふふっ」

 

 

入って早々、正面に見えた大きな水槽に釘付けにいなる一同。特に水族館はおろか生きた魚すら見たことのなかった異世界組は興味津々であり、サクヤもまるで子供のように水槽にへばりついている。平日というだけあって客もまばらなので、好きなところで見ていられるのだ。

これが代理人の考えた休日の潰し方、彼女たちの世界では見ることの叶わない世界を見せることである。欲を言えばもっと自然として生きている場所に連れて行きたかったが、さすがに予約が取れなかった。

 

 

「さて、では次はあちらに行きましょうか」

 

「次はどういうところなの?」

 

「小さな魚に触れ合えるんだって!」

 

「「え!? ほんと!?」」

 

「姉さん、ミーシャちゃんと同じくらいはしゃいでるな」

 

 

というわけで早速移動し次のエリアへ。『触れ合いスペース』の文字が見えた途端バッと走り出したサクヤとミーシャを慌てて追いかけ、やれやれと言いつつもそれに混ざるユウト。あくまで見守るつもりでいた代理人とゲーガーだったが、アーキテクトも混ざり始めたので苦笑しつつ二人もそれに続いた。

 

 

「お、お母さん・・・・取ってぇ・・・・!」

 

「ん? どうしたのミーシャ・・・・ってあははははは!!!」

 

「笑ってないで取ってよおぉおおおおおお!!!」

 

「ヴァニラ、泣いちゃうから取ってあげなって」

 

 

興味本位で何かもわからずに掴み、ものの見事に両手に絡み付いたタコに翻弄されるミーシャと、それを笑いながらカメラに収めるヴァニラ。持ち上げてはいるが怖くてその場から動けず、しかも触腕がウネウネと動くたびに「ひっ!」と小さな悲鳴を上げる姿がよっぽど面白いのか、全く手を貸すつもりはないらしい。仕方なくユウトが取ってやった。

 

 

「うぅ・・・お母さん大っ嫌い!!」

 

「あはは、ごめんってミーシャ」

 

「ゲ、ゲーガー! 助けて!」

 

「ってサクヤさんも!?」

 

「うわっ、しかも二匹いるじゃん」

 

「姉さんが一番子供っぽい・・・・・」

 

 

とりあえず引き剥がし、その後もウナギやらカブトガニやらと触れ合いご満悦になる一同。そして集団行動の最後に、代理人はある場所へと連れて行く。

 

 

「代理人、ここは?」

 

「じきに分かりますよ。 では折角ですので前にいきましょう」

 

 

水の上に浮かぶステージを中心に、扇型のようになった観客席。何かのショーでもやるのだろうかと思い最前列に座ると、ちょうどショーが始まる時間になった。

 

 

『皆さま! 本日はお集まりいただきありがとうございます! ただ今より、イルカたちによるドルフィンショーを開演します!』

 

「お母さん、イルカって何?」

 

「大きくて賢い魚だよ・・・・・・・魚?」

 

「いや、あれは哺乳類・・・・って言ってもわからないか」

 

「あれ? 意外と説明が難しいぞ」

 

 

そんなちょっとずれたことで悩んでいると、ステージの両端から水飛沫をあげながら主役(イルカ)たちが現れる。そしてステージの真ん中あたりで潜ると、

 

 

『はい、ジャ〜〜ンプ!!』

 

「わっ!!! お母さん、飛んだっ、飛んだよ!!」

 

「ゲーガー! ユウト! 見た見た!?」

 

 

その後も水面に飛び出したり背面で泳いだりするたびに歓声を上げる子供二人(ミーシャとサクヤ)に、代理人も満足げに微笑む。するとそこへ一頭のイルカが近づき、そのタイミングで係の人がミーシャに手を差し出す。

 

 

『では! 皆さんを代表して君に! イルカさんたちと一緒にショーを盛り上げてもらいたいと思います!』

 

「ほらミーシャ、いってらっしゃい」

 

「え? な、何?」

 

「お姉さんについていけば大丈夫ですよ」

 

「い〜なぁ〜」

 

「姉さんステイ」

 

 

ちょっぴり不安な表情でステージの方に近づき、水辺に立つ。そしてちょっと小さめのリボンを渡され、イルカと向き合った。

 

 

『じゃあ、お姉さんの真似をしてね! まずは大きくグルグル〜!』

 

「えっと・・・グルグル〜」

 

『そうそう! じゃあもう少し早くグルグル〜!』

 

「グルグル〜!」

 

『OK! そして最後にゆっくりしゃがんで〜・・・・・ジャーーーンプ!』

 

「ジャーーーーンプ!!」

 

 

ザッバーンッ!!!

ミーシャがリボンを振り上げたタイミングでイルカが高く飛び上がり、勢い良く水面に飛び込む。そばにいたミーシャはもちろん最前列にいた代理人たちも頭から水をかぶるが、ギャーとかワーとか悲鳴をあげつつ楽しげに笑った。びしょ濡れで帰ってきたミーシャなど、濡れていることなど一切気にせずヴァニラに抱きつくほどだ。

 

 

『みんな〜! 今日はありがとう! まったね〜!!!』

 

「バイバ〜イ!」

 

「ふふ、着替え持参ってこういうことだったのね代理人?」

 

「ええ、といってもミーシャちゃんが呼ばれるとは思っても見ませんでしたが」

 

「・・・・・・今日はありがとう。 きっとこの子にとって最高の思い出になるわ」

 

「どういたしまして。 ですがまだまだ時間はあります、自由行動はお二人でゆっくり回っていってください」

 

 

キャッキャっとはしゃぐミーシャを見守りつつ、代理人とヴァニラは微笑む。

結局、この後ご飯を食べたせいで眠くなりほとんど回れなかったミーシャだったが、ヴァニラ(母親)の腕に抱かれて眠るその表情は、とても幸せそうなものだった。

 

 

 

end




はい、遅れた言い訳はしません。決してアイスボーンで導きの地を延々回っていたとか言うつもりはありません(すっとぼけ)
やっぱり子供ってこれぐらいはしゃいでる方がいいんですよ、ちょっとぐらいうるさい方がいいんですよ。

というわけでキャラ紹介

ミーシャ
コラボ回より。あっちのヴァニラの実の子。
あんな世界なのできっと魚なんて見たことないだろうなと思ったのがこの話のきっかけ。
ロリコンホイホイ。

ヴァニラ
こっちの住人。世界は違えどミーシャの母親として奮闘中。
親バカ。

サクヤ
コラボ回より。本作最初の流れ組である。
あんな世界なのできっと魚なんてry
ちょっと子供っぽくしすぎたかとも思ったけどあんまり違和感ないしいいよね?

ユウト
リクエストより、ここのサクヤとは別の世界から来た。
今回あまり目立っていないが、やはり初めての水族館ということもあって終始ソワソワしていた。

ゲーガー
サクヤの嫁(予定)
この後ちゃんと水族館デートした。

アーキテクト
この後サクヤとゲーガーの邪魔にならないようにユウトと水族館を回った。
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